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25.導きの御使い。
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ラズライエルさんは何も言わずに、ただ静かに見つめてくる。
その視線に耐え切れずに、ラズライエルさんに声をかけた。
「……それは、どういうこと?」
ラズライエルさんは、導くはずだったと言った。
いったいどこに導くつもりで、そしてどうして天使であるラズライエルさんが、私のところに来たのか不思議だった。
「……テンカさんは、間違って勇者召喚に巻き込まれたんだよね?」
「そうだけど……」
「その時に、女神アルテフェルミアさまを見たはずだよ」
あの時に見た稲穂のような黄金の髪に新緑の瞳の、慈愛に溢れた美女は、やっぱり女神さまだったんだ。
夢うつつで、本当に現実だったのかもわからない状況だったから、夢だったんじゃないかと思ってた。
「たしかに見たけど……とても綺麗な女の人を」
「……川の流れのように、テンカの居た世界からこちらの世界に来るのは一方通行なんだ」
元にいた世界に帰れないということは、一番最初に聞いた。
だから驚いたり悲しんだりすることもなく、たんたんと話しを聞くことができた。
「流れを変えるためには、もう一つ川の流れを作らないといけない……でも、君は勇者に引っ付いて来てしまったから」
「だから流れを変えられなくて、勇者召喚の場に出てしまったということ?」
ラズライエルさんは、返事をするように軽く頷いた。
「アルテフェルミアさまが君を見つけた時には、すでに闘神の召喚陣の中にいたらしくて……どうすることもできなくて、それでテンカさんに加護を与えたって」
加護と聞いて、思い当たることがあった。
あの時、意識はしっかりしていなかったけど、何か熱いものが流れ込んできたことは覚えている。
「それで加護って、私はいったい何を与えられたの?……まさか、作物を育てる才能?!」
考えてみれば、あの国に召喚された時の職業適性が水と相性が良いから農民と出てたけど、まさかそんな加護が?!
でもそれで上手に田園畑を作っていけば、たしかに生活には困らない。加護といえば加護になる。
1人で納得していると、ラズライエルさんは不思議そうに首を傾げた。
「作物?……アルテフェルミアさまは豊穣も司ってるけど、そんな農民程度じゃないと思うよ?女神さまの加護だし」
「でも私、バルトレイで受けた適性で水と相性が良いから、農民が適職って……それに子宝にも恵まれるとか出たんだけど」
バルトレイで言われたことを話すと、ラズライエルさんは少し俯くと、考えるように口元に手を軽く添える。
「……水はたぶん、君自身の性質だよ。それにアルテフェルミアさまは、愛と豊穣を司っているから……豊穣は植物適性だし、子宝は……まあ、愛のある行いをすれば自然とできるから」
まさか愛の部分が子宝になっていたなんて、どうすればいいのか解らない。
どう考えても、使い道が思いつかない。
「そう落ち込まないで……バルトレイの適性なんて、気にすることはないよ。それよりここからが本題だよ」
「本題?」
私にとっては職業適性の方が本題だったんだけど、ラズライエルさんにとっては些細なことのようだった。
「アルテフェルミアさまも、君を闘神バルトスの守護する国に送ることは良くないことだとわかっていたんだ。だから君を、アルテアースに連れてこようとしたんだよ」
さすが女神さまと、心の底から思った。
加護を与えてくれただけでなく、ちゃんと後のことも考えていてくれていたんだと思うと、女神さまに感謝の気持ちでいっぱいになる。
「それで僕が、君をアルテアースまで導く役目を仰せつかったんだ」
「でも、アルテアースの大神殿まで一度も会ったことなかったわよね?」
「問題は、そこだよ。僕はちゃんとアルテアースからバルトレイまで行って、君を探したんだけど見つけきれなかった」
「え、バルトレイに居たの?」
あまりに意外で驚いた。まさかアルテアースからバルトレイまで、探しに来てくれていたなんて。
「もちろん。それで勇者が旅立ったという噂を聞いて、慌てて後を追いかけたんだけど……」
「そこでも見つけられなかったの?」
そういえばバルトレイにいた頃は、王城の一室を借りていたから、街中を探していたら見つからなかったのかもしれない。
しかも、買い物をする時にしか外には出なかったし。
そういえば、あの買い出しの時にレムリアさんと出会ったんだっけ。
「いや、ちゃんと見つけたよ……上空から探していたら、水浴びの後に襲われかけているのを発見したんだ」
「え、うそ……あの時に居たの!?」
「うん。一番良いタイミングを狙ってたら、誰かに邪魔されたけどね……まあ、ついさっき誰に邪魔されたかわかったけど」
タイミングを狙っていたと聞いて、思考が止まった。
ちょっと待って、よく考えてみると、タイミングを狙わずに見つけ次第すぐに回収してくれたら、私はあんな目にあわなかったはず。
さすがに酷いと思い、文句を言おうとした時、ラズライエルさんはレムリアさんの方へと進んでいた。
「ねえ、そこの精霊もどき」
「……精霊もどきとは、失礼ですね」
「だって君、精霊の気質が強いし。それよりさ、君でしょ?あの時に邪魔したの」
精霊もどきと聞いて、まるでレムリアさんが精霊に近いと言っているように聞こえる。
もしかして精霊師を極めると、精霊に近くなるのかもしれない。これは本人に聞いてみるのが一番早いけど、なんだか聞きづらい。
ラズライエルさんが手の平から光の玉を出すと、光の玉の中からレイピアのような細い剣が出現した。
その細剣を慣れた手つきで掴んだ。
「君のせいで、導き手の役目を全うできなかったんだよね……でもまだ、守護天使にはなれる可能性があるから」
「だから、なんだというのですか?」
