森野探偵事務所物語~1~

巳狐斗

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第15話 占い師脅迫事件~前編~

第15話 占い師脅迫事件~前編~

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占い。



女性なら、気になるものであろう。



それは、藍里や陽菜も同じであった。






「藍ちゃんの誕生日って、1999年3月25日だったよね?」


「そうだよ!」



陽菜の質問に藍里は頷く。陽菜は、スマホの電卓機能で計算をすると本をパラパラとめくる。


「ライフパスは11番だ!えっと11の人は…………『人を助けることが何よりの生きがいです。人助けのために存在していると言っても過言ではありません』あ!わかるわかる!!」



足をバタバタさせて、陽菜は興奮気味に声を上げる。


「陽菜は……えっと1998年12月5日だから…8か。『正義感にあふれる「自分」というアイデンティティを持ってる人』あ!あるある!!」


藍里も負けじと興奮気味に話す。



一方男性陣は……



「なぁ。女ってなんで占いとか好きなんだろうな?」

スマホで動画を見ながら呟いた哲也は、少しうんざりしているようにも見えた。



「まぁ。女は好きなやつ多いからな。そういうの。」

聖人が、肘を軸にダンベルを上げ下げをして藍里達の話には興味がなさそうであった。



「男性と違って女性は感性が強いからね。少しでも当たってると、そのまま当たる!って言うふうに感じるみたいだ。」

輝が読んでいた医学書から目を離すと眼鏡を持ち上げて続けた。  


「それに、藍里達が読んでるのはAKIRAさんの占いだし。」


「あー。なんか100発100中とか言われてる奴か。奇抜な服しか出てこねぇわ。」

哲也が思い出したかのように動画から目を離した。




「AKIRA?誰それ?」

と、聞いてきたのは先程占いで話が盛り上がってた藍里だ。




「知らねーのかよ!!!」

藍里の何気ない言葉に、聖人と哲也が同時に藍里の方を向いて突っ込んだ。

藍里の世間や流行の疎さは、このメンバー1である。


「あ、やっぱり?知らないと思ってたから占いにしか触れなかった……。」


陽菜が作り笑いをしたあと、藍里に雑誌の一面を見せた。


「この人だよ。占い師のAKIRA先生!一般の方から芸能人、かの有名な大企業の人までこのAKIRA先生を頼りにしてるんだって!」



『ふーん。』と言って藍里が紙面を覗き込むと、そこに写っているのはブロンドの髪の毛を右に流して赤いリボンで結び、紫のワンピースを身につけ、頭から藤色のヴェールを羽織っている女性が映っていた。

