TSサキュバス

藤塚ソラ

文字の大きさ
2 / 17
第1章

第1話:サキュバスの仕事って……?

しおりを挟む
「はい、出来た!」

 目の前の鏡の中には金髪ツインテールの美少女がいた。
 そいつは俺が右手を挙げると左手を同じように挙げ、首を傾げるとちょこんと首を傾げる。

「うーん、慣れないなぁ……」

 慣れるわけがなかった。
 この顔も、この身体も、声も、そして大きな胸も。
 でも何故だろうか、自分の身体だからか全く興奮はしていなかった。
 むしろ女の子に髪を結ばれるという行為にドキドキしていた。

 俺の髪を結んでくれた赤髪の美しい彼女の名前はリリー・ウィルム、リリーと呼ばれているらしい。
 そして俺が得たのは彼女の名前の情報だけではない。
 俺のこの身体での名前というのがある。

「ふふ、すぐに慣れるわよ。アリアちゃん♪」

 アリア・コックスというのが俺の名前らしい。
 誰がいつ決めたのかは知らないがそうなっているらしい。
 この世界では俺は神崎瑞樹ではなく、アリア・コックスなのだ。
 これが俺の知らされた全てだ、分からないことが多すぎる!
 ただ一つ言えるのはこれは良く出来た夢ではないという事。

「あ、あの、そろそろ教えてくれませんか……?」

 初めてのスカートに凄い違和感を覚えつつ俺はリリーに言う。
 しかし股下がスースーして落ち着かない!

「んー、可愛くなったし教えてあげるわ」

 聞きたい事はたくさんあった。
 何故俺の身体が変わったのか。
 何故現実にサキュバスがいるのか。
 元々の俺はどうなったのか。
 ここに来てからまだ数十分しか経っていないが頭に浮かんだ疑問は腐る程にあった。

「えーと、まず最初に言うと。君はこの世界に強制的に転生して来たの。いや、転生させられた・・・・・と言ったほうが正しいわね」

「転生……?」

 漫画やラノベなどの創作物の中でしか聞いたことのない単語だ。

「だからここは元の君、神崎瑞樹くんのいた世界ではないということね」

 うんと俺は頷く。

「そして知らないと思うけど、この世界は最近人手不足なのよ。あー、悪魔不足と言った方が正しいわね。そして悪魔の中にも人間みたいに上下関係があって上の悪魔がこう命令したの。人間界から人手を補充しろ、ってね」

 それで俺が選ばれてしまった訳か。

「だけど連れてくることの出来る人間にはある一つの条件があったの。それはね」

 リリーは一息置き、若干申し訳なさそうに告げた。

「異性との性的接触をした事がない人なの」

「……」

 俺は別世界の違う人種(?)の人にも馬鹿にされてしまうのか……。

「ま、まあ落ち込まないでよ。なんか性的接触の経験があると上手く魔力回路が作られないみたいでさ。そしてその接触した事がない人の中でも特に――」

 リリーがびしっと俺の胸に向かって指を指す。

「――思春期の少年少女が一番適しているの! つまり君はとても適任だったってわけなの。これが君がこの世界に来てしまった理由よ」

「な、なるほど……」

 そんなに世間の少年少女は卒業・・しているものなのだろうか?
 俺はもしかして相当遅れていた……?

「ただ安心して欲しいのは、性的接触のない少年少女を片っ端からここに連れてくるわけじゃないってこと。そうなっちゃうと人間がいなくなっちゃうからね。つまり君は選ばれた人間、もとい選ばれし悪魔なのよ」

「は、はぁ……」

 実感はしているが、いかんせん実感が全く沸かない。
 つまり話を要約すると、悪魔の人手不足で童貞の俺が強制的にここに転生させられてこれからは悪魔として、サキュバスとして生きろと、うん、全く実感が沸かない。

「なんで、元々は男なのにこんな身体になったんですか……?」

 はっきり今の身体は元の身体と全くの別物だ。
 肌は白いし、手は細いし、胸は大きいし、尻尾もツノも羽もあるし、息子・・は……いない。
 なんで男の俺がこんなに男受けの良さそうな見た目になってしまったのだろうか。

「それは本当に偶然よ。特に私がなにかしら指定した訳でもないし、上の悪魔が決めたってこともないわ。つまり男だからってサキュバスになる可能性は十分にあるわ」

「そうなんですか」

 ということは俺が読んだ漫画とは一切関係ないと。
 偶然に偶然が重なっただけということか。

「ッ!?」

 ここで俺は重大な事を思い出してしまった。
 昨日の漫画でサキュバスはなにをしていた?
 いや、思い出すまでもない、サキュバスのやることは一つだった。
 人間の男に忍び寄って……。
 ぞわっと俺の背筋に悪寒が走る。
 まさか、いや、まさかな……。

「あ、あの、サキュバスの主な仕事って……」

 自分でも恐ろしいほどのか細くて弱い声が出た。

「ん? まあ色々あるけど一番は魔力集めかな」

 当然だとでも言うようにリリーは言う。

「ぐ、具体的には……」

 この質問の答えで俺の運命は決まってしまう、間違いなく。

「え? もちろん寝ている男を襲うのよ!」

 わかりきっていた答えだった。
 俺の足が身体を支えきれなくなってへなへなと床にぺたんと座り込んでしまう、自然に女の子座りで。

「まあまあ、一回やれば慣れるわ! 気にしない気にしない」

 よりにもよって男の俺が男を襲うサキュバスになってしまったのか。
 別の種類の悪魔でもよかったのに、なんと運命とは残酷なのだろうか。
 俺は自分自身の運の悪さを呪った。
 願わくば明日が来ないことを祈る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

処理中です...