【完結】堅物司書と溺愛魔術師様

3R.M

文字の大きさ
27 / 41

遺跡調査いよいよ2

しおりを挟む

「ロゼッタ!!探したよ!!」

 ノアと本陣へと合流してから、しばらくしてオレンジ色の髪を振り乱しながらマリーが駆けてきた。
 荒げた息を整わす様に肩で息をしたマリーの後には、いつかの爆弾発言をした美女魔術師ナザリーの姿も見えた。

 ――あっ!マリーと同じ班だったけ!?

「どうしたのマリー!?そんなに慌てて」
「ロっ、ロゼッタに――――っはぁ、はぁ、はやくっは」

 息も絶え絶えのマリーを横目に淡々とナザリーが引き継いだ。

「私達の班にて有力な情報が見つかりましたのでご報告を。ロゼッタさんに確認後すぐ出発できる様、設備や騎士団の要請もすべて整えておりますわ」
「え゛っ!!本当にナザリーさん!マリー!?」
「そっ、そうなの!!??はぁはぁ、見つけた!!」

 がばりと上体を起こし、目を見開きながらマリーが、羊皮紙の束と片手に収まるほどの一つの石板を胸に押し込んできた。

「これは…ん?これ…」

 石板を覗くように、ノアも私の手元に身を乗り出してきた。
 石板と思われたものはよく見ると、表面は樹皮のようで、非常に軽く黒々と、しかし艶やかに光り輝いていた。
 時折、木目の隙間から僅かに赤く光る蠢くものが現れるのがより神秘的に思わせる。

「……木炭か?…中のは、火か?熱くないのか?」

 ノアも同様のことを思っていたようで、私の掌にあるものをまじまじと見つめている。

「うん、少しも熱くない。寧ろ…心地よい」

 ノアも私の掌から拾い上げ触ったり、いろいろな角度から掲げて観察している。

「術式のかけらか?…でもな…これ個で独立してるってことだよな…ん」
「マリー、ナザリーさんの班が見つけたんだよね?今日の場所って…」
「そう!!あの湖畔の中に沈んでいたの!!他にもありそうだったんだけど、そこまでは確認できなくて」
「っいい!!全然いい!!すっごい、マリーすごいよ!!大発見!!すごい、本当すごい!!」
「えっ、本当!?っ私、ロゼッタの力になれた…?」

 マリーの顔を見て自分自身が如何に周りに心配をかけ余裕がなかったのかに気付かされた。

「マリー……ありがとう」

 ーーーー

「ノアは湖畔に向かい水源を探して。私は火口へ、少し危険だけどやっぱり直接そこから入り遺跡の入り口を探す。そこにこの島の守護魔法陣が必ずある。マリーが見つけた木炭で確信した」

 当初、私の仮説は遺跡のみを守るためマグマの自然エネルギーから魔力を吸収し蓄え魔法陣を発動するだけだった。
 けれど、木炭であった木にも守護の付加が馴染んでいた。

 水源から島の隅々に広がり、木々が水を吸い込むように魔力を蓄える。守護された土地は枯れることはない。
 魔力が多ければ多いほどに魔法陣は強くなる。
 マグマで焼かれたとしても大地には新たに芽が息吹く、通常よりも何倍も速く。
 遺跡はマグマから魔力を蓄え守護する。

「本来あった入り口は噴火の繰り返しでなくなったとみていいと思う――…二箇所。水と火。そこに必ず魔法陣がある」

 私の仮説を集まった司書や魔術師たちは、何も言わずただ静かに聞いていた。
 辺りは、人の声はなく自然の音だけが流れていた。

「ここまでの大掛かりな守護魔法なんて見たこともない。すごい。島ごとなんて……どれほどのものを守ろうとしたのだろう」

 その静かさを破るようにマリーが私が思っていたことを詠嘆の声で上げた。

「えぇ、本当に。これは魔術師としても興味が湧きますわ」

 ナザリーの声に反応したように、周りで聞いていた人たちも考察し始め辺りは賑わいを戻していた。
 その間ノアは一切目線を外すことはなく、私を見つめていた。

 その瞳の色は深く深い青い色をしていた。

「なぜ別行動を選ぶ?」

 周りの喧騒に消えそうな静かな声だった。
 その瞳は輝きを失くしただけの深く青い色。
 眉間に皺を寄せ不服とばかりに物語っていた。

「今は離れるべきではない。いつどこで狙われるかわからないんだ。俺のそばにいてくれ」

 腕を取り縋るように手に力が入る。

「それでも成し得たいことがあるの。…だから一番信頼できる貴方に任せたい。他の誰かじゃなく、――ノア、貴方に――」
「――っ!それでもっ俺はっ」
「ノア、わかって。私はノアが思ってるより弱くないよ」

