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海の上
しおりを挟む見渡す限りの水平線――
空と海が交差し深い青から薄く白い青へとグラデーションをつくる。
ここは船上、私は今、ディランが船長を務める海軍の船に乗り“焔の無人島”に向かっている。
「ひゃぁぁぁぁぁ、やっぱ船の上って気持ちいぃ!!」
誰もいない船尾に身体を預け、航跡を眺めていると声がかかる。
「ロゼッタ。そんなに前に乗り出すと危ないぞ」
「ディラン様!!」
「気分は…よさそうだな」
「はい、今日も興奮して寝られるか心配です」
そうか――とディランが眉尻を下げ、優しく微笑みかけてくれる。
騎士の誓いを受けたあとノアとマテオ様から私には隠されていた全てを聞いた。
闇の魔石を所持していたのはノアの生家グラヴェル伯爵家だった。
ただ、伯爵家には魔力量の高い人間がいない為魔石を作ることは不可能だ。
それでも闇の魔石を所持し、他国に売買したり悪用しようとしていた。
没落寸前の伯爵家に金銭的な体力もあるはずがなく、調べを進めるうちに見えてきた事実。
伯爵家を隠れ蓑に大きな後ろ盾がいた。
グリード公爵家である。
現王には二人の妃がいて、それぞれに男児がいる。
第一王妃は筆頭高位貴族の令嬢。
しかし長く子宝に恵まれず、家臣たちの進言に従い王は第二王妃を娶った。
歯車はここから狂い出す。
先に懐妊したのは、第二王妃。そして第一王子が誕生した。
グリード公爵家はリンドバーグ公爵家とは対になる貴族だ。
お互いに何代か前に王家の姫が降嫁していて、立場も同じ公爵位だが政治的には真逆の立場である。
よくある簡単な話だ。
権力が欲しい第一王妃の生家のグリード公爵家。
第一王妃は王子を産めず無能な王妃と生家からも罵られた。
当時の公爵家当主は考える――いかに権力者を内に引きずり込めるかを。
最初はマテオを取り込もうと若いころ公爵家の姫の婿にと釣書が来たとか。
継承権争いに嫌気がさしていた為、子供を作る気も、結婚する気もなかったマテオは案の定断固として断ったそうだ。
その後すぐに第一王子が生まれ、公爵家の代替わりもあり一時は静かになったそうだが――
第一王妃に王子が生まれた頃から以前より権力を欲するようになった――我が血筋を王とするために――
手始めに力を手に入れようと、当時すでに頭角を現していた十一歳のノアに目を付けたのだとか。怪しからん!!
十歳で伯爵家を出て絶縁していたとはいえ、勝手に公爵家の姫が婚約者になっていた。
十八歳になってから婚約していることを知り、まぁご想像の通り倍返しのごとく暴れまくったそう。
それがきっかけで伯爵家は没落寸前、藁にも縋る思いでグランヴェル伯爵家は公爵家の駒となり、色々悪事に手を染めていたらしい。
公爵家もいつかはノアが手に入ると思っていたのだろう、最近まであの手この手とノアを懐柔しようとしていたらしい。
けれど、予想もしていないところから私という存在が現れた。
ただの平民の価値のない図書司書の女をノア・グランヴェルが懇意にしていると。
平民を消すことぐらい高位貴族にとっては瑣末なことだ。
ただ身元調査を進めるうちに私が司書としても実績を残しているためなかなか手が出せない。
それで強硬手段に出てくるのではとのことだった。
私からすると、そもそもの王政が納得がいかない。
この国は一夫一妻制だ。ただし王家を除き――である。
そこがどうしても納得がいかない。
なぜ王家の血を繋ぐために犠牲者がでなければいけないのか?
私が第一王妃や第二王妃の立場であったなら絶対に嫌だ。
例えどんなに愛している人の頼みであっても、むしろ言われた瞬間に愛が冷める自信がある。
同じ熱量で返してもらいたい、そう思うのは普通ではないのだろうか?
なぜ国民が許され王は許されないのか。
血の繋がりとは、それほどまでに大切なものなのかと思ってしまう。
子ができなくても愛し合う夫婦はいるし、養子をとり家名を引き継ぐことだってある。
血が繋がっているはずの家族に利用され縁を切ったノア。
血も繋がらない私を愛し育ててくれた人々。
大切なものは本当に血を繋ぐことなのだろうか――そう告げたあとのマテオの複雑な困惑した表情が頭から離れない。
はぁーと大きなため息が出て肩を落とす。
考えても仕方ない――振り向くとディランの横にノアも立っていた。
今、私はこうして自分で見つけた愛を享受し、家族として繋がっている。
血が繋がらなくとも、誰が何と言おうと、私たちには確かな絆がある――
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