森野探偵事務所物語~1~

巳狐斗

文字の大きさ
19 / 62
第18話 推理ゲーム

第18話 推理ゲーム

しおりを挟む

血で真っ赤に染まった大きな手が髪の毛を撫でる。汚れたが、それを気にしてる場合ではないのだ。








大型のトラックが、正面から壁に無惨に突っ込み………一家を巻き込んだ日のこと。








黒い煙が上がり、慌ただしい声や、野次馬たちの姿が見える…………。





(また、あの夢……。)




しばらく見ないと思っていたのに………。




ぼんやりと薄れる意識の中、1人の女の人に抱きしめられていた。








長い茶髪……………。



「おかあさん………。」




いつも優しく抱っこしてくれたり、頭を撫でてくれる母親…………今は綺麗な髪の毛も、白い手も血で汚れてしまっている…………。






そんな、自分と母親を2人まとめて抱きしめるかのように包み込む男性の姿………。





自分と同じ藍色の髪の毛を短く刈り込んでいる…………








がっしりとした体……………………










「おとうさん…。」




「藍里………お前のランドセル姿…………見たかったなぁ……………。」



父親は、それを最期にピクリとも動かなくなった…………。








(起きろ。







起きろ藍里。)





いつものように、自分自身に言い聞かせる。








(起きろ。起きろってば。


これは、見たくない夢だったでしょ……?





見る度に泣いて、父さんと母さんが夢に出てくる度に会いたくなって……また泣いて……叔母さんたちに迷惑かけたでしょ……。








起きろ…………………起きろ……………………起きろ……………起きろ…!)
















「…………おい。…………おい。……………起きろって。藍里。」


幼なじみの哲也の囁く声に導かれるかのように目を開く…………。







夢…………じゃない。






寝ぼけ眼を擦り、周りを見渡してみると、そこは映画館。
映像には、主人公の男性刑事が海岸で何人かの前で何かを話している。






(あぁ。そうか。今日はみんなで推理映画を見に来たんだっけ。)






有名な俳優さんが主演らしい映画は、なかなかに面白そうで、珍しく行きたくなったのだった。






「ふぁあ…………犯人は?」





藍里は小さくあくびをしながら小声でたずねる。


「これから、主人公が言い当てるところだ。」

哲也が小声で答える。




事件の舞台は、とある裕福な家だ。
そこの女主人がネグリジェの状態で、ベッドの上で何者かに殺されたのだった。
何者かに刃物で刺され、強盗の類と思われたが、強盗にしては色々と矛盾している点が多く、身内3人の容疑者に厳選された。


1人目は彼女の甥。
大手企業の副社長だが、経営がなかなかに厳しいようだった。

2人目は同じく彼女の甥。
有名な推理小説作家である。

3人目は姪。
呉服店の社長で、いくつか店舗も持っているらしい。




気づいただろうか?


