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二つの世界
5.祝いの日
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▽
空模様は雲一つない快晴だった。
心地よく吹く風のおかげで、そこまで暑さを感じない。
準備を済ませ、荷物を車へと運びこみ、家族揃って家を出た。
向かう先は家からそう遠くない、同じ市内の大きい公園がある施設だ。
その施設は公園だけではなく、ショッピングモールやホテル、たくさんの大型アトラクションがある遊園地なども併設されている大型の複合型施設である。
県内ならびに、国内でも有数の名所であった。
公園に向かう車内では、子供たちや妻の話し声が途絶えることがなかった。
よっぽど今日を楽しみにしていたのだろう。かくいう私もその内の一人である。
「ママ、今日楽しみだね!」
「パパ、あと何分で着くのー!」
「楽しみだね~、ママもすごく楽しみ!あ、コウ、ちゃんと前見て運転してね!」
あと二十分くらいかなとか、はいはいわかりしましたよと受け答えをしつつ、安全運転を心がける。
妻が「今日は遊園地じゃなくて公園で良いの?」と、子供たちに問いかける。
「「今日は、パパとママと外で遊ぶんだぁ!」」
まるで、双子が同じタイミングで受け応えをするかのように、一字一句同じセリフを子供たちが返した。
団欒をしているうちに、あっという間に目的地へ到着した。
なるほど、楽しい時間というのは、通常よりも相対的に早く流れるように感じるというが、やはり、私自身もよっぽど今日を楽しみにしていたようだ。
駐車場へ車を止め、荷物を持って芝生の公園を目指した。
子供たちといえば、今日の主役はママ!と口には出さないものの、積極的に荷物を持つ手伝いをしたりと態度で示していた。
本当によく出来た娘と息子である。
ちょうど良さそうな木の下付近に荷物を置き、妻と私でレジャー用のシートを広げた。
木の影になっているおかげで、暑さや眩しさが和らいだ。
子供たちは、家から持参した、外で遊ぶ用のおもちゃを取り出し、どれで遊ぼうかと悩んでいる。
「パパ、ママ、はいこれ!」
梨愛が選んだものは、子供用になっているおもちゃのバドミントンセットだった。
梨愛のお気に入りで、外で遊ぶときはだいたいこれで遊んでいる。
「お姉ちゃんずるいよお、僕サッカーしたかったのに…」
姉に先を越され、しょんぼりとした顔でサッカーボールを持つ留稀に、梨愛が駆け足で近づいた。
「お姉ちゃんもサッカーしたいから、サッカーやろっか!サッカーやったら次はバドミントンしようね」と言って留稀の頭を撫でた。
途端、嬉しさが溢れ出る顔で留稀は喜んでいた。
「梨愛の優しさは、カナ譲りだね」
「留稀の笑顔は、コウ譲りね!」
妻と私は、夫婦の大切な宝物がすくすくと成長していることを目の当たりにし、お互いに幸せを実感していた。
サッカーにバドミントンと、ひとしきり遊んだあと、お弁当を食べる時間になった。
持ってきた荷物の中から、大きな風呂敷包みを妻が取り出した。
「おいしくなるように作った特製お弁当、パパも一緒に作ってくれたんだよ~」
「えー、パパずるい!わたしも一緒に作りたかったのに!」
最近、料理に興味津々の梨愛は、妻が料理を作る際によくお手伝いをしていた。
そのため、今回のお弁当も一緒に作りたかったのだろう。
一方、留稀はといえば、蓋を開けたお弁当を見て目を輝かせていた。
「ほとんどママが作ってくれて、パパはママのお手伝いをちょっとしただけだよ」
右手の人差し指と親指を近づけ、私がどのくらい妻の手伝いをしたかを表現する。
実際、料理自体は妻がほとんど作ってくれており、私はお弁当に盛り付ける担当を任されていた。
