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PAST/いくつかの嘘
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しおりを挟む記憶の中にあるよりも、少し大人びた目をしていた。
背が、たぶん少し伸びた。それでも、優しげな印象は昔のままだった。
「恭臣? ……何考えてるの」
運転しながら黙り込んでしまった恭臣の横顔をのぞきこんで、知香が笑った。恭臣は苦笑して首を振る。
「いや。……ちょっとびっくりして。偶然て、あるんだな」
「ああ、遼のこと?」
「ん。……そっか、……ご両親、離婚してるんだっけ」
「うん……そう。だから、しばらく遼とは別に暮らしてたんだけど。こっちの女子大に通うことになって、戻ったの。今日会った母は、ずっと長野にいるのよ」
「柴山って名字は、お母さんのほう?」
「そう。遼とお父さんは三崎。……ごめんなさい、ちゃんと話してなかったわね。これって、何か問題ある?」
恭臣の家柄がいいのは知っていた。ご両親に結婚を反対されるだろうかと案じた知香へ、恭臣は首を振った。
「いや。別に問題はないよ。ただ……オレたち、あんまり、お互いのこと話してなかったな」
知香は笑った。
「そうよね。本当に、どうして結婚しようなんて思ったのか……あまりにも、まだ何も知らない相手なのに」
でも、これからきちんとお互いを理解していけばいい。まだ時間はあるのだ。
そう言った知香に、恭臣は頷いた。
知香と出会った途端、どうしようもなくひかれたのは事実だ。たとえそこに、どんな理由があったにせよ……この人となら、やっていけると思った。
「幸せにするよ」
恭臣はそう言った。その気持ちに、嘘はなかった。
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