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■第5章 レイル・フェンダー、世界を釣る(今度は南です)
第5-3話 思わぬ再会(後編)
しおりを挟む「ロンド!? どうしてここに?」
「いや、クソ理事長ザイオンに文句言ったらこんなとこに飛ばされてね」
「ボクとしては色々と楽しませてもらってるけど」
そう言いながらスイーツバイキングに来ていた観光客の女の子に手を振るロンド。
その途端、きゃ~っという歓声がロンドに注がれる。
くそ、相変わらず手馴れてやがるぜ……だがオレもパートナー (注:旅の)持ちとなったんだ。
ロンドのナンパに付き合って10連敗したあの頃とは一味も二味も違う!
全くお前はいつも通りだな、と余裕の態度を崩さないオレ。
そんなオレの態度に感じることがあったのか、ロンドの奴がガシイッと肩に手を回してくる。
「おおっ? レイル、彼女持ちの余裕ってヤツ?」
「……ふうん、でもお前、まだフィルちゃんとシテないだろ?」
「がふうっ!?」
そんなオレのかりそめの余裕は、ロンドの鋭い指摘に一瞬で突き崩されてしまった。
「なっななっ……いやだって、オレとフィルは……ちゃんとお互いの意思を確かめてからがいいし、雰囲気はロマンチックな方がいいし……」
思わず口ごもるオレ。
ロンドはそんなオレの様子をニヤニヤと眺めると、愉快そうに笑い、オレの背中をバンバンと叩く。
「くくくっ……こんだけ世界中で活躍してんのに、レイルは変わらないな!」
「その乙女チックさがお前らしいけど……行くときは強気でイケよ!」
なにかを強制するのではなく、あくまでオレを後押ししてくれるロンドに思わず自然に笑みがこぼれる。
久しぶりの親友とのやり取りをオレは楽しんでいた。
「もぐもぐ……あなたはレイルのご友人の……もぐもぐ」
「そういえば、わたくしたちの活躍はそこまで話題になっているんですか?」
最後の一皿、とケーキを山盛りにしたフィルがオレのそばにやってくる。
ラクウェルを旅立った時に比べ、自然に距離を縮める彼女に、ロンドはふっと優しい笑みを浮かべる。
「話題も何も……グランワームを釣り上げ、レンディル家の令嬢を救い……ヒューベル公国の異常気象を解決した超絶釣りスキル持ちと美少女魔導士コンビ……」
「そういやシーサーペントまで一本釣りしたんだって? 凄すぎるだろ……」
「こんなスキルの使い方があったなんて……と冒険者ギルド内でも話題沸騰だぜ?」
「ボク的にはレイルたちが活躍するたびに、ザイオンの奴がダメージ受けているのが面白くて仕方ないんだけど♪」
「マジか……そんなに話題になっていたなんて」
「ふむぅ……できればお嬢様方面でも有名になりたいところです」
ロンドの言葉に顔を見合わせるオレたち。
フィルをロゥランドに戻せるスキルを探す……そうやって始まったはずのオレたちの旅は、成り行きとはいえ色々な人たちを助けて来たんだな……思わずこの数か月の旅路を思い起こす。
「ま、ラクウェル冒険者学校とギルドの方はザイオンの横暴と暴走に巻き込まれてめちゃくちゃだけどな」
「ある意味ヤツにたてついて良かったかも……」
苦労したんだろう、あえておどけた表情を見せるロンド。
「なんか大変そうだな……それでロンド、お前はここで何の仕事をしてるんだ?」
「ああ、ここのリゾート施設を作ったのが、ザイオンが出資?している企業らしく、警備の冒険者を募集していたからここに放り込まれたというわけ」
「たまに海棲モンスターが出るくらいだから、楽な仕事だぜ……依頼料は安いが役得もあるしな♪」
今度はロンドの事を聞きたい……オレが尋ねると一転して表情を輝かせるロンド。
あ、コイツの表情……エロいことを考えてるときの顔だな!
「くくく……まず観光客の女の子……南国リゾートで開放的になっている所を優しくエスコート……たっぷりと一期一会のロマンスを楽しむだろ?」
ふぁさっ!
以前より少しだけ伸びた赤毛をかき上げ、無意味に芝居がかったポーズをとるロンド。
「それに、見ろよレイル! あのマーメイドちゃんをよ!」
「最高の……ボリュームだ……」
ばっ!
ロンドの右手が砂浜を指さす。
その先には歓声を上げながら波と戯れるマーメイドの少女たちの姿が……確かにロンドの言う通り、豊満なバストを持った子ばかりだ。
マーメイドの平均胸囲は世界一、いつか雑誌で見たしょーもない特集記事の事を思い出す。
「ここがボクたちのエルドラド……そう思わないかレイル?」
「……いやいや、女の子は胸じゃなく脚だろ……ていうかマーメイドには脚が無いじゃないか、どうやって愛せというんだよ」
「……お前って本当ブレないのな」
恍惚とした顔で同意を求めるロンドをバッサリと切り捨てるオレ。
ちらりとフィルの方に視線をやる……胸のあたりは控えめかもしれないが、均整の取れたふとももに、しっかりとした曲線を描くふくらはぎ……神が作りたもうた黄金曲線と言えよう。
「レイル……そうですわ、女の価値は胸の脂肪では決まらないのです……!」
ぐっと立てた親指に、感激の表情を浮かべるフィル。
「……なんつ~か、お前達いいコンビだよな」
オレたちは下らない会話を繰り広げながら、砂浜に向かって歩いて行った。
レイルたちが海に向かっていく様子を、ひとりの少女が磯の影からそっと見守っている。
「ふむふむぅ~、あの男の子さんは”企業”の用心棒ですね~」
「一緒にいるふたりは見たことが無い~、もしかして増援でしょうか~?」
「困りましたね~、こちらの戦力は少ないですし、仕掛けるなら今のうちかもしれません」
海の色と同じ、くせ気味のエメラルドグリーンの髪を持った少女は、のんびりとした口調でそう話す。
だが、おっとりとした声とは裏腹に、厳しい視線はレイルたちを捉えて離さない。
彼らが海に入った時が勝負……。
ちゃぷん!
僅かな水音を立て、マーメイドの少女は海中に姿を消した。
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