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光と闇
しおりを挟む「ノアの馬鹿!!」
バシバシと遠慮なく肩を叩く。
軽く意識が飛び、気付くと執務椅子で業務をしているノアの胸の中にいた。
目が合うとクツクツと満足げな笑顔のノアがいた。
「もうっ信じらんない!!」
「そう怒るな、可愛かったぞ」
耳元で息を吹きかけながら喋るノアは上機嫌のようで、補給だと言っているが、時と場所を考えて頂きたい。
「ロゼが実家に帰ってしまったし、今はお互い仕事が忙しいからな。こうでもしないと、お前を感じられんだろ。ロゼも覚悟してくれ」
と悪びれる様子もなく未だ肩を震わせ笑っている。
正直、私もノア不足だった自覚があるので強く言えない。
「この後の予定は?」
「ん? すまない、まだこの書類を片付けなきゃならないんだ。……寂しい?」
顎を掬い、頬に手を当て顔を覗き込み見つめられる。
全てを見透かすような青い瞳に私の顔が映る。
――情け無い顔……
おもむろにノアの前髪をかき分け、頬に手を添える。
「ノア」
「ん?」
「寂しい……けど、大丈夫。これが終わったらさ……」
すりすりと頬や耳、ノアの髪を撫でる。
ノアは何も言わず、されるがままにしてくれているが目をそらさない。
「……旦那様?」
意趣返しのつもりで言ったつもりが、地雷を踏んだようだ。
再び貪るようにキスをくり返され、下着も使い物にならないくらいぐちょぐちょに濡らされた。
力も入らず寄りかかり、ノアが満足したところでやっと離してもらえた。
――――
準備は着々と進み順調そのもの。
ノアは宣言通り、隙を見ては空き部屋に私を引き摺り込み、身体を高揚させ疼かせる。
やり過ぎかとも思ったが、ノアとの触れ合いに満たされているのも事実である。
「ロゼッタ司書、少しお時間よろしいか?」
作業中に声をかけてきたのは、ディランだった。
「え、あ、はい」
「すまない、こちらに」
図書館内の為、よそよそしく外に促すディランの後を足早に追う。
「すまん、ロゼッタ。急に驚いただろ?」
「いえ、大丈夫ですが……何かありましたか?」
「あぁ、父上からでな。……これに、見覚えはあるか?」
「ウィリアム様の?……これは?……ん?これ…………」
ディランに渡された上質の布の中には、見覚えのある文字が刻まれた拳大の魔石が包まれていた。
「っ……ディラン様……これを……どこで?」
魔石の禍々しさに思わず声が震えた。
「殿下が取り調べの際に…押収物から出てきたようだ。やはり、これは……」
「っ、ディ、ディラン様……ッ」
足元がおぼつかず膝から崩れ落ちそうになるのをディランがすかさず支える。
「っロゼ!!大丈夫か!?今日はもう終業だろ?続きは家に帰ってからにしよう。どうかそんな顔をしないでくれ。お前は何も悪くない。――グランヴェルも呼ぶか?」
ディランの腕に縋りつき嗚咽を漏らしながら、頷くことしかできず、そのままディランに支えられ帰路に就いた――
虚無感を抱きながら、馬車の車窓から街並みを覗き見る。
街には至る所に私が開発した魔石が設置されている。
公園に、公衆トイレに、そして各家庭にも――私が、私が原因だ――
見つけた魔石には緘口令がひかれているもう一つの用途がある。
この世界には七つの属性があり、火水木地風の五属性は五すくみの強弱関係にある。
残りの二つが『光』と『闇』の属性だ。
そして『光』と対になる属性が『闇』である。
『光』が浄化や治癒の『正』の属性であり『闇』は死や破滅の『負』の属性だ。
光属性持ちが少ないのと同様、闇属性持ちは光属性より希少である。
件の魔石には闇属性をも付加することができるのだ――
使い方を間違えれば、悪用され多くの人が犠牲になる。
そうならない為にも対抗策を考え、研究発表前に上層部に掛け合った。
マテオの采配で箝口令が敷かれ、発表は光属性のみを行った。
最悪の事態を招いてしまったことに、体の震えが止まらない。
悪用されないよう策を巡らせたつもりになっていたことへの罪悪感が胸を締め付ける。
瞳から涙が溢れる。
瞬きをすることも忘れ、街を見続ける――
景色がぼやけ涙が滂沱として流れ落ちる――
その涙を拭うことも忘れ外を見続けた――
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