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ゲームをして八時まで時間をつぶし、それから近くのファーストフード店で簡単な食事をとった。そこは修史の家と桂の家のちょうど中間地点にあたり、昔からよく入り浸っているチェーン店だ。
ハンバーガーに食いつきながら、なんてことのない会話を交わしてるうち、いつの間にか時計は九時半を回っていた。そろそろ帰ろうかと、店を出て大通り沿いを歩きだす。
ふと、一台の車が二人の間近で減速して停まった。桂が足を止める。その左ハンドルの車を見た途端、それまで朗らかに笑んでいた彼の表情が、はっきりと色を失ったのに気づき、修史は息をのんだ。
何だ?
「こんばんは。久しぶりだね、桂」
白い車のウィンドウを開け、男が顔をのぞかせた。フレームの細い眼鏡をかけた、三十代半ばの男。無意識のうちに修史は一歩前へ出て、桂を後ろに庇う。何も事情はわからなかったが、尋常でない桂の緊張が肌に伝わった。
「さっきまで、君の家にお邪魔していたんだよ。偶然ここで会えて良かった」
「こんばんは、聡さん。……ニューヨークから帰ってたんですね。しばらくは、日本に?」
「ああ。当分は。そのうち、ゆっくり話がしたいな」
「……………」
「ではまた。……呼び止めて悪かったね」
穏やかな声音でそう言い置いて、白い車は走り去った。修史は振り返り、桂の顔を見る。
「何だよ、あいつ?」
「……母さんの弟。俺の叔父さん、ってやつ?」
修史は記憶を手繰った。サトル、という名前の響きを何となく覚えていた。
「ああ……おまえが中三ん時、家庭教師してくれてったっていう……」
「そ。バリバリのエリート」
どうでもいいよと投げやりに言って、桂は修史の袖を軽く引いた。
「じゃな。……俺、帰るから」
桂は軽く手を振ると、何かいいたげな修史を振り切って駆け出した。今は何も話したくなかった。
ハンバーガーに食いつきながら、なんてことのない会話を交わしてるうち、いつの間にか時計は九時半を回っていた。そろそろ帰ろうかと、店を出て大通り沿いを歩きだす。
ふと、一台の車が二人の間近で減速して停まった。桂が足を止める。その左ハンドルの車を見た途端、それまで朗らかに笑んでいた彼の表情が、はっきりと色を失ったのに気づき、修史は息をのんだ。
何だ?
「こんばんは。久しぶりだね、桂」
白い車のウィンドウを開け、男が顔をのぞかせた。フレームの細い眼鏡をかけた、三十代半ばの男。無意識のうちに修史は一歩前へ出て、桂を後ろに庇う。何も事情はわからなかったが、尋常でない桂の緊張が肌に伝わった。
「さっきまで、君の家にお邪魔していたんだよ。偶然ここで会えて良かった」
「こんばんは、聡さん。……ニューヨークから帰ってたんですね。しばらくは、日本に?」
「ああ。当分は。そのうち、ゆっくり話がしたいな」
「……………」
「ではまた。……呼び止めて悪かったね」
穏やかな声音でそう言い置いて、白い車は走り去った。修史は振り返り、桂の顔を見る。
「何だよ、あいつ?」
「……母さんの弟。俺の叔父さん、ってやつ?」
修史は記憶を手繰った。サトル、という名前の響きを何となく覚えていた。
「ああ……おまえが中三ん時、家庭教師してくれてったっていう……」
「そ。バリバリのエリート」
どうでもいいよと投げやりに言って、桂は修史の袖を軽く引いた。
「じゃな。……俺、帰るから」
桂は軽く手を振ると、何かいいたげな修史を振り切って駆け出した。今は何も話したくなかった。
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