その下には

『幸せを掴むお手伝いをさせていただきます。』

と書かれていた。



「そうだ!!依頼が沢山来るように、先生に相談するって言うのはどうかな!?」

陽菜が興奮気味に話し出すが、

「あー、いいよいいよ。それは。」

と、藍里は欠伸をしながら答えた。

「なんでー?えー?」

「あのなぁ。陽菜。そんな毎日毎日依頼が来るってことは、それほど事件が多いってことになるんだぞ?」

「あ。そっか。」

哲也の言葉に、陽菜も納得する。

「そーそー。本来なら、依頼はない方がいいんだよ。」


という藍里の言葉の直後だ。


ピンポンピンポーン


と、インターホンが2回連続で、部屋に鳴り響いた。


「誰だぁ?このチャイムの鳴らし方するやつはよ。」

聖人が眉間に皺を寄せて首をかしげた。

「依頼の鳴らし方だよ。昨日の夜にあの看板に書き足したんだ。『依頼の方はチャイムを2回鳴らして』って。」


「あー。そう言えばなんか書きたされていたね。」


藍里の説明に輝が思い出しながら呟く。


「はい。どちら様?」



ドアを開けた瞬間、目の前にズイっと突きつけられたのは1枚のカード。1人の女性が目隠しをされている状態で、8本の剣に囲まれている。






「ソードの8。これが、あなたの導く結果…。ですわよ。探偵さん。」





そこに居たのは、サングラスをかけた女性。だけども、その外見は直ぐにわかった。先程、雑誌の中で確認した人物……。






「……えっと……AKIRAだったっけ?名前。」



「あら。堂々と呼び捨て?まぁ、よろしいでしょう。ここが、かの有名な森野藍里の探偵事務所とお見受け致します。」


「そうですけど………。」


「ずばり、依頼をお願い致しますわ。」


「依頼……?」

首をかしげていると、AKIRAの後ろに隠れるように立っていた女性が前に出た。

「先生は、今大変困っております。そこで、森野藍里さんに解決をお願いするためにここに来ました。私は、助手の新庄 栞(しんじょう  しおり)と申します。」


黒いロングヘアを揺らした女性は、無表情ではあったが、的確に要件を伝えた。



「まぁ、立ち話もなんですし?中に入ってもよろしくて?」

「……どうぞ。狭いですが…。」


そう言って、藍里はAKIRAと栞を中に通した。

中に入るなり、栞は藍里の前に立つと、スっと白い箱を両手で差し出し、

「これ、つまらない物ですが。」

と、一言添えて手渡した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


突然の有名な占い師の登場に、陽菜は興奮気味に慌てふためき、男性3人はぽかんと、口を開けていた。



「それでは、少しだけ私の紹介をさせて頂きますわね?栞。お願い。」


AKIRAの声に栞は返事をすると、丁寧に名刺を差し出し……




「こちら、占術師のAKIRA先生…………本名を『鈴木  絹』と申します!」




「………いらない事は言わなくてよろしい…。」







栞の突然の本名発言に、AKIRA(本名/鈴木 絹)は片眉をピクピクとひくつかせながら冷静に答えた。

それを陰ながら聞いていた陽菜と哲也達は、必死に笑いを堪えて

「おばあちゃんみたいな名前……!」


と、呟いていた。

「ところで、依頼とは?」

咳払いをして仕切り直した藍里は、早急に本題に入った。


「わたくし、命を狙われているのかも知れないのです。」


突然の言葉に、藍里達は少し間を開けてから


「はっ!?」


と声を裏返した。


「な、んか…急………えっと………脅迫とかあったのですか?」


「ええ。これを見て?」


AKIRAが鞄から紙を取り出すと、そこには白い紙に赤いマジックで

『キョウハ  オマエノ  イノチ  ヲ   モラウ』

と書き殴られていた。
イタズラか?と思ったが、1つだけ藍里の中でひっかかる文章があった。

「今日は………?」

「あら。流石、いいところに目をつけましたわね。」

「…先生は、これまでに様々なものを   とられた  のです。

ある時は、占いに使うクリスタル。

ある時はタロットカード。

またある時はネックレス。

またまたある時は、私生活の様子。

あ!要は盗撮されてました!」

(……:あ、そっちの『とる』ね…。)

栞の言葉に、藍里はふむふむと頷いた。

「そして、更にまたある時は、赤色のパンツ!」


「栞!!……コホン。それくらいでいいわ。」



栞の言葉で、恥ずかしさのあまり声を荒らげたAKIRAだったが、直ぐに冷静になって藍里の方に向き直ると、


「先程、栞が説明してくれたように、これまでに様々なものが盗まれてしまったの。それに予告の紙が必ず入ってたのよ。」

『ほれ、この通り。』とAKIRAが数枚の紙束を手渡す。中身を確認すると、確かにそれぞれには、

『クリスタル  ヲ   モラウ』


『パンツ  ヲ  モラウ』



と書かれていた。


「イタズラと思いましたが、確かに……イタズラにわざわざこんなことをするとは思えない……。いや、確実に0という訳でもないですけど……。」



顎に手をやって考え込む藍里。


「イタズラなら、それはそれでいいでしょうけど、何分気になってしまいましてね。」


「…警察には、連絡しましたか?」


藍里の言葉に、AKIRAは首を横に振る。


「…実は、その脅迫文……裏にも書いてありますの……。」


「裏…?」



言われた通りに、赤で描き殴られた脅迫文を裏返してみると、そこには



『警察に通報したら、

このデータを世間に流す。』



と書かれて、セロテープでMicroSDが貼り付けてあった。



「こちらで内容を確認したら、今までに私が占った芸能人の方々や、大企業の人達の悩み事でしたわ。」


「なるほど。犯人側は、いつでも流すことが出来ると……言いたいわけですね。」



「そこで、あなたの噂を聞いて、こちらに来ました。警察にはバレないように、何卒、宜しくお願い致します。」




頭を下げるAKIRAに続き、




「私からもお願いします。先生は、悩む人たちを助けるために、救いの手を差し伸べるために占いを始められました。………なのに、そんな優しい先生を殺すなんて許しません。犯人を何としてでも見つけて、グチャ!!っと潰して、懲らしめてください!」


