絶壁の少女と異世界魔王

桜夜百合

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初めての食事

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象より大きいんじゃないか?

その大きな生き物に対して身震いをする。

でけー!!狼ならともかく、これに勝てるのだろうか?

「我の子供を殺めたのはお前か?」

低い低重音でその狼が喋った。
明らかにこちらを睨んでいるのがわかる。

「はい・・・考えそちらから攻撃されましたのでつい・・・」

あまりの迫力になかなか言葉が出て来ない。

「我が子が弱かったのは、我が子の力不足が原因だ。しかし、お前が今、この場で殺されるのもお前のせいだ。人間ごときが所詮、餌ということをわきまえよ」

「餌って、あなたは神か何かですか?」

「神?我が2千年ほど生きた中で人間が我を神と崇めた事もあった。大神様と。人間と共に生きた時代もあったな」
「しかし、人間は変わった。争いばかり、神として崇めるのを止め、お供え物どころじゃなく害獣扱いじゃ。さすがに我慢ならん、我が餌として死ぬがよい」

巨大な狼の前に魔方陣が展開する。
と、前方から稲妻の様な線光がいくつも迫ってくる。

「やばっ」

しかし、よく見ると一本一本の稲妻はゆっくりに見える。
いや、全ての風景がスローモーションの様にみえた。

ゆっくり迫ってくるそれの間を当たらない様に避けると 
あまりの遅さに好奇心で人差し指でちょっと触って見た。
    
「いてー」   

ビリビリッとした感覚が腕まで伝わり上着が破れる。

もう絶対にさわらない様にしよう。
心に誓い稲妻の隙間を全力で走り抜け、巨大な狼の懐の中にはいる。

「食らえ、うぉーーってっ」
 
両足で地面を蹴って拳を突き上げるつもりが、ジャンプの力が強すぎた為、頭が先に狼に激突する。

「ヴガッ」

狼の声にならない声と共に、一瞬意識が飛びそうになる。
気づくと10メートルほど宙に浮いていた。
重力に従い着地すると上を見上げる。

巨大な狼はまだ落ちてこない。それどころかまだ上昇してる様に見える。

「あっ、やっと落ち始めた・・・」

次第に大きくなって落下してくる狼をみながらポツリと呟いた。

あまりの出来事に呆然として見ていたが真上から落ちてくるそれを見てさっきの出来事が脳裏によぎった。

「やべっ」

あわててその場から駆け出す。

ズドーン。

大きな音と共に狼は落下し土煙が辺りをつつむ。

伏せた状態でいる巨大な泡をふき絶命していた。


「キャイン」

犬の悲鳴な様な声をだしながら、その光景を見た多数の狼達は我先にと逃げだして行った。

「勝ったのか・・・」

あまりの呆気なさに頭が追い付いてこない。

「大丈夫ですか?」

後ろからセシリアの声がする、その声でやっと我にかえった。

「大丈夫。この通りピンピンしてるよ」

そう答えつつ腕を振り回しながら、障壁の張った時のままの姿勢でしゃがみこんでいるセシリアに近づいていった。

「俺の名前は英司。よろしくね」

名乗りながらそっと手を差し出した。
セシリアが手をとると、

ぐぅー 
腹の音がする。
というかなんか異様に腹が減った。
恥ずかしさで少し顔が赤くなったのを感じながら、目の前の巨大な狼を見て一言・・・

「こいつを食べよう」

 儀式の場にあった鎧に剣があったはず。
爆風で多少吹っ飛んだとしてもこの近くにあるはずだ。
月らしい星の光を頼りに近くを見渡すと、光を白く反射している物を見つけた。あれだ。
1メートル程ある剣を見つけ持ってみる。

「ほとんど重さがない」

まるで発泡スチロールでできた剣を持っているようだ。

とりあえず剣で巨大な狼をさばく事にした。

セシリアには見ない様に言ったが恐いもの見たさで見たいようだ。

昔父親に、牛を飼うものとして、出荷後どの様になるのか知っておけと加工会社を回らさせられたっけ。
昔の事を思い出しながらさばいていった。

心臓だと思われる部分からは、黄色の石が出てきた。
しかし空腹に勝てず、意識せずにポケットの中にいれた。

大まかに肉と皮と骨に分けると、肉の部分は土がつかないように皮の上にのせている。

「思ったより簡単に裁けたな。何時間もかかると思ったけど」

実際ほとんど力がいらず30分程で終わった。

「生でも食べられそうだけど出来れば火があればいいんだけど・・・セシリアは火の魔法とかつかえるの?」

「ううん。」

といいながら首を横にふってる。

しばらく考えて、もしかしたらと思い、最初の狼が飛んで行く際なぎ倒した木々から枝を集め焚き火の用意をした。

集めた枝を並べた所に枯れ葉を集め下に入れた、一本の枝を持ち集中する。
ろうそくの火がこの枝の先端からで出るイメージで。
手から枝に力が伝わっていくのがわかる。
すると枝の先から野球ボールサイズの魔方陣があらわれた。
そしてそこから火が現れる。

「やった成功だ!!」

と大きな声をあげると、

ボーーン
と大きな音をたて垂直に10メートルほどの火柱が上がった。

「きゃっ」

セシリアの驚いた声が聞こえた。

「力の制御がダメなのかな?」

と苦笑いしつつ、とりあえずついた焚き火に狼の肉を木で串刺しにして焼いていく。

肉汁が滴るその肉に、

「いただきます」

と声をかけかぶりつく。
セシリアもその様子を見てすぐに食べ始めた。

「うまい」

今まで食べたことのない旨さを感じながら、こいつ人間が餌だって言ってたよな・・・などと思いつつ、ばくばく食べていく。
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