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ご帰宅
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小鳥の軽やかなさえずり。
からっと晴れた清々しい青空。
窓から流れこむ心地よい微風。
少し冷え込む朝ぼらけに、アイリーンは変わらず使用人としての朝を迎える。
冬の朝の穏やかな朝日を感じ、いつもなら鼻唄でも口ずさんでしまいそうなものを、アイリーンはどこか重い足取りで使用人室を出た。
ちちち、
名前も知らない、しかし幼少期からこの屋敷でずっと聞いてきた小鳥のさえずりが優しく鼓膜を揺らす。
まだ薄暗い廊下を静かに歩いて、屋敷の照明に明かりを灯していく。ぽつりぽつりと、アイリーンの視界は明るく照らされる。
お屋敷のホールに辿り着くと、アイリーンは暖炉に火を灯し、それから新しい薪を一つ二つ、炎に向かって放り投げた。
「はぁ」
彼女は冷えた手先を擦り合わせて、暖炉の炎の前でしゃがみ込む。
ゆらゆらと燃える真っ赤なそれを見つめながら、アイリーンは何を考えているのか、数秒の間じっと動かなかった。
「....」
ぱちん、
薪の破片が弾け飛び、アイリーンはハッとして息を吸った。
もう随分温かさを取り戻した自分の手のひらを頬に添えて、きゅっと目を閉じる。
薪の燃える弾ける音と、変わらず聞こえる小鳥のさえずり、風にあおられる木々の乾いた音が静かなお屋敷にひっそりと響く。
アイリーンは何も言わず、ただ静かにゆっくり立ち上がって、ホールを出て、そうしてすぐ左の地下へ続く階段に真っ直ぐ向かった。
厨房で食事をするためだ。
階下には使用人の仕事場である厨房やランドリー、今は使うことのない家政婦室や執事室がある。
使用人の寝室として備え付けられていた部屋はほとんどが夫人たちの物置となっており、アイリーンの寝室は屋根裏にある陳腐な部屋が与えられていた。
地下へ辿り着くと、階下の空気はまだひどく冷え込んでいた。アイリーンを温めていた熱が瞬間奪われていくのを感じながらも、彼女は小さく靴音を鳴らして厨房へと進む。
棚からハムとパンを取り出し、アイリーンはそれらを薄くスライスした。皿の上にペラペラの二切れをのせると、傍らにある椅子を引き寄せ、テーブルも無しに食事を始める。
アイリーンは小さな口にさらに小さくちぎったパンを放り込みながら、この心のざわつきをどうにか抑えようとしていた。
昨夜からアイリーンはなんと言い表して良いものか、悲しいような苦しいような、それでいて落ち着きのない胸騒ぎを感じていた。
理由は明瞭だ。
今日はシャントニー夫人らが帰宅する日なのだから。
アイリーンはこれまで自分の扱いに不満に思うことはなかった。当たり前のことなのだろうと勝手に思っていた。しかしこの数日の間、アイリーンは多少の自由を手に入れて、この安らぎに気づいてしまったのだ。
夫人たちが帰ってきてしまえば、アイリーンはまたあの理不尽な扱いを受けることになってしまう。それはアイリーンにとって心苦しく、耐え切れない事実となっていた。
こんな気持ちになるくらいなら、こんな数日の自由なんて知らなければよかった。
アイリーンは悲しくそう思った。
特に味わったりすることもなく食事を済ませたアイリーンは、散らかった物置部屋の中から掃除用具を取り出した。
夫人たちが帰ってくる前に、もう一度屋敷内を掃除しようと思ったのだ。
▼
アイリーンはさほど汚れていないホールや玄関を念入りにふきんで磨き上げ、床中をほうきで掃いた。塵さえ残っていないほどに。
