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遺跡調査いよいよ2
しおりを挟む「ロゼッタ!!探したよ!!」
ノアと本陣へと合流してから、しばらくしてオレンジ色の髪を振り乱しながらマリーが駆けてきた。
荒げた息を整わす様に肩で息をしたマリーの後には、いつかの爆弾発言をした美女魔術師ナザリーの姿も見えた。
――あっ!マリーと同じ班だったけ!?
「どうしたのマリー!?そんなに慌てて」
「ロっ、ロゼッタに――――っはぁ、はぁ、はやくっは」
息も絶え絶えのマリーを横目に淡々とナザリーが引き継いだ。
「私達の班にて有力な情報が見つかりましたのでご報告を。ロゼッタさんに確認後すぐ出発できる様、設備や騎士団の要請もすべて整えておりますわ」
「え゛っ!!本当にナザリーさん!マリー!?」
「そっ、そうなの!!??はぁはぁ、見つけた!!」
がばりと上体を起こし、目を見開きながらマリーが、羊皮紙の束と片手に収まるほどの一つの石板を胸に押し込んできた。
「これは…ん?これ…」
石板を覗くように、ノアも私の手元に身を乗り出してきた。
石板と思われたものはよく見ると、表面は樹皮のようで、非常に軽く黒々と、しかし艶やかに光り輝いていた。
時折、木目の隙間から僅かに赤く光る蠢くものが現れるのがより神秘的に思わせる。
「……木炭か?…中のは、火か?熱くないのか?」
ノアも同様のことを思っていたようで、私の掌にあるものをまじまじと見つめている。
「うん、少しも熱くない。寧ろ…心地よい」
ノアも私の掌から拾い上げ触ったり、いろいろな角度から掲げて観察している。
「術式のかけらか?…でもな…これ個で独立してるってことだよな…ん」
「マリー、ナザリーさんの班が見つけたんだよね?今日の場所って…」
「そう!!あの湖畔の中に沈んでいたの!!他にもありそうだったんだけど、そこまでは確認できなくて」
「っいい!!全然いい!!すっごい、マリーすごいよ!!大発見!!すごい、本当すごい!!」
「えっ、本当!?っ私、ロゼッタの力になれた…?」
マリーの顔を見て自分自身が如何に周りに心配をかけ余裕がなかったのかに気付かされた。
「マリー……ありがとう」
ーーーー
「ノアは湖畔に向かい水源を探して。私は火口へ、少し危険だけどやっぱり直接そこから入り遺跡の入り口を探す。そこにこの島の守護魔法陣が必ずある。マリーが見つけた木炭で確信した」
当初、私の仮説は遺跡のみを守るためマグマの自然エネルギーから魔力を吸収し蓄え魔法陣を発動するだけだった。
けれど、木炭であった木にも守護の付加が馴染んでいた。
水源から島の隅々に広がり、木々が水を吸い込むように魔力を蓄える。守護された土地は枯れることはない。
魔力が多ければ多いほどに魔法陣は強くなる。
マグマで焼かれたとしても大地には新たに芽が息吹く、通常よりも何倍も速く。
遺跡はマグマから魔力を蓄え守護する。
「本来あった入り口は噴火の繰り返しでなくなったとみていいと思う――…二箇所。水と火。そこに必ず魔法陣がある」
私の仮説を集まった司書や魔術師たちは、何も言わずただ静かに聞いていた。
辺りは、人の声はなく自然の音だけが流れていた。
「ここまでの大掛かりな守護魔法なんて見たこともない。すごい。島ごとなんて……どれほどのものを守ろうとしたのだろう」
その静かさを破るようにマリーが私が思っていたことを詠嘆の声で上げた。
「えぇ、本当に。これは魔術師としても興味が湧きますわ」
ナザリーの声に反応したように、周りで聞いていた人たちも考察し始め辺りは賑わいを戻していた。
その間ノアは一切目線を外すことはなく、私を見つめていた。
その瞳の色は深く深い青い色をしていた。
「なぜ別行動を選ぶ?」
周りの喧騒に消えそうな静かな声だった。
その瞳は輝きを失くしただけの深く青い色。
眉間に皺を寄せ不服とばかりに物語っていた。
「今は離れるべきではない。いつどこで狙われるかわからないんだ。俺のそばにいてくれ」
腕を取り縋るように手に力が入る。
「それでも成し得たいことがあるの。…だから一番信頼できる貴方に任せたい。他の誰かじゃなく、――ノア、貴方に――」
「――っ!それでもっ俺はっ」
「ノア、わかって。私はノアが思ってるより弱くないよ」
ノアの手を取り指輪に触れる。
そこには二人の髪色を宿したブラックダイヤが輝いている。
自分の首輪からお揃いの指輪を外しノアの掌に優しく置くと、ノアは驚愕で目を見開いていた。
「――嵌めてくれる?」と揶揄うように笑うと、あからさまに安堵したように抱きしめてくれた。
「――返されるのかと思った」と私の髪に顔を埋めさせ嘆いているが、私はノアの胸の中でくつくつと肩を震わしていた。
大きなため息の後、体を離し左手を取られる。
身長差のせいか少し前かがみになりながら、手の指先から甲に掌へとノアの薄く柔らかい唇のキスが落とされる。
触れた場所から熱が灯り体中を巡る。
自分からお願いした事以上の状況に羞恥に晒される。
「っノア、いじわる…」
「好きだろ?」
掌に唇を当てながら口角を上げ見上げるノアの瞳はまさに捕食者のような情欲を含んでいた。
跪き静かに指輪がノアの手によって私の薬指に嵌められる。
「終わったら、すぐに結婚しよう。あの人たちに何と言われようと、すぐに」
手を握られ懇願するように見つめられ自然と頬が緩む。
「もちろん。ノアも負けないで、ちゃんとお嫁さんにしてね」
義父たちの騒ぐ姿を思い浮かべながら微笑むと、ノアも呆れたような、それでも甘い蕩けるような笑顔を返してくれた。
「あぁぁ!!やっぱりロゼッタだったんじゃ!!」
「あら?これはお熱いこと。やっぱり噂は本当だったという事かしら?」
喧騒は狂騒に変わり我に返る。
慌てる私を横目に「バレたな」としたり顔で抱きしめてくるノアを押しのけ持ち場に駆ける。
背中からは珍しく声を出して笑うノアの声が聞こえた。
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