容疑者の中に、甥と姪しかいないことに。

と言うのも被害者は、その年になるまで、1度も結婚していないのだ。



その為、娘も息子も旦那もいない。
彼女は、自分が死んだ時の莫大な遺産はこの3人に分割して託すという事にしてあった。


しかし、昨晩。彼女は夕食中に彼らにこう言ったらしかった。




お前達の中から1人だけ、遺産相続から外したと…。




誰か。とまでは言わなかったが、どちらにしろ犯行理由には充分すぎる。





そこで、3人のうち誰かという話になったのだ。





正直、藍里にとってはすぐに犯人がわかってしまい、途中でウトウトと寝てしまったのだ。






「まぁ。姪が犯人だと思うけどね。」



「いーや、今回は小説家の甥に1票!」






こんな感じで、藍里は哲也とあるものを賭けて推理していた。
賭けといっても、ただ単に誰が犯人だと思うのか当てるというものだが。

















映画が終わり、お客さんがゾロゾロと劇場から出ていく。





犯人は藍里の推理通り、姪であった。






「ね?姪が犯人だったでしょ?哲也~……約束、忘れてないよね?」




ドヤ顔をした藍里がチラリと哲也を見る。悔しそうな哲也は、肩を竦めながら


「分かってるよ。ジュース1本奢りだろ?」


と答えた。


「テメェらジュースかけてたのかよ!!俺もやりゃよかった。」



聖人が、話に入ってきたが、すぐに輝が間に入る。




「藍里と推理勝負って無謀だろ。」


「けど、藍ちゃん、どうして姪が犯人だってわかったの?」



陽菜が尋ねる。そう言えば、あの推理ドラマは肝心な理由を言っていなかったから、分かりにくいのかもしれない。



「被害者の女主人は、あの歳になるまで1度も結婚してないし、男性経験もしてないでしょ?けど、殺されている時の格好は、ベッドの上で、しかもかなり奇抜なネグリジェだった。たとえ結婚してたとしても、男性の前では、あんな格好しないよ。いくら身内でもね。」


藍里の推理にそこにいた誰もが『なーるほど!』と納得していた。


「っとそうだ。携帯の電源入れないと。」



すれ違った人が電源入れるのを見て藍里は思い出してカバンからスマホを取り出す。それにつられて4人もポケットやら鞄からスマホを取り出す。




しかし…………。






「あれ?………あれぇ?」





そんな中、陽菜が絶望的な声をあげる。






「どうした?陽菜?」





聖人がそんな陽菜に尋ねる。





「スマホがないの!おかしいな………確かにカバンの中に入れたのに……。」




陽菜は、カバンの中をガサゴソと探したが、見つからず。藍里が携帯にかけて鳴らしてみるも、音がしない…。




「こりゃ、座席の方にあるのかもな。行ってみるか。」




哲也の考えに賛同し、皆は劇場の方に戻り座席を探し始めた。






座席の下。
椅子の間。
スクリーンの方と、藍里たちは隅々まで探したが、スマホらしきものは見当たらなかった。



「あれ?私たちが座ったのここら辺だよね?どこにもない……。」


「家に置いてきてるとかってオチはねぇの?」

聖人が、よっこいしょ。と声を出しながら立ち上がる。

「いや。陽菜は入る前に外にあった看板の写メを撮っていた。ある筈なんだ。」

藍里の記憶によって、聖人の考えは見事に論破された。




「わぁーっはっはっはっはっはっ!!!」







突然。
劇場中に響き渡る笑い声。
かなり痛々しい声に一同はピタリと止まる。




「あー…………なんだ?なんか変な声が聞こえたんだが……。」




哲也が、呆れながら頭を抱えるように呟く。



「いや。僕も聞こえた。僕達以外にも誰かいるみたいだね。」



輝が、周りを見渡しながら冷静に答えた。
それと正反対に、聖人は『うられた喧嘩は買うぞ』とでも言わんばかりに声を張り上げた。



「誰だァ!!!そんな、中2みたいなノリの笑い方しやがるのはぁ!!!」






聖域の声のあとに、スクリーンの方に現れたのは、

マントにシルクハット。仮面をつけた、なんとも痛々しい格好の男であった。彼は、バサリとマントをなびかせると、藍里たちの前に立ちはだかった。



「それは私だぁ!!その名も!ミステリング!挑戦者に様々な謎を与える人物なのであーる!!」




「うん。とりあえず、すんごいめんどくさそうなのが来たのはわかった。」




藍里がコクリと頷いて盛大に毒を吐いた。



「なるほど。貴様が森野藍里か!ふむふむ。謎を与える………ほら、あの、あれ!なんて言うんだ!」



ミステリングは、藍里の前に立つと、途中まで格好をつけていたが、あたふたと言葉を文字通り、探し始めた。




しばらくミステリングを見ていた藍里だが、やがて


「……与える甲斐がありそう?」


と尋ねると『そう!!それだ!そんな感じの!!』と指をさしてミステリングは答えた。

「森野藍里と言えば、かの難事件を解き、さらにサーカス団の事件も解決したという名探偵!もし、君が勝てば、この、商品をプレゼントだぁ!! 」



と言ったミステリングは、バーン!と藍里たちの前にある物を突き出した。




白いレースがふんだんにあしらわれたドレスをきた、くまのマスコットがついた、ピンク色のスマホ……。

それに、陽菜がすぐに噛み付くように反応した。



「商品っていうか!!それ、陽菜の携帯!!!返してよ~!!」




「ここから近い公園まで来てみるがいい!!!ふははははははは!!!」








そういうが早いか、ミステリングは出入口の方に向かって走り出して行った。






「用は、あいつの出す問題に答えなきゃならないのね……めんどくさいことしてくれるなぁ。全く。」



藍里が、溜息をつきながらボヤいた。





「とりあえず追いかけよう。普通にあれ、犯罪だから!!」




陽菜がミステリングのあとを追うように走り出し、それに藍里たちも続いた。




言われた所の公園には、いつの間にか設置されているクイズ番組でよく見かける台と、ミステリングが立っていた。


ミステリングはバサッとマントを翻すと、藍里達を迎え入れた。



「ようこそ!!私の会場へ!ここが君たちの戦場だ!さぁ、見事な推理を私に見せてくれたまえ!!」


ミステリングが言うほど、造りは豪勢ではない。クイズの回答者として立つ台の横には4つのパイプ椅子が並べられていた。明らかに『回答者でない人達はこちらでお待ちください』とでもいっているようだ。


台に至っては、ダンボールにそれらしい塗装をしただけである。しかし、その技術はさながら見事なものであった。


(こういうのを他で活かそうよ。)


と、藍里は心の中で突っ込みながら回答台へと登ろうとした。


「まて!藍里!」

「ん?」


聖人の静止に、藍里は目をぱちくりさせて振り返る。


「お前が脱落なんてしたら、後の問題が俺達には解けない可能性がある。ここは、お前は最後にしたい。」


「そうだね。藍里には解けても、僕たちには分からない問題が来たら、陽菜の携帯どころじゃなくなるし……。」


輝の言葉に、哲也と陽菜も大きく頷く。

「……わかった。じゃあ、最初は誰から行く?」



藍里の質問のあと、順番は揉めることなくすんなりと決まった。







第1回答者は聖人。
第2回答者は哲也。
第3回答者は陽菜
第4回答者は輝。

そして、最後は藍里となった。



「順番が決まったところで、ルールの説明をしまーす!!私が今からとある事件を言います!その事件について、『はい』か『いいえ』で答えられるような質問を私にしてください!たくさん質問をして、答えがわかったら回答ボタンを押す!!正解ならクリア!!しかし!!!不正解ならその場で脱落!!次の回答者へと権利が移ります!!

何人残っていても、全問正解さえすれば勝利!!だがしかし!!五回間違えてしまったら、君達の負けだ!!!」



「なんかあったな。そんなボードゲームが。」


ミステリングの説明を聞いて藍里はボソリと呟いた。それを輝がコツン。と左肘で小突く。


しかし、幸いにもミステリングは聞いていなかったらしく、藍里の言葉を無視して進行した。




「それでは行きましょう!!推理バトル~~……!スタート!!!」







『娘の為に殺人強盗を働いた男は、娘の死後飛び降り自殺をした。それは何故?』



ミステリングの出した問題。
その後には、質問タイムと思われるBGMが流れた。
最初の解答者の聖人は、うーん…。と首を捻る。そして、悩んだ挙句に




「…その…男は娘を溺愛してたか……?」




と訪ねた。



「はい。そうです!いい質問ですね!」



ミステリングは、はっはっは!と笑いながら答えた。
すると聖人は、よし!!


