【最強異世界釣り師】に転身した追放冒険者の釣って釣られる幸せ冒険譚

なっくる

文字の大きさ
6 / 39
■第1章 追放と思わぬビッグヒット

第1-6話 悪徳理事長サイド・不正転売をレイルのスキルで無意識妨害

しおりを挟む
 
「ふふふ……悪くない……いくら片田舎にあるとはいえ、伝統校。 稼いでくれそうな学生が多くいるではないか」

「できればディアンヌ冒険者学校を手に入れたかったが……贅沢は言うまい」
「前任者のジジイを上手くだましてくれた”奴”には感謝だな」

 座り心地の良い理事長席に座り、昼間だというのに高級ワインのグラスを傾けるザイオンは、ついに手に入った念願の地位に、満足の吐息をもらす。

 中年太りの身体を包むシルク生地の高級スーツも、ゴテゴテと悪趣味な光を放つ指輪も、ここに来てから新調したモノだ。


 若者たちのあこがれ、冒険者。
 その育成を一手に担う冒険者学校の理事長ともなれば、各方面に顔が効くようになる。

 大抵の冒険者学校は在校生、卒業生問わず冒険者のあっせん業務もしており、モンスター退治や迷宮の探索など……国家や街の依頼に応じて適切な冒険者を派遣し、莫大な報酬を得る。

 各種スキルは

 女神か悪魔か……誰が作ったのかは知らないが、私にとって都合のいいルールだ。
 そう、この制約により冒険者学校の理事長は絶大な権力を得ることが出来るのだ。

 大抵の理事長は、使命感を持った高潔な人物なのだが……ごくたまに上手くコトを運んだ輩がこの地位に就く。
 残念ながらザイオンは後者に属する人間だった。


「……で、ニーナ君」

「君はこれっぽっちのシルバースキルで、伝統輝く我がラクウェル冒険者学校に残りたいというのかね?」

 数分後、ザイオンは先日放校を言い渡したはずの、ひとりの女子生徒の訪問を受けていた。
 彼女は魔法使いクラスの学生で、いくつかの初級魔法スキルを発現させているだけの低レベル生徒……要は落ちこぼれである。

「ふむ……君には10人の兄弟姉妹がいて、両親ともども生活が苦しい……食い扶持を稼ぐためになんとしても冒険者になりたいと……」

「切なる事情は私も理解するがね……伝統校の理事長として、低レベルな冒険者を顧客に斡旋するわけにはいかないのだよ」

「ザイオン理事長! わたしのスキルが足りないのは理解していますが、なんとか、なんとか学校に残していただけないでしょうか……!」
「冒険者としての収入が無いと、来月の食費すら……」

 ニーナと呼ばれた少女は、大粒の涙を浮かべながら、額を床にこすりつける勢いで腰を折る。
 その拍子に、制服の上からでも分かる彼女の豊満な胸がむにゅりとゆがむ。

 この肉体……まさに私好みだ。
 くくっ……思わず邪悪な笑みを浮かべるザイオン。

 権力欲にまみれ、好色なザイオンは最初から好みの女子生徒に目を付けていたのだ。

 この茶番は、彼が少女を手籠めにするための儀式に過ぎない。
 深く考え込むふりをするザイオンは、思慮深げにニーナに声をかける。

「私も鬼ではない……これから私がすることを黙っているというのなら、考えなくもない……どうするね?」

「……ひっ」

 にやり……生理的な嫌悪を催す、いやらしい笑みを浮かべるザイオン。
 これから何を要求されるのか、理解した少女はしかし、家族のために拒否することは出来ず。

「くくく……賢明な判断だ」

 ザイオンの醜悪な手が、少女の制服に掛かる……。


 ***  ***

「ははは! なかなか良い具合だったな……さて、すっきりした後は財テクだ」

 哀れな女子生徒ニーナとの情事を終えたザイオンは、上機嫌で分厚いファイルをめくる。

 そこに載っているのは、冒険者学校に所属する学生、卒業生が獲得したアイテムの一覧。

 冒険者が迷宮探索などでアイテムを入手した場合、冒険者学校がまとめて買い取り、報酬として適切な金額を渡すことになっている。

「ふん、冒険者学校連盟の公示価格などどうでもよい……私のコネクションを使えばな」

 ザイオンは特に貴重な回復アイテム、エリクサーが入荷していることを確認すると、出入り業者に偽装した”闇”の商人にブラックマーケットでの売却を依頼する。

 迷宮のモンスターからは、人間の技術では作れない武器、道具などのレアアイテムがドロップすることがあり、正規ルートでこれらを入手できない犯罪組織など、法外な価格であったとしても欲しがる者は多い。

 これ私の財布はまた重くなるだろう……今度は何を買おうか。

 夕闇迫る理事長室に、ザイオンの高笑いが響くのだった。


 ***  ***

「なっ……なななっ!?」

 異世界ロゥランドの大魔導士であるフィル、彼女の身体に触れた途端、オレに発現した新たな銀スキル。


「アイテムフィッシング○」:Bランクまでのレアアイテムを釣り上げることが出来る。


 燦然と輝くスキルカードは、自動的にスキルポイントを消費し、オレの物となる。

「こ、こちらの世界のスキルというものは、こんなにぽんぽこ発現するんですかっ!?」

 この事態にはフィルも驚愕したのだろう。
 ペタンと尻もちをつき、やけにかわいい表現で驚きを表す彼女。

「いやいや、こんなの初めてだって……!」

 そうなのだ。
 つい先ほどじいさんに”グランミスリル製の釣り糸”を貰った時もだけど、”スキル”はこんなに簡単に発言するものではなく、厳しいトレーニングを積むか、各地に点在する特別な迷宮でたまに見つかる
 謎の祭壇に触れるなど、それなりのプロセスを踏む必要がある。

