【最強異世界釣り師】に転身した追放冒険者の釣って釣られる幸せ冒険譚

なっくる

文字の大きさ
25 / 39
■第4章 レイル・フェンダー、世界を釣る(北の国から)

第4-5話 辺境のエルフ(前編)

しおりを挟む
 
「!?!? なんというさくさく!」
「なんというさくさく!!」

「なんで2回言ったんだよ……」

 ここは湖畔に立つワカサギ釣りギルド?の建物。

 ここで入場料を払う事で釣り具と釣りえさ、釣りを行う場所である”かまくら”を貸してもらえる。
 ある程度魚を釣ったら、ここで天ぷらにしてもらえるというわけだ。

 しゅわああああああっ!

「さあ、どんどん揚げるよっ!」

 豪快なドワーフ族のオバちゃんが、釣り人たちが手渡したワカサギに衣をつけてナタネ油が煮えたぎる大鍋へ放り込んでいく。

 ぱちぱちと軽快な音と香ばしい香りが食欲をそそる。

 ”天ぷら”はヒューベル公国の名物の一つで、パン粉の代わりに小麦粉と卵で衣を作って揚げるらしい。

 フライとは異なるさくさくとした食感に、オレとフィルは夢中になっていた。

「おいおいフィル、食べ過ぎるなよ? 腹が痛くなっても知らないぞ?」

「ご心配なくレイル。 わたくしのお嬢様的鋼鉄の胃アイアンストマックは、これしきでもたれることはありません」

「……そうかもしれない」

 既に数十匹をぺろりと平らげたフィルをやんわりと注意するが、やけに自信満々に言い切られてしまった。

 と、そこに豪快なフィルの食べっぷりに目を付けたのか、人の好さそうなおばちゃん軍団がオレたちのテーブルへ襲来する。

 みなさま太……恰幅が良く、顔が赤い……かなり酒が進んでいるようだ。

「お嬢ちゃんいい食べっぷりじゃないのさ! カレシさんとデートかい? アタシも20年若けりゃあね!」

「もっと食べな、がっはははは!」

「でも、腹八分目にしときなよ、カレシさんはあんたの腹回りを気にしてくれてるんだから……」

「へうっ……いくら食べても太らないといっても……そ、そうですわね……ご忠告痛み入ります」

 いつもは強気なフィルも、豪快なおばちゃん軍団に囲まれると年相応の女の子に見える。
 おばちゃんからオレとの関係を突っ込まれ、顔を赤くしてもじもじしている。

 ってフィル、”カレシ”ってところは否定しないんだ……あうっ、オレまで恥ずかしくなってきたぞ。

「ふふふふ、すべすべの褐色肌に、このかわいい耳はエルフさんかい? こりゃカレシさんも放っておかないわけだ!」

「あうあう」

「そういやイザベルさんよ、最近この辺りでエルフさんを見たって言ってたわよねぇ?」
「めったに人里に降りてこないエルフさんを二回も見るとか、アンタの腰痛も治るんじゃないかい!」

「「がはははは!」」

「あうあうあう……あらっ?」

 フィルをダシにして盛り上がるおばちゃん軍団。

 そろそろ助け船を出すか……オレはそう考えていたのだが、先ほどのオバちゃんの言葉に何か引っかかることがあったのか、こくりと首をかしげるフィル。

 ”エルフを見た”というイザベルさんに話しかける。

 フィルが疑問に思った通り、この世界ではエルフの数は大変少なく……一説では全世界で1000人もいないといわれている。
 さらに彼らは深い森に引きこもって暮らし、人前に姿を現すことはめったに無い。
 いくらフィルが異世界のダークエルフなのでノーカンといっても、こんな人里近くに住んでいるはずはないのだが。

「お尋ねしてよろしいでしょうか、イザベルおばさま」
「その”エルフ”というのは、どのような姿をしていたでしょうか?」

 上品に”おばさま”と呼ばれて気をよくしたのか、イザベルさんの口は滑らかだ。

「そうだね……年恰好はアンタよりだいぶ下に見えたね……美人さんだったけどなんか不機嫌そうで不愛想というか……あ、アンタと同じく褐色の肌だったかも」
「街のパン屋でアンパンを買ってたね……噂では湖の対岸に小屋を建てて住んでいるみたいだよ」

「まさか……」

 イザベルさんの話が進むうち、フィルの顔がどんどん真剣な表情になっていく。

 どんどん話を脱線させていくイザベルさんに、丁寧にお礼を言うと、フィルは興奮した面持ちでこちらに駆け寄ってくる。

「レイル! その”エルフ”が住んでいるという対岸の小屋に行ってみませんかっ!」

 なにか予感があるのだろう……頬は紅潮し、大きな赤い目は潤んでいる。

「ああ、行こう!」

 オレとフィルは急いで残りの天ぷらを片付けると、湖の対岸へと出発した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

テンプレ最強勇者に転生したら魔女が妻になった

紡識かなめ
ファンタジー
七つの大陸、それぞれを支配する“七大魔女”── 魔力あふれる世界《アルセ=セフィリア》は、魔女たちによる統治と恐怖に覆われていた。 だが、その支配に終止符を打つべく、一人の男が立ち上がる。 名はルーク・アルヴェイン。伝説の勇者の血を引く名家の出身でありながら、前世はただの社畜。 高い魔力と最強の肉体、そして“魔女の核を斬ることのできる唯一の剣”を手に、彼は世界を平和にするという使命にすべてを捧げていた。 ──しかし、最初に討伐した《闇の魔女・ミレイア》はこう言った。 「あなたの妻になります。魔女の掟ですから」 倒された魔女は魔力を失い、ただの美少女に。 しかもそのまま押しかけ同居!? 正妻宣言!? 風呂場に侵入!? さらには王女や別の魔女まで現れて、なぜか勇者をめぐる恋のバトルロイヤルが始まってしまう!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

処理中です...