世にも奇妙な物語の話と話の間にたまに入る短い話にありがちな奇妙な物語

人間無味

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似顔絵師

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 「それで、顔は覚えてるかね」

 どこか気だるそうに警官は訪ねてきた男にそう言った。ここは小さな交番所。仕事も終え暇になった警官は心地の良い微睡みの渦に飲み込まれていた。そんな中、ガラガラと開いたドアから青年が訪ねてきたのだ。

 居眠りを邪魔された警官は眉間に皺を寄せ目を擦りながら用件を聞いた。青年は昨日、ここら辺で起きたひったくり事件の犯人の顔を見たらしい。中年の男がブランド物のバックを雑に持って走っていたから、印象に残っていたらしい。警官はどんな顔をしているか覚えているかと青年に尋ねた。

 「はい、覚えてます」

 青年はそう言うと、おもむろにバックから紙と何色ものペンを机の上に広げた。そして、慣れた手つきで一分も経たない内に犯人と思われる顔を描き上げた。描き上げた絵を見て警官は青年に質問した。

 「君、職業は何をしているんだい」

 「はい、似顔絵師の方をしておりますが、何か?」

 警官は納得がいった。この異常に湾曲した顎。無いに等しい程潰れた鼻。狐のようにつり上がった細い目。一本も生えていないまっさらな頭皮....。相手の特徴に多少誇張を加えた似顔絵師が描く人の顔であった。これでは、本当かどうか区別が付かない。

 「いや、ご協力ありがとうございました、これでもどうぞ」

 警官は青年に駄菓子の入った袋を渡した。青年も言いたいことが言えてスッキリしたといった表情で受け取り軽い会釈と共に帰っていった。

 さて、と腰掛け、再度似顔絵を見る。うーん、やはりこれでは捜査には役立ちそうにないな。警官はゴミ箱を探した。とそこに。

 ガラガラガラガラ。

 次に入ってきた男に警官は驚いた。異常に湾曲した顎。無いに等しい程潰れた鼻。狐のようにつり上がった細い目。一本も生えていないまっさらな頭皮...。たまげた、この似顔絵の通りだ。そして、似顔絵が動き出したかと錯覚すら覚えさせるその男は、ブランド物のバックを手に持って言った。

 「昨日ひったくりました、誠に申し訳御座いませんでした」
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