と、栞も頭下げる。


「わかりました。対策を練るために、AKIRAさんの部屋を伺ってもいいでしょうか?あとその前に、いくつか質問してもいいでしょうか?」


「ありがとうございます。もちろん宜しくてよ。それに、お願いもあります物ね。」


にこりと微笑んだAKIRAは、藍里のいくつかの質問に、丁寧に答えた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~






都内にポツリと立っている小さな屋敷。
そこが、AKIRAの家であり、職場だと言う。

「皆さん。今、戻ったわ。」

AKIRAがドアを開けて声をかけると、奥から3人のメイドが

「AKIRA先生。おかえりなさいませ。」

と、口を揃えて出迎えた。

「ほらね!AKIRA先生だった!この道、人ひとり通っただけでかなり音が響くからさ!直ぐにわかっちゃった!」

赤いメイド服を着た女性が、胸を張って2人に言った。

「はいはい。佐々山さんの言う通りでした。……まぁ。郵便物が来たらすぐに分かっちゃうものね。投函された音で。」

青色のメイド服を着た女性が、佐々山と呼んだ赤色のメイド服の女性に対して、肩を竦めながら答えた。

「ところで先生!お客様ですかぁ~?」

黄色のメイド服を着た女性が、あざとく首を傾げる。

「ええ。そうよ。森野さん。彼女達はわたしの使用人たちです。……佐々山さん。この方々にお茶菓子の用意を。」


AKIRAの指示に、佐々山は『はい。』と答えるとそそくさと奥へと走っていった。


「AKIRA先生。林様から、占いの日程の問い合わせのお電話がありました。24日の正午を希望との事ですが、いかがでしょうか?」


そう尋ねたのは、フレームのないメガネをかけた、いかにも『できる女』と捉えられる青いメイド服を着た女性。


「あー。あの件の事ね。きっと。24日正午。確か空いてたわ。御園(みその)さん。手が空いてたら、了承の電話をお願いしてもいいかしら?」


「御意。」


御園と呼ばれた女性は頭を下げるとそそくさと立ち去った。


「AKIRA先生~!舞衣も栞さんみたいに助手になりたいです~。」


少しぶりっ子のように上ずった声で、身をくねらせたのはピンクの髪の毛をツインテールにして、黄色のメイド服を着た女性。



「黒澤さん。そういうのは、しっかりと任された仕事をしてからにしなさい。頼んだお仕事は?」


「まだですぅ……。やろうとしたら先生が帰ってきたからやれませんでしたぁ……。」


ごめんなさい。と、拳を顎に当てて目をウルウルとさせている。

「そう。お邪魔したようで申し訳ないわね。済んだら早く戻りなさい。…栞、森野さん達を通してあげなさい。私は、準備をしてくるわ。」

「はい。わかりました。」

ポストの中身を確認していた栞は、藍里達をリビングへと案内した。






「実は先生は、事件のことを先程の3人にはお話しておりません。なので、できれば他言無用でお願いします。」

リビングのドアを開けながら、栞の希望に、藍里はすぐに2つ返事で返した。

「あ。あの、トイレ借りてもいいですか?」

遠慮がちに手を挙げた陽菜に、栞は

「御手洗ですね。ご案内します。」

と、冷静に答えて陽菜を案内した。
誰もいなくなったところで、部屋を見渡してみる。

アンティークな柱時計に、高そうなツボ。更にパチパチと暖炉から火が燃えている。

典型的なお金持ちという雰囲気を漂わせている。




「すっげーな。」

哲也が口をついて出た言葉に、無言で頷く藍里。文字通り、言葉が出ないのだ。


その時、カツン…カツン…と、外の方から音が聞こえてきた。窓から覗いてみると、宅配便の男が両手に荷物を抱え、家の前を通り過ぎて行った。

(かなり音が響くな……。なるほど。佐々山さんとかいう人が言ってた、ここは音がよく響くというのはこの事か。)

と、藍里は納得した。
確かに、普通に歩いてきてもこの音ならすぐに分かる。


「失礼致します。お茶菓子をお持ちしました。」



扉がノックされたかと思うと、ワゴンを引いてきた佐々山というメイドがやってきた。

先にテーブルに置かれた、フォンダンショコラの甘い香り。甘い物に基本目がない藍里はその匂いに思わず、にやけてしまう口をなんとか殺そうとした。


「あの…ここには、使用人は佐々山さん達しか居ないのでしょうか?」


あまりニヤニヤしてるのもおかしいと思われるので、藍里はあえて話を振ってみた。


「はい!まぁ、私達は研修生みたいなものですけど…。」

「研修生?」

「先生の助手になる為に、泊まり込みで働きながら頑張っているのです。栞さんも、かつては私達と同じ使用人だったんですよ。」


「栞さんも?」


「はい!栞さん、普段はボヤっとしてるようですけど、先生のことをよく理解して、気が利いて………それを先生に評価されて、助手になったんです!

私も、栞さんみたいに助手のお仕事ができるように奮闘中なんです!ふふ!」


ニコリと笑った佐々山。

(泊まり込み……。)

ふと、ギャラはいくらなんだろうと、アルバイトのことを聞くところであった藍里はグッと口を閉じた。


「そういえば!あなたはかの有名な森野藍里さんですよね!?ここに来たってことは、何かあったのですか?」

佐々山は、少しウキウキしながら藍里に訪ねた。

「あ。依頼で…いって!!」

口走りそうになった哲也の足を『ダン!!』と踏みつけた藍里はすかさず、

「依頼がたくさん来るには、どうすればいいのかと言うのを見てもらいに来ただけですよ。」

と、陽菜と同じようなことを言ってしまった。と、藍里は内心思った。

『なーんだ。』とむくれる佐々山は、トボトボと部屋を出ていく。


「てーつーやー……。他言無用だって言われたでしょうが…。」

「わり。つい口走りそうになった…。」

横目で睨みつけられた哲也は、頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。

「ただいまぁ~。」

そんな空気をリセットしてくれたのは、トイレから戻った陽菜であった。彼女は、なにか思い詰めたような、顔でソファに腰掛け、ため息をついていた。


「なにかあったの?」


輝が、首を傾げて話しかける。少し考えた仕草を見せた陽菜は、ゆっくりと顔を上げる。


「本当は、あんまり言わない方がいいかもだけど……さっき、栞さんと………あの……黄色いメイド服の子………黒澤さんだったかなぁ?その人が話してるの見ちゃってね……。聞いてて疲れちゃった……。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

トイレを済ませた陽菜は、ハンカチで手を拭きながら藍里達がいる部屋へと向かう最中、


「どんな手使ったわけ?」


という声が聞こえてきた。声は、廊下の突き当りから聞こえてきて、覗いてみると、黒澤と栞が何やら揉めているような雰囲気であった。


盗み聞きはいけないことであるし、早く戻るべきだと思っていたが、陽菜は興味本位でその会話を聞いていた。

「……普通にお仕事しているだけです。特に何もしていません。」

「はぁ?じゃあなんであんたがAKIRA先生の助手になれるわけ?まじで意味わかんないし~。」

「……それよりも黒澤さん。あなたは、AKIRA先生に頼まれたこと……。」

「言われなくてもわかってますから~!ほんと、あんたみたいにのうのうと優位にたったやつが1番むかつく。」

ほんの出来心であった。
なのに、聞けば聞くほど内容は重いものに感じ取られた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「そういえば、黒澤さんとかいう人、AKIRAさんに助手にしてって言ってたね。」

