森野探偵事務所物語 ~2~

巳狐斗

文字の大きさ
上 下
15 / 19
第1話 ホストクラブ

第1話  ホストクラブ

しおりを挟む
開店前のパラダイス。


その場所に集められた

No.1ホストのライト。
RYUこと内田崇。
チョコレートソースを用意したタツル。
チョコレートソースを持ってきた内勤の『佐藤 けんじ』。

そして、ヘルプに入っていたホスト2人だ。



「森野さん。分かったんですか?その、犯人が。」


ライトがゆっくりと尋ねる。

藍里は頷くと全員を見渡す。

「皆様。お忙しい中、集まって下さりありがとうございます。先程ライトさんも言いましたが、今回の事件のトリック、そして、犯人が分かったのです。」


全員が固唾を飲んで藍里の言葉を静かに待っていた。
ちょうどその直後、突然パラダイスのドアが開いたかと思うと、そこから稲垣と笠村が現れた。


「藍里ちゃん。またせたね。結果がでたよ。君の予想通りだ。排水溝には僅かに毒が検出された。そして、器なんだが『あるもの』が反応したんだ。」


「ある物……?」


内田が首をかしげながら呟く。


「ルミノール反応だ。君たちも、テレビとかで見たことあるだろう?」


「あぁ。あの、血液に反応して光るやつか?」

内田の言葉に、笠村がうなずく。

「そうだ。その付着していた器………チョコレートソースが入っていた器から検出された。そして、その器がこれだ。」




笠村が出した器。それは、青色の模様が施された物であった。




「あれ…!?青色!?」


「RYU?どうした?」


「いや、玲子さんに出した器って朱色だった気がして………それで俺、タツルに………あ。」



そこまで言った内田だったが、直ぐに「しまった!」というような顔をして顔を青ざめた。


「RYU!おまえ、またタツルに怒鳴り散らしたのか!いい加減にやめろと言っただろ!」


「け、けど、コイツ…!玲子さんに出した器を……!」

「でも、今回はちゃんと青色だった。言うことがあるんじゃないのか?」


ライトの言葉に、RYUは唇を尖らせてタツルを睨み付けた。
しかし………。








「言うことがあるのなら、今のうちに言った方がいいですよ。」




「え?」




藍里の言葉に、ライトが目を丸くする。




「今回の事件では、毒が使用されていました。しかも、それは、玲子さんにとって大好物なものにね。」


「大好物……果物か!?」



内田崇の言葉に藍里は「いいえ。」とだけ答えて首を横に降る。

柿の種、お酒という答えがあっても、藍里は変わらず「いいえ」といって首を横に降る。


「じゃあ、どこに?」


ライトが首をかしげる。藍里は全員に向かって迷うことなく答えた。





「それは、チョコレートソースです。」





「チョコレートソース!?けど、その器には毒が検出されなかっただろ!」


ヘルプのホストがそう叫ぶが、藍里は変わらず冷静に答えた。





「それは、犯人が『器をすりかえた』んです。

犯人は毒入りのチョコレートソースを玲子さんに提供したあと、玲子さんが毒によって苦しんで倒れている隙に、あらかじめ用意しておいた『なにもない器』と『毒入りチョコが入っていた器』を、すり替えたのです。



つまり、カメラに写っていた器の模様が青色だったのに、回収されたときに朱色の模様になっていたのは、犯人が器をすりかえたからなんだ。」





「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!そうしたら、あなたの件はどうなるんですか!?

あの時、あなたも玲子さんのチョコを一口食べていた!けど、あなたは何もない。それは、矛盾しているのでは!?」



ライトが慌てふためいてそう答えたが、藍里は冷静に答えた。





「それは、犯人が私に『解毒剤を渡したから』なんですよ。」



「解毒剤を…?」



藍里の言葉に首をかしげる笠村。藍里はさらに続ける。



「犯人は、私がチョコレートを食べるのは想定外だったのでしょう。だからこそ、絶対誰も食べないであろうチョコレートソースに毒を仕掛けた。


けど、私がそれを食べたことにより、犯人は慌てたはず。そして、さりげない動作で私に解毒剤を服用させたんだ。」



そこまでいうと、藍里はタツルの前までいくとまっすぐと見つめた。




「………ですよね。





あなたが、麻田 玲子さんを殺した犯人だ。」




全員が驚くなか、タツルだけはなんのリアクションもせずに、ジッと藍里を見つめらだけであった。





「待ってくれ!!タツルが犯人!?タツルがあなたに解毒剤を渡したのなら、わかるはず!いったいどうやって渡したというんです!?」






間にはいるように止めたのはライトであった。



「この方は、私に水をくれました。その水のなかに『解毒剤をいれた』んです。だから、チョコを食べても、私は死ななかったのです。」





玲子は解毒剤が入った水を飲まなかったから死に、藍里はタツルから受け取った水を飲んだ為に、無事だったのだ。



「だとしても!!彼が、彼女を殺す理由は!?彼は、玲子さんから見向きもされなかった!そんな人が、どうして玲子さんを狙うんだ!」


ライトが必死に問いただすその姿に、藍里は違和感を覚えつつも、推理を続けた。





「ライトさん。あなたのその名前は、本名ではありませんよね?」

「だからなんだというんだ?」

「アイランドで働いている『麻田 麗奈』
もそうでした。彼女は、玲子さんの娘じゃない。それと同じですよ。つまり、タツルさんこそが、噂の

麻田 麗奈さんなんだ!」





藍里の突然告げられた言葉に、場が凍りつく。しかし、直ぐにライトがおかしそうに笑い出す。




「くくっ………あはははは!!……何を言い出すかと思えば………タツルが麻田麗奈?ふざけるな!彼は、男だ!女であるはずがない!」



「ら……ライトさん……?」




ライトのその姿を見たことがないとでも言いたそうに、内田が心配そうにライトを見つめる。





しかし、そんなライトの姿に押されずに藍里は推理をやめなかった。




「いいえ。タツルさんは女性ですよ。アイランドの方の麗奈さんが『彼から生理用ナプキンを受け取った』と証言しています。さらに、玲子さんは麗奈さんを『男として育てていました。』つまり、ホストでナンバーワンになるのも、女性ではなく、男性としてという意味だったのでしょう。」




「でたらめをいうのも大概にしろ!そんなこと…!」





「もうやめて!!!」




突如、誰のものではない女性の声が響き渡った。




声の主は、藍里の目の前にいるタツルからだった。
声の高さに誰もが目を見開き、ライトのに至っては、顔色を変えていた。


「………完敗です。さすがは『藍色の探偵』ですね………そうです。」



そこまで言ったタツルは『俺……いえ………。』と呟きながら髪の毛を手に絡ませると、ゆっくりとそれを外した。






バサリと、栗色のセミロングの髪の毛が肩にかかり、タツルと呼ばれたその人物は背筋をまっすぐにして、全員に向かって






「私が、犯人の、『麻田麗奈』です。」







と、目線をまっすぐにしてハッキリと答えた。
















    
しおりを挟む

処理中です...