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ただいまと、さよならと

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 学校近くのコンビニには、一年の中でも有名な不良たちが屯っていた。
 僕と若は隣接する建物の影から、彼等の様子をうかがう。
 標的はコンビニの中にいるらしい。若を慕う、物腰の柔らかな後輩が教えてくれた。
 高まる緊張を温い笑いに変えて、単調な夜の虫に溶かす。ポケットに突っ込んだボールペンと結束バンドを確認して、若と顔を見合わせる。
 頷きの後に、僕らは歩き出した。
 蒸し暑い夜を肩で切る。コンビニの電灯が頬を冷たく濡らす。
 一年生たちの前に立った僕は、友好的な笑顔を作って見せた。

「ねぇ。女の子の写真売ってるの、君たちかな?」


 最後に残った一人は、駐車場のフェンスにぶつかって動かなくなった。
 スマホの時計を見ても、時間はまだ十分しかたっていない。
 濡れたアスファルトにつけた尻が、ぐっしょりと濡れていた。全身がまんべんなく痛む。
 昂った感情を引っさげて立ち上がると、若がバシリと僕の背中を叩いた。

「後は、お気持ち表明ブスか」
「だね。まだコンビニだ」
「まだ気付いてねーのかよ」
「気付いてるから出てこないんでしょ」

 言いながら駐車場を見渡す。
 死屍累々。僕らと同じようにボロボロになった一年生たちが、立ち上がるのも諦めて横たわっている。大きく上下する胸板が生々しい。
 まばらに倒れる一年たちの間を通り抜けながら、若が鼻を鳴らす。

「お前、こんな奴らにそんなボコられたんか」

 見下ろしてくる若もずいぶん痛めつけられていた。
 左目の上はコブになっていて、もう半分も開いていない。

「そんなにひどいかな」
「鏡見てみろよ、どう見ても負けたボクサーの顔だ。片目見えてねーだろ、それ」
「でも、負けたか?」

 溺れるように息をして、それから返すと、若は傷だらけの顔を二ッと歪めた。

「バカ言え。俺らの勝ちだ」

 縮んだ肺でなんとか息を吸い込む。傷口を避けるような低い笑いが、僕らの間に漏れていく。
 車のドアの閉じる音に怒声が重なったのは、ちょうどその時だった。

「こういうのはなァ、勝ち負けじゃねぇんだよクソガキ共!」

 彼の声が聞こえてくるのは分かりきったことだった。
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