32 / 46
第32話 迫る陰謀(前編)
しおりを挟む
「3回戦突破、お疲れ!!」
「「かんぱ~い!」」
武術大会も8日目。
午前中に行われた3回戦を突破した俺たちは、コロッセオ近くの食堂で祝勝会を開いていた。
「んぐ、んぐ、んぐ……美味い!」
赤ワインを一気に喉に流し込む。
料理の味はいまいちなこの世界だが、ワインだけは中々のものだ。
「じ~~」
「……駄目だぞ?」
物欲しそうな目を向けてくるアルからワインのボトルを遠ざける。
お酒はオトナになってから、だ(この世界の成人年齢は知らないが)
「ぶーぶー」
いつものやり取りをする俺たちを、優しい目で見つめるフェリシア。
……フェリシアの目の前に置かれたボトルは既に空になっている。
この元お姫様は酒豪なのだ。
「おめでとうございます! ジュンヤさん、アルちゃん。
さすがですね!」
「……あ、白をもう二本お願いします」
顔色一つ変えず、追加のワインを注文するフェリシア。
「いやいや、フェリシアも大活躍だったじゃないか」
「フェリシアお姉ちゃんカッコよかった」
アルの言う通り、今日の3回戦の主役はフェリシアだった。
氷炎のリコッタという二つ名を持つ、エルフ族の魔法使い。
魔法の才能については人間族よりエルフ族の方がはるかに高い。
俺の力を抑えたまま、アルとフェリシアだけで勝つのはさすがに難しいと思っていたのだが……。
「い、いえ……まだまだ未熟ですので」
フェリシアは謙遜しているが。
『メガカマイタチ!』
格闘技を使いこなすアルを手ごわいと感じたのだろう。
試合開始のゴングと同時にバックステップで距離を取る氷炎のリコッタ。
同時に真空魔法でこちらを牽制。
さすがに最高クラスとうたわれる使い手。
俺の防御力で二人をカバーしようと思ったのだが。
『笑止です!』
俺が前に出るより早く、大きく飛んだフェリシアは、迫る真空の渦にパンチ一発。
バシュウッ
『……え?』
『……え?』
あまりに力技な避け方に、思わず目が点になる。
それは氷炎のリコッタも同じだったようで。
『メガバクハ!!』
足を止めた相手パーティを、フェリシアの爆発魔法がまとめて吹き飛ばした。
(いかん、強化しすぎたか……?)
某ロボットアニメのようなセリフを思い浮かべる俺。
肉体派エルフ……俺のブートキャンプはかなり風変わりな属性を生み出したようである。
「よし、このまま決勝まで突き進むぞ!」
「うん!」
「もちろんです!」
自信満々のふたりの言う通り、俺たちはその後も快進撃を続け……テンガの待つ決勝戦へと駒を進めるのだった。
*** ***
「明日は決勝なんだから、あまり食べ過ぎるなよ?」
「うん、大丈夫!