私も料理はよくするが、「今日は私に任せて!」と、はにかむ妻に押し負け、委ねた。
「わあ、ママすごーい!」
子供たちが口を揃えて自分の母親を褒める。
そんな子供たちをみて、そうだぞ君たちのお母さん、そして私の妻はすごいんだぞ、と誇らしく思った。
お弁当には、子供たちの大好物である玉子焼きや、タコの形をしたウインナー、具材がたっぷり入ったサンドイッチなど、まさにお弁当と呼ぶに相応しい食べ物が詰まっていた。
「はい、コウくん」
そう言って妻が私に缶のお酒を手渡した。
「いいよ、帰りも運転するし」
「いいからいいから、帰りはわたしが運転するし大丈夫だよ。こんな良い天気の外で飲む機会なんて当分ないかもよ~?」と、ニヤニヤしながら、どうぞどうぞと勧めてくれた。
子供たちはタコの形のウインナーの中にひっそりと隠れていた、カニの形をしたウインナーを見つけて喜んでいた。
おいしそうにお弁当を食べる家族を見ながら缶のお酒を飲んでいると、梨愛に見つかってしまった。
「あー!パパ、飲みすぎちゃだめだよ、夜はおうちでママのお誕生日ぱーてぃーなんだから!」
そう言った本人も、しまったと思ったようで、ゆっくりと妻の方へと首を向けた。
夜に行う誕生日パーティーは、子供たちと私で計画し、サプライズ形式で祝う、という流れであった。
そのため、主役である妻には内緒だよ、という約束だった。
妻自身、この内緒の約束の内容にとっくに気づいてはいるが、知らぬふりを毎年してくれる。
「お誕生日パーティーしてくれるの?ママ、とっても嬉しい。いまからとても楽しみ!」
笑顔で子供たちの頭を撫でながら、妻は言った。
梨愛も留稀も、恥ずかしそうにしているが、嬉しい感情が勝っているようだ。
ああ、私はこの人と結婚して、家族になって、子供たちに巡り会えて、本当に良かったな。なんて幸せなのだろう。
どんなことがあっても、この家族だけは守り抜く。幸せにする。
私は心の中で強くそう思い、三人の頭を優しく撫でた。
空模様は雲一つない快晴だった。
心地よく吹く風のおかげで、そこまで暑さを感じない。
準備を済ませ、荷物を車へと運びこみ、家族揃って家を出た。
向かう先は家からそう遠くない、同じ市内の大きい公園がある施設だ。
その施設は公園だけではなく、ショッピングモールやホテル、たくさんの大型アトラクションがある遊園地なども併設されている大型の複合型施設である。
県内ならびに、国内でも有数の名所であった。
公園に向かう車内では、子供たちや妻の話し声が途絶えることがなかった。
よっぽど今日を楽しみにしていたのだろう。かくいう私もその内の一人である。
「ママ、今日楽しみだね!」
「パパ、あと何分で着くのー!」
「楽しみだね~、ママもすごく楽しみ!あ、コウ、ちゃんと前見て運転してね!」
あと二十分くらいかなとか、はいはいわかりしましたよと受け答えをしつつ、安全運転を心がける。
妻が「今日は遊園地じゃなくて公園で良いの?」と、子供たちに問いかける。
「「今日は、パパとママと外で遊ぶんだぁ!」」
まるで、双子が同じタイミングで受け応えをするかのように、一字一句同じセリフを子供たちが返した。
団欒をしているうちに、あっという間に目的地へ到着した。
なるほど、楽しい時間というのは、通常よりも相対的に早く流れるように感じるというが、やはり、私自身もよっぽど今日を楽しみにしていたようだ。
駐車場へ車を止め、荷物を持って芝生の公園を目指した。
子供たちといえば、今日の主役はママ!と口には出さないものの、積極的に荷物を持つ手伝いをしたりと態度で示していた。
本当によく出来た娘と息子である。
ちょうど良さそうな木の下付近に荷物を置き、妻と私でレジャー用のシートを広げた。
木の影になっているおかげで、暑さや眩しさが和らいだ。
