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好奇心・後日談?
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もう嫌だ。生きていても何もいいことはない。
このまま次に来る電車に飛び込もう。
そう思って、一歩踏み出しかけた俺を止めてくれたのは、一人の学生だった。
「…あ、ごめんなさい」
違った。正しくは止めてくれたのではなく、たまたま少年の鞄についていたキーホルダーが俺の青いリストバンドに引っかかり、引き留める形となったのだ。
この青いリストバンドは、好きなバンドのツアーグッズだ。職場では外しているけれど、通勤中はつけている。ブラック企業で擦り切れた心を癒してくれる気がするからだ。ただ、最近は縁起でもないものと言われることもある。
このリストバンドをしていた人が、この線で飛び込み自殺をしたという話があったためだ。
でも、俺にとっては命を救うアイテムとなった。
そして、この出会いは俺に光をもたらした。恋だ。
俺は、あの時の少年に惹かれた。恋愛対象は異性だと思っていたけれど、男にときめくこともあるのかと自分でも驚いた。ただ、学生らしき少年に手を出すのは犯罪だ。今の職を失うだけでなく、この先も前科が付きまとうことになる。そんなことはできない。
だから、運良く見かけることがあっても、遠くから見守るだけだった。
そんな思いをこじらせたのか、通勤途中に夢を見た。男同士がセックスをしている異様な空間で、少年と再会する夢だ。夢ならいいんじゃないかと、少年に声をかけ、気が付けば夢中で抱いていた。
目が覚めた時には、どれだけ欲求不満なんだと苦笑いするしかなかった。
そしてなぜか、腕につけていたリストバンドが消えていた。何かのはずみで外れてしまったのだろうか。それよりも、夢の中の自分を思い出して情けなくなる。
いつか犯罪を起こしてしまうのではないか、そんな不安が頭を過る。でもまぁ、実際に待っていたのは厳しい労働環境に追われるだけの日々だ。
そんなある日、駅で少年を見かけた。少年は腕に青いリストバンドをしていた。自分がずっとしていたのと同じものだ。
「…前はつけてなかったのに?」
気になって少年に近づく。
「あの、それ…」
俺にとってリストバンドが不吉なアイテムだったか、光を与えてくれるアイテムだったかは、また別のお話。
このまま次に来る電車に飛び込もう。
そう思って、一歩踏み出しかけた俺を止めてくれたのは、一人の学生だった。
「…あ、ごめんなさい」
違った。正しくは止めてくれたのではなく、たまたま少年の鞄についていたキーホルダーが俺の青いリストバンドに引っかかり、引き留める形となったのだ。
この青いリストバンドは、好きなバンドのツアーグッズだ。職場では外しているけれど、通勤中はつけている。ブラック企業で擦り切れた心を癒してくれる気がするからだ。ただ、最近は縁起でもないものと言われることもある。
このリストバンドをしていた人が、この線で飛び込み自殺をしたという話があったためだ。
でも、俺にとっては命を救うアイテムとなった。
そして、この出会いは俺に光をもたらした。恋だ。
俺は、あの時の少年に惹かれた。恋愛対象は異性だと思っていたけれど、男にときめくこともあるのかと自分でも驚いた。ただ、学生らしき少年に手を出すのは犯罪だ。今の職を失うだけでなく、この先も前科が付きまとうことになる。そんなことはできない。
だから、運良く見かけることがあっても、遠くから見守るだけだった。
そんな思いをこじらせたのか、通勤途中に夢を見た。男同士がセックスをしている異様な空間で、少年と再会する夢だ。夢ならいいんじゃないかと、少年に声をかけ、気が付けば夢中で抱いていた。
目が覚めた時には、どれだけ欲求不満なんだと苦笑いするしかなかった。
そしてなぜか、腕につけていたリストバンドが消えていた。何かのはずみで外れてしまったのだろうか。それよりも、夢の中の自分を思い出して情けなくなる。
いつか犯罪を起こしてしまうのではないか、そんな不安が頭を過る。でもまぁ、実際に待っていたのは厳しい労働環境に追われるだけの日々だ。
そんなある日、駅で少年を見かけた。少年は腕に青いリストバンドをしていた。自分がずっとしていたのと同じものだ。
「…前はつけてなかったのに?」
気になって少年に近づく。
「あの、それ…」
俺にとってリストバンドが不吉なアイテムだったか、光を与えてくれるアイテムだったかは、また別のお話。
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