 それがこんなに簡単に発現するなんて……。

「……この術式は……高次元連立圧縮術式!? わたくしたちでもまだ基礎研究中の超高度魔導理論がなぜ……?」

 オレの胸元に輝くスキルカードを見ながら、オレには理解できないことを呟くフィル。
 まさか、異世界の魔導士であるフィルと出会った影響か?

 いやいやそれなら最初に発現した「深淵の接続者」ってなんなんだよ……?

 次々に起こる想定外の事態に混乱するオレを尻目に、なにか得心した様子のフィルは大きく頷くと、とんでもないことを言いだす。

「なるほど……ねえレイル、危険はないようですから……さっそくそのスキルとやらを試してみましょうっ!」

「えええっ!? ちょっと待った! さすがにスキル鑑定してからの方がいいってば!」

 やる気満々のフィルの申し出に抗議の声を上げるオレ。

 さっきは不用意にスキルを使ってフィルを釣り上げてしまったからな……これ以上謎スキルを使って、とんでもないことが起きてもいけない。

 ”アイテム (どこかの世界の言葉では魔王)”とかだったらイヤだし!

「もう! 術式解析を終えたから安全だと言ってますでしょう?」

「それ、どっせ~~い!!」

 オレの抵抗を無視し、鼻息荒く近づいてきたフィルは、背後から抱きつくようにしてオレの腕をつかむと無理やり「アイテムフィッシング○」を発動させる。

 そのままロッド (釣り竿)を振りかぶり……。

 ひゅ~~ん

 ぽちゃん!

「あっ……」

 やってしまった……思ったよりずっとフィルの力が強かったこともあるけど、無意識に背中にあてられたふくらみの感触に、健康男子は骨抜きにされてしまったのだ。

 二重の意味でドキドキするオレの目の前で、水面が今度は緑色に輝き……。


 カッ!
 ズドウッ!


「くっ……重っ!!」

 1メートルオーバーのナマズをヒットしたときのような抵抗がロッドを通して伝わる。
 砕けそうな腰に力を入れ、思いっきり力を入れて獲物?を釣り上げる!


 ザバアッ!!


「……はっ?」

 水面から現れたのは、巨大魚でも魔王でもなく……淡く緑色に輝く、一抱えほどの大きさの”宝箱”だった。

「やはりっ! この”スキル”は、ロゥランドのダンジョンから”宝箱”を釣り上げる効果があるようですわねっ!」

 頬を紅潮させて叫ぶフィルとは対照的に、ありえないだろとため息を漏らすオレ……って……冒険小説かよ。

「ええっ!? こちらではダンジョンに宝箱が無いんですかっ?」

 思わず漏れたオレのつぶやきに、大げさに驚くフィル。
 ……どうやら彼女とオレの常識には大きな隔たりがあるようだ。

 王宮などの建物の中にならともかく、自然の迷宮に宝箱があるわけないじゃん……そもそも誰が置くんだよ。

 この世界では、各種アイテムはモンスターがドロップする物と決まっている。
 だから、モンスターを狩ることが出来る冒険者の需要が高いんだけど。

「なるほど……これが”かるちゃーぎゃっぷ”というものですのね」
「勉強になりました」

「それはともかく……宝箱を開けてみましょう! この輝きはおそらく!」

 フィルはそう得心すると、宝箱のもとへ突進する。

 あっ、待って! 得体の知れないものをいきなり開けるとか……第一印象はどこへやら。
 すっかり爆走お嬢様?に振り回されるオレ。

 がちゃり

「ふふん……やはりエリクサーですね……価値は普通ですが、100個以上ありますのでそこそこの稼ぎになるのでは?」

 止める間もなく開けられた宝箱の中で七色に輝く宝玉。

「って、エリクサーだとおおおおおっ!?」

 その日最大の驚きの声が、流れ落ちる滝に反射しやまびこになる。

 オレに現れた新たなスキルがこの世界を変えていくことに、オレはまだ気づいていなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

無自覚チートで無双する気はなかったのに、小石を投げたら山が崩れ、クシャミをしたら魔王が滅びた。俺はただ、平穏に暮らしたいだけなんです!

黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ、平凡な人生を終えたはずのサラリーマン、ユウキ。彼が次に目覚めたのは、剣と魔法の異世界だった。 「あれ?なんか身体が軽いな」 その程度の認識で放った小石が岩を砕き、ただのジャンプが木々を越える。本人は自分の異常さに全く気づかないまま、ゴブリンを避けようとして一撃でなぎ倒し、怪我人を見つけて「血、止まらないかな」と願えば傷が癒える。 これは、自分の持つ規格外の力に一切気づかない男が、善意と天然で周囲の度肝を抜き、勘違いされながら意図せず英雄へと成り上がっていく、無自覚無双ファンタジー!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした

暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。 役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。 だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。 倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。 やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。 一方、病の裏で糸を引いていたのは………。 “無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。

処理中です...