森野探偵事務所物語~1~

巳狐斗

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第17話 占い師脅迫事件~後編~

第17話 占い師脅迫事件~後編~

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翌日、AKIRAを含める5人は裏庭に集められ、藍里を囲むように、神妙な顔つきで集まっていた。


「森野さん。あなたがここに人を呼んだということは、もう……?」


AKIRAの言葉に頷いた藍里は


「はい。今回の事件の犯人が分かったのです。」

と、言い切った。





その時だ。


「はいはぁーい!!」

と、その場の空気には似つかわしくない明るい声が響いた。

黄色のメイド服を身に纏い、ピンクのツインテールをした黒澤だ。
全員が『こんな時に何?』とでも言いたげな表情をしていたが、黒澤は気にならない素振りでスカートを揺らしながら続けた。


「森野さんの言いたいことわかりましたぁ!犯人は~……新庄さんでしょ!!」


黒澤の言葉に誰もが目を見開き、藍里も例外ではなかった。


「昨日も言いましたけどぉ、全ては先生を陥れるためにやった事なんです!

ほらほらぁ!よくあるじゃないですかぁ!嫉妬して人のものを隠して、自分に疑いがかかりそうになったら被害者ぶるっていう~!」



「まだそんなこと言ってるの!?黒澤さん、いい加減になさい!それに、証拠がないでしょ!?」


「証拠ならありますよ~!」



そう言って、黒澤は黄色のスカートのポケットからビニールにピッタリと包まれた乾電池を取り出した。




「な、なーんと!これがぁ、新庄さんの引き出しの中に入ってたんですぅ!!普段アルカリ電池しか使わない新庄さんだけど、これだけマンガン電池だったんですぅ!!

怪しいな~!って思って、勇気を持ってあの封筒の電池を見たら…!!ほらぁ!!絵柄が一緒なんです!!」


「それは、買った時計の説明書にマンガン電池を使えと、書いてあったからです。」



「うわぁ~!嘘くさーい!!てかてかぁ、アルカリ電池でも時計は動きますー!それくらい、馬鹿でもわかるからァ!もう諦めてぇ?私が犯人ですってぇ!ねぇ?森野さんもそう言いたいんでしょお??」




体をくねらせて振り返る黒澤。






「いや、全然違います。」





と、藍里にあっさり返されて『えぇ~!?』と大袈裟に叫んだ。








「時計は、アルカリ電池を使用すると、使っていくうちに針の動きが遅くなるから、マンガンを推奨してるだけで、実際に説明書に書いてあるのもあります。それに、このマンガン電池、買ったばかりです。もしもこれを犯行に使うとしたら、ビニールが破かれている筈です。」


藍里の説明に黒澤は大きく頷いて、


「そうなんですねぇ!勉強になりましたぁ!!」

とわざとらしく答えた。

「あれ?バカでもわかるのでは?」

栞の言葉に、黒澤はむくれて栞を睨みつける。
話を戻すかのように藍里は咳払いをする。


「まぁ、確かに今回の犯行の動機は恐らく嫉妬によるものだと考えていいと思います。」


「つまり、誰かが先生に嫉妬して?」


「いえ。違います。」


栞の質問に、藍里は冷静に否定した。




「そもそも今回の被害者のターゲットは………AKIRAさんではないのです。」






藍里の言葉に誰もが『えっ!?』と声を漏らした。






「ど、どういう事ですか!?先生が…狙いじゃないって…!」




佐々山が頬に両手を当てて、信じられないというような声で尋ねてきた。



「考えてみてください。あなたがた3人は、AKIRAさんの助手になれるように日々頑張ってます。でも、なかなか認められないと、認められている者に、嫉妬してしまいます。その人に、犯人は嫉妬したんです。」


「だけど森野さん!?実際、私の物は盗られたのよ!?しかも、予告通りに!それはどう説明を!?」


「それはあくまでも『狙いはAKIRAさん』というふうに思わせるためのカモフラージュです。実際………あなたと同じものを盗られてる人がいるんですよ。近くにね。」


藍里は栞の方を向き直ると、ゆっくりと近づく。


「栞さん。あなたの部屋には、誕生石を入れるためのケースがあり、12ヶ月分ちゃんと分けられていました。だけどそんな中、パワーストーンは11個しかなかった。1個足りないのですが、それはなぜですか?」


