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chapter.5
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しおりを挟む「「お姉さん!」」
子供たちが集められた場所に連れて来られたブランシュに声を上げたのはあの家族の子供二人。
『大丈夫?みんな怪我はない?』
パクパク口を動かしたものの子供たちには伝わらない。
「お父さんも殺されちゃうのかな」
「お父さん、お母さん。怖いよ」
自分より小さな子供たちの頭を撫でるブランシュ。
泣いている子供たちと引き離され拘束されている父親や母親も本当は今すぐにでも子供を抱きしめ慰めたいだろう。
『大丈夫。必ず助けてくれるから』
伝えたいのに伝えられないことが歯がゆい。
それでもブランシュは諦めず子供たちの頭を優しく撫でて口を動かし『大丈夫』と言って落ち着かせる。
父親や母親の代わりに。
「お姉さん」
何を言っているのかは分からなくても子供たちは不思議とブランシュの周りに集まり寄り添うと泣きやみ、すんすんと鼻を鳴らしつつも静かになった。
「へー。ガキどもを宥めるのが上手いな」
「お嬢ちゃんは精霊か何かなのか?」
「精霊って。たしかに珍しい容姿だけど」
「本当にヒトの姿をした精霊なら、貴族や王家から一生遊んで暮らせる金額で買い取って貰えるだろうよ」
「違いない」
子供たちの見張り役の盗賊たちはそう話して笑う。
光の玉にしか見えない妖精でも滅多に見かけないのに、人の姿をした精霊などただの御伽噺でしかない。
機嫌がいいけれど、笑っていられるのも今だけ。
この子たちのお父さんや他の男の人たちのことは天虎さんやライノお兄さんが必ず助けてくれる。
だから私もこの子たちやお母さんたちを守らないと。
乗っていた人たちが馬車の中に置いてきた武器や荷物を盗賊たちが漁っていると数分ほどで続々と仲間が集まってきて、その人数の多さに絶望する大人たち。
最初の十数人でも女性や子供を人質に取られていて戦えなかったのに、これでは時間を引き延ばしつつ隙をついて攻撃するということもできない。
「幌馬車かよ。庶民を襲っても金にならないだろ」
閃光弾の合図が打ち上げられて確認に来た男は馬から降りると、幌馬車を見て怒りの表情を浮かべる。
狙っていた貴族が来ない代わりに偶然通った他の貴族の馬車でも襲ったのかと思えば、大した金目の物を持っていない庶民が乗る幌馬車を襲って合図まで出したのかと。
「あったんです。金目のもの」
「なに?」
「なければ合図は出さないですよ」
男に説明して人質のところに向かった盗賊。
幌馬車を襲ったのはただの小遣い稼ぎのためで合図を出す予定ではなかったけれど、偶然にも襲ったその幌馬車に金目のものがあったから合図を出した。
「見てくださいよ。この子」
怯える子供たちに囲まれていたブランシュの腕を掴んだ盗賊はグイッと引っ張りあげて立たせる。
「馬鹿野郎!痣になったらどうする!」
乱暴にブランシュを立たせた盗賊を蹴った男。
その行動と男の剣幕に子供たちはますます怯えてまた大きな声で泣き始めた。
「お嬢ちゃん、どこか怪我はしてないか?」
『え?う、うん』
目の前にしゃがんで怪我をしていないか確認する男にブランシュは頷く。
「衣装もこんなに汚れて。すぐ風呂に入れて綺麗なドレスを着させてやるから」
地面に座っていて土汚れが付いた訓練着をパタパタと叩いてにっこりと笑う男。
『……お兄さんは悪い人じゃないの?』
「ん?」
丁寧に扱ってくれる男に聞いたブランシュはハッとしてポケットから出したメモ帳に文字を書く。
お兄さんは悪い人じゃないの?
みんなを助けに来てくれた優しい人なの?
そう書いて口もパクパク動かしながら男に見せる。
「もしかして喋れないのか?」
『うん』
こくんと頷きで答えるブランシュ。
質問に答えてくれなかったから、このお兄さんも文字が読めないのかな?と思いつつも。
「声が出ないのかよ。価値が下がるじゃねえか」
「最悪。特大の金目のものだと思ってたのに」
ブランシュが喋れないことを知ると今の今まで機嫌が良かった盗賊たちの表情が変わる。
そんな盗賊たちの会話を聞いて男は笑い出した。
「ほんとお前らは物を知らない馬鹿ばっかだな。声が出ない?最高じゃねえか。頭のイカれた金持ちほど儚げな鳥を鳥籠に閉じ込めて可愛がるものなんだよ」
心底楽しそうに笑いながら話す男。
「金で何でも買える奴ほど儚いものを好む。最初は綺麗で元気だった鳥でも翼や鳴き声を奪って儚いものに仕立て上げて愛でるんだ。今にも死んでしまいそうな儚い姿になった自分だけの鳥が死ぬまで鳥籠から逃げられないように。容姿も儚い上に鳴くことも出来ない白い鳥とかアイツらの好みでしかない」
男の話を聞いてブランシュは背筋がゾクッとする。
この人は優しい人じゃない。
私が高く売れると思ったから丁寧に扱っただけ。
悪い人だ。
「分かったらこの子は丁寧に扱え。他は顔のいい奴だけ残して殺していい。人数だけ居ても大した金にならない」
そう指示して男はブランシュを見下ろしニヤリと口元を歪ませると背中を向けた。
【ブランシュ、今だ】
全ての盗賊たちの目がボスだろう男とブランシュに集中している今しかない。
『精霊さんたち!私に力を貸して!』
みんなを守る力を。
ブランシュが固く両手を組み祈ると花の香りのする風が吹いて光の大精霊と闇の大精霊が顕現する。
「な、なんだ!?」
「動けない!」
人質にしていた子供たちや女性たちを囲うように光の守護壁が張られると同時に、見張りをしていた盗賊たちは身体中を拘束されたかのように口以外を動かせなくなった。
「少年、行くぞ」
「はい!」
緩めてあった縄を引き千切ったライノはブーツから出した神剣に魔力を通し剣のサイズに戻して盗賊に斬り掛かる。
「周りは気にするな!存分に力を使え!」
守護壁がかかっておらず拘束もされて動けない男性たちを巻き込むことを気にして剣だけで戦うライノに天虎は言うと、子供たちや女性たちと同じように守護壁で囲んだ。
「ありがとうございます」
次から次へとナイフや剣で斬り掛かってくる盗賊を倒しながら魔晶石の神剣に再び魔力を流したライノ。
今が魔眼の力を使う時。
「心優しいブランシュに悲しい顔をさせたお前たちを、心を痛めさせたお前たちを許さない」
宵神、私にブランシュを救う力を。
ライノの透き通る海のような美しいアイスブルーの虹彩に宵神の聖印が浮かびあがると闇の精霊も再び姿を現し、溢れ出る宵神の魔力を吸って黒炎を纏う大きな黒鳥の姿に変わった。
「私の大切なブランシュを傷付ける愚か者は、それが誰であろうと許しはしない!」
魔力が増幅したライノの氷魔法で辺り一帯は氷の世界に。
肌を突き刺すような極寒の世界には風雪が吹き荒れ、盗賊たちを脚元から凍らせていく。
「何が起きてるんだ!」
「あの男の魔法なのか!?」
盗賊たちは地面に張りつくように脚を凍らせる氷に抵抗しようと身体を動かそうとしても砕けず、生きながらにして自分の身体が凍っていく恐怖を味わいながら声を荒げる。
「お前たちは私と少年の怒りに触れた。今までに犯した数多くの罪を、多くの命を殺めた罪を、その身をもって償え」
その天虎の声のあと盗賊たちは完全に凍った。
美しく残酷な氷の世界。
守護壁の中から見るその世界に誰も声が出ない。
ライノが使った魔法ということは分かっていても、辺り一帯を氷の世界に変えてしまう魔法など見たことがなくて。
『天虎さん!ライノお兄さん!』
念話で聞こえてきたブランシュの声。