屋敷中に飾られている絵画を、傷つけないように慎重にほこりをはたいたり、窓の淵や溝までもう一度拭ったりした。
アイリーンはカティ、ロザリアの寝室にも掃除に回った。彼女らが舞踏会へ出かけた初日には散らかった部屋の整頓を済ませ、また定期的に掃除もしていたため、汚れているところはおろかほこりさえない美しさを保っている。
それでもアイリーンは念入りに掃除をした。
せっせと屋敷内の清掃に回りながら、次にアイリーンはシャントニー夫人の寝室も掃除しようと夫人の部屋へ入る。
机を綺麗なふきんで拭い、立て掛けられた羽ペンの角度を少し直す。
皺ひとつないぴしりとしたベッドの裾を意味もなくまた伸ばして、掛け布団も整える。
身体を起こせば、ふと奥に続く扉が視界に入った。
夫人の衣装部屋だ。
アイリーンはその部屋の掃除もしようと扉を開けると、そこにはきらびやかな美しいドレスがずらりと並んでいる。夫人のドレスは一着一着が特注品や高級品で、慎重に扱うようにいつも厳しく言いつけられている。
部屋の奥へと進みながら、ふと一着のドレスが目に入る。
先日仕立て屋まで訪ねたときに受け取ったドレスだ。
「はぁ」
アイリーンは今日で何度目かになるため息を吐き、そうしてふとあの時の紳士を思い出した。
逞しい身体に、自分の手を包み込む、大きな手。彼の手には上質な革手袋がはめられており、その色は彼の潔白の身を表すような純白であった。手の甲を優しく撫でるあの感触だけが、鮮明に残っている。
凛と響く低い声は、恐ろしさもあれば、どこか優しく響く不思議なものだった。
時間が経つにつれてどんどん掠れてゆく記憶に煩わしさを感じつつも、自分の頭を掻き乱すあの紳士のことなど早く忘れてしまえばいいのに、とアイリーンは矛盾した思いをもっていた。
どこかぼーっとしながら、アイリーンはかけられたドレスの装飾をそっと撫でる。
彼がどこの誰なのか、アイリーンには想像もつかなかった。
彼の名前を知ることも、もう一度会うことも、きっともうないのだろう。
この美しいドレスに自分が袖を通すことは一生ないのと同じように、元々出会うはずのなかった人なのだ。こんなに心を乱されてしまうなんて、なんだか馬鹿みたいだ。
きらきらと眩しいドレスを憂い気に眺めるアイリーンの耳に、屋敷のベルが大きく鳴り響く。
ハッとして時計を見ると、午後1時を回っていた。夫人たちが帰って来たのだ。
いつの間にこんな時間に、
アイリーンは急いで衣装部屋から飛び出し、ほうきやふきんを手に持って一階へと駆け下りた。
走っている最中にもドンドンと戸が叩かれる音が聞こえる。
「おっ、おかえりなさいませ、っ...奥様。」
ハァ、ハァと、アイリーンは乱れる呼吸を精一杯抑えながら扉を開けた。
開け放った扉の前には不機嫌な顔を微塵も隠そうとしない夫人と、その後ろにも似たような顔の娘が二人。
「愚鈍な使用人ね。主人が帰ってくる時間には玄関の前で待機しているのが当然ではなくて?」
「も、申し訳ございません...。」
開口一番に嫌味を零すシャントニー夫人に、苦い気持ちでアイリーンは深く頭を下げる。
「はァ!それにしてもつまらない舞踏会だったわ!殿方はブ男しかいないし、唯一綺麗な伯爵令息も失礼な男でやんなっちゃう!」
ぞろぞろと屋敷内へ入ってくる夫人たちの後を見れば、馬車の中にいくつかの荷物が放り込まれたままだった。アイリーンは大きな声で話すカティの話に耳を傾けながら、慌ただしく荷物を屋敷の中に運び込む。
「まぁ、お姉様ったら。殿方に見初められなかったからって意地悪なことを。」
「あらロザリア、貴女はいいわよねぇ。あんな不細工でも満足できるんだから。」
「ちょっと、フレック様のことを言っているの?」