「……………。」



「念の為確認しますね?…あの抜けていた所は、4月でした。4月の誕生石は………なんですか?」



藍里の容赦ない質問に、栞は俯きながらもゆっくりと


「…………水晶…………。」


と答えた。

「水晶ってぇ、クリスタルってことぉ!?」

黒澤が大袈裟にアクションをして驚いた。

「パワーストーンだけではありません。あなたの部屋には、AKIRAさんが使っているものと同じ、タロットカードを入れるケースがありました。だけど、その中身もなかった。さらに……あなたのペンダント。そして、下着も盗まれたのでは?」

そこまで聞いて、佐々山が「あっ…!」と声を漏らした。

「そっか!!だから栞さんの下着、上下が合ってなかったのは…!」

「そう。だから、今回の事件の狙いは栞さんだったんです。最後に爆弾封筒を送り付けた辺りを考えて、まず間違いないかと。」

「栞!本当なの!?」

そこまで言った藍里の言葉を遮り、AKIRAが栞の肩に手を置いて尋ねると、栞は目線を合わせずに静かに頷いた。

「どうして言わなかったの!?」

「……先生の邪魔をしたくありませんでした…。知ったら先生は、何をするのかわからなかったから…。」

「栞……ごめんなさい。気づかなくて…。」

AKIRAが栞を抱きしめると、我が子をあやすかのように、優しく頭を撫でた。

「で、でもでもぉ!そしたら犯人は外部の人って事じゃないですかぁ!こわーい!」

「いえ。それも考えられません。あのポストは、ちょっとした音でも聞こえると聞きました。物音を立てずにポストの中に忍び込ませることが出来る人は、この中の人間しかいない。つまり、あなたがた3人……この中に犯人がいます。」

指摘された3人はビクリと体をふるわせたが、直ぐに佐々山は、ジト…と横目で黒澤を見る。


「そういえば、黒澤さんは何かと栞さんのことを目の敵にしてましたよね?」

「ええぇえ!?佐々木さぁん………舞のこと疑ってるのぉ?酷いぃ~。」



と言いながら泣き出す黒澤。しかし、全く泣いていない…。



嘘泣きがバレバレである。

しかし…。




「いえ。彼女は犯人ではありません。万が一犯人なら、もっとわかり易く、目の前でカードを破ったりするはずですから。」


「むぅ!舞、そんな事しないもぉん!」



ほっぺたを膨らませて、黒澤は訴えたが、




「……それはしないけど、以前私の靴の中に泥水は入れましたよね。」




栞の言葉に皆ピシッと固まった。

 

「い…!言いがかりぃ!!!そこまで言うなら、証拠見せなさいよォ!!」



人差し指で示しながら、黒澤は猛抗議したが、栞が無言で突きつけたスマホの中にある写真を見ると、目を泳がせながら…


「……し…知らないもぉん…。」


と呟いた。
しかし、写メにはしっかりと、黄色のメイド服を着た人物が栞の靴の中に、バケツに入れてある泥水をかけている。




「黒澤さん…!」



「わわわぁ!ごめんなさぁい!先生ぇ~~!で、でもでもぉ!これはまだ可愛い嫉妬と言うかぁ……!そ、そう!!」



AKIRAに睨まれた黒澤は、慌てて藍里の前に立つと顎に手を当てて上目遣いで、



「森野さぁん…!早く犯人教えてぇ…?舞の無罪を晴らしてぇ…!」


と、目をうるうるさせて訴える。



もー、ぶっちゃけこの人犯人でいいのでは?