輝が思い出すかのように呟く。

「女だらけだからな。そういう嫉妬とかついてくるんだろ。きっと。」

『女ってのは怖ぇ。』と、付け加えながら腰に手を当てる。



「おまたせしましたわね。どうぞ。お掛けになって。」

突如、ドアが開いたかと思うとAKIRAが入ってきた。
指示されたとおりに座ると、AKIRAは一呼吸を置いて話し始めた。


「実は……これから、依頼者様の相談をする予定ですの。この部屋で。あなた方はこの部屋のどこかに身を隠して、いざとなったら私を守ってくださったら幸いですわ。」


「……その相手が犯人の可能性がある根拠は…?」


「ありませんし、別に疑ってもいませんわ。ただ、警戒をしているだけ。」



それだけ言ったAKIRAの言葉の後に、扉がノックされ、向こうから『先生、失礼します。』という声が聞こえてきた。

「栞?どうしたの?」

「こちらが、郵便受けに入っていました。」

そう言った栞は、厚さが3センチほどある茶封筒を、AKIRAに見せた。

「え?いつ?」

「ついさっきです。先生に頼まれたバラの手入れをする時に。ただ、見た時には既に入っていたので、いつ入っていたのかは……。」


「開けてみてちょうだい?」

「はい。」





そんなふたりのやり取りを見ながら、藍里は左腕にはめられている腕時計をちらりと見る。






(私達がAKIRAさんの家に到着したのは………今から5分前……。その時に、栞さんはポストの中身も確認していた……。)



ふと、なにか思い立ったのか藍里は一言断ると、小さな窓の側へと向かい、そっと宅配便の男が通っていた道をのぞき込む。

暗い路地裏。そこから、栞が言っていたであろうポストがちらりと見ることが出来た。




(この家の前は道があるけど、足音も簡単に響く程だ。それに、ものが落ちたりしたらすぐに分かるとも青いメイドさんが言っていた。

さっき見た時、ポストは投稿口が外側にあって取り出し口が家の中……。さらに、あの分厚さなら、音がするはずだけど、それもなかった……。)



















な  ら  こ  れ  は  い  つ 投  函  さ  れ  た  ……?














その疑問は、最悪の形で答えを示すこととなる………。






















「きゃぁあ!!!」






栞の悲鳴と、部屋全体が揺れるほどの爆音が響いたのはほとんど同時だった。


「栞!!!」



突然の事に、AKIRAは席を立ってその場にうずくまった栞のそばに駆け寄る。




「栞!!大丈夫!?栞!!」



栞は、左手で右手を強く抑え、痛みで顔をゆがめていた。







「どうしましたか!?」



騒ぎを聞きつけて、佐々山がバン!!!と、ノックをすることも無く勢いよく開けて入ってきた。


「栞さん!!大丈夫ですか!?」


部屋に着いたのと同時に御園が声を上げる。



「ひっ!血………血が………!」



栞の手を見た黒澤が、目を見開いて言葉を漏らした。




「佐々山さん!!救急箱を!!急いで!!」


「はい!!」




AKIRAの言葉に、佐々山は足をもつれさせながら廊下を走り出した。





「て、手当てを…!っ…!!」



そう言って御園が近づいたが、蹲る栞の下から覗いた
血塗れの右手と…右手を力強く押さえつけている左手の指の間から垂れている血液を見て、口を抑えて後ずさってしまう。




「傷口を見せてくださいますか?…ご心配なく。端くれですが、僕も医者を目指す身です。手当てならできます。」




輝が栞の前に座って、ポケットから取り出したゴム手袋嵌めると、栞の右手を確認する。輝がそっと触れただけで、栞は小さく呻いた。


「すみません。痛みますか?」


「………少し……。」






栞の傷口を調べている間、藍里は栞のそばに落ちたものを拾い上げる。





ツン。と鼻をつくのは焦げた火薬…。
側には変形しているが、それが何となくだが、乾電池らしきものであると分かる。



「なんだ?こりゃ。火薬の匂いすっけど……。」


「少し前に、爆発物が届くという事件があったらしいの。封筒の封が開けられた途端に爆発する仕組みになってたんだよ。」


哲也にそこまで説明すると、藍里は顎に手をやって唇を噛み締める……。



「どうやら、脅しではないみたいですね……。」


「森野さん?」



藍里の言葉に、AKIRAは首を傾げる。



「あの脅迫は、イタズラでもなんでもないってことですよ。……犯人は…………本気です……。」






その部屋に、あいりの言葉だけが響き、誰もが息を飲み、御園と黒澤、救急箱を持ってきた佐々山は、目をぱちくりさせていた……。











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