と意気込むといきなり激しい音を立てながら、解答ボタンを押した。





「えぇ!?ちょっ!!早くない!?」




藍里が驚いて声を張り上げるが、聖人は


「大丈夫だ!リーダー!まかせとけ!!」


と言って親指を立てたあとに








「その2人は、親子ではなく、義理の親子で恋愛感情を抱いていた!!そして、娘が自殺すると、自分も後をおったから!!!」



と、自信満々で答えた。
その直後に鳴り響いたのは、





不正解音。








「えぇええ!?」






「アホかぁ!!!どっから義理の親子設定が出てくるんだよ!!アホかぁ!!!」






哲也が立ち上がって聖人にビシっ!と指をさしてつっこむ。。





「いや、昼ドラでよくあったネタじゃねぇか!!」



「知るか!!そんなドロドロ展開!!」






聖人と哲也の激しい会話の後、2人が入れ替わり、今度の解答権は哲也に移った。







「さぁ!解答者交代!!君はわかるかな??」






聖人とは反対に、哲也は顎に手をやって慎重に考えていた。





「娘………が死んだんだよな?………で、強盗を働いた男…………。そ、その男は、強盗した相手を恨んでいた?」





哲也の質問。


ミステリングは


「いいえ!」




とだけ答えた。






「特別な感情は抱いてねぇのか………?」





慎重に悩みながら哲也は「あー……」と声を漏らして




「…………その男には、強盗をしなければならない事情があった?」




「はい!いい質問です!!」



「…もしかして………。」





哲也はポツリと呟くと悩みながら恐る恐る解答ボタンを押し込んだ。




「えっと………ご、強盗した先が娘の恋人だった!」





不正解音が鳴り響く。



「くっそ!違うか!」



悔しそうに唇を噛み締める哲也。
入れ替わるかのように、陽菜が回答台にたつ。
その表情は、携帯を取り戻したい焦りと不安が滲み出ていた。

陽菜はうーんと唸って考える。

こういう謎解きは、陽菜にとっては難しいところがある。



それは、陽菜自身も自覚していることだから本人も慎重になっていた。






「そ、その人は………その娘さんだけしかいなかった?」


「はい!そうです!」




「えっと…………その娘さんは、家にいることが多かった?」




「いいえ!!いい質問ですね!」




しばらく悩んだ陽菜は、首をかしげながらも解答ボタンを押すと






「む、娘が……病死したからあとをおった?」








不正解音が響き渡る。







「あぁー!!惜しい!!いい線いってるけど、全体的に!!」






頭を抱えながら席に戻る陽菜。
そして、輝が解答台に立つ。






「……家にいなくて、病院が…………あ。もしかして………。」





そう言うと、輝は顔を上げて






「その娘は、病死した?」



「はい!そうです!」



「その手術は、親父さんが原因で受けられなかった?」



「はい!!」




「なら、これしかないかな!」






そう言って解答ボタンを押す輝。





「強盗したことが原因で、あることないことの噂を立てられて、手術どころか入院も受けることが出来なかったから!!」










不正解音が鳴り響く。





「ああーー!!!そっちですか!!さぁ、今度はあなたですよ!!森野藍里!!」




台に立った藍里は、顎に手をやって考え込んだ。



その、ストーリーの謎を解明するために














娘は病気を患っていた。
ということは、病室………入院………?

陽菜の答えで惜しい。
輝の答えでも惜しかった。






や。


でも待てよ?男は確か強盗を働いていた筈。



そこに大きな関係があるんじゃないか??










病気……………強盗…………殺人……。





もしかして………







藍里は迷うことなく解答ボタンを押しこんだ。






「おっと!!一度も質問せず!?答えは!!!」






ミステリングの答えのあとに、藍里は大きく息を吸って答えた。






「その男は、娘を助ける資金を集める為に強盗殺人を犯した。物色している最中、男は家主に見つかり、思わず殺人を犯し、男はまんまと資金を手に入れた。………ところが、その家主こそが、娘を助けるのに重要人物だった。娘は病気を治すためにはドナー……つまり、何らかの移植手術が必要であった。その提供者が、男が殺した家主だったんだ。娘を助けるはずが、娘を殺す事になってしまって、責任を感じて自殺をしたんだ。」








藍里が、淡々と話す。 






しばしの沈黙………。





やがて、、








ピンポーン!






という軽やかな音が鳴り響く。












正解音が鳴り響いてから、覚えていない。

ただ、藍里が「よし!!」とガッツポーズをとった瞬間、陽菜が抱きついて

『さすが藍ちゃーん!!』

と、無茶苦茶に喜んでいたのは覚えていた。




ミステリングは、正解されてもなお悔しそうな顔はせず、

「おめでとう!君たちの勝ちだ!さぁ。この、携帯を受け取るがいい!」


と言って、こちらにスマホを投げ渡した。

陽菜はそれを大事そうに受け取ると、ギュッ!と胸の前で握りしめる。


「さらに!森野藍里!!君にはこれを渡そう!」


そう言ってミステリングが手渡したのはとある旅行先のパンフレットと、旅行券だ。


「秘境、雲隠れのむら?」


「そうだ!君にオススメしたい場所だ!」


「パンフレットは貰う。でも、旅行はなぁ……。」

正直、藍里自身興味がなく、渡されても困るだけであった。
ミステリングは企みのある笑みを浮かべると

「いいから行きたまえ!……そうしたら………。」

スっと藍里の耳元で、妖しく囁く。








「君の両親の死の真相がわかるよ………?」




「…!?」





ガっ!!!