と思うほど藍里はイラッとしたが、そこは咳払いで切り替える。




「犯人は、あなたがた3人の中にいると言いましたが、そう決めつけられる理由がもうひとつあります。

脅迫文の宛先こそは『AKIRA』と記載してありました。しかし、先程も言いましたが、実際の狙いは栞さんです。それは、ここの人間にしか知らない、『ある特徴』を理解していること。

それが、犯人が外部の人ではない証拠です。」


ここにしかない特徴。
その言葉に、誰もが首をかしげた。


「AKIRAさん。この中身を見てくれますか?」


突然そう言い出した藍里はポケットから、一通の茶封筒を取りだし、AKIRAに差し出した。
受け取ったAKIRAは、裏を返して確認してから、


「栞。お願い。」

と言っていつものように、栞に手渡した。







「ストップ!!」







栞が封筒の口を切ろうとした所で、藍里の突然の言葉に、栞は思わず手を止める。




「AKIRAさんは、自分宛の封筒は必ず栞さんに開けるようにしています。それは、AKIRAさんが1度大切な書類ごと、破いてしまったからです。

それは、内部の人間なら誰もがわかる情報。
 
けど、外部の人間は、そんなこと知るはずがないですよね?

つまり、万が一外部の人間が栞さんを狙うのだとしたら、宛先を栞さんにするはずなんです。
わざわざAKIRAさんにする必要は無い!」



その言葉に、誰もが納得した。
確かに、それはこの中での決まり事のようなものである。
それを知ってるのは、内部の人間のみ。


「内部の人間である事は納得出来ました。ですが、この3人から犯人を特定なんて………。」



難しいのでは?
と、AKIRAが頬に手を当てて困っていたが、



「いえ。わかりますよ。でなければ、私は皆様をここに呼びません。」



と、言い切った藍里にAKIRAが『え!?』と声を裏返した。

大きく息を吸った藍里は覚悟を決めたかのように目を吊り上げさせる。



「今回の事件の犯人…!それは……!あなただ!!!」
























藍里が示した人物は、













髪の毛を一つにまとめた……………












青色のメイド服に眼鏡をかけた………








御園であった。













「私が犯人…!?ふざけたことを言わないで!?大体!なんで私がそんなことをしなければならないの!?」


名指しされた御園は、噛み付くように言い返したが、藍里は冷静に御園を見据えると、ゆっくりと話し出した。






「あなたのメイド服に、百合の花粉がついていました。百合の花粉は、水に浸かるとなかなか落ちなくなります。あなたは、栞さんから盗った物をここに隠した時に、ついてしまったようですが、それに気づかなかったのでしょうね。」




「そんなのが証拠になりますか?第1、百合は先生のお好きな花。この辺りなら、たくさん植わってるわ。違うところで付着したのかもしれないじゃないですか!」




確かに、御園の言う通り、AKIRAの家の周りには、たくさんの百合の花壇があり、時々AKIRAがメイドに水やりをお願いする程だ。その時についた可能性もある。



「確かにそうですね。ですが、あなたは一つだけミスを犯したのです。それが、あなたを犯人と関連付けています!」


「え…?」



首を傾げる御園を他所に、藍里はポケットから、白い薔薇の指輪を取り出した。


「これ、私たちの使用人である証の指輪…?」

佐々山が首を傾げる。

「私が、AKIRAさんの傍にいる時、この指輪を渡されました。使用人の証としてね。よく見ると、この指輪…。皆様の服と同じ色の指輪が渡されています。ですが、御園さんだけが、薔薇の飾りが見られませんが、どうしてですか?」



藍里の言葉に、御園は


「……お風呂掃除の時に…取れて排水溝に……!」


と答えた。




「排水溝…。そうですか。…では。」







そこまで呟いた藍里は、百合の花壇の根元を掘り起こすと、あるものを取り出し、みんなの前に差し出した。








青   色   の   薔   薇   の   飾   り   で   あ   る。









「これはどう、説明するのですか?あなたは、あなた自身の言葉で、『排水溝に落ちてしまった』と言った。けど、お風呂掃除をするなら、さすがに指輪は外しますよね?
外さなかったとしても、これが土の中から出てくるのはおかしい!

さらに、この栞さんのものと思われる、破かれたタロットカードに砕かれたパワーストーン。その中に、何故、あなたのものであろう、指輪の飾りがこんな所にあるのですか!?」






そこまで言いきった藍里は、やがて落ち着いた声で、







「言い逃れできるのなら、やってみて下さい。」







と、答えた。











「……………私が、1番なのに………選ばれたのは栞さんだった。」






 


御園は方をふるふると震わせながら、そんなことを呟き始めた。




「御園さん!どうして!?なんでも完璧にこなしていたあなたが!どうして!?」

「完璧にしたかったからよ!!」


佐々山の言葉に、御園は噛み付くように叫んだ。
ビクリと体を震わせた佐々山を他所に、御園はゆっくりと話し出した。


「私がこの中で一番仕事が出来てた!!料理も雑務も洗濯も掃除も何もかも全部!!!…………それなのに、私達の中で1番年数が浅くて…何を考えているのかわからない栞さんが………どうして選ばれるのよ!!……私が1番だったのに…!」



カタカタと拳をふるわせている御園。


そこにAKIRAがゆっくりと近づく。




「御園さん。確かに、この中であなたが1番何もかも完璧にこなしていたわ。私もすごく助かっちゃった。……でもね。アナタは、完璧主義すぎるの。」


AKIRAの言った言葉に、御園は首を傾げる。


「完璧主義……?」


「覚えているかしら?以前、あなたが佐々山さんに占った時のこと。あなたのインスピレーションも完璧だったわ。……だけどね。唯一欠点があったのよ。




それは、占う人を否定したこと。




占いというのは、あくまでもその人を幸運へと繋がる、道しるべを教えるだけなの。そこから切り開くのは、占い師でもなんでもない。その人自身なのよ。

けど、御園さんはあの時……佐々山さんの質問に対して、ハッキリと『無理だ。』と答えた。勿論、占いの結果で厳しい結果を言わなければならないこともあるわ。
だけど、そこからどうして行くのか。どうやればいいのかを一緒に考える。それが占い師なの。」


AKIRAの言葉に、御園は呆然と聞いていたが、頭を垂れて呪文のように呟き始めた。


「先生……………そんなのおかしいですよ……………だって、占いをするなら、幸せにするなら、はっきりと伝えた方がいいじゃないですか…………。私はそっちの方がいいです。」



「それは、あなたの見解よ。あなたはそうかもしれないけど、他人が必ずしもそうとは限らない。決して自分の意見を押し通してはならないのよ。占い師は。」



AKIRAの優しくも厳しい言葉に、御園は膝から崩れ落ち、小さく嗚咽を漏らし始めた。
それを合図であるかのように、パラパラと、雨が降り出しその場の空気を浄化しようとしていた………。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







あれから、御園は警察へ自首し逮捕された。
過去に起きた爆発物の再現は、誰もが驚き、マスコミも面白おかしく報道していた。




「森野さん。この度はありがとうございます。」


AKIRAが、藍里のアパートにお邪魔すると、頭を深々と下げて、今回の事件解決に対して礼を述べた。

そして、1枚のカードを藍里に見せて
『これ、覚えてます?』と訪ねた。
それは、AKIRAが藍里に突きつけたカードであった。

「……これは、ソードの8。束縛とか、そういう意味があるのだけれど。どうやら…今回の事件は…このカードのように、見えないターゲット……ということを示していたみたいね。私は、自分の身が危ないのだとばかり思っていて、栞の心の傷に気づけなかった………。」

悔やむように唇をかみ締めたAKIRAに、栞はそっと手を触れると、

「先生。気にしてません。先生が無事でよかったです。」

と微笑んで返した。

「御園さんは、その後どうするつもりで?」

藍里の質問に、AKIRAは少し顔をゆがめたが、直ぐに笑顔を浮かべる。


「やったことは許されない。けど、それでも彼女は私の大切な使用人………罪を償った後、もう一度私の元で、やり直してもらうつもりよ。」



「お人好しですね……。」


そう言った藍里に対し、近くにいた哲也が『お前が言うな。』と言って頭を小突いた。

軽くこづかれた頭を擦りながら横目で睨んだ藍里だったが、直ぐに『あ。そうそう。』と、なにか思い出したかのように声を漏らすと、AKIRAの方に向き直る。


「あの、こんな時にこんなこと聞くのは非常識かもですが……。」


「ん?なにかしら?」


「……あの時占って下さった私の運勢………アレなんだったんですか?」

藍里の言ったこと。
それは、AKIRAが自分の運勢を占ってくれたが、黒澤のせいで結果を聞きそびれてしまったものだ。
それを聞いたAKIRAは、手をポフンと叩くと、

