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第19話 覚悟
第19話 覚悟
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翌日。
紗弥の所属グループのJanJanのマネージャーから話を聞くために、藍里と笠村は事務所に向かっていた。待合室で待機している間、ふと、壁にかけられてあるメンバー1人1人のサイン色紙が目に入る。
各々ハートをつけたり、星をモチーフにしたサインなど、可愛らしいサインが飾られている。
(あれ?)
思わず藍里が目を止める。
いくつもある色紙の中に、1枚だけ金箔側に書いている物がある。
目の錯覚か?
そう思い、藍里は目を擦ってよく見てみる。
しかし、やはりそれは金箔側に書かれている。
メンバーの誰かが間違えて裏に書いて、そのままになっているのだろうか?
「お待たせしました。」
ドアがノックされると、にこやかに笑った男性がゆっくりとソファへとかけた。
「初めまして、JanJanのマネージャーをしております、『猪狩 健太(いかり けんた)』といいます。
紗弥の事は、昨夜聞きました。そして今日、メンバーにも伝えましたよ。皆様、本当に悲しそうな顔をされて見えました。」
「辛いとこ申し訳ねぇが、新野はどんな人だった?」
「皆から慕われて、歌や踊りもうまかった子でしたよ。訃報を聞いた時は、耳を疑いました………あんないい子が……自殺だなんて考えたくありません………。」
「……渚とはどんな間柄だった?」
「渚ですか?あの子と渚は親友同士とは聞いたけど……それが?」
「藤澤俊輔という男が、そいつが犯人だとか言い出したから、それに関係しているのかと思ってな…。」
「そんな!ありえません!昨日だって、渚と紗弥は午前中に出かけてた!それくらい仲がよかったのだから、有り得ません!!」
「そうか。」
「そもそも、紗弥はストーカーに悩まされていたんだ。毎晩毎晩あとを付けられて、嫌になっていたと言っていた!その、藤澤という男が!ストーカーで、そいつが殺したんじゃないのか!?」
「いや、その男は婚約者だ。」
「婚約者………そ、そうでしたか……。」
落ち着きを取り戻した猪狩は、ハンカチを取り出すと額の汗を拭った。
「いやいや、これは失礼しました。どうも、頭に血が登りやすい性格でしてね……。」
いけないいけない。と呟きながら彼はハンカチをポケットにしまい込む。
「それにしても…………紗弥がねぇ………。」
猪狩は、立ち上がるとメンバーの飾られている色紙の前に立ち、そのうちひとつを取った。
金箔側にサインが書かれた色紙である。
「紗弥………みんな、悲しんでるよ………。」
「それ、紗弥さんのサインだったんですか?」
藍里が思わず尋ねる。
「ええ。これが紗弥のサインですが…?」
「裏にサインを書いてしまうほど、おっちょこちょい所があったんですか?紗弥さん……。」
「え?ああ。これが紗弥の書き方なのですよ。」
猪狩は思い出したかのように、サイン色紙を藍里の方に向けて答えた。
「裏に書くことが………ですか?」
「紗弥から聞いて私も初めて知ったのですが、実は……色紙は
白い方が裏
なんですよ。」
「え!?そうだったんですか!?」
猪狩の言葉に藍里は驚きを隠せずに声を上げ、笠村も目を見開いていた。
「今でこそ、サイン色紙は白い方に書くのが主流になってますがね。
そもそものきっかけは、とあるファンがその方にサインを表側……つまり、金箔側を向けてお願いしたのです。しかし、その著名の方は謙遜して
『自分は表側に書くほどの人間ではないので、裏に書かせていただきます』
と、言ったのがきっかけだとか。」
「へー……。」
そう言って、藍里はマジマジと色紙を見た。
「まぁ、メンバーの中には、それをよく思わない人もいて、何度もやめろと言ってますが、紗弥はそれを貫き通しましたね。」
苦笑いを浮かべながら猪狩は答えた。
そこまで聞いて、笠村は顎に手をやって考え込んでいた。が、それは藍里も同じらしく、眉間に皺を寄せていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「なにか引っかかるようだな?」
停車中の車内で笠村が藍里にそう尋ねた。
それに頷く藍里。
「色紙の裏表の事を知ってるのなら、紗弥さんのカバンの中から出てきたあの遺書の色紙………あれは言うなれば、裏側に書いてあった。もしも本人が書いたものなら、あの面には書かないはず………。」
「俺も同じ考えだ。じゃあ、今回の事件は………。」
その、笠村の先の言葉を待たなくとも、何を言いたいのかわかったらしい藍里はひとつだけ頷く。
まだ確定ではない。だけど、
この事件は……………
自殺に見せかけた他殺の可能性が高い。
紗弥の所属グループのJanJanのマネージャーから話を聞くために、藍里と笠村は事務所に向かっていた。待合室で待機している間、ふと、壁にかけられてあるメンバー1人1人のサイン色紙が目に入る。
各々ハートをつけたり、星をモチーフにしたサインなど、可愛らしいサインが飾られている。
(あれ?)
思わず藍里が目を止める。
いくつもある色紙の中に、1枚だけ金箔側に書いている物がある。
目の錯覚か?
そう思い、藍里は目を擦ってよく見てみる。
しかし、やはりそれは金箔側に書かれている。
メンバーの誰かが間違えて裏に書いて、そのままになっているのだろうか?
「お待たせしました。」
ドアがノックされると、にこやかに笑った男性がゆっくりとソファへとかけた。
「初めまして、JanJanのマネージャーをしております、『猪狩 健太(いかり けんた)』といいます。
紗弥の事は、昨夜聞きました。そして今日、メンバーにも伝えましたよ。皆様、本当に悲しそうな顔をされて見えました。」
「辛いとこ申し訳ねぇが、新野はどんな人だった?」
「皆から慕われて、歌や踊りもうまかった子でしたよ。訃報を聞いた時は、耳を疑いました………あんないい子が……自殺だなんて考えたくありません………。」
「……渚とはどんな間柄だった?」
「渚ですか?あの子と渚は親友同士とは聞いたけど……それが?」
「藤澤俊輔という男が、そいつが犯人だとか言い出したから、それに関係しているのかと思ってな…。」
「そんな!ありえません!昨日だって、渚と紗弥は午前中に出かけてた!それくらい仲がよかったのだから、有り得ません!!」
「そうか。」
「そもそも、紗弥はストーカーに悩まされていたんだ。毎晩毎晩あとを付けられて、嫌になっていたと言っていた!その、藤澤という男が!ストーカーで、そいつが殺したんじゃないのか!?」
「いや、その男は婚約者だ。」
「婚約者………そ、そうでしたか……。」
落ち着きを取り戻した猪狩は、ハンカチを取り出すと額の汗を拭った。
「いやいや、これは失礼しました。どうも、頭に血が登りやすい性格でしてね……。」
いけないいけない。と呟きながら彼はハンカチをポケットにしまい込む。
「それにしても…………紗弥がねぇ………。」
猪狩は、立ち上がるとメンバーの飾られている色紙の前に立ち、そのうちひとつを取った。
金箔側にサインが書かれた色紙である。
「紗弥………みんな、悲しんでるよ………。」
「それ、紗弥さんのサインだったんですか?」
藍里が思わず尋ねる。
「ええ。これが紗弥のサインですが…?」
「裏にサインを書いてしまうほど、おっちょこちょい所があったんですか?紗弥さん……。」
「え?ああ。これが紗弥の書き方なのですよ。」
猪狩は思い出したかのように、サイン色紙を藍里の方に向けて答えた。
「裏に書くことが………ですか?」
「紗弥から聞いて私も初めて知ったのですが、実は……色紙は
白い方が裏
なんですよ。」
「え!?そうだったんですか!?」
猪狩の言葉に藍里は驚きを隠せずに声を上げ、笠村も目を見開いていた。
「今でこそ、サイン色紙は白い方に書くのが主流になってますがね。
そもそものきっかけは、とあるファンがその方にサインを表側……つまり、金箔側を向けてお願いしたのです。しかし、その著名の方は謙遜して
『自分は表側に書くほどの人間ではないので、裏に書かせていただきます』
と、言ったのがきっかけだとか。」
「へー……。」
そう言って、藍里はマジマジと色紙を見た。
「まぁ、メンバーの中には、それをよく思わない人もいて、何度もやめろと言ってますが、紗弥はそれを貫き通しましたね。」
苦笑いを浮かべながら猪狩は答えた。
そこまで聞いて、笠村は顎に手をやって考え込んでいた。が、それは藍里も同じらしく、眉間に皺を寄せていた。
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「なにか引っかかるようだな?」
停車中の車内で笠村が藍里にそう尋ねた。
それに頷く藍里。
「色紙の裏表の事を知ってるのなら、紗弥さんのカバンの中から出てきたあの遺書の色紙………あれは言うなれば、裏側に書いてあった。もしも本人が書いたものなら、あの面には書かないはず………。」
「俺も同じ考えだ。じゃあ、今回の事件は………。」
その、笠村の先の言葉を待たなくとも、何を言いたいのかわかったらしい藍里はひとつだけ頷く。
まだ確定ではない。だけど、
この事件は……………
自殺に見せかけた他殺の可能性が高い。
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