次の瞬間。
藍里はミステリングの胸ぐらを両手で乱暴に掴みかかる。あまりの事に4人は目を見開いて見守るしかできず、陽菜に至っては喉の奥から悲鳴をあげた。






「………何か知ってるの…………?父さんと母さんのこと、どこまで知ってるの!?死の真相って何!?」






睨みつけるように、藍里はドスの効かせた声色でミステリングに問い詰める。





「……とに、気性荒いな。」



「は?」





ミステリングが、今まで出さなかった低い声に驚いて思わず力が抜ける。


ドゴッ!!




「っ!!!」


その瞬間を逃さなかったかのように、ミステリングは藍里の腹に膝蹴りを入れ、その勢いに負けた藍里は後ろに大きく突き飛ばされ、地面にドサッ!!仰向けに倒れ込んだ。

「ゲホッ!ゴホッ!」

腹から襲われる圧迫感に、藍里は地面に倒れながら2、3回ほどむせる。


「藍ちゃん!!?」


「てめぇ!!何しやがる!!」


陽菜が藍里に駆け寄り、聖人が藍里の盾になるように立ち塞がる。




ミステリングは、先程とは打って変わっていつもの調子に戻り、




「おおっと!怖い怖い!それでは、私は被害に遭わないように、これで!また会おう!!はははははははは!!!」





と言い残して、走り去って行った。





「藍ちゃん。大丈夫?」




陽菜が心配そうに、腹を抱えてむせこみ続けている藍里に声をかける。



しかし、そんな陽菜の言葉が聞こえていなかったのか、藍里は地面を見つめて、ぼんやりと考え込んだ。





あの、低い声を………。





「……あの声……どこかで………。」





「藍里!おい、お前大丈夫かよ!?」






哲也の声にハッとした藍里は、慌てて顔を上げる。






「あ。うん。ごめん。大丈夫!」



「どこか痛むところはない?鳩尾にもろに入ったから、痛かったでしょ。」



輝が、藍里と目線を合わせるかのように膝をついて心配する。




「大丈夫だって!!ちょっとびっくりしただけ!」



取り繕うかのように立ち上がった藍里は、



「あー、でも、ちょっともう今日は私先にあがろうかな?」


と、濁した。



「………そうだね。どこか内蔵を傷つけてたら、遊びどころじゃないからね。」



輝が賛同して立ち上がる。
それに誰も反対せず、藍里は「また、埋め合わせするね!」と行って彼らと離れた。







(………父さんと母さんの死の真相………。)







その言葉が、藍里の頭の中を支配して、グルグルと黒い渦をまいてきた。
そして、首から下げているロケットを引っ張りだし、中の写真に目を落とす。



こちらに向かって微笑む母親。
自分と同じ髪の色で、幼い自分を抱っこしている父親。



この写真の中の3人は、この先、思わぬ形で離れ離れになるとは予想もしてないのが、感じ取られる程、眩しい笑顔をしていた。






(父さん………母さん…………事故で死んだんじゃないの?………だとしたら、何が原因で………?)






おもむろに、反対の手にあるパンフレットに目を落とす。
ミステリングから渡されたパンフレットだ。




外国風の街並みだが、場所は日本らしかった。







「………ここに、真相が……?」










その様子を木の影からこっそり見ていたミステリングは、スっと目を大きく覆っている仮面を外し………



「しっかり見てこいよ。青司の娘さんよ……。」


と、かつて藍里に近づいた週間記者の横田 秀次郎が、企みのある笑みを浮かべて、指に引っ掛けた仮面をクルクルと振り回した。







続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...