37 / 39
■第5章 レイル・フェンダー、世界を釣る(今度は南です)
第5-5話 島国の事情とのんびりマーメイド(後編)
しおりを挟む「もしもし、大丈夫ですか? ウチのレイルが失礼コイたみたいで……」
オレの着替え (意味深)を見て目を回してしまったマーメイドの少女を介抱するフィル。
ウチのレイルって……ペットみたいな紹介をしないで欲しい……いやまて、むしろアリなのか?
いつも通りな二人は部屋に戻り、ふたりきりになった途端豹変する。
オレは床にひざまずき、差し出されたフィルの足を……。
「お~い、レイル、戻って来いって」
べしっ!
邪悪な妄想に沈みかけたオレを、ロンドのツッコミが現世に引き戻す。
「それにしてもこの子……なかなか見事な胸部装甲を……もとい、見たことのない子だな?」
「ボクはここのリゾートで働いている子を全部覚えてるけど……この子はいなかったぞ」
全員覚えてるとかさすがだな……ていうか仕事しろよ。
ブレない親友に呆れ半分感心半分なオレ。
リゾートの従業員じゃないのか……それに彼女が言っていた”テニアンの海を汚す不届きもの”という言葉が気になる。
詳しく事情を聞いてみるべきだろうか……オレが思案していると、彼女が目を覚ましたようだ。
「……はっ!?」
「あれっ? ここは~?」
「うおおっ!? アクア大ピンチです~、倒すべき敵に捕まってしまうとは~……ああ、このままではマグロのように出荷されてしまいます~アクアはお魚ではありません~」
ぱちりと目を開けるなり、オレたちに囲まれていることに気づいたのだろう。
盛大に混乱するアクアとか言う少女。
口調はあくまでのんびりなので切迫感はないが……。
まいったな、事情を聞くにも落ち着かせた方がよさそうだ。
いまだにわたわたと頭を抱えているアクア。
オレはひとつ思案すると、きゅぴ~んとフィルに念を送る。
「!! 合点承知ですわ、レイル!」
オレの意図を正確に汲んでくれたのだろう、ぐっと親指を立てるフィル。
彼女はどこからともなくカスタードシュークリーム (薄皮)を取り出すと、空高く掲げ、堂々と宣言する!
「脳に糖分が不足していますと、正確な判断が出来なくなってしまいます!」
「さあ、正気に戻るのです! お嬢様スイーツケア!」
別に何かのスキルが発動するわけではないが、謎の技名を叫んだ後、そのままの勢いでシュークリームをアクアの口にぶち込むフィル。
「むぎゅぎゅっ!?」
突然の蛮行に目を白黒させるアクア……しかし、クリームが咀嚼されるにつれ、彼女の瞳に理性の光が戻っていき……。
「アナタたちは……アクアの敵じゃ、ない?」
「そうです! 分かっていただけましたか!」
「よし、流石だフィル!」
「……いやいや、そうはならんやろ……」
常識的なロンドのツッコミは、乾いた夏の風に吹かれ、流されていった。
*** ***
「なるほど……リゾート施設の警備を指示された冒険者の方と、そのお友達でしたか~」
糖分補給 (強制)で落ち着いたマーメイドの少女とオレたちは、岩陰で情報交換を行っていた。
少し前に建設された巨大リゾート、オレを襲った経緯も含めて、背景が気になったからだ。
「実はあのリゾート、半年ほど前に急に建設が決まったんです~」
「作ったのは良く知らない外国の巨大企業なのですが、建設場所がアクアたちマーメイドの住みかと重なっていまして」
「もちろん、長老をはじめアクアたちは断固反対で、テニアン王国の王様も同調してくれていたのですが~」
眉をハの字に下げ、悔しそうに語るアクア。
確かにマーメイドは地上では動きが鈍くなるので、基本浅い海で過ごす。
水中呼吸の能力もあるので、海中に家を建てている者も多いらしい。
ただ、リゾートで働いているマーメイドたちからは、そのようなリゾートに反対する空気は感じられなかったのだが……。
「ある日、企業の社長を名乗る、嫌味な男がやって来て……アクアはその時、数人の仲間と国外に出ていて不在だったのですが……帰ってくると王様も含め、みんなが賛成派に変わっていたんです~」
むぅ……彼女の口調はのんびりだが、表情はハッとするほど真剣で……ウソを言っているようには思えない。
確かに、多少金を積まれたとしても様々な亜人が住み、たぐいまれな善人として知られるテニアン王国の王様がそんな風に急変するのはおかしい。
「う~ん、催眠系のスキルか?」
「ただそんなに大勢へ催眠効果を発揮できるスキルとか聞いたことないけど……ロンド、心当たりがあるか?」
オレは現役冒険者であるロンドに確認する。
「……いや、ボクも心当たりはないな……催眠系のスキルは規制が厳しいし、一国の王様となれば、そっち系のスキルには対策しているのが普通だと思うね」
オレの問いに首を振りながら、さりげなくアクアの肩を支えるロンド……くっ、これがモテ男ムーブかっ?
「わたくしもいくつかの魔術に心当たりはありますが、いずれも高度な魔術……多少失礼な言い方になりますが、ミドルランドの方々に使えるとは思えません」
「ただ、先ほどからあの魔法装置から妙な魔力を感じるのが気になります」
フィルでもダメか……ただ、彼女は入江の真ん中に設置されている造波用の魔法装置が気になるようだ。
しきりにそちらの方を見ては、長い耳をピコピコさせ、首をひねっている。
アクアもフィルがエルフの血を引く人間だと気づいたようだ。
「アナタは……エルフさん?」
「エルフさんならあの魔法装置の異常さの理由が分かるかも~」
「あの、ちょっとついて来てくれませんか?」
アクアはそう切り出すと、目を輝かせながらフィルの手を引く。
「はい、それは構いませんが……」
なにかあるのだろうか?
オレたちは、早く早くと急かすアクアに連れられて、入江の真ん中にある魔法装置へと泳いでいった。
0
あなたにおすすめの小説
テンプレ最強勇者に転生したら魔女が妻になった
紡識かなめ
ファンタジー
七つの大陸、それぞれを支配する“七大魔女”──
魔力あふれる世界《アルセ=セフィリア》は、魔女たちによる統治と恐怖に覆われていた。
だが、その支配に終止符を打つべく、一人の男が立ち上がる。
名はルーク・アルヴェイン。伝説の勇者の血を引く名家の出身でありながら、前世はただの社畜。
高い魔力と最強の肉体、そして“魔女の核を斬ることのできる唯一の剣”を手に、彼は世界を平和にするという使命にすべてを捧げていた。
──しかし、最初に討伐した《闇の魔女・ミレイア》はこう言った。
「あなたの妻になります。魔女の掟ですから」
倒された魔女は魔力を失い、ただの美少女に。
しかもそのまま押しかけ同居!? 正妻宣言!? 風呂場に侵入!?
さらには王女や別の魔女まで現れて、なぜか勇者をめぐる恋のバトルロイヤルが始まってしまう!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~
かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。
そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。
しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!
命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。
そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。
――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる