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帰還と再会
しおりを挟む少し慌ただしい足音と明るい光で瞼を上げる。
「あぁっ、目覚められたのですね!本当よかった!誰か!誰か!奥様をお呼びして」
「…ここ、は…」
日の光が差し込む部屋と見慣れた天井ではない豪華な天井が見える。
「お嬢様!」
視界に飛び込んできたのは瞳に涙をこれでもかと溜めたテレサだった。
「本当によかった、今、奥様もすぐこちらにいらっしゃいますからね。お身体はいかがですか?何か必要なものはありますか?」
「…テレサさん…私…」
「調査団が帰還したのは三日前です。一度移動中に意識を取り戻したと伺っていましたが…まだ熱もありますのでご無理はされないでくださいね。皆心配しておられます、どうかご自愛くださいね」
テレサの話を聞き記憶を手繰る。
あの襲撃からすぐに船で帰路に着いたとしても五日間、私は寝込んでいたこととなる。
ぼんやりと思考していると、外が僅かに騒がしくなり扉が開いた。
「ロゼ!!あぁ、私がわかりますか?よかった!」
「リリー様…ご迷惑をおかけしました」
「迷惑なんかじゃありません!この子は本当に!まだ熱があるんです、起きなくて良いのよ。あぁ、ロゼ…おかえりなさい」
リリーの瞳から涙が溢れて、私も彼女の言葉で涙腺が崩壊する。
「ぅぅ…ただいま戻りました…」
――――
「あーーーお見苦しいところをお見せしました」
「まぁまぁ、お嬢様の醜聞なんて今に始まったことではありません。庭に飛び出ていったと思ったら泥だらけで蛙やら蜥蜴やらを捕まえてきたり、つい最近では酔い潰れて実家に帰ってきたりと、ふふふ、昔も今もお転婆なのは変わりありませんね」
「うぅぅ恥ずかしいよぉ。テレサさん~」
あらあらと笑いながら氷嚢を替えてくれる。
「今、果樹水をお持ちしますね」
そう言って退出したテレサと入れ違いにリリーがセスと共にやってきた。
「やっほーどうじゃ?具合わ?」
「セス様!すみません、ご心配をおかけしました」
「なになに良いってことよ…無事でなりより。ロゼの顔が見れて儂も一安心じゃ」
「殿下方はすごい形相でしたので置いてきたわ。貴方の体力が回復したら会ってあげてくださいね」
「マテオ様たちもいらっしゃってるんですか!?お会いしたい…」
「よいよい。彼奴らは煩いだけでじゃて。今のお主には安静が第一じゃ。ゆっくり休まれよ。どれ、少し見ようかの」
そう言って腰掛け手を取られた。
ほんのりと挟まれた掌が温まり指先からセスの魔力が流れてくるのがわかる。
身体中がポカポカとし、ふぅ息をつく。
セスと目が合い目が細められる。
うんうんと、頷かれ髪を撫でられた。
「魔力も安定してきているようじゃし問題ないじゃろ。あとは体力を回復すれば自然と魔力も全開し戻るだろう…よく頑張ったの」
「っ…ありがとうございます」
涙を堪え頷く。
「報告も聞いておる。よくやり遂げた。お主は自慢の愛弟子じゃなぁ」
よしよしと昔のように頭を撫でられ、また涙腺が崩壊した。
多くの人の支えで今の私があり、成し遂げることができた。
誰も犠牲にならなかったことが心底嬉しい。
けれど、大切な人を不安にさせてしまったのも事実である。
――強くなろう。
大切な人々を守る為にも、拳を強く握りまた新たに決意を固めた。
セスの背を見送りリリーの視線に気付く。
「貴方が寝ている間に彼の御人が何回も面会に来ましたよ。ただね…」
とリリーが苦笑いしながらグラスに果樹水を注ぐ。
「おかげで庭が大変なことになったわ。殿方ときたら何故あぁもムキになるのかしらね」
と少女のような笑顔でグラスを渡された。
「リリー様にも本当にご心配をおかけしました。庭の件は…私にできることがあればお手伝いしますので…」
「あら?そう?でわ、魔力が戻ったら花を咲かせてちょうだいな。一等綺麗な花壇を作りましょう」
「もちろんです!お任せください。リリー様と私の好きな花々でお作りしますね」
二人で笑いながら語る。
口に含んだ果樹水が喉を潤し、香りが鼻腔を抜けた。
生きて帰って来れたことに安堵し声が漏れた。
「…会いたいな…」
目を見開くリリーに気付き慌てる。
「あ!違うんです!!あ、違くはないんですが…その…何というか……」
「あらあら、まぁまぁ。ロゼッタも乙女になったのですね。母は嬉しいですよ、ふふ」
「…え?」
恥ずかしさより、先に最後の言葉に驚く。
「貴方が寝ている間にごめんなさいね。全て恙無く手続きも終わっているわ。貴方は正真正銘、我が家の娘です、ロゼッタ。…私の可愛い子」
そう言いながら優しく包み込まれる。
「…リリー様?」
「まぁ、母とは呼んでくれないの?」
額を突き合わせ微笑み合う。
「お母様!!うわーん!今日はみんな私を泣かせますぅぅ」
思わずまた大号泣をしてしまい、その声で男性陣が部屋に傾れ込んできたのは言うまでもない。
涙を浮かべきつく抱きしめてくれるマテオ様や、目元を赤くした”お父様“に見守られ、幸福を噛み締めた。
退室際に「ロゼッタ、今日は夜風が気持ちいいはずだからテラスは開けておきなさいな」と意味深な事を言い残すお母様を不思議に思いつつも、体は正直でそのまま眠りについた。
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