「彼、ディアナントおじ様の家系でしょ?階級も低いし...私だったら御免だわ。」
「ムキイイイ!誰からも相手にされなかったからって、八つ当たりはやめてくださる!?この性悪女!」
「な、なんですってェ!?」
「おやめなさい!みっともない。」
シャントニー夫人のキンとした怒鳴り声が鋭く響く。
アイリーンは自分が怒鳴られたわけでもないのに、身体をびくりと跳ねさせた。
「はぁ…ロザリア。お前はその令息にお熱のようだけれど、あんな放蕩息子はおやめなさい。お前のような美しい子にはもっと良い殿方がいるわ」
「えぇっ。けれど、お母様」
「安心なさい。今回の舞踏会でディブリックル伯爵のご令息をお屋敷にご招待したのよ。」
「ディブリックル伯爵の...?そ、それってお母様、一日目に帰られたあの...」
「お母様、それってスアン様のこと!?」
興奮気味の二人を横目に、アイリーンは手際よく三人のお召し物をどんどん片づけてゆく。
世間を知らぬアイリーンにとって夫人たちの話はさっぱりだった。
「伯爵の出生がトロヴィで、お爺様のお得意様がトロヴィの特製品を扱っているとお話をしたら是非お屋敷に来たいって。」
「さすがお母様だわ!スアン様なら、私の旦那様にふさわしい殿方よ。」
「すごいわお母様。伯爵様とそんなお話ができるなんて。」
「ふふふ。二人とも、絶対にご令息を落としてみせるのよ。」
「で、でも、ロザリアはフレック様がいるのだからよろしくてはなくて?お母様。」
「いいえ。お前達二人でご令息のお相手をするのよ。このご縁、絶対に無駄にしてはいけないよ。」
「ということだから、アイリーン。」
「はっ、はい!」
シャントニー夫人から声をかけられたアイリーンは思わず背筋を伸ばし、勢いよく返事をした。
「晩餐会は来月行う予定だから、お前には人一倍働いてもらうわよ。」
夫人はにっこりと、微笑みながらそう告げるのだった。
からっと晴れた清々しい青空。
窓から流れこむ心地よい微風。
少し冷え込む朝ぼらけに、アイリーンは変わらず使用人としての朝を迎える。
冬の朝の穏やかな朝日を感じ、いつもなら鼻唄でも口ずさんでしまいそうなものを、アイリーンはどこか重い足取りで使用人室を出た。
ちちち、
名前も知らない、しかし幼少期からこの屋敷でずっと聞いてきた小鳥のさえずりが優しく鼓膜を揺らす。
まだ薄暗い廊下を静かに歩いて、屋敷の照明に明かりを灯していく。ぽつりぽつりと、アイリーンの視界は明るく照らされる。
お屋敷のホールに辿り着くと、アイリーンは暖炉に火を灯し、それから新しい薪を一つ二つ、炎に向かって放り投げた。
「はぁ」
彼女は冷えた手先を擦り合わせて、暖炉の炎の前でしゃがみ込む。
ゆらゆらと燃える真っ赤なそれを見つめながら、アイリーンは何を考えているのか、数秒の間じっと動かなかった。
「....」
ぱちん、
薪の破片が弾け飛び、アイリーンはハッとして息を吸った。
もう随分温かさを取り戻した自分の手のひらを頬に添えて、きゅっと目を閉じる。
薪の燃える弾ける音と、変わらず聞こえる小鳥のさえずり、風にあおられる木々の乾いた音が静かなお屋敷にひっそりと響く。
アイリーンは何も言わず、ただ静かにゆっくり立ち上がって、ホールを出て、そうしてすぐ左の地下へ続く階段に真っ直ぐ向かった。
厨房で食事をするためだ。
階下には使用人の仕事場である厨房やランドリー、今は使うことのない家政婦室や執事室がある。
使用人の寝室として備え付けられていた部屋はほとんどが夫人たちの物置となっており、アイリーンの寝室は屋根裏にある陳腐な部屋が与えられていた。