「……僕が彼女を守護するから、君はいらないよ」
ラズライエルさんは、威嚇するように剣先をレムリアさんに向けた。
その視線に耐え切れずに、ラズライエルさんに声をかけた。
「……それは、どういうこと?」
ラズライエルさんは、導くはずだったと言った。
いったいどこに導くつもりで、そしてどうして天使であるラズライエルさんが、私のところに来たのか不思議だった。
「……テンカさんは、間違って勇者召喚に巻き込まれたんだよね?」
「そうだけど……」
「その時に、女神アルテフェルミアさまを見たはずだよ」
あの時に見た稲穂のような黄金の髪に新緑の瞳の、慈愛に溢れた美女は、やっぱり女神さまだったんだ。
夢うつつで、本当に現実だったのかもわからない状況だったから、夢だったんじゃないかと思ってた。
「たしかに見たけど……とても綺麗な女の人を」
「……川の流れのように、テンカの居た世界からこちらの世界に来るのは一方通行なんだ」
元にいた世界に帰れないということは、一番最初に聞いた。
だから驚いたり悲しんだりすることもなく、たんたんと話しを聞くことができた。
「流れを変えるためには、もう一つ川の流れを作らないといけない……でも、君は勇者に引っ付いて来てしまったから」
「だから流れを変えられなくて、勇者召喚の場に出てしまったということ?」
ラズライエルさんは、返事をするように軽く頷いた。
「アルテフェルミアさまが君を見つけた時には、すでに闘神の召喚陣の中にいたらしくて……どうすることもできなくて、それでテンカさんに加護を与えたって」
加護と聞いて、思い当たることがあった。
あの時、意識はしっかりしていなかったけど、何か熱いものが流れ込んできたことは覚えている。
「それで加護って、私はいったい何を与えられたの?……まさか、作物を育てる才能?!」
考えてみれば、あの国に召喚された時の職業適性が水と相性が良いから農民と出てたけど、まさかそんな加護が?!
でもそれで上手に田園畑を作っていけば、たしかに生活には困らない。加護といえば加護になる。
1人で納得していると、ラズライエルさんは不思議そうに首を傾げた。
「作物?……アルテフェルミアさまは豊穣も司ってるけど、そんな農民程度じゃないと思うよ?女神さまの加護だし」
「でも私、バルトレイで受けた適性で水と相性が良いから、農民が適職って……それに子宝にも恵まれるとか出たんだけど」
バルトレイで言われたことを話すと、ラズライエルさんは少し俯くと、考えるように口元に手を軽く添える。
「……水はたぶん、君自身の性質だよ。それにアルテフェルミアさまは、愛と豊穣を司っているから……豊穣は植物適性だし、子宝は……まあ、愛のある行いをすれば自然とできるから」
まさか愛の部分が子宝になっていたなんて、どうすればいいのか解らない。
どう考えても、使い道が思いつかない。
「そう落ち込まないで……バルトレイの適性なんて、気にすることはないよ。それよりここからが本題だよ」
「本題?」
私にとっては職業適性の方が本題だったんだけど、ラズライエルさんにとっては些細なことのようだった。
「アルテフェルミアさまも、君を闘神バルトスの守護する国に送ることは良くないことだとわかっていたんだ。だから君を、アルテアースに連れてこようとしたんだよ」
さすが女神さまと、心の底から思った。
加護を与えてくれただけでなく、ちゃんと後のことも考えていてくれていたんだと思うと、女神さまに感謝の気持ちでいっぱいになる。
「それで僕が、君をアルテアースまで導く役目を仰せつかったんだ」
「でも、アルテアースの大神殿まで一度も会ったことなかったわよね?」
「問題は、そこだよ。僕はちゃんとアルテアースからバルトレイまで行って、君を探したんだけど見つけきれなかった」
「え、バルトレイに居たの?」
あまりに意外で驚いた。まさかアルテアースからバルトレイまで、探しに来てくれていたなんて。
「もちろん。それで勇者が旅立ったという噂を聞いて、慌てて後を追いかけたんだけど……」
「そこでも見つけられなかったの?」
そういえばバルトレイにいた頃は、王城の一室を借りていたから、街中を探していたら見つからなかったのかもしれない。
しかも、買い物をする時にしか外には出なかったし。
そういえば、あの買い出しの時にレムリアさんと出会ったんだっけ。
「いや、ちゃんと見つけたよ……上空から探していたら、水浴びの後に襲われかけているのを発見したんだ」
「え、うそ……あの時に居たの!?」
「うん。一番良いタイミングを狙ってたら、誰かに邪魔されたけどね……まあ、ついさっき誰に邪魔されたかわかったけど」
タイミングを狙っていたと聞いて、思考が止まった。
ちょっと待って、よく考えてみると、タイミングを狙わずに見つけ次第すぐに回収してくれたら、私はあんな目にあわなかったはず。
さすがに酷いと思い、文句を言おうとした時、ラズライエルさんはレムリアさんの方へと進んでいた。
「ねえ、そこの精霊もどき」
「……精霊もどきとは、失礼ですね」
「だって君、精霊の気質が強いし。それよりさ、君でしょ?あの時に邪魔したの」
精霊もどきと聞いて、まるでレムリアさんが精霊に近いと言っているように聞こえる。
もしかして精霊師を極めると、精霊に近くなるのかもしれない。これは本人に聞いてみるのが一番早いけど、なんだか聞きづらい。
ラズライエルさんが手の平から光の玉を出すと、光の玉の中からレイピアのような細い剣が出現した。
その細剣を慣れた手つきで掴んだ。
「君のせいで、導き手の役目を全うできなかったんだよね……でもまだ、守護天使にはなれる可能性があるから」
「だから、なんだというのですか?」
「……僕が彼女を守護するから、君はいらないよ」
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