子供たちは、家から持参した、外で遊ぶ用のおもちゃを取り出し、どれで遊ぼうかと悩んでいる。
「パパ、ママ、はいこれ!」
梨愛が選んだものは、子供用になっているおもちゃのバドミントンセットだった。
梨愛のお気に入りで、外で遊ぶときはだいたいこれで遊んでいる。
「お姉ちゃんずるいよお、僕サッカーしたかったのに…」
姉に先を越され、しょんぼりとした顔でサッカーボールを持つ留稀に、梨愛が駆け足で近づいた。
「お姉ちゃんもサッカーしたいから、サッカーやろっか!サッカーやったら次はバドミントンしようね」と言って留稀の頭を撫でた。
途端、嬉しさが溢れ出る顔で留稀は喜んでいた。
「梨愛の優しさは、カナ譲りだね」
「留稀の笑顔は、コウ譲りね!」
妻と私は、夫婦の大切な宝物がすくすくと成長していることを目の当たりにし、お互いに幸せを実感していた。
サッカーにバドミントンと、ひとしきり遊んだあと、お弁当を食べる時間になった。
持ってきた荷物の中から、大きな風呂敷包みを妻が取り出した。
「おいしくなるように作った特製お弁当、パパも一緒に作ってくれたんだよ~」
「えー、パパずるい!わたしも一緒に作りたかったのに!」
最近、料理に興味津々の梨愛は、妻が料理を作る際によくお手伝いをしていた。
そのため、今回のお弁当も一緒に作りたかったのだろう。
一方、留稀はといえば、蓋を開けたお弁当を見て目を輝かせていた。
「ほとんどママが作ってくれて、パパはママのお手伝いをちょっとしただけだよ」
右手の人差し指と親指を近づけ、私がどのくらい妻の手伝いをしたかを表現する。
実際、料理自体は妻がほとんど作ってくれており、私はお弁当に盛り付ける担当を任されていた。
私も料理はよくするが、「今日は私に任せて!」と、はにかむ妻に押し負け、委ねた。
「わあ、ママすごーい!」
子供たちが口を揃えて自分の母親を褒める。
そんな子供たちをみて、そうだぞ君たちのお母さん、そして私の妻はすごいんだぞ、と誇らしく思った。
お弁当には、子供たちの大好物である玉子焼きや、タコの形をしたウインナー、具材がたっぷり入ったサンドイッチなど、まさにお弁当と呼ぶに相応しい食べ物が詰まっていた。
「はい、コウくん」
そう言って妻が私に缶のお酒を手渡した。
「いいよ、帰りも運転するし」
「いいからいいから、帰りはわたしが運転するし大丈夫だよ。こんな良い天気の外で飲む機会なんて当分ないかもよ~?」と、ニヤニヤしながら、どうぞどうぞと勧めてくれた。
子供たちはタコの形のウインナーの中にひっそりと隠れていた、カニの形をしたウインナーを見つけて喜んでいた。
おいしそうにお弁当を食べる家族を見ながら缶のお酒を飲んでいると、梨愛に見つかってしまった。
「あー!パパ、飲みすぎちゃだめだよ、夜はおうちでママのお誕生日ぱーてぃーなんだから!」
そう言った本人も、しまったと思ったようで、ゆっくりと妻の方へと首を向けた。
夜に行う誕生日パーティーは、子供たちと私で計画し、サプライズ形式で祝う、という流れであった。
そのため、主役である妻には内緒だよ、という約束だった。
妻自身、この内緒の約束の内容にとっくに気づいてはいるが、知らぬふりを毎年してくれる。
「お誕生日パーティーしてくれるの?ママ、とっても嬉しい。いまからとても楽しみ!」
笑顔で子供たちの頭を撫でながら、妻は言った。
梨愛も留稀も、恥ずかしそうにしているが、嬉しい感情が勝っているようだ。
ああ、私はこの人と結婚して、家族になって、子供たちに巡り会えて、本当に良かったな。なんて幸せなのだろう。
どんなことがあっても、この家族だけは守り抜く。幸せにする。
私は心の中で強くそう思い、三人の頭を優しく撫でた。
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