エアプRPGのモブに転生した俺はゲームの法則を無視できるようです ~原作の鬱シナリオを良い方向にぶっ壊してみた~

なっくる

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第22話 救出(前編)

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「……ぇ……て」

 まどろみの中、ゆさゆさと俺の身体が揺らされる。
 夜半過ぎまで新しく建てる集合住宅の間取りを書いていたので、とても眠い。

「……ジュンヤ、ジュンヤ」

 このかわいい声はアルだろうか?
 遊んで欲しいのかもしれないが、もう少し寝させてくれ。

「む~」

 諦めたのか、アルの声が遠くなる。
 窓の外から感じる光はまだ弱い。
 もうひと眠りするかと寝返りを打つのだけれど。

 ごそごそ

 暖かく、柔らかな固まりが俺の布団の中に忍び込んでくる。

「よいしょ、よいしょ……」

 ぷにっ

「ジュンヤ!」

「うわっ!?」

 頬に柔らかな感触を感じた瞬間、アルの大きな声が俺の鼓膜を打つ。

「いきなりどうした……って」

 慌ててベッドから飛び起きると、俺のふとんに忍び込んできたアルの様子がおかしい。
 なにしろ、冒険用の制服風防具を着込んでいるのだ。

 今日はモンスター退治の予定はない。

「フェリシアお姉ちゃんが……ピンチな気がする」

「!!」

 思い出すのは、別れ際の彼女の様子。
 メルヴィ当主に”開眼の儀”をしてもらった後、王都に戻るというフェリシアに、テンガさんに気を付けるようにと声を掛けた。

 尊大で唯我独尊なテンガさんは調子に乗りやすい人なので、フェリシアが苦労しているかもしれない。

 テンガさんはモンクエの主人公。
 いわば正義の味方である。
 そこまで無茶なことはしないだろうが、念のための忠告だった。

「……っ!」

 だがその瞬間、僅かにひきつったフェリシアの顔。

「大丈夫です……またいつか。
 困ったことがあれば、相談させて頂きますね」

 別れ際に見せた、妙に寂しそうな表情。
 それに……当主の前でテンガさんの事を語った際の事務的な口調。

「なにか、あるんだな?」

「うん!」

「5分待ってくれ!」

 なにより、勘の鋭い……というか、女神ユーノやステータスウィンドウまで知覚できるアルがここまで言うのだ。
 胸騒ぎを覚えた俺は、急ぎ冒険の準備を整えるのだった。


 ***  ***

「気を付けるのよ?」

「マリ姉たちもね」

「おみやげ、期待してて」

「いや、お土産買う暇はないだろ?」

 心配そうに見送ってくれるマリ姉とヒューバートさんに手を振る。
 リュックの中にはマリ姉特製のお弁当。
 俵おにぎりと卵焼き、唐揚げと言うラインナップは日本人としてテンションが上がる。

「むふ♪」

 俺の隣を一緒に歩くアルは妙に上機嫌だ。
 そういえば、腰にトンファーのような見慣れない武器をぶら下げている。

「雑魚敵はおまかせ」

 じゃきんとトンファーを構え、ドヤ顔のアル。
 私立中学の制服に似たブレザーに厨二っぽいマント、
 短めのスカートから覗く健康的な生足。
 現代ファンタジーJKバトルもののヒロインみたいで、かっこかわいい。

 だが、前線で戦うなら短いスカートは考え物だな……スパッツを履かせた方がいい。

(えええっ!?)

 トンファーを持って華麗に舞う自分……
 ちらちらと見えるおぱんつでジュンヤの心を鷲掴み!
 そう考えていたアルは、娘のパンチラを心配するお父さんのようなジュンヤの想いを感じ取り、恋の難しさを改めて痛感するのであった。

「……それで、どこに行けばいいんだ?」

 砦の入り口をくぐり、村の外にでる。
 そろそろ目的地を決めなくてはいけない。

 先ほどにくらべ、微妙にテンションの下がったアルに話しかけたのだが……。

「う……。
 多分、あっち?」

「大雑把だな!?」

 地平線の向こうを指さすアル。
 ま、まあ……いくらアルの勘が鋭いとはいっても、正確な場所までは無理だろうと思っていた。
 大まかにでも方向が分かるだけでもすごいのである。

 ======
 モベ ジュンヤ
 LV6 ヒューマン
 HP  :2,500 最大値:9,999
 MP  :1,180 最大値:9,999

 攻撃力 :1,007 最大値:9,999
 防御力 :970 最大値:9,999
 素早さ :699 最大値:9,999
 魔力  :790 最大値:9,999
 運の良さ:600 最大値:9,999
 ☆戦闘スキル熟練度:8
 ☆築城スキル熟練度:12
 ☆戦術リンク(アルフィノーラ):4
 E:ロングソード(攻撃力+10)
 E:ファイバージャケット(防御力+50)
 魔法:ヒール、ホノオ、コオリ、テンイ
 ======

 どうする……方向が分かるとはいってもオージ王国の国土は広い。
 ゲームのようにフィールド内にいかにも怪しげな場所がポツンとあるわけではないし、やみくもに動いては間に合わないかもしれない。

「……そうだ!」

 何気なくステータスを見ていた俺は、エルフの村の強化イベントで使えるようになったモンクエ世界の魔法に注目する。
 テンイ……一度でも行ったことのある場所に一瞬で転移する魔法である。

「どこにいくの?」

「まずはエルフの村だな」

 不思議な力を持つエルフ族……彼らなら同族の繋がりとかでフェリシアの居場所が分かるのではと考えたのだ。

「なるほど」

 俺の推測はドンピシャで……メルヴィ当主の力添えでフェリシアの居場所が判明、当主からも改めてフェリシアの救出をお願いされるのだった。


 ***  ***

 ガラガラガラ

 手枷足枷をされ、馬車でどこかへ運ばれていく。
 鎖につながれたまま、眠れぬ夜を過ごしたフェリシア。

 ようやくウトウトとしだした頃、完全装備のテンガが現れ馬車に放り込まれたのだ。

 一応の服を与えられたのは良かったが、所々穴の開いたズタ袋のような代物で
 下着はつけさせてもらえなかった。

 先ほどから時たま耳障りなテンガの高笑いが聞こえる他は静かで、馬車は耳障りな音を立てながら進んでいく。
 芋虫のように身体を動かし、ほろの隙間から外を覗いてみたが、護衛の兵士たちは一様に暗い表情で下を向いていた。

(ああ……)

 それはそうだろう。
 姫君がこのような情けない姿をさらしているのだ。
 わたくしなどに仕えたばかりに、つらい役目をさせてしまった。

 悲しくなるフェリシア。
 その後はじっと馬車の中で横になっていた。

 ギッ

「……着いたぞ、出ろ」

 どのくらいそうしていただろう?
 いつの間にか馬車は止まり、外からテンガの声が聞こえる。

「早くしろ!」

 そう言われても、手枷足枷をされているのである。
 うまく立てなくてもがくフェリシアにイラついたのか、乱暴に馬車の外に引きずり出される。

「きゃっ!?」

 ドサッ

「…………えっ?」

 ようやく顔を上げたフェリシア。
 目の前に広がっていた光景は……。

 荒涼とした岩山。
 その中ほどにぽっかりと斜めに大穴が開いている。
 穴の底は見えず、奥から微かに何かの唸り声が聞こえてくる。

「デモンズ……ホール?」

 オージ王国北部に広がるノルド山脈。
 人間界の果てと呼ばれる場所。
 噂ではこの奥地に魔王の拠点があるという。

 その禁断の地を守るようにあぎとを開く大穴。

「オマエにはここで、レアモンスターをおびき寄せるエサになってもらう」

「なっ……!?」

 慈悲の無いテンガの言葉に、絶句するフェリシアなのだった。
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