ジュンヤは先に休んでて!」
「まったく……」
夕闇迫る王都。
100センド銀貨を握りしめたアルが、下町で開かれるバザールへ突進していく。
どうやらお気に入りの出店があるらしく、夕方限定で発売されるリンゴパイが目当てだ。
「まあ、あれは美味かったもんな」
一度アルに分けてもらったが、この世界の甘味の中では飛びぬけて美味かった。
どこにも素晴らしい職人はいるものである。
「テンガさんの妨害もなかったし」
俺の危惧とは裏腹に、これまで一度も妨害は無かった。
一回戦のようにドーピングした相手も出現せず、こちらの強さに恐れをなしたのかもしれない。
「……今夜はゆっくり休んでもいいか」
フェリシアとの飲み比べで疲れていた俺は、どさりとベッドに倒れ込む。
夕食まではまだ時間がある……少しだけ仮眠することにした。
*** ***
「オジサン、いつものリンゴパイ5つ!」
「はいよ」
10日以上も通っていれば、店主も顔見知りになる。
アルフィノーラの顔を認めるなり、焼きたてのパイを紙袋に入れてくれる。
「……そうだアルちゃん、貰ったアドバイスに従って作た新作スイーツ、味見してもらえないかねぇ?」
紙袋を受け取ろうとした時、隣の出店のおばさんが声を掛けてくる。
「あ、”オオバンヤキ”焼いてみたんだね、美味しそう……」
漂う甘い香りに、そちらに気を取られるアルフィノーラ。
(すまんな、嬢ちゃん)
ぺりっ
アルフィノーラが目を離した隙に、小さな種をリンゴパイに埋め込む店主。
「美味しい!」
オオバンヤキを頬張ったまま、紙袋に入ったリンゴパイを受け取るアルフィノーラ。
「じゃ、また明日!」
嬉しそうに手を振るアルフィノーラを見送った後、ぽつりと声を漏らす女店主。
「……これでよかったのかね」
「しかたねぇだろ、ボスからの指示なんだ。
命にかかわるような薬じゃないんだろ」
そういう男店主も苦々しげな表情を浮かべている。
『この”種”をあの獣人女に食べさせろ。
さもないと……わかってるな』
この辺りの出店を仕切るマフィアのボス。
彼に反抗しては、商売を続けられなくなる。
仕方ないんだ。
そうして二人は自分のしたことを正当化するのであった。
*** ***
「ふんふ~ん」
甘いにおいを漂わせるリンゴパイを、歩きながら頬張るアルフィノーラ。
ばりっ
今日のパイはいつもより歯ごたえがあるが、これはこれで美味しい。
くらっ
「??」
パイを飲み込んだ瞬間、僅かなめまいが彼女を襲う。
連日の試合で疲れているのかな?
どくんっ!!
その瞬間、抗いがたい衝動がアルフィノーラの全身を支配した。
「「かんぱ~い!」」
武術大会も8日目。
午前中に行われた3回戦を突破した俺たちは、コロッセオ近くの食堂で祝勝会を開いていた。
「んぐ、んぐ、んぐ……美味い!」
赤ワインを一気に喉に流し込む。
料理の味はいまいちなこの世界だが、ワインだけは中々のものだ。
「じ~~」
「……駄目だぞ?」
物欲しそうな目を向けてくるアルからワインのボトルを遠ざける。
お酒はオトナになってから、だ(この世界の成人年齢は知らないが)
「ぶーぶー」
いつものやり取りをする俺たちを、優しい目で見つめるフェリシア。
……フェリシアの目の前に置かれたボトルは既に空になっている。
この元お姫様は酒豪なのだ。
「おめでとうございます! ジュンヤさん、アルちゃん。
さすがですね!」
「……あ、白をもう二本お願いします」
顔色一つ変えず、追加のワインを注文するフェリシア。
「いやいや、フェリシアも大活躍だったじゃないか」
「フェリシアお姉ちゃんカッコよかった」
アルの言う通り、今日の3回戦の主役はフェリシアだった。
氷炎のリコッタという二つ名を持つ、エルフ族の魔法使い。
魔法の才能については人間族よりエルフ族の方がはるかに高い。
俺の力を抑えたまま、アルとフェリシアだけで勝つのはさすがに難しいと思っていたのだが……。
「い、いえ……まだまだ未熟ですので」
フェリシアは謙遜しているが。
『メガカマイタチ!』
格闘技を使いこなすアルを手ごわいと感じたのだろう。
試合開始のゴングと同時にバックステップで距離を取る氷炎のリコッタ。
同時に真空魔法でこちらを牽制。
さすがに最高クラスとうたわれる使い手。
俺の防御力で二人をカバーしようと思ったのだが。
『笑止です!』
俺が前に出るより早く、大きく飛んだフェリシアは、迫る真空の渦にパンチ一発。
バシュウッ
『……え?』
『……え?』
あまりに力技な避け方に、思わず目が点になる。
それは氷炎のリコッタも同じだったようで。
『メガバクハ!!』
足を止めた相手パーティを、フェリシアの爆発魔法がまとめて吹き飛ばした。
(いかん、強化しすぎたか……?)
某ロボットアニメのようなセリフを思い浮かべる俺。
肉体派エルフ……俺のブートキャンプはかなり風変わりな属性を生み出したようである。
「よし、このまま決勝まで突き進むぞ!」
「うん!」
「もちろんです!」
自信満々のふたりの言う通り、俺たちはその後も快進撃を続け……テンガの待つ決勝戦へと駒を進めるのだった。
*** ***
「明日は決勝なんだから、あまり食べ過ぎるなよ?」
「うん、大丈夫!
ジュンヤは先に休んでて!」
「まったく……」
夕闇迫る王都。
100センド銀貨を握りしめたアルが、下町で開かれるバザールへ突進していく。
どうやらお気に入りの出店があるらしく、夕方限定で発売されるリンゴパイが目当てだ。
「まあ、あれは美味かったもんな」
一度アルに分けてもらったが、この世界の甘味の中では飛びぬけて美味かった。
どこにも素晴らしい職人はいるものである。
「テンガさんの妨害もなかったし」
俺の危惧とは裏腹に、これまで一度も妨害は無かった。
一回戦のようにドーピングした相手も出現せず、こちらの強さに恐れをなしたのかもしれない。
「……今夜はゆっくり休んでもいいか」
フェリシアとの飲み比べで疲れていた俺は、どさりとベッドに倒れ込む。
夕食まではまだ時間がある……少しだけ仮眠することにした。
*** ***
「オジサン、いつものリンゴパイ5つ!」
「はいよ」
10日以上も通っていれば、店主も顔見知りになる。
アルフィノーラの顔を認めるなり、焼きたてのパイを紙袋に入れてくれる。
「……そうだアルちゃん、貰ったアドバイスに従って作た新作スイーツ、味見してもらえないかねぇ?」
紙袋を受け取ろうとした時、隣の出店のおばさんが声を掛けてくる。
「あ、”オオバンヤキ”焼いてみたんだね、美味しそう……」
漂う甘い香りに、そちらに気を取られるアルフィノーラ。
(すまんな、嬢ちゃん)
ぺりっ
アルフィノーラが目を離した隙に、小さな種をリンゴパイに埋め込む店主。
「美味しい!」
オオバンヤキを頬張ったまま、紙袋に入ったリンゴパイを受け取るアルフィノーラ。
「じゃ、また明日!」
嬉しそうに手を振るアルフィノーラを見送った後、ぽつりと声を漏らす女店主。
「……これでよかったのかね」
「しかたねぇだろ、ボスからの指示なんだ。
命にかかわるような薬じゃないんだろ」
そういう男店主も苦々しげな表情を浮かべている。
『この”種”をあの獣人女に食べさせろ。
さもないと……わかってるな』
この辺りの出店を仕切るマフィアのボス。
彼に反抗しては、商売を続けられなくなる。
仕方ないんだ。
そうして二人は自分のしたことを正当化するのであった。
*** ***
「ふんふ~ん」
甘いにおいを漂わせるリンゴパイを、歩きながら頬張るアルフィノーラ。
ばりっ
今日のパイはいつもより歯ごたえがあるが、これはこれで美味しい。
くらっ
「??」
パイを飲み込んだ瞬間、僅かなめまいが彼女を襲う。
連日の試合で疲れているのかな?
どくんっ!!
その瞬間、抗いがたい衝動がアルフィノーラの全身を支配した。
0
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
学生学園長の悪役貴族に転生したので破滅フラグ回避がてらに好き勝手に学校を魔改造にしまくったら生徒たちから好かれまくった
竜頭蛇
ファンタジー
俺はある日、何の予兆もなくゲームの悪役貴族──マウント・ボンボンに転生した。
やがて主人公に成敗されて死ぬ破滅エンドになることを思い出した俺は破滅を避けるために自分の学園長兼学生という立場をフル活用することを決意する。
それからやりたい放題しつつ、主人公のヘイトを避けているといつ間にかヒロインと学生たちからの好感度が上がり、グレートティーチャーと化していた。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる