【最強異世界釣り師】に転身した追放冒険者の釣って釣られる幸せ冒険譚

なっくる

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■第4章 レイル・フェンダー、世界を釣る(北の国から)

第4-12話 悪徳理事長サイド・起死回生の金策を先回りで潰される

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「くそっ! 危ない橋を渡ることになるが、やるしかないのか……」

 夕闇迫るラクウェル冒険者学校理事長室。
 闇の組織から届いた提案が書かれた羊皮紙を前に、理事長ザイオンは頭を掻きむしりながら葛藤していた。

 海都レンディルでのレイル暗殺未遂事件を、領主であるレンディル家に告発されたザイオン。

 築いてきた人脈と資産を駆使し、何とか冒険者学校連盟の捜査をかわし続けてきたのだが、ついに限界が訪れようとしていた。

 王都への召喚と査問会の開催が決定され、そこではラクウェル冒険者学校の理事長に就任した経緯も
 もう一度洗い出されることになっていた。

 証拠は極力隠滅したのだが、連盟本部には凄腕の尋問スキル持ちも存在する……そうなったら私は破滅だ。

 どうやってこの窮地を乗り切るか、答えの出ない自問をザイオンは繰り返していたのだが。

 取引先である闇の組織から届いた"提案"は、彼を戦慄させるのに十分だった。

「Sクラスモンスターである"フロストジャイアント"を人為的に操り、冬季を長引かせることでヒューベル公国に物資を高値で売りつける、だと?」

 提案書には物資の仕入先、ヒューベル公国における販売先、妨害工作に対する対策などが事細かに記されている。

 Sクラスモンスターを自在に操るスキルなど、ザイオンが知る限り存在しないのだが……利用してやっていると思っていた"闇の組織"が恐るべき力を持っていることに、いまさらながら気づかされたザイオン。

 この陰謀に加担したことが露見すれば、死罪は免れない……だがこのままでは私は破滅である。
 起死回生の一手……これはむしろチャンスなのではないか?

 組織はこの陰謀のコントロール役を欲しており、参加すれば冒険者学校連盟の査問会は裏から手を回して潰すと確約されている。

 典型的なギャンブルや株で破滅する人間の思考……普段のザイオンならば絶対に手を出さないであろう
 提案だ……しかし不幸なことにそのときの彼に正常な判断力は残っていなかった。

 震える手で魔道通信装置を"闇の組織"へとつなぐ……応答したのはいつもの陰気な連絡役ではなく、やけに丁寧な口調で話す紳士だった。

 こいつは組織の幹部と言われている男ではないか!?
 このクラスの人間に顔を繋ぐことができるとは、むしろ運が向いてきたのか?

 破滅につながりかねない選択は、一時の高揚感に上書きされる。
 こうしてザイオンは破滅に向かって踏み出してしまったのだ。


 ***  ***

「すばらしい功績だレイル殿!」
「貴殿は我がヒューベル公国の救世主だ!」

 ここはヒューベル公国の宮殿。
 別邸に続く山道をふさいでいた雪崩を、異常気象の元凶だったSクラスモンスターのフロストジャイアントごと吹き飛ばしたオレ達は、報告がてらヒューベル公国の宮殿を尋ね……いつのまにか公爵閣下に
 謁見することになっていた。

 謁見室の窓から見える空は、鉛色の雲に閉ざされた冬空ではなく、抜けるような蒼、初夏の空に変わっている。

「イヴァ殿もご助力感謝する……これほどの使い手がわが国にいたとは……ぜひ宮廷魔法使いの顧問になっていただきたい」

 公爵閣下や大臣たち……さまざまな人たちがオレに賞賛の言葉をかけてゆく。
 まるで伝説のモンスターを退治した勇者級冒険者のような扱いに、むずむずとどこか恥ずかしくなってくる。

 役立たずの釣りスキルしか持たないと冒険者学校を放校されたオレがなぁ……。
 思わず感慨にふける。

「ふふ、レイル。 良かったですね」

 いつもの制服姿ではなく、謁見用に露出を抑えた清楚な白いドレスを着ているフィルが祝福の言葉をかけてくれる。

「ありがとう……フィルがこちらに来てくれたおかげだよ」

「わたくしもお祖母様に再会できましたし、お互い様ですわ」

 自然にもれた感謝の台詞に、フィルは笑顔でウィンクすると、人差し指でオレの頬をぷにりと突く。
 その優しい感触をオレは忘れることはないだろう。

「なるほど、4つに分かれた石版には下の世界、"ロゥランド"の魔術と言うものが記されていたのか……」
「別邸への道も開通したし、存分に見聞されるが良い」

 改めて公爵閣下の許可をいただいたオレ達は、別邸の宝物庫に保管されている石版のかけらを確認する。

 書かれている内容がやはり古代魔術の一部であることを再確認することができたオレ達は、石版の内容を含めヒューベル公国に存在する古代遺跡の研究を進めるというイヴァさんを残し、次の国へと旅立つのだった。


 ***  ***

「馬鹿な……フロストジャイアントが退治されただとっ!?」

 闇の組織の誘いに乗り、ヒューベル公国との違法な物資取引を始めたザイオン。
 順調に上がる利益に気をよくしていたのだが、突如入った知らせに驚愕する。

 ヒューベル公国に冬をもたらしていたモンスターが退治されては、すべての前提条件が瓦解する。
 それどころか、向こうの窓口となっていた大臣が失脚し、芋づる式に捜査の手がこちらに及ぼうとしていた。

「なぜだ! なぜ私だけこんな目に!?」

 自分がしてきた数々の悪事を棚に上げ、ザイオンの悲鳴が深夜の理事長室に響き渡るのだった。
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