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第36話(上司サイド)テンガ、婚約破棄される
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「クソが!!」
ガシャンッ!
手に持っていたワインボトルを壁に叩きつける。
そんな事をしても気持ちは全く晴れない。
ただ自室が散らかっただけだ。
「おい! 片付けろ!!」
「………」
壁を叩くと隣の部屋に待機していた”親衛隊”の女が部屋に入って来て、陶器の破片が散乱した床を掃除する。
(ちっ!)
テンガの怒りを恐れているのだろう。
目も合わせてこない。
テンガ好みの巨乳女なのだが、オレ様の前でその態度とはどういうことだ!
(なにもかも、モブのせいだ!!)
先日行われた決勝戦で、テンガはジュンヤになすすべもなく敗れた。
しかも、ジュンヤが侍らせている犬ガキと中古エルフなんぞに蹴られて気絶させられるなど、耐えがたい屈辱だ。
オレ様の宣伝部隊に手を尽くさせ、何とか一般住民どもの情報操作には成功したのだが……。
『おいエリス! モブのステータスがおかしいぞ! どうなっている!?』
テンガは担当女神に怒鳴り込む。
『知らないわ、見間違いでしょ?
世界の理は絶対……アナタがしくじったんじゃない?』
『クソが!!』
なんの役にも立たなかった。
身体の傷は宮廷付きの神官に治させたが、心の傷はそうはいかない。
「どんな裏技を使いやがったクソモブ野郎!」
ロムハックによるステータス改変だろうか?
それともセーブデータの書き換え?
いや、あの馬鹿モブがそんな高度な技を使えるはずがない。
「ならただの”バグ”か!!」
リメイク版のモンクエでは、いくつかの致命的なバグが報告されていた。
それならば、”パッチ”という概念の無いこの世界ではバグがそのままなのかもしれない。
全く忌々しい。
そんなもののためにこのオレ様が耐えがたい屈辱を味わったのだ。
トードナイトさえティムすれば。
もっと種ドーピングを繰り返しカンストしたステータスで……今度こそぶっ潰す。
そしてアイツの目の前で、ヤツの女どもを犯し尽くしてやるのだ。
「く、くくく……」
そうだ、予行演習をしておくのもいい。
そう考えたテンガは、床掃除を続ける女の尻に手を伸ばすのだが……。
トントン
「……テンガ様、カミラ様がお話があると。
第二応接室までお越しください」
タイミングが悪いことに、カミラ嬢から呼び出しが入ってしまった。
勇者を産ませるためにはちゃんと相手をしておく必要がある。
「……ちっ」
テンガは舌打ち一つ、身だしなみを整えるとカミラ嬢の元に向かうのだった。
*** ***
「婚約を破棄させてほしい……ですとぉ!?」
テンガの絶叫が、応接室に響き渡る。
間違いなく成婚の申し出だろう。
その証拠に、カミラ嬢の両親が同席している。
身体を張って辺境の村を救うための戦士を見出した。
決勝の敗北についてはそう説明してある。
何も問題はない……そう確信していたテンガにとっては驚愕の申し出だった。
「何故です!? オレのどこに問題が!」
カミラ嬢の両親は帝国の大貴族。
一応の敬意を持って接しているテンガだが、自然に声が大きくなる。
「……いや、言いにくいのだがね」
テンガから視線を逸らす父親。
「君がお付きの侍女を……その、無理やり手籠めにしていると聞いてね」
「それはっ……!」
絶句するテンガ。
(誰が告げ口しやがった……アイツか!!)
親衛隊に入る際に情報漏洩については厳しく禁じるとの説明をし、念書まで書かせていた。
だが一人、美人で巨乳だがどう見てもおつむの足りない女が混じっていた。
誰だこんな奴を採用したのは!!
即座にクビにしたが、その前に美味しく頂いたのがまずかったのか。
「いやその……妾の相手をするのも王族のたしなみといいますか……」
「それでも、無理やりはいけないだろう」
「ぐっ……」
正論を振りかざすとは、この狸貴族め!
そうだ、カミラ嬢はオレ様の逞しさに惚れたと言っていた。
彼女の意志があればまだ、逆転は可能だ。
「カミラさん? 父上は少々誤解されている。
粗相をした侍女を躾けていただけで……」
普段のテンガからは想像できない事だが、カミラに対し下手に出る。
それはそうだろう。
勇者が生まれない限り、魔王の元へはたどり着けないのだから。
「……ジュンヤ様」
「……は?」
カミラはテンガの事など見ていなかった。
ぽかんとアホ面を晒すテンガ。
「あの圧倒的な実力と女性に対する包容力……お父様、このカミラ恋慕いたしましたわ、ジュンヤ様に。
ですが、ジュンヤ様には心に決めた方がおられる様子……しかたありません。
母国に戻り、私を包み込んでくれるような殿方を探しますわ!」
「娘もこう言っておる。
ああ、心配なさるな。
「帝国と王国の同盟についてはつつがなく締結される」
「テンガ王子、そなたにはよりふさわしい女性が見つかるであろう」
それだけ言うと、カミラの両親は娘を連れて部屋を出て行ってしまった。
テーブルの上に残されているのは、婚姻の契約を正式に解消するという通知書。
ご丁寧に帝国皇帝のサインまで書かれている。
「ばっ…………馬鹿なあああああああああああっ!?」
我に返り絶叫するテンガ。
フェリシアを追放し、カミラ嬢にもフラれた。
この事が意味する事は……テンガが勇者を手に入れることは、永遠に出来なくなったという事である。
ガシャンッ!
