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men’s outside
しおりを挟む「なぜ我々も追い出されるのですか!?」
「巻き込まないでくださいよ」
「あぁ~せっかくのロゼッタとの茶会だったのに~親父殿たちのせいですよ」
三者三様に言いたい放題言っているが、彼らも彼らで止めなかったためリリーの怒りを買い追い出されたのだ。
ここは公爵家の応接間。
歴史を感じさせる調度品の数々と品の良い家具が並べられ、六人の美丈夫たちが一枚の絵画のように不規則に鎮座している。
邸宅の主人は窓際のアルコーブに項垂れるように座り、頭を抱えている。
六人の中で一際大きな躯体の男は、一人掛けのソファに背を預け足を投げ出し行儀悪く仰け反っている。
三人の若者は応接間中央のローテーブルを囲むようにソファに座りうなだれる二人にガミガミと何かを話しかけている。
そして彼らから少し距離を取り、王族のように堂々と長い足を組み優雅にお茶を嗜む男が一人いた。
「グランヴェル!お前も何とか言え!父上たちがこうなったのも元はと言えばお前が挑発したからだろう!!」
「……挑発にのる御二方が“未熟”なだけで、奥方に怒られたのは私には関係ないですよ、ディラン殿」
ノアの言葉にピクリと項垂れていた二人が反応する。
「「…………殺す」」
息が合う二人がのそりと起き上がりノアに殺意を向けるが気にも止めずお茶に口をつける。
「ちょっちょと!親父殿!」
「殿下!!」
慌ててワイアットとディランが、血走っている二人を止めに入りオーウェンが間に入る。
「グランヴェル卿、いい加減にして下さい。何故そこまで煽るのです!?ロゼッタと結婚したいのでしょ?……ならここまですることはないのでは?」
ノアは冷めた目で彼らを一瞥し、またカップに口をつけ吐き出すように答える。
「どのような態度でも貴方がたは俺とロゼッタを認めたくないのだろう。なら十五年前の意趣返しもしたくなる。あの頃とは違い、俺にも力はあるからな」
カチャリと音がなり、カップが机に置かれる。
ノアが優雅に立ち上がり彼らの正面に歩み出る。
「何度も申し上げているが、俺はロゼッタを愛している。昔から。貴方達に邪魔されても忘れられなかった。彼女に出会えて俺は変われた。救われた。……やっと出会えたんだ。もう離れることなんて考えられない。ロゼッタが許してくれるのであれば隣にいたいと願ってる。彼女が何よりも大事にしているのが貴方達なのを理解している。彼女が守りたいものは、俺も守る。だからどうか婚姻を認めていただきたい。それでも納得がいかないのならば、いくらでも力で証明してみせる」
決意の篭る深い青い瞳が彼らを見据える。
「お前はロゼッタを幸せにできると、その名と剣に誓えるのか?」
低く冷淡な声を響かせ問うウィリムの瞳は、先ほどの殺気は少し影を潜めていた。
「誓う。万が一、俺が彼女を傷付けるようであれば貴方達の手で殺してくれていい」
ドサリと音がし、二人が振り返るとマテオが先ほどと同じ体勢に戻り額に手を当てていた。
「ウィル、もういい、その辺にしとけ」
何かを諦めたように嘆くマテオがノアに視線を向けた。
「お前の覚悟も思いも理解してる。いかにロゼがお前を思っているかも……ただな……我々は折り合いがつかんのだ。薄汚い世界で生きて来て、慣れてるはずなのだがな……」
肘を膝にあて前かがみになる。
前を見つめるマテオの瞳は慈しみに満ち、何か懐かしい思い出と邂逅するように虚空を見据えていた。
「あの子を初めて抱きしめた時はな……本当に小さくてな。自身の魔力に侵されながらも懸命に生きようと力強く足掻いていた。天命だと思ったよ……あの子の境遇は我々の滓だ。俺には彼女を救う義務と責任がある、とな。ただな、こんな男のところに拾われて彼女は幸せなのか? 利用されるのではないか?と常に自問自答していた、ただの自己満足ではないのかとな……」
皆が初めて聞くマテオの胸の内を拝聴する。
「この世界であの子ほど純粋で誠実な子を俺は知らない。恥ずかしながら、あの子と出会うまで知らなかったな、こんな気持ちは。……我らに恩義など持たなくていいものを…あの子にはただ与えられるべき幸せと権利を享受してほしいだけなのだ。あの子は……私の娘なんだ、血がつながっていなくとも。心の底から幸せであれと願っている。グランヴェル……わかってくれ……少しだけ、少しだけ考える時間をくれるか、どうか」
現王より実力者であると言わしめる王弟マテオが頭を垂れた。
王族が頭を下げるという重大さに公爵家の面々が狼狽えるが、それをノアは静かに見つめる。
「殿下、お顔をお上げください。発言を、よろしいでしょうか……」
「許そう」
琥珀を磨いた金の瞳が深く青い瞳を見据える。
「愛しているから、愛を返したいのだと思うのです。我々は愛情を知らずに生きてきた、屈折した人間です。平気で汚いこともできるし、この手は既に血で汚れている。それ自体に後悔はありません。殺さなければ殺される、そういう世界に我々は住んでいる。その世界の中でも彼女は真実に目を逸らすことなく、我々とは別の方法を模索しながらも懸命に生きている。それは貴方達が心からロゼッタを愛していたから。汚すことを恐れ隠し続けたのでしょうが、彼女にとっては逆効果でしかありません。愛してくれた人々がいる場所を、世界を、理解したい。支えになりたいと望んでいる。それがどんなに血塗られた場所であっても。守られるのではなく、共に戦いたいと。そういう女ですよ、ロゼッタは。……貴方達の愛がロゼを強くしたんです。……信じてあげてください。彼女は貴方達に育てられて幸せなのです。これ以上ないほどに……」
琥珀の瞳が潤み手で覆い隠される。
「……そうか……そうだな、感謝する、グランヴェル」
「……いいえ」
「共に戦う、か……立派になったと思わぬか、なぁウィルよ――」
「――はい、殿下」
金と碧の瞳が再び潤いわずかに揺れる。
応接間には先程とは違い、穏やかな空気が流れていた――――。
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