転生先の執事が愛しているのは「僕」であって「俺」ではない

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アトレ・ピエスドール。齢七歳、俺が転生したのは、金髪青眼の可愛らしい顔立ちをした男の子だった。どうやらこの子は伯爵家の息子らしい…前世の俺と似たような感じだな。ただ違うとすれば、この世界には魔法があり、色んな種族が共存しているというところだろうか。あと、どいつもこいつも顔がいい

「本日のお食事のメニューですが」

だだっ広い机の上に並べられた色とりどりの朝食。サラダにパンに果物に…定番といえば定番だが、どれもこれも手の込んだ作りをしているのは目に見えて分かる。メニューひとつひとつをご丁寧に説明するシェフの言葉を右から左へ聞き流しながら、盛り付けられた苺を1つ摘み食いする


「んん~」


みずみずしい甘さが口いっぱいに広がり思わず笑みが零れてしまう。なんの加工もされていないただ苺なのに、甘味がとてつもなく強い!ほっぺたを抑えにっこりしていれば、背後から鋭い気配を感じ背筋を凍らせる。ギギギ、と錆び付いた人形の様に後ろを振り向けば、此方をジッと見詰めているアルカーナと目が合った


「……」

「…」


説明の途中で食べるなと、無言の圧力を感じる。ごめんなさいと口パクで謝罪すれば彼は呆れた様に息を吐いていた。数十分後食事の説明が終わり、俺はようやく目の前に置かれた食事を口に運ぶことが出来た。…これが毎食毎に行われるのだからたまったもんじゃない。どれほど腹が空いていても説明を聞き終わるまではお預けなのだ

「…アトレ様、毎度申しておりますが、シェフの説明が終わるまでは決して食事を口に運ぶ事がございませんように」

「だってお腹空いてたし…なんで一々聞かないといけないのさ。据え膳にも程があるよ」

「すえ……?…何故、と仰られても……生まれた時からそうでしたでしょうに。最近は以前と比べて我慢が効かなくなりましたね…」

「ぅえっ?……そ、そんな事ないよ、今日はたまたま、すっごくお腹すいてて……えへへ…へへ」

「…そう、でしたか」

「う、うんそうなんだ。あ、これおいしそー!」

怪訝そうに眉を顰めるアルカーナに笑顔を取り繕い、ワッフルへ手をつける。生クリームとフルーツをふんだんに使ったそれをナイフで切り分け食べ始めた俺はアルカーナが他のメイドに呼ばれ離れて行く様子を見てホッと胸を撫で下ろした。危ない危ない…疑われないようにしなくては……今の俺は如月蒼羽じゃなくてアトレ・ピエスドールなんだった、しっかり振る舞わないと……普通、死んで転生したら赤ん坊から始まるもんだと思ってたけど…俺の場合はいきなり七歳なんだもんなぁ。それ以前の生活の記憶はあるとはいえ、急に如月蒼羽の性格を出してしまってはアトレを知る者は皆困惑するだろう


































朝食を終えた後は基本的には自由時間だ。この世界では学校に通うのは八歳かららしく、それまでは家で過ごす事が当たり前らしい。記憶の限りでは両親は遠方に仕事へ出かけており、年の離れた兄は他国に婿入りしている……つまりこの家にいるのは俺と、数多の使用人達だけだ


「おはようございます坊ちゃん」

「アトレ坊ちゃん、おはようございます」

「これはこれは坊ちゃん、今日は良い散歩日和ですなぁ」

「おはよ!みんな」

すれ違い様に各々声をかけてくる皆に返事を返しながら、俺は自室へと向かった。やることもないので飼っている子猫の世話をしようとしたのだが、部屋の前まで来たところでガシャーンと何かが倒れる音が聞こえた。慌ててドアを開けて部屋に入れば、子猫を抱き上げているアルカーナが此方を振り返った

「アルカーナ?」

「アトレ様…」

「今の音は、その子ミロがガラス割っちゃったの?」

床に散らばったガラス片と割れた窓を見れば一目瞭然。アルカーナは俺の質問に答えようとするが、彼の腕の中にいる子猫のミロはシャーと毛を逆立てて俺を威嚇した

「アトレ様がお食事をなさっている間に、メイドからこの子がアトレ様のお部屋で暴れていると報告を受けまして………裂かれたベッドのシーツ等は取り替えて部屋の掃除も済ませたのですが、その、少し目を離した隙に窓ガラスを割ったらしく」

「そうだったんだ…お部屋、片付けてくれてありがとう。……でも、ミロはどうしてそんなに怒ってるんだろう…」

こっちにおいでと手を広げても、牙を剥いて威嚇してくる。爪で攻撃してこようともするが、アルカーナは其れをさせまいとミロを押さえ付けてくれているようだ

「原因は不明ですが…暫くは近付かない方がよろしいかと」

「…う、うん……わかった。アルカーナが言うなら、そうする」

愛猫と遊べないのはちょっぴり寂しいけれど、アルカーナが言うなら従った方が得策だろう。この男はこれまでもずっと、身の危険を感じる事からアトレを遠ざけてくれている。俺が頷けばアルカーナはミロを自室へ連れていくと、部屋を後にした。すぐに戻りますと言っていたけど数分はかかるだろうな。アルカーナが戻って来るまで彼と遊べるゲームの支度をしておこうと俺は机からトランプを取り出し待つ事にした











































































それが命を狙われる日々の幕開けとも知らず。
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