 ノアの手を取り指輪に触れる。
 そこには二人の髪色を宿したブラックダイヤが輝いている。
 自分の首輪からお揃いの指輪を外しノアの掌に優しく置くと、ノアは驚愕で目を見開いていた。
「――嵌めてくれる?」と揶揄うように笑うと、あからさまに安堵したように抱きしめてくれた。
「――返されるのかと思った」と私の髪に顔を埋めさせ嘆いているが、私はノアの胸の中でくつくつと肩を震わしていた。
 大きなため息の後、体を離し左手を取られる。
 身長差のせいか少し前かがみになりながら、手の指先から甲に掌へとノアの薄く柔らかい唇のキスが落とされる。
 触れた場所から熱が灯り体中を巡る。
 自分からお願いした事以上の状況に羞恥に晒される。

「っノア、いじわる…」
「好きだろ?」

 掌に唇を当てながら口角を上げ見上げるノアの瞳はまさに捕食者のような情欲を含んでいた。
 跪き静かに指輪がノアの手によって私の薬指に嵌められる。

「終わったら、すぐに結婚しよう。あの人たちに何と言われようと、すぐに」

 手を握られ懇願するように見つめられ自然と頬が緩む。

「もちろん。ノアも負けないで、ちゃんとお嫁さんにしてね」

 義父たちの騒ぐ姿を思い浮かべながら微笑むと、ノアも呆れたような、それでも甘い蕩けるような笑顔を返してくれた。

「あぁぁ!!やっぱりロゼッタだったんじゃ!!」
「あら?これはお熱いこと。やっぱり噂は本当だったという事かしら?」

 喧騒は狂騒に変わり我に返る。
 慌てる私を横目に「バレたな」としたり顔で抱きしめてくるノアを押しのけ持ち場に駆ける。
 背中からは珍しく声を出して笑うノアの声が聞こえた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

多分、うちには猫がいる

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
傭兵のコウの家には、いつの間にか猫が住み着いていた。 姿は見えないけれど、多分、猫。 皿を洗ったり、洗濯をしたり、仕事を手伝ったり、ご近所さんと仲良くなったりしているけど、多分、猫。 無頓着な傭兵の青年と、謎の猫のステルス同居物語。 ※一話一話が非常に短いです。 ※不定期更新です。 ※他サイトにも投稿しています。

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

婚約破棄された令嬢は氷の公爵に拾われ、気づけば溺愛されていました~見下してきたあなた、後悔してももう遅いわ~

exdonuts
恋愛
婚約者である王太子に理不尽な罪をなすりつけられ、婚約破棄された公爵令嬢レティシア。 家族にも見放され、絶望の淵にいた彼女の手を取ったのは「氷の公爵」と呼ばれる冷徹な青年・アランだった。 愛を知らずに生きてきた彼の優しさが、傷ついたレティシアの心を少しずつ溶かしていく。 一方、過去の悪行が暴かれ始めた王太子とその取り巻きたち。 ざまぁが爽快、愛が深く、運命が巡る。 涙と笑顔の“溺愛ざまぁ”ロマンス。

薄幸の王女は隻眼皇太子の独占愛から逃れられない

宮永レン
恋愛
エグマリン国の第二王女アルエットは、家族に虐げられ、謂れもない罪で真冬の避暑地に送られる。 そこでも孤独な日々を送っていたが、ある日、隻眼の青年に出会う。 互いの正体を詮索しない約束だったが、それでも一緒に過ごすうちに彼に惹かれる心は止められなくて……。 彼はアルエットを幸せにするために、大きな決断を……!? ※Rシーンにはタイトルに「※」印をつけています。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

処理中です...