森野探偵事務所物語 ~2~

巳狐斗

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第1話 ホストクラブ

第1話 ホストクラブ

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「は?え?タツルが………玲子さんの娘!?どういう……?」

内田が、あわてふためいているなか、タツルと名乗っていた麗奈は、微笑みながら内田の方を見て


「RYUさん。ごめんなさい。いつまでたってもお客様がとれないダメホストで……。」

と、少しだけいたずらっぽくそう言われれば、内田は『うっ…。』と言葉をつまらせた。

そして、全員を見渡すと目を伏せてゆっくりと話し出した。


「私は、母の仕打ちがどうしても許せませんでした…。

父親がなくなってから、母は私を男性として育ててきました。
女性なら憧れるような服も許さず、ふるまいも男性らしくしていないと厳しく叱られていました。


私も女。一時だけでも、女性として扱って欲しいと思っていました。そこで私は毎晩ホストに通うようになりました。

そんななか、知り合ったのが……まだNo.1になっていなかった、ライトさんでした。

ライトさんは、私が、母親から男性としていきるように言われてきて、そのように振る舞っていると知ってもなお、優しくしてくれました。

そして、いつしか私はライトさんに恋をしてしまいました。………しかしそれと同時に、母にもその事がばれてしまったのです……。」








------------------------回想


「私の『息子』ともあろうものが!ホスト通いなんて何考えてるの!?」


玲子が、麗奈に向かってピシャリと叱る。しかし、男装した麗奈は、拳をギュッと握ると負けじと玲子の方を睨み付けていい放った。

「いい加減にして!私は息子じゃない!娘です!女なんです!あなたが私を女として見てくれないから、私はホストに行くことにしたんです!」

「ふん。落ちぶれた人間の言い訳ね。」


玲子が鼻で笑うように言ったが、やがて『いいこと思い付いた』とでもいわんばかりにニヤリと口許を歪ませると


「いいわ。そこまで言うのなら、夜のお仕事で一番になってみなさい。それなら、私はあなたを『娘』として認めましょう。」

といい放った。願ってもない言葉に、麗奈はパッ!と顔を明るくさせて

「わかりました!必ず、1番になってみせます!」


「ただし!働くのはホストよ。」

「え…?」

「そりゃあそうよ。あなたはまだ『私の息子』なんだもの。」


----------------------回想終了


「……当然、女性をキャストとして迎えてくれるホストクラブはなかなか見つからなかったのですが、ライトさんが私を自分と同じところで働かせてくれたのです。
もちろん、男装してでしたが……。

そこから私は必死に働きました。

No.1になって、母を見返したい。ライトさんと一緒になりたい。その気持ちで一杯だったからです…。だけど、私は知ってしまったのです…。


母が、私が1番にならないように、裏で細工をしていたのです!

ある日の夜、偶然見かけてしまったのです。
私を指名した女性の方に、母と側近のかたが徹底的に嫌がらせをして、

『これ以上やめてほしかったら、今後「タツル」を指名するな。』と言っていたのを…。




母は、約束を守る気なんてなかった……だから、これ見よがしにライトさんにお金を使って、私を1番にさせないようにしてた…!」


そこまで話した麗奈に、藍里は静かに『理由はそれだけですか?』と聞いた。

「……あなたは、それくらいのことでは今回の事件は起こさなかったはずだ。今回の犯行の理由。それを教えてくださいませんか?」



「………探偵さんの言う通り、私だけ危害を加えるのなら、我慢できました。

けれど、母はライトさんにも脅してきました。



『金を使ってやる。安定した暮らしをさせてやる。けど、もしも私のやることに口出しするのなら、
私が女であること、ライトさんと付き合ってることを言いふらす。それか、あなたが二度とNo.1にならないようにしてやる』と…………



ライトさんに、これ以上迷惑をかけたくなかった……だから………だから………。」




そこまでで、麗奈はとうとう何も言えなくなってそのまま泣き出してしまった。




「………麗奈………。ごめん。こんなことさせてしまった、俺にも責任がある……。」





ライトが近づいて、麗奈を後ろから抱き締めると、優しくそう言った。



「…刑事さん。そして森野さん。正直にお話しします。……僕は、全て見ていました。彼女が器をすり替えたことや、今回のことを企てたこと。そして、森野さんだけをたすけようとして、森野さんだけに解毒剤を渡していたことも……。」






「ならなぜ、止めなかった…!」




稲垣が喝を入れるかのようにライトを睨み付けるように訪ねると、言い返すかのようにライトが勢いよく振り替える。


「見捨てるなんてできないでしょう!!彼女のこと!!彼女だけに………負担をかけさせたくなかった…!」





そう言うと、ライトは再び麗奈をきつく抱き締めた……。





パラダイスには、二人の泣く声が静かに響き渡った。













パトカーに乗る二人。そんななか、麗奈はピタリと足を止めると、くるりと振り替えって藍里の方を見る。






「……探偵さん。……ありがとう…。」









突然の言葉に藍里は目を丸くすると、麗奈は顔を俯かせると、





「………正直、心の中でなんとも叫んでいたのです。


だれか、私のことを見つけて。

私の間違いを正して欲しい。


と……。」







「………けど、私はあなたの辛さも知らないで………。」



そこまでいいかけた藍里だったが麗奈の『私は!』と強い口調で藍里の言葉を止めた。そして、目に涙をためると




「……感謝はしているのです………最低な母親だったけど、あの人が私を生んでくれなかったら………ライトさんに会えなかった。……あなたが私を犯人だと見つけてくれなかったら、私は………ずっとモヤモヤしたまま人生を歩むところでした……。それに、あなたが指摘しなければ、私は自主していたと思います。それくらい、私は罪悪感を感じたくはなかったのです…。」




そこまで言って、麗奈はパトカーに乗り込むと、稲垣や笠村と共に走り出した………。






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