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■第3章 レイル・フェンダー、世界を釣る(海に来ました)
第3-9話 悪徳理事長サイド・暗躍する理事長、大きな力に屈する
しおりを挟む「まったく……ヤツの仕業だったとはな……」
薄暗いラクウェル冒険者学校の理事長室。
報告書を読んだ理事長ザイオンは、忌々しげに舌打ちをする。
先日のグランワーム退治の件。
当初はザイオンの息がかかった冒険者たちが退治し、上位種であるグランワームと偽ったうえで、大量の報酬を手に入れるはずだった。
それが、冒険者たちがネスト (巣)に着いた時にはすでに、グランワームは退治された後だった。
退治した連中は近隣の村に報告し、報酬も貰わずに立ち去ったらしい。
それだけでも腹立たしいのだが、連中はグランワームの死骸を証拠として提出しており、ザイオンが”アビスワーム”として手配書を回していたことが冒険者学校連盟にバレてしまう。
このラクウェル冒険者学校を手に入れるときにも協力させた”奴ら”に依頼し、なんとか罷免などの最悪の処分は回避したのだが、罰金とけん責処分を食らってしまった。
おかげで”切り札”である隠し資産の一部を放出することになってしまった。
ただ、やられっぱなしでは私の気が済まない。
子飼いの冒険者どもに”連中”の動向を探らせたのだが……。
なんと、グランワームのネストを潰したのは、ゴミスキルしか持っていないので放校処分とした、落ちこぼれの元学生レイル・フェンダーであった。
しかも、エリクサーをブラックマーケットに大量放出し、ザイオンの財テクを邪魔してくれた「ダークエルフの小娘」も一緒らしい。
ふたりはラクウェル近郊を離れ、海都レンディルに向かったようだ。
その事実を知ったザイオンは怒り狂う。
まともなゴールドスキルも持たない雑魚のくせに、二度も私の計画を邪魔するとは!
すぐにザイオンは子飼いの冒険者ではなく、”奴ら”に依頼し、非合法の暗殺者を手配する。
正規の冒険者にもろくでもないヤツはいるが、裏切る人間がいないとも限らない。
こういう時は金で動く連中の方が信用できる。
決して安くない金を払ったが、これでレイルのヤツを消せれば私の計画も軌道修正できるだろう。
ザイオンは数日中には吉報が届くことを疑ってなかったのだが。
「監視役が……逮捕されただと?」
最初の躓きはすぐに訪れた。
監視役の暗殺者が、レンディルの警察組織に逮捕されたのである。
容疑は往来妨害に……窃盗だと?
高い金を払った非合法組織の暗殺者が、そんなくだらない罪で捕まるなど、にわかには信じられないが……。
ザイオンは”奴ら”を通し、暗殺者を派遣してきた非合法組織に抗議する。
彼らの話では、レイルたちを尾行していたら、いつの間にか罪状を突き付けられ逮捕されていたとのことだが……。
もう直接始末してしまおう……レイルたちが街の外に出たとの情報を得た私は、新たに派遣されてきた暗殺者を差し向けたのだが……。
今度は暗殺者自体な何者かに襲撃され、始末されてしまう。
最後に”オーガ―が……!”と謎の報告を残していったのだが……まったく意味が分からない。
更に数日後、ザイオンのもとに驚愕の通達が届く。
”ラクウェル冒険者学校理事長 ザイオン殿”
”貴殿には我がレンディルに非合法組織の暗殺者を派遣し、大事な客人に害を及ぼさんとした疑いが掛けられている”
”当件は王国冒険者学校連盟に厳重に抗議し、国王陛下にもご報告済みである”
”身の潔白を主張されるなら、しかるべき手順を踏み、正式な会談を持たれることを望む”
”海都レンディル 自治領主 ルード・レンディル”
「馬鹿な!? レンディル家の横やりだとっ!?」
書面を呼んだザイオンは、驚愕の余り立ち上がる。
レンディル家といえば、現国王の分家筋である名家中の名家……絶大な影響力を持つがゆえに、普段は冒険者学校などには不干渉を貫いていたのだが……。
「このクラスの家を動かすとは……レイルのヤツ、何をしたっ!」
激昂するザイオンだが、後の祭りである。
冒険者学校連盟や国王にまで報告が上がっているとすると……穏便に済ますには、とてつもない労力がかかりそうだ。
レイルごときの事を考えている場合ではない……こめかみに脂汗をにじませ、ザイオンは理事長室で頭を抱えるのだった。
*** ***
「このエレン……お姉さまが求める究極のお嬢様道と、”異世界リンク魔術”が完成することを祈っております!」
レンディルの港を離れる客船に向かい、護衛を連れたエレンが精一杯手を振る。
「ふふ、目的を果たした後は必ず遊びに来ますわね、エレン!!」
オレの隣に立っているフィルも力いっぱい腕を振る。
オレたちは、定期船に乗り、北の大地にあるヒューベル公国へ向かおうとしていた。
奇策?により海底洞窟を脱出したオレたちは、タイミングよくオレたちを捜索していたエレンに拾い上げられる。
そのまま彼女のお屋敷に戻ると、レンディル家の当主であるルード氏より、盛大なもてなしを受ける。
一人娘であるエレンの病を治したことを評価して頂けたらしい。
大したことはしていませんと恐縮するオレとフィルに対して、ルード氏は全面的なバックアップを申し出てくれる。
それならばとオレたちは旅の目的を改めて伝え、何か情報があれば教えて欲しいと依頼する。
流石は王国屈指の名家である。
”創世の時代、曖昧に存在していた世界を分けた”という伝承……。
神話の教科書に載っているお話だが、一部は事実であり、”世界を分けた魔術”の一部が、4枚の石板に分かれて世界のどこかに存在するらしい。
そのうちの一枚が、レンディル家が管理する海底洞窟で発見されたという事で、お屋敷に保管されていた石板のかけらを見せてもらう。
「やはり、これは古代レティシア王国の文字ですわ!」
海底洞窟に会った文字と同じく、内容を理解できるらしいフィルは興奮気味にその内容を解析し……。
複雑な魔術術式の一部であることを確認してくれた。
ルード氏の口利きにより、ヒューベル公国で保管されている石板を見せてもらえることになったオレたちは、紹介状を持ってヒューベル公国へ向かう定期船の客になったというわけだ。
「わたくしをこの世界に引っ張り込んだ「深淵の接続者」……それと対になるスキルだけではなく、”世界を分けた魔術”ですか……」
「ロゥランドでも創世の神話はありますが、伝承の大半が失われており、詳しくは分からないのです」
「お祖母様が研究されていた異世界リンク魔術はここに繋がるのかもしれません……面白くなってきましたわっ!」
「わたくしの知的好奇心がビンビンに……これはもう行くしかありません!」
研究者としての顔つきになり、ほおを紅潮させるフィル。
フィルをロゥランドに戻すために始まった旅は、より大きな世界の秘密へと向かって行こうとしていた。
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