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第1章
第4話:友の義理堅さ
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「ふふ、いくわよ」
真夜中の六畳の部屋にベッドが軋む音が響いた。
ベッドにいるのは一人の男とサキュバスが二人。
「ぎゅってしてあげる」
とりあえず勢いに任せてベッドに飛び込んだが、そこから先のことは出来ないでいた。
今はただ黙って二人の様子を見ながらベッドに横になっている。
微かに胸に当たる工藤の腕が物凄くたくましかった。
「どう? 私たちの身体」
二人のエロいサキュバスに挟まれて無事にいられる男などいるはずがなかった。
正直俺も工藤がこのまま流れに飲まれてしまうだろうと確信していた。
最初に少しだけ戸惑い、あとはもう理性なんてものは崩壊してしまうだろうと。
だから工藤が冷静に放った一言に俺は驚いたのだ。
「ま、待ってくれ!」
リリーの動きがぴたりと止まった。
「うそ、魅了が効いていない……!?」
リリーはひどく焦った顔をしていた。
「君たちが一体何者なのか俺は分からない」
工藤の目には得体の知れない存在が映っているのだろう。
身体は人間だが翼や尻尾、そしてツノもある。
そんなのを目の前にしても工藤は至って冷静に言葉を紡いだ。
「これはもしかしたら夢かもしれない。だけど、例え夢でも俺はそういうことを絶対にしない!」
「なっ、なんで!?」
リリーがえいえいと工藤の頭部に向かって何かをしている。
おそらく追い魅了でもしているのだろうが工藤は一切動じていなかった。
「おr、私たちが魅力的じゃないの?」
俺は工藤に問いてみた。
彼が理性を失わなかった理由を知りたかった。
失礼だが俺は工藤という男はひどく性欲に忠実だと勝手に思い込んでいた。
学校でも下ネタの話で盛り上がるし、彼自身も俺は性欲お化けだから見たいなことを言っていたのだ。
そんな彼がせっかく出来そうな行為を止めるのは一体なぜなのか、純粋に俺は気になってしまったのだ。
「確かに、確かに君たちはとても魅力的だし、若干興奮もしている」
工藤は自分の股間に目をやった。
若干膨らんでいるズボンを見てしまって俺は直ぐに目をそらした。
「……でも俺には彼女がいるんだ」
「あ……」
そうだった。
工藤には彼女がいた、幼馴染の彼女が。
普段は工藤に対して当たりは強いが、テスト前になると勉強の出来ない工藤に勉強を教えてあげるなど優しい面もある女の子だ。
そして知り合って何年も経つ二人はつい最近付き合ったのだ。
彼女の方から工藤に告白したらしい。
詳しいことは教えてくれなかったけど、普段じゃ絶対に言わないことを言われて無駄にドキドキしてしまったと言っていた。
「……」
俺はこの工藤という男を見くびっていた。
こんなに身体はごついのになんて心が奇麗なのだろうか。
俺は男として工藤を見直した。
そしてそんな男を罠にはめようとした自分自身に苛立ちを覚えた。
「俺は彼女を裏切らない。だから君たちとは無理だ」
♂→♀
「なんなのよアイツ! むっかつくわね!」
大都会の夜空を大きな羽音を立てながらサキュバスが飛んでいる。
「私史上初よ、断られるなんて」
「まあまあ、記憶に残らないんならいいじゃないですか」
人間側はサキュバスとの行為をしたという記憶は残らないのだ。
これはサキュバスが人間から離れる前に脳に呪文をかけて記憶をなくすためだ。
もし記憶が残ると、人間には知られていないサキュバスという存在が世に広まってしまう。
そんなことになったら悪魔という存在もばれてしまうのだ。
上の階級の悪魔はそれは避けたいらしい。
悪魔という存在はあくまでも人間の創造物ということに留めておきたいらしいのだ。
「私の記憶に残るのよ!」
「……」
うん、放っておこう。
俺は今気分が良い。
ああいう義理堅い人は好きだ。
「なーに笑ってんのよ!」
「いや、俺はあいつと友達でよかったなって」
自分のことのように誇らしかった。
「はぁ……」
リリーはガックリとうなだれている。
「あーあ、あんなに格好の獲物なかなかいないわよ……」
この時間になると、もう道を行く人も限りなく少ない。
信号がひとりでに一定の間隔でちかちか光っているだけだ。
「今から新しい人探すんですか?」
「……もう今日はそんな気分じゃないわ」
よしっ!