地下へ辿り着くと、階下の空気はまだひどく冷え込んでいた。アイリーンを温めていた熱が瞬間奪われていくのを感じながらも、彼女は小さく靴音を鳴らして厨房へと進む。
棚からハムとパンを取り出し、アイリーンはそれらを薄くスライスした。皿の上にペラペラの二切れをのせると、傍らにある椅子を引き寄せ、テーブルも無しに食事を始める。
アイリーンは小さな口にさらに小さくちぎったパンを放り込みながら、この心のざわつきをどうにか抑えようとしていた。
昨夜からアイリーンはなんと言い表して良いものか、悲しいような苦しいような、それでいて落ち着きのない胸騒ぎを感じていた。
理由は明瞭だ。
今日はシャントニー夫人らが帰宅する日なのだから。
アイリーンはこれまで自分の扱いに不満に思うことはなかった。当たり前のことなのだろうと勝手に思っていた。しかしこの数日の間、アイリーンは多少の自由を手に入れて、この安らぎに気づいてしまったのだ。
夫人たちが帰ってきてしまえば、アイリーンはまたあの理不尽な扱いを受けることになってしまう。それはアイリーンにとって心苦しく、耐え切れない事実となっていた。
こんな気持ちになるくらいなら、こんな数日の自由なんて知らなければよかった。
アイリーンは悲しくそう思った。
特に味わったりすることもなく食事を済ませたアイリーンは、散らかった物置部屋の中から掃除用具を取り出した。
夫人たちが帰ってくる前に、もう一度屋敷内を掃除しようと思ったのだ。
▼
アイリーンはさほど汚れていないホールや玄関を念入りにふきんで磨き上げ、床中をほうきで掃いた。塵さえ残っていないほどに。
屋敷中に飾られている絵画を、傷つけないように慎重にほこりをはたいたり、窓の淵や溝までもう一度拭ったりした。
アイリーンはカティ、ロザリアの寝室にも掃除に回った。彼女らが舞踏会へ出かけた初日には散らかった部屋の整頓を済ませ、また定期的に掃除もしていたため、汚れているところはおろかほこりさえない美しさを保っている。
それでもアイリーンは念入りに掃除をした。
せっせと屋敷内の清掃に回りながら、次にアイリーンはシャントニー夫人の寝室も掃除しようと夫人の部屋へ入る。
机を綺麗なふきんで拭い、立て掛けられた羽ペンの角度を少し直す。
皺ひとつないぴしりとしたベッドの裾を意味もなくまた伸ばして、掛け布団も整える。
身体を起こせば、ふと奥に続く扉が視界に入った。
夫人の衣装部屋だ。
アイリーンはその部屋の掃除もしようと扉を開けると、そこにはきらびやかな美しいドレスがずらりと並んでいる。夫人のドレスは一着一着が特注品や高級品で、慎重に扱うようにいつも厳しく言いつけられている。
部屋の奥へと進みながら、ふと一着のドレスが目に入る。
先日仕立て屋まで訪ねたときに受け取ったドレスだ。
「はぁ」
アイリーンは今日で何度目かになるため息を吐き、そうしてふとあの時の紳士を思い出した。
逞しい身体に、自分の手を包み込む、大きな手。彼の手には上質な革手袋がはめられており、その色は彼の潔白の身を表すような純白であった。手の甲を優しく撫でるあの感触だけが、鮮明に残っている。
凛と響く低い声は、恐ろしさもあれば、どこか優しく響く不思議なものだった。
時間が経つにつれてどんどん掠れてゆく記憶に煩わしさを感じつつも、自分の頭を掻き乱すあの紳士のことなど早く忘れてしまえばいいのに、とアイリーンは矛盾した思いをもっていた。
どこかぼーっとしながら、アイリーンはかけられたドレスの装飾をそっと撫でる。
彼がどこの誰なのか、アイリーンには想像もつかなかった。
彼の名前を知ることも、もう一度会うことも、きっともうないのだろう。
