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星に煙がかからないように
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氷雨からのメッセージを、僕は何度も読み返した。
その度に吐き気がした。
孤独に死んでいった男子生徒や、見殺しにする以外の選択肢を与えられなかった氷雨に。そして何よりも、氷雨を悪として殺そうとした、自分自身に。
せり上がる嫌悪感を、僕はタバコの煙で上書きする。
《きっとよぎセンなら、真っ当に幻滅してくれるのだろうと思います》
煙の呼吸は喘鳴にも似たリズムで、くすんだワンルームを灰に染め上げていく。
けれど何度肺に煙を含んでも、記憶から氷雨の言葉が消えなかった。
これほどまでに悲惨な過去を、言葉を崩しもせず、淡々と丁寧に書き綴るには、どれほどの痛みを伴うのだろう?
想像して、返信を打って、すぐに書きかけのメッセージを消去した。
籠もった部屋の湿った空気は、考え事を妨げる。
僕は若も呼ばず、一人で部屋を出た。
下宿前の公園に落ちた夜は、一人になるにはちょうどいい。
ベンチに座ってタバコを加え、フリントを擦る。
緋色の炎がぼうっと夜を舐めて揺らぐ。一拍の後に燃え始めた火口を灰の煙で霞めて、僕は脱力した。
「どの面下げて、氷雨を軽蔑しろってんだ……」
氷雨は、きっと誰よりも真っ当に人間をしている。
メメント・モリに従うあまり、早まってしまったのは仕方がない。思春期の人間は心身ともに未完成で、そのせいで不安定だ。
それでも踏みとどまれたのなら、もう何も悔やむことはないのに。目の前で死んだ一人の人間に縛られて、氷雨は幸福を受け入れられないでいる。
「人殺しなんだぞ、僕は」
思考は何も纏まらなくて、まだ長いタバコを靴底で揉み消す。
固く瞑った目を開けると、目の前に一本のタバコが差し出された。
「自供は署で聞こうか、兄ちゃん」
心臓に悪い声がした。
立ち上がって見下ろすと、くたびれたニヤケ面がライターに火照っていた。
「なんだ、座れよ坊主。リラックスリラックス」
いつかも聞いた言葉を、檜垣さんはひどく冷めた声で言った。
「どうせ星にバレてんだ。尾行なんて終わりだ終わり」
「つけてたんですか」
「ああ、なんか。ムズムズするようなもどかしい青春だったぜ、お前ら二人とも」
文句の一つでも言ってやりたい気分だった。
屈辱感や羞恥心を吐き出す前に、もう一度タバコを差し出される。
僕は見たこともないタバコを受け取って、少し離れたところに座った。
「ジタンだ」
「え?」
「スペインのジプシー女。フランスのタバコだ」
こちらには一瞥もくれずに、檜垣さんは遠い目を星に向けていた。
その度に吐き気がした。
孤独に死んでいった男子生徒や、見殺しにする以外の選択肢を与えられなかった氷雨に。そして何よりも、氷雨を悪として殺そうとした、自分自身に。
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《きっとよぎセンなら、真っ当に幻滅してくれるのだろうと思います》
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けれど何度肺に煙を含んでも、記憶から氷雨の言葉が消えなかった。
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想像して、返信を打って、すぐに書きかけのメッセージを消去した。
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「人殺しなんだぞ、僕は」
思考は何も纏まらなくて、まだ長いタバコを靴底で揉み消す。
固く瞑った目を開けると、目の前に一本のタバコが差し出された。
「自供は署で聞こうか、兄ちゃん」
心臓に悪い声がした。
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「なんだ、座れよ坊主。リラックスリラックス」
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