俺は心の中でガッツポーズを決めた。
「今は魔力の多いところを探してるのよ……。人間界に降りるのは簡単だけど、魔界に戻るにはひと手間あるからねー、覚えときなー……」
さっきまでの元気はどこへやら。
とりあえず割とそこそこショックを受けてそうなのであまり刺激はしないでおこう。
♂→♀
「あったわ」
飛行開始から十分後、俺たちは都会の外れの森の中に降り立った。
森といっても大きさは全くない。
ただ木が密集しているだけの場所といった方が正しいかもしれない。
「こういう普段から人気のない場所には魔力があるから覚えときなねー」
未だに元気のないリリーに俺はうんと頷いた。
ざくざくと土を踏みしめて森の中に入っていく。
少し湿った木々や土のにおいがする。
「ここが濃いわね」
リリーが足を止めると同時に俺も止める。
「アリアには今度魔力の察知方法教えるからねー。さあー、手握ってー」
すっかり気が抜けている。
ここまで酷いとこっちも少し心配になってくる。
でもまあ、寝て起きたら多少は元に戻るだろう。
俺はこっちに来た時と同じようにリリーの手を握る。
「じゃあいくよー。さん、にい、いち――」
一瞬のホワイトアウト、俺たちは魔界に戻った。
真夜中の六畳の部屋にベッドが軋む音が響いた。
ベッドにいるのは一人の男とサキュバスが二人。
「ぎゅってしてあげる」
とりあえず勢いに任せてベッドに飛び込んだが、そこから先のことは出来ないでいた。
今はただ黙って二人の様子を見ながらベッドに横になっている。
微かに胸に当たる工藤の腕が物凄くたくましかった。
「どう? 私たちの身体」
二人のエロいサキュバスに挟まれて無事にいられる男などいるはずがなかった。
正直俺も工藤がこのまま流れに飲まれてしまうだろうと確信していた。
最初に少しだけ戸惑い、あとはもう理性なんてものは崩壊してしまうだろうと。
だから工藤が冷静に放った一言に俺は驚いたのだ。
「ま、待ってくれ!」
リリーの動きがぴたりと止まった。
「うそ、魅了が効いていない……!?」
リリーはひどく焦った顔をしていた。
「君たちが一体何者なのか俺は分からない」
工藤の目には得体の知れない存在が映っているのだろう。
身体は人間だが翼や尻尾、そしてツノもある。
そんなのを目の前にしても工藤は至って冷静に言葉を紡いだ。
「これはもしかしたら夢かもしれない。だけど、例え夢でも俺はそういうことを絶対にしない!」
「なっ、なんで!?」
リリーがえいえいと工藤の頭部に向かって何かをしている。
おそらく追い魅了でもしているのだろうが工藤は一切動じていなかった。
「おr、私たちが魅力的じゃないの?」
俺は工藤に問いてみた。
彼が理性を失わなかった理由を知りたかった。
失礼だが俺は工藤という男はひどく性欲に忠実だと勝手に思い込んでいた。
学校でも下ネタの話で盛り上がるし、彼自身も俺は性欲お化けだから見たいなことを言っていたのだ。
そんな彼がせっかく出来そうな行為を止めるのは一体なぜなのか、純粋に俺は気になってしまったのだ。
「確かに、確かに君たちはとても魅力的だし、若干興奮もしている」
工藤は自分の股間に目をやった。
若干膨らんでいるズボンを見てしまって俺は直ぐに目をそらした。
「……でも俺には彼女がいるんだ」
「あ……」
そうだった。
工藤には彼女がいた、幼馴染の彼女が。
普段は工藤に対して当たりは強いが、テスト前になると勉強の出来ない工藤に勉強を教えてあげるなど優しい面もある女の子だ。
そして知り合って何年も経つ二人はつい最近付き合ったのだ。
彼女の方から工藤に告白したらしい。
詳しいことは教えてくれなかったけど、普段じゃ絶対に言わないことを言われて無駄にドキドキしてしまったと言っていた。
「……」
俺はこの工藤という男を見くびっていた。
こんなに身体はごついのになんて心が奇麗なのだろうか。
俺は男として工藤を見直した。
そしてそんな男を罠にはめようとした自分自身に苛立ちを覚えた。
「俺は彼女を裏切らない。だから君たちとは無理だ」
♂→♀
「なんなのよアイツ! むっかつくわね!」
大都会の夜空を大きな羽音を立てながらサキュバスが飛んでいる。
「私史上初よ、断られるなんて」
「まあまあ、記憶に残らないんならいいじゃないですか」
人間側はサキュバスとの行為をしたという記憶は残らないのだ。
これはサキュバスが人間から離れる前に脳に呪文をかけて記憶をなくすためだ。
もし記憶が残ると、人間には知られていないサキュバスという存在が世に広まってしまう。
そんなことになったら悪魔という存在もばれてしまうのだ。
上の階級の悪魔はそれは避けたいらしい。
悪魔という存在はあくまでも人間の創造物ということに留めておきたいらしいのだ。
「私の記憶に残るのよ!」
「……」
うん、放っておこう。
俺は今気分が良い。
ああいう義理堅い人は好きだ。
「なーに笑ってんのよ!」
「いや、俺はあいつと友達でよかったなって」
自分のことのように誇らしかった。
「はぁ……」
リリーはガックリとうなだれている。
「あーあ、あんなに格好の獲物なかなかいないわよ……」
この時間になると、もう道を行く人も限りなく少ない。
信号がひとりでに一定の間隔でちかちか光っているだけだ。
「今から新しい人探すんですか?」
「……もう今日はそんな気分じゃないわ」
よしっ!
俺は心の中でガッツポーズを決めた。
「今は魔力の多いところを探してるのよ……。人間界に降りるのは簡単だけど、魔界に戻るにはひと手間あるからねー、覚えときなー……」
さっきまでの元気はどこへやら。
とりあえず割とそこそこショックを受けてそうなのであまり刺激はしないでおこう。
♂→♀
「あったわ」
飛行開始から十分後、俺たちは都会の外れの森の中に降り立った。
森といっても大きさは全くない。
ただ木が密集しているだけの場所といった方が正しいかもしれない。
「こういう普段から人気のない場所には魔力があるから覚えときなねー」
未だに元気のないリリーに俺はうんと頷いた。
ざくざくと土を踏みしめて森の中に入っていく。
少し湿った木々や土のにおいがする。
「ここが濃いわね」
リリーが足を止めると同時に俺も止める。
「アリアには今度魔力の察知方法教えるからねー。さあー、手握ってー」
すっかり気が抜けている。
ここまで酷いとこっちも少し心配になってくる。
でもまあ、寝て起きたら多少は元に戻るだろう。
俺はこっちに来た時と同じようにリリーの手を握る。
「じゃあいくよー。さん、にい、いち――」
一瞬のホワイトアウト、俺たちは魔界に戻った。
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