1 / 1
似顔絵師
しおりを挟む
「それで、顔は覚えてるかね」
どこか気だるそうに警官は訪ねてきた男にそう言った。ここは小さな交番所。仕事も終え暇になった警官は心地の良い微睡みの渦に飲み込まれていた。そんな中、ガラガラと開いたドアから青年が訪ねてきたのだ。
居眠りを邪魔された警官は眉間に皺を寄せ目を擦りながら用件を聞いた。青年は昨日、ここら辺で起きたひったくり事件の犯人の顔を見たらしい。中年の男がブランド物のバックを雑に持って走っていたから、印象に残っていたらしい。警官はどんな顔をしているか覚えているかと青年に尋ねた。
「はい、覚えてます」
青年はそう言うと、おもむろにバックから紙と何色ものペンを机の上に広げた。そして、慣れた手つきで一分も経たない内に犯人と思われる顔を描き上げた。描き上げた絵を見て警官は青年に質問した。
「君、職業は何をしているんだい」
「はい、似顔絵師の方をしておりますが、何か?」
警官は納得がいった。この異常に湾曲した顎。無いに等しい程潰れた鼻。狐のようにつり上がった細い目。一本も生えていないまっさらな頭皮....。相手の特徴に多少誇張を加えた似顔絵師が描く人の顔であった。これでは、本当かどうか区別が付かない。
「いや、ご協力ありがとうございました、これでもどうぞ」
警官は青年に駄菓子の入った袋を渡した。青年も言いたいことが言えてスッキリしたといった表情で受け取り軽い会釈と共に帰っていった。
さて、と腰掛け、再度似顔絵を見る。うーん、やはりこれでは捜査には役立ちそうにないな。警官はゴミ箱を探した。とそこに。
ガラガラガラガラ。
次に入ってきた男に警官は驚いた。異常に湾曲した顎。無いに等しい程潰れた鼻。狐のようにつり上がった細い目。一本も生えていないまっさらな頭皮...。たまげた、この似顔絵の通りだ。そして、似顔絵が動き出したかと錯覚すら覚えさせるその男は、ブランド物のバックを手に持って言った。
「昨日ひったくりました、誠に申し訳御座いませんでした」
どこか気だるそうに警官は訪ねてきた男にそう言った。ここは小さな交番所。仕事も終え暇になった警官は心地の良い微睡みの渦に飲み込まれていた。そんな中、ガラガラと開いたドアから青年が訪ねてきたのだ。
居眠りを邪魔された警官は眉間に皺を寄せ目を擦りながら用件を聞いた。青年は昨日、ここら辺で起きたひったくり事件の犯人の顔を見たらしい。中年の男がブランド物のバックを雑に持って走っていたから、印象に残っていたらしい。警官はどんな顔をしているか覚えているかと青年に尋ねた。
「はい、覚えてます」
青年はそう言うと、おもむろにバックから紙と何色ものペンを机の上に広げた。そして、慣れた手つきで一分も経たない内に犯人と思われる顔を描き上げた。描き上げた絵を見て警官は青年に質問した。
「君、職業は何をしているんだい」
「はい、似顔絵師の方をしておりますが、何か?」
警官は納得がいった。この異常に湾曲した顎。無いに等しい程潰れた鼻。狐のようにつり上がった細い目。一本も生えていないまっさらな頭皮....。相手の特徴に多少誇張を加えた似顔絵師が描く人の顔であった。これでは、本当かどうか区別が付かない。
「いや、ご協力ありがとうございました、これでもどうぞ」
警官は青年に駄菓子の入った袋を渡した。青年も言いたいことが言えてスッキリしたといった表情で受け取り軽い会釈と共に帰っていった。
さて、と腰掛け、再度似顔絵を見る。うーん、やはりこれでは捜査には役立ちそうにないな。警官はゴミ箱を探した。とそこに。
ガラガラガラガラ。
次に入ってきた男に警官は驚いた。異常に湾曲した顎。無いに等しい程潰れた鼻。狐のようにつり上がった細い目。一本も生えていないまっさらな頭皮...。たまげた、この似顔絵の通りだ。そして、似顔絵が動き出したかと錯覚すら覚えさせるその男は、ブランド物のバックを手に持って言った。
「昨日ひったくりました、誠に申し訳御座いませんでした」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる