アルテアースの華 ~勇者召喚に巻き込まれ、適職が農民で子宝に恵まれるってどういうことですか?!~

暁 流天

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4.不安な出発。

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 沢山の荷物が入った大きいリュックを背負うと、雲一つない晴れやかな空を見ながら城門へと向かった。
城門の前に着くと、先に神宮寺くんが来てた。

「おはよう、神宮寺くん。今日は旅立ちにはピッタリの天気ね」
「おはようございます、春野さん。本当に晴れて良かったです」
「他の人は、まだ来てないの?」

 遠くの方から、なぜかシンデレラが載っていそうなデザイン性の高そうな馬車がこちらに向かってきた。そのまま神宮寺くんの前で止まると、豪華な黄色いドレスを纏った15歳くらいの女の子が出てきた。
 赤味の強い茶色の髪を綺麗に結い上げて、青い瞳を嬉しそうに細めて神宮寺くんの前に降り立った。

「ジングウジ様、おはようございます」
「え、レティア姫?どうしてこちらに?」
「もちろん、お見送ですわ」

 レティア姫は私の方に全く視線を向けることなく、まるでいないもののように存在を無視して、神宮寺くんに愛想を振りまいている。

 さすが王族、下々に対する扱いがなかなか立派なことですね、と思わず言いたくなった。

「それは、ありがとうございます」
「本当は、わたくしも着いて行きたいと申し上げましたのに……危ないからとお母様に止められてしまいましたの」
「そうですか。さすがにレティア姫には、危ないことをさせることはできませんからね」
「まあ。ジングウジさまは、お優しいのですわね」

 必死に2人の世界を築こうとしているレティア姫を見て、思わず顔がひきつりそうになる。
 ふと大きな斧を持った紺色短髪マッチョと燃えるような赤髪をツインテールにした女の子が歩いてきているのが見えた。
 なんだかかなり目立つ2人は、こちらに真っ直ぐ歩いてくる。

「あなた達が旅の仲間?」
「なんだ、若造と小娘か」
「えっと……仲間ってことは、あなたが勇者の仲間になる人たち?」
「そうよ。私たち、勇者一行に選抜されたの。それであの人が勇者なのかしら?」

 さすがに神宮寺くんも気がついたらしく、こちらに振り向いた。

「はじめまして、勇者の神宮寺暁人と言います」
「あら、貴方達は……勇者の仲間ですね。わたくしは、レティア。この度、勇者の見送に参りましたの」

 レティア姫は綺麗に微笑んでいるけど、神宮寺くんとの会話を邪魔したせいか、目が笑ってなくて怖い。
 プリーストと斧使いは、この国の姫だと気がついたとたん、頭を下げた。

「レティア姫?!これは失礼いたしました。私は神官から派遣されたプリーストのフレア・バリスタンと言います」
「はじめまして姫君。俺は今大会のコロシアムの優勝者として派遣された、斧使いのブレイブと言います」
「お2人とも、ジングウジさまのことをお願いたしますね。では、わたくしは城に戻ります」

 私は完全に無視されているけど、まあ雑用係に愛想を振りまくこともないかと納得してしまう。
 レティア姫は乗ってきた馬車に乗り込み、来た道を戻っていった。

「はじめまして。勇者のお供をさせていただく、春野天華と言います」
「ああ、雑用係の人ね。ちょうどいいわ。あたし、料理とか苦手なのよねー」
「おう、頼むぜ。ってーと、そっちの若造が勇者か?」

 神宮寺くんは、人好きしそうな笑顔を向けた。

「あ、はい。勇者として召喚された神宮寺暁人です。旅の間、よろしくお願いします」
「よろしく、勇者サマ」
「ああ。よろしく頼む、ジングウジ」

 ブライトさんは、身長があるせいか上から見下ろすように神宮寺くんの肩を叩いた。
 フレアさんはフレアさんで、なぜか神宮寺くんにウィンクアピールしている。
 なんでだろう、今からすごく不安な気しかしない。

「ねえねえ、立ち話もなんだから、食事をしながらこれからの事を話さない?」
「だな、腹が減っちゃなにもできねえしな」
「それなら、レティア姫に教えてもらった店があるから、そこに……」
「じゃあご飯決定ね!」

 よく考えると、レティア姫が喜ぶお店って、高級料理店なんじゃないかと思った。
 よっぽどお腹が空いていたのか、ガッツポーズをするブライトさんと神宮寺くんの腕に、さりげに巻き付くフレイさん。
 それを見て、止めた方が言いなんてとても言えなかった。むしろ、フレイさんはきっと神宮寺くん狙いなんだろなって呆れてしまった。

「よっしゃ!肉にしようぜ、肉!」
「え~!あたし野菜がいいー。勇者サマはどっちがいい?」
「俺はなんでも……」
「何言ってんだよ!筋肉つけるためには肉に決まってんだろ!」

 なんだろう、すごく立場が無い。
 そもそも、下っ端の雑用だってことはわかってるけど、会話に参加すらできない。
 というか、完全にいない存在のように扱われてるみたいだった。



************************


 レティア姫のおすすめのお店は、やっぱり高級料理店だった。見た目からして高そうな店に、なぜか3人が入っていったから止めようとしたら、フレアさんに雑用係のクセにナマイキーって睨まれた。

 ブライトさんは目の前に餌をチラつかせられた猛犬みたいに、恐ろしく睨んでくるし、神宮寺くんは本当に勇者なのかと思うほど、気弱に笑っているだけだった。
 
 給仕付きの食事にフレアさんは喜んでいたけど、ブライトさんは場違いでかなり浮いていて、不機嫌だった。
 フルコースみたいな料理が運ばれてくるけど、高い料理はやっぱり量が少なくてブライトさんは、さらに追加で注文していた。ある程度満足して、お店を出ようと会計を見ると10万という数字が目に飛び込んだ。

「え~。あたし、そんなにお金持ってないし」
「あ、俺も……ってか、おごりだろ?」
「だから止めたのに……一国のお姫様が通うようなお店よ?高いに決まってるわ」

 フレアさんがすごい顔で睨んでくるけど、さすがに年下の睨みに怯んでいられない。

「なら早く言いなさいよ!気が利かないわね!」
「とめてもナマイキーって言って無視したじゃない」
「はあ?料金が高いなら高いって言えばいいの!曖昧なこと言ってるからわかんないのよ!とりあえずアンタが払いなさいよ!」

 フレアさんとブライトさんは、捨て台詞を吐いてそのままお店を出て行った。
 本当に、この先は嫌な予感しかしない。後に残った神宮寺くんを見ると、申し訳なさそうな顔でたっていた。

「……俺も半分払います」
「うん……まあ、半分で許してあげる」
「なんだか、すみません」

 神宮寺くんは悪くないとわかっているけど、本当にため息しかでない。さっさとお会計を済ませてお店を出ると、フレアさんとブライトさんが待っていた。
 旅の仲間なんだから居るのは当然なんだけど、これを魔王討伐まで続けるなんて気が滅入るだけだった。

「ねえ、勇者サマ。馬車はないの?」
「ああ、何言ってんだ?歩きに決まってんだろ」
「はあ?あんたに聞いてないわよ。だいたい歩きって疲れるじゃない。もういいわよ、歩けばいいんでしょ」

 絶対に苦労する未来しか見えない。きっと昨日の出来事で幸運を使いすぎてしまったのかもしれないと、思わず溜息を零す。
 同じ旅をするなら、レムリアさんみたいな人が良かったと本気で思ってしまう。
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