この美しいドレスに自分が袖を通すことは一生ないのと同じように、元々出会うはずのなかった人なのだ。こんなに心を乱されてしまうなんて、なんだか馬鹿みたいだ。
きらきらと眩しいドレスを憂い気に眺めるアイリーンの耳に、屋敷のベルが大きく鳴り響く。
ハッとして時計を見ると、午後1時を回っていた。夫人たちが帰って来たのだ。
いつの間にこんな時間に、
アイリーンは急いで衣装部屋から飛び出し、ほうきやふきんを手に持って一階へと駆け下りた。
走っている最中にもドンドンと戸が叩かれる音が聞こえる。
「おっ、おかえりなさいませ、っ...奥様。」
ハァ、ハァと、アイリーンは乱れる呼吸を精一杯抑えながら扉を開けた。
開け放った扉の前には不機嫌な顔を微塵も隠そうとしない夫人と、その後ろにも似たような顔の娘が二人。
「愚鈍な使用人ね。主人が帰ってくる時間には玄関の前で待機しているのが当然ではなくて?」
「も、申し訳ございません...。」
開口一番に嫌味を零すシャントニー夫人に、苦い気持ちでアイリーンは深く頭を下げる。
「はァ!それにしてもつまらない舞踏会だったわ!殿方はブ男しかいないし、唯一綺麗な伯爵令息も失礼な男でやんなっちゃう!」
ぞろぞろと屋敷内へ入ってくる夫人たちの後を見れば、馬車の中にいくつかの荷物が放り込まれたままだった。アイリーンは大きな声で話すカティの話に耳を傾けながら、慌ただしく荷物を屋敷の中に運び込む。
「まぁ、お姉様ったら。殿方に見初められなかったからって意地悪なことを。」
「あらロザリア、貴女はいいわよねぇ。あんな不細工でも満足できるんだから。」
「ちょっと、フレック様のことを言っているの?」
「彼、ディアナントおじ様の家系でしょ?階級も低いし...私だったら御免だわ。」
「ムキイイイ!誰からも相手にされなかったからって、八つ当たりはやめてくださる!?この性悪女!」
「な、なんですってェ!?」
「おやめなさい!みっともない。」
シャントニー夫人のキンとした怒鳴り声が鋭く響く。
アイリーンは自分が怒鳴られたわけでもないのに、身体をびくりと跳ねさせた。
「はぁ…ロザリア。お前はその令息にお熱のようだけれど、あんな放蕩息子はおやめなさい。お前のような美しい子にはもっと良い殿方がいるわ」
「えぇっ。けれど、お母様」
「安心なさい。今回の舞踏会でディブリックル伯爵のご令息をお屋敷にご招待したのよ。」
「ディブリックル伯爵の...?そ、それってお母様、一日目に帰られたあの...」
「お母様、それってスアン様のこと!?」
興奮気味の二人を横目に、アイリーンは手際よく三人のお召し物をどんどん片づけてゆく。
世間を知らぬアイリーンにとって夫人たちの話はさっぱりだった。
「伯爵の出生がトロヴィで、お爺様のお得意様がトロヴィの特製品を扱っているとお話をしたら是非お屋敷に来たいって。」
「さすがお母様だわ!スアン様なら、私の旦那様にふさわしい殿方よ。」
「すごいわお母様。伯爵様とそんなお話ができるなんて。」
「ふふふ。二人とも、絶対にご令息を落としてみせるのよ。」
「で、でも、ロザリアはフレック様がいるのだからよろしくてはなくて?お母様。」
「いいえ。お前達二人でご令息のお相手をするのよ。このご縁、絶対に無駄にしてはいけないよ。」
「ということだから、アイリーン。」
「はっ、はい!」
シャントニー夫人から声をかけられたアイリーンは思わず背筋を伸ばし、勢いよく返事をした。
「晩餐会は来月行う予定だから、お前には人一倍働いてもらうわよ。」
夫人はにっこりと、微笑みながらそう告げるのだった。
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