手に持っていたワインボトルを壁に叩きつける。
そんな事をしても気持ちは全く晴れない。
ただ自室が散らかっただけだ。
「おい! 片付けろ!!」
「………」
壁を叩くと隣の部屋に待機していた”親衛隊”の女が部屋に入って来て、陶器の破片が散乱した床を掃除する。
(ちっ!)
テンガの怒りを恐れているのだろう。
目も合わせてこない。
テンガ好みの巨乳女なのだが、オレ様の前でその態度とはどういうことだ!
(なにもかも、モブのせいだ!!)
先日行われた決勝戦で、テンガはジュンヤになすすべもなく敗れた。
しかも、ジュンヤが侍らせている犬ガキと中古エルフなんぞに蹴られて気絶させられるなど、耐えがたい屈辱だ。
オレ様の宣伝部隊に手を尽くさせ、何とか一般住民どもの情報操作には成功したのだが……。
『おいエリス! モブのステータスがおかしいぞ! どうなっている!?』
テンガは担当女神に怒鳴り込む。
『知らないわ、見間違いでしょ?
世界の理は絶対……アナタがしくじったんじゃない?』
『クソが!!』
なんの役にも立たなかった。
身体の傷は宮廷付きの神官に治させたが、心の傷はそうはいかない。
「どんな裏技を使いやがったクソモブ野郎!」
ロムハックによるステータス改変だろうか?
それともセーブデータの書き換え?
いや、あの馬鹿モブがそんな高度な技を使えるはずがない。
「ならただの”バグ”か!!」
リメイク版のモンクエでは、いくつかの致命的なバグが報告されていた。
それならば、”パッチ”という概念の無いこの世界ではバグがそのままなのかもしれない。
全く忌々しい。
そんなもののためにこのオレ様が耐えがたい屈辱を味わったのだ。
トードナイトさえティムすれば。
もっと種ドーピングを繰り返しカンストしたステータスで……今度こそぶっ潰す。
そしてアイツの目の前で、ヤツの女どもを犯し尽くしてやるのだ。
「く、くくく……」
そうだ、予行演習をしておくのもいい。
そう考えたテンガは、床掃除を続ける女の尻に手を伸ばすのだが……。
トントン
「……テンガ様、カミラ様がお話があると。
第二応接室までお越しください」
タイミングが悪いことに、カミラ嬢から呼び出しが入ってしまった。
勇者を産ませるためにはちゃんと相手をしておく必要がある。
「……ちっ」
テンガは舌打ち一つ、身だしなみを整えるとカミラ嬢の元に向かうのだった。
*** ***
「婚約を破棄させてほしい……ですとぉ!?」
テンガの絶叫が、応接室に響き渡る。
間違いなく成婚の申し出だろう。
その証拠に、カミラ嬢の両親が同席している。
身体を張って辺境の村を救うための戦士を見出した。
決勝の敗北についてはそう説明してある。
何も問題はない……そう確信していたテンガにとっては驚愕の申し出だった。
「何故です!? オレのどこに問題が!」
カミラ嬢の両親は帝国の大貴族。
一応の敬意を持って接しているテンガだが、自然に声が大きくなる。
「……いや、言いにくいのだがね」
テンガから視線を逸らす父親。
「君がお付きの侍女を……その、無理やり手籠めにしていると聞いてね」
「それはっ……!」
絶句するテンガ。
(誰が告げ口しやがった……アイツか!!)
親衛隊に入る際に情報漏洩については厳しく禁じるとの説明をし、念書まで書かせていた。
だが一人、美人で巨乳だがどう見てもおつむの足りない女が混じっていた。
誰だこんな奴を採用したのは!!
即座にクビにしたが、その前に美味しく頂いたのがまずかったのか。
「いやその……妾の相手をするのも王族のたしなみといいますか……」
「それでも、無理やりはいけないだろう」
「ぐっ……」
正論を振りかざすとは、この狸貴族め!
そうだ、カミラ嬢はオレ様の逞しさに惚れたと言っていた。
彼女の意志があればまだ、逆転は可能だ。
「カミラさん? 父上は少々誤解されている。
粗相をした侍女を躾けていただけで……」
普段のテンガからは想像できない事だが、カミラに対し下手に出る。
それはそうだろう。
勇者が生まれない限り、魔王の元へはたどり着けないのだから。
「……ジュンヤ様」
「……は?」
カミラはテンガの事など見ていなかった。
ぽかんとアホ面を晒すテンガ。
「あの圧倒的な実力と女性に対する包容力……お父様、このカミラ恋慕いたしましたわ、ジュンヤ様に。
ですが、ジュンヤ様には心に決めた方がおられる様子……しかたありません。
母国に戻り、私を包み込んでくれるような殿方を探しますわ!」
「娘もこう言っておる。
ああ、心配なさるな。
「帝国と王国の同盟についてはつつがなく締結される」
「テンガ王子、そなたにはよりふさわしい女性が見つかるであろう」
それだけ言うと、カミラの両親は娘を連れて部屋を出て行ってしまった。
テーブルの上に残されているのは、婚姻の契約を正式に解消するという通知書。
ご丁寧に帝国皇帝のサインまで書かれている。
「ばっ…………馬鹿なあああああああああああっ!?」
我に返り絶叫するテンガ。
フェリシアを追放し、カミラ嬢にもフラれた。
この事が意味する事は……テンガが勇者を手に入れることは、永遠に出来なくなったという事である。
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