森野探偵事務所物語 ~2~

巳狐斗

文字の大きさ
18 / 19
第2話 恋は盲目

第2話 恋は盲目

しおりを挟む
防波堤につくと、何人かの捜査員がまだ所々調べていた。



桟橋の傍らには、靴がぴったりと揃えて残されてあり、捜査員が証拠写真のために撮っていた。




無造作に紐がほどかれた革靴は太陽の光を反射しており、磨き抜かれていることを表していた。
その靴の中には、大量の睡眠薬の空袋が入っていた。
遺書には『睡眠薬を飲んで、モーターボートで死ぬ』
と記載されていたらしく、そのときに使ったものではないかと、推測されるという。



ボラードには、真新しい擦れた後があり、最近つけられたであろう鎖が巻かれていた。

(ボラードに新しい傷…………鎖もだいぶ新しいものだ。靴の中に睡眠薬の空袋が入ってるし、遺書にあったという内容………そして、自殺の件は本当っぽいな。


本当………なんだろうけど…………。)








なにか引っ掛かるらしい藍里は『うーん。』と唸りながら顎に手をやって考え込んだ。






「探偵さん。」




その時、後ろから声が聞こえたかと思うと、清水がこちらにやって来ていたのだった。



「笠村さんから伝言よ。被害者の人間関係を調べていたら、一人の男が浮上したの。」


「え?」


「名前は原坂 駿(はらさか しゅん。)。31歳。被害者と同じ、結婚詐欺師なんだけど、彼の方がたちが悪くてね。女性達がその男と別れようとすると、淫らな写真をネットにあげると脅してきたそうなの。

いま、その男と連絡とろうにも取れないから、今から家に行くみたいよ。ここから近いみたい。

よかったら行く?」




清水の言葉に藍里は二つ返事で返そうとしたが、すぐに後ろにいる哲也たちの方を見て、モゴモゴとしだした。





「気になるんだろ?俺らのことは気にすんな。行ってこいよ。」


哲也が嫌な顔ひとつせずに、優しくそう言うと、陽菜達も頷き、


「集合場所でね!」


と、陽菜にも後押しされた。



「ありがとう……じゃあ、ごめん。ちょっと行ってくる。終わったらすぐに合流するから!」



そう四人に言い残すと、藍里は清水と共に車に乗り込んだ。












~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


車を走らせて10分後。


被害者と同じ結婚詐欺師という原坂が住んでいるアパートに向かった。



先に来ていた笠村を先頭に、『原坂』という表札が掛けられているドアのチャイムをならしてみる。


………が、中からの反応はない。


「留守か?………原坂さーん。いませんかー?」



笠村がドアに向かって話しかけるが、反応はない。

「原坂さーん。忙しいとは思いますが、出てきていただけませんか?」

何度声をかけても結果は同じで、笠村がため息をつきながらドアノブに手をかける。








ガチャッ。






すると、ドアノブは、何の抵抗も見せずにアッサリと隙間を見せた。それを見た清水と藍里も目を見開き、笠村も驚いた様子で




「開いてるな…。」



と呟いた。






異様な状況に、笠村達は恐る恐る中に入る。

すると、外からは聞こえてこなかったシャワーの音が風呂場から聞こえてきた。




「あ。入浴中か。」


「それは、失礼なことしたわね…。引き返しましょう。」



笠村と清水が引き返そうとした……。





「待ってください。」





開いていた脱衣室を凝視した藍里が、二人を呼び止めた。

藍里はソロリソロリと中に入り、近くにあった洗濯機の中を覗きだした。





「おい!こら!失礼だろ!!」



笠村が小声でそう言ったが、藍里は表情を固くしたまま、二人の方を見ると





「……ありません……。」



とだけこたえた。





「は?」





「風呂に入るなら、普通服とか脱ぎますよね?洗濯して干すにしても、入浴後に行いますよね?」






「だからなんだ…!?」





「脱 い だ 服 が 見 当 た り ま せ ん。」



藍里に言われて、二人は洗濯かごの方も見てみた。
確かに、洗濯かごの中身は空っぽで藍里の発言から、洗濯機の中身もないらしい。
そして、ハッとした清水は




「まさか!?」







と声をあげると、浴室の扉に駆け寄って、バン!!と勢いよくドアを開いた。













その光景に、3人は目を見張った。









「原坂……?」








思わず笠村が声を漏らす。
原坂と思わしきスーツを着た男性は、血を流し、頭からは熱湯のシャワーを浴びたままぐったりとしていた…。
足元には、ベットリと血がついたナイフ。





誰かに殺されていると言うことは、一目瞭然であった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...