【完結】堅物司書と溺愛魔術師様

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回顧

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◇◇◇◇

「グレタ、今日も頼む」
「リオ、今日もですか?いい加減にしないと奥方に捨てられますよ。他の方も考えた方がいいのでは?」
「外の奴らが諦めねぇんだよ。魔力があっても足りん。あと!お前の提案!!それは無理な話だ。俺は二ナしか抱きたくない。俺の事を考えてくれるのなら、お前が他の方法を考えろ。なぁ、心の友よ」
「貴方はまた、無理難題を」
「そんなこと言うなよ、この島一番の魔術師様で俺の心の友なんだからさ」
「心の友、ですか……」

 ――――
 この島は魔力補給が出来るのが性交しかない。
 なぜなのだ。
 いくら薬を調合しても微々たるものしか出来ない。
 何がいけないのだ。
 何の力にもなれないのか。
 なぜ私は男としてこの世に性を与えられたのか。
 狂おしいほどに彼を思っているのに。
 ――――

「二ナを愛してるんだ。それ以外の女からは魔力はいらない」
「それでは貴方がいつか死んでしまいます!!」
「死なない為に毎日二ナが抱かせてくれてるよ。いい奥さんを持ったぜ」
「何を馬鹿の事を!他の者は二、三人娶るのが当たり前なのに族長の貴方が二ナだけなんておかしいでしょ」
「それな……でも二ナしか愛せないんだから仕方ないだろ」
「愛などと!このまま魔力不足が続けば子を成すことだって難しくなる。一族の血を絶やすつもりですか」
「そんなことないさ。いつかは愛する女との間に子は欲しいさ。ただ外の奴らの襲撃が落ち着くまでは難しいだろうな。それにな、別に俺の血なんて特別なものでもないしな」
「族長の貴方が何を言っているのですか?」
「なぁ、グレタ。勘違いするな。俺がいるからお前らがいるんじゃねえぞ。お前らがいるから俺がいるんだ。わかってくれ」

 ――――
 わからない。
 なぜそこまであの女一人を愛せる。
 あの女の為だけに死ねるというのか、私を置いて。
 私はリオの為だけに存在しうるというのに。
 なぜ神は私ではなくあの女を選んだのだ。
 たいした魔力を持ち得ない女が。
 私が男でなければ……あの女がいなければ。
 この思いが妬ましい。
 醜い自分自身が何よりも狂おしい。
 ――――

「グレタ、頼む!二ナを助けてくれ!!」
「私ではこれが限界です。まずは貴方の魔力の回復を優先して下さい!二ナとお腹の子は私が見ていますから」
「無理だ、二ナ以外となんて。無理なんだ、頼む……グレタ。お前しかいないんだ……頼む」

 ――――
 なぜ他の女を抱かない。
 このままでは二人とも衰弱していく。
 口腔からの接触など微々たるものなのに。
 なぜ。
 なぜなんだ。
 ――――

「この景色が一等好きだった。俺も二ナも……見せたかった。でも、もう二ナもお腹の子もいない。なぁ、グレタ。俺は何の為に今を生きてるんだろうな」
「……一族の為に、島の為にも貴方は生きて下さい。今は辛くとも」

 ――――
 このままでは駄目だ。
 リオを失ってしまう。
 二ナが死んでから誰も抱いていない。
 魔力補給もせずに戦闘を繰り返している。
 このままでは失ってしまう。
 どうすればいい、どうすれば救える?
 ――――

「無理だ!死なせてくれ!頼む、グレタ!死なせてくれ」
「馬鹿なことを言わないで下さい。貴方は生きるのです。私と共に生きて下さい。お願いです。お願いだから」
「無理だ、無理だ。もう嫌なんだ。終わりにしてくれ、お願いだグレタ」

 ――――
 私には何も出来ないのか?
 愛する者を救うことも、愛する者が愛するこの地をも。
 どうすればいい。
 どうすれば。
 ――――

「この地を愛してた」
「これからも共に生きましょう」
「永遠に……愛してる」
「リオ」
「ニナを……この地を……永遠に」
「リオ」

 ――――
 今までの全てが夢だったのだろうか。
 報われないとわかっていても心を偽ることは難しい。
 最後まで彼が愛したのは、この地と己が愛する女だけだった。
 何と虚しいことか。
 何と残酷なことか。
 嗚呼、全てを滅ぼせばこの泥水のように思いも消え失せるのだろうか。
 私こそ何の為に生を受けた。
 神よ。
 教えてくれ。
 ――――
 彼が愛した場所に行き思い出を振り返る。
 至る所にまだ彼の気配がある。
 私はこの地を壊すことなど出来はしないのだ。
 彼が愛したこの地を永遠に残すことを誓おう。
 我が名にかけて。
 ――――

◇◇◇◇

「ロゼッタ司書」
「あっ!」
「大丈夫ですか?」
「あ、え、あぁ大丈夫です!ゴミ!!目にゴミが!!すいません」

 気付けば瞼からは涙が止めどなく溢れ、声を掛けられるまで日記を夢中で読みふけっていたようだ。
 辺りを見渡してから、そっと日記を撫で表紙を見据える。
 魔術書と同じ筆跡のグレタという一人の男の思いを垣間見た気がした。
 思わず深いため息が出る。
 遺跡内の術式の写しも終わり、作成者の魔術師が見つかった。
 これ以上の収穫はない。
 本来なら両手をあげて大興奮のところだが予想以上に一人の男の思いに感化され気が落ちている。

「はぁーーーーー」
「ロゼッタ司書?本当に大丈夫ですか?」

 日記の表紙を撫で自分の最愛の人々のことを思う。

 ――私にできること。

 自分の鞄に魔術書と日記をしまいながら周りに告げる。

「すいません。大丈夫です。別班に連絡をお願いします。我々は撤収しましょう」
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