「あー。アレね。すっかり忘れてたわ。んーでも、私もあんまり覚えてないわ……でも、一つだけ言えるとしたら………。」

と、困ったように頬に手を当てて思い出そうとしていた。
それを、栞はじっと横目で見つめながら、AKIRAを見守っていた。





「あまり、いい結果ではないのだけど……。」


「………や。まぁ………大丈夫です。聞きます。」



言葉を詰まらせながらも、藍里は頷くとAKIRAは大きく息を吸って……。












「死ぬ思いをするかもしれないわ。」










と言い放った。





「え……?なに?事故るんですか?病気ですか?」


不穏な言葉に、その場の空気が凍ったが、藍里が何とか口を開く。



「んー?さあね。人の生死は、占いでは曖昧だから………。でも、死ぬって言ってもいろんな意味の死ぬがあるわよね。例えば……そうねぇ…………………。何かの期限が近くて死ぬ思いをするとか。」




「あ。そういう意味の死ぬ思いか…。」



AKIRAの言葉に安堵した藍里だったが、直ぐに哲也が『あ!』と声を上げた。
明らかに「ヤバい」というような口調だ。





「悪い藍里。ゼミの松センからの伝言で、

『レポート提出、今日の夕方4時迄ね』だと…。」


「夕方4時…?ってちょっと待って!?!?後30分しかないんだけど!?!?!?早く言ってよバカ!!!」



「や。最悪メールでもいいらしいから、良いじゃねぇか。今からササッ!と書いちまえば……。」



「そういう問題じゃない!!!」



「ふふふ。どうやら、このことみたいね。それでは。わたしと栞はこれで。ごめんあそばせー。」


と、手をヒラヒラさせて退場した。藍里も、軽く挨拶を済ませると、急いでパソコンに向かってレポートを打ち始めた。









その日レポートを書き終えたのは、期限から30分ほどすぎた頃であった。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




~その日の夜
                    AKIRAの家~





「失礼します。」






「あら?栞。どうしたの?呼んでないわよ。」





突然現れた助手の姿に、AKIRAは驚きを隠せずに尋ねた。
栞は、俯いていた顔を上げる。




「先生。森野さんの占い結果なんだったんですか?教えてください。」




助手の言葉に、AKIRAは、読みかけていた本を持つ手をピクリと震わせ、顔を顰め始めた。



「先生は、これ迄に占い結果を忘れたということはありませんでした。そんな先生が、あえて森野さんに『忘れた』と言いました。本当の結果。教えてください。」



栞の言葉に、AKIRAはため息をつくと、困ったように呟き始めた。




「そうねぇ。まぁ。いいでしょう。」



と言って、自らのカードをテーブルの上に広げると、とある3枚のカードを探して栞の前に出した。




「栞。これを見て、どう感じる?あなたから見て正位置と逆位置よ。」



と言い残した。
出されたカードは、栞から見て左から




カップの1の正位置。

ワンドの10の正位置。

そして、剣の10の逆位置であった。


じっと見つめた栞はゆっくりと顔を上げると、目を伏せて考えてから、口を開いた。

「カップの1と、ワンドの10は前向きに捉えていいかと。だけど…………気になるのが、この剣の逆位置です……。」


「そうね。私もそれを感じたのよ。」


栞の言葉に頷いたAKIRAは、顎に手をやりながら、窓から見える夜空を見上げる。

矢を射る弓のような三日月を見て、AKIRAはボソリと



「………森野さんにとって、とても辛くて悲しいことが起こるかもしれないわね……今後…。」



と、呟いた…………。







【続く】










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