その声でライノの虹彩から宵神の聖印が消え風雪がピタリと止まると闇の精霊も元の姿に戻り、光の大精霊と闇の大精霊も姿を消して守護壁が解けた。
「ブランシュ!」
『ライノお兄さん!』
駆けて来るブランシュの方にライノも駆け寄り、飛び込んできた小さな身体を受け止め抱きしめる。
「怪我はない?」
『大丈夫。みんなを助けてくれてありがとう』
「助けたのはブランシュだ。ブランシュが魔法を使ってみんなを守ってくれたから私も力を使えたんだ」
天虎神とブランシュを信じていたから力を使えた。
二人ならきっと私が我を忘れても止めてくれると信じていたから宵神の力の一端である魔眼を使うことを迷わなかった。
『私も少しは役に立てた?』
「もちろん。私の女神はかっこよかったよ」
確認するように見る愛らしいブランシュの前に跪き、手袋を外した両手でブランシュの右手をとると甲に口付ける。
私の女神は心優しく、強く、愛らしい。
【二人ともよくやった】
男性たちにかけた守護壁を消して拘束されていた縄を切り解放していた天虎は、地面の雪を火魔法で溶かしながら一足遅れて二人のところへ来てブランシュの頭を撫でる。
『ちゃんと守護壁の精霊魔法を使えてた?』
【ああ。さすが私の娘だ】
精霊ではなく大精霊魔法だったことは予想通り。
ただ、ブランシュの願いに呼応して闇のテネブルまでが顕現して少年に力を貸すとまでは予想していなかった。
それほどブランシュが少年を信頼している証拠だろう。
【少年も神の目を開眼できていたな】
『ブランシュを救いたいと無我夢中だったので、もう一度やってみろと言われたら出来る自信はありません』
神の目のことを教えられた時に『目に魔力を流す』とは聞いていたけれど、正直どうやったのか分からない。
あの日のように目の奥に痛みがあるということは宵神の力(魔眼)を使うことが出来たということだろうけれど、無我夢中でやったことだけに自分でも方法は分からない。
【開眼には闇の大精霊のテネブルが力を貸していた】
『え?』
【身体の動きを封じる力はテネブルの領域。それ以外にも闇の精霊を通じて少年の魔力が目に流れるよう操作していた。だから分からなくて当然だ。まだ教えていないのだから】
『そうだったのですか』
少年の魔眼は宵神の聖印が刻まれた神の目。
宵神から誕生した闇の大精霊が宵神の加護を授かった少年の魔力を操るのは容易い。
【とは言え少年が魔眼の力を望まなければテネブルは力を貸さなかっただろう。今回はテネブルと闇の精霊の助けがあったとは言え、私が引き出さずとも自分の魔力で神の目を開眼できたことは及第点だ。基礎値が増えたら扱いを教えてやる】
『はい。よろしくお願いします。黒鷹もありがとう』
力を借りていたことを知ったライノは黒鷹を撫でる。
厄介な体質を持って生まれたと憎らしさすら感じていた力で人を救うことが出来たことで、もっと鍛えて自分一人でも使いこなせるようになりたいと思えた。
【何にせよ、皆が無事で良かった】
『みんなじゃない。御者のお兄さんたちは』
【そう言えば忘れていた】
『え?』
ブランシュを抱き上げた天虎はライノも連れて地面に倒れたままの御者の二人のところへ行く。
「その二人は生きているぞ」
「え?」
最初に襲撃を受け殺されてしまった御者の亡骸をせめて家族の元に返してあげたいと思い、身体を包むための布をバッグから出していた冒険者たちに声をかけた天虎。
俯せで地面に倒れている御者たちを見ながら指先を鳴らすと、ピクリともしなかった二人がガバッと起き上がった。
「ぎゃあ!生き返った!」
死んだものと思っていた二人が起き上がったことに女性冒険者は飛び上がるように驚き、男性冒険者たちもビクッとする。
「元から死んでいない。死んでいると思われた方が賊に目を付けられずに済むと思って寝かせておいただけだ」
「で、でもこんなに血が出て」
「それは回復をかける前に出た血だ。貧血を起こすくらいはする可能性があるが、傷は疾うに治した」
地面に広がった血は回復する前に出た血。
ブランシュが御者の二人が倒れているのを見て青ざめた時に回復と眠りの魔法をかけておいた。
「せ、聖者さまで?」
「聖者さまが私たちを?」
襲撃されたまでの記憶しかない御者の二人は冒険者たちと天虎の会話を聞いて別の意味で青ざめる。
出血量を見れば相当の深手を負ったことは間違いなく、それを治せる聖者となると位の高い聖者に違いないと。
「私は聖者ではない。冒険者だ」
「……回復が使えるのに?」
「回復を使える冒険者の何がおかしい」
「えぇ……」
お店にいた冒険者さんともこんな話をしていたなと思ってブランシュはくすくす笑い、ライノは苦笑する。
今時代は鑑定を受けた際に回復を使えることが分かった子供は見習い聖者や聖女として教会に属することになるから、回復が使える冒険者と聞いて驚くのも無理はない。
「聖者と認めて高額な治療費をとってほしいのか?」
「め、滅相もありません!」
「どうか払える額で!」
ニヤリと笑った天虎と手を合わせて懇願する御者たちを見て笑うブランシュとライノ。
「治療費はお前たちが娘に寄越した菓子で充分だ」
『美味しかったよ!ありがとう!』
サラサラと書いたメモを見せてニコニコ笑うブランシュの愛らしさに胸を撃ち抜かれる御者の二人。
小さな冒険者に頑張れと思って渡したお菓子だったけれど、どこでも買えるようなクッキーを治療費と言ってくれるなんて、こんなに喜んでくれるなんて、この親子(?)は神かと。
「お前たちも怪我をしているな」
「あ、はい。急停止した時にぶつけて」
「盗賊にも殴られましたし」
「ついでに治してやろう」
「「え?」」
冒険者たちも盗賊に暴行を受けた際の痣があったり、急停止の際に額や顔に怪我をしたりとしているのを見た天虎がまた指先を鳴らすと、五人居る男女の冒険者たちも一瞬で痛みがおさまり傷も消えた。
「ひい。やっぱり位の高い聖者さまですよね!?」
「違うと言っているだろう?自分たちも襲撃を受け傷を負いながら遺骸を弔おうとしていたお前たちの善意に見合うだけの治療をしただけだ。実際には死んでいなかったがな」
真っ先に御者の無事を確認した冒険者パーティ。
せめて家族の元に返してやりたいという優しさを持ったヒトの子たちへの神の慈悲。
「善い行いも悪い行いも巡り巡って自分に返ってくる。治療もお前たちのおこなった善行が巡って返ってきたというだけのこと。これからもその善い心を忘れず健やかに生きろ」
「はい!ありがとうございました!」
男性冒険者が深々と頭を下げると仲間たちもすぐに頭を下げ、御者の二人も立ち上がって頭を下げた。
「お兄さん!お姉さん!」
天虎たちを呼んだのは少年。
父親と母親の腕に抱かれて来た少年と少女。
「助けてくれてありがとう!」
「ありがとう!」
天虎とライノにしか大精霊の姿は見えていなかったけれど、天虎が剣や風魔法を使って盗賊を倒してくれたことや、ライノが氷の魔法を使って盗賊を倒してくれたことや、ブランシュが魔法で壁を作り守ってくれたことはみんなにも分かる。
だから三人に御礼を言いに来た。
「みなさんのお蔭でこうしてまた元気な子供たちを抱くことが出来ました。本当にありがとうございました」
「心から感謝します。ありがとうございました」
涙を滲ませながら御礼を言う父親と母親。
後から来た他の乗客も三人に深々と頭を下げる。
「動ける者が動いただけのこと。感謝は不要」
「みなさんがご無事で良かった」
数十人という数の盗賊たちから囲まれたあの絶望的な状況から自分たちが生き残れたのは三人のおかげ。
あのままでは子供や女性は奴隷商人に売られて人の尊厳を奪われ酷い目に遭っていたことも、邪魔な男性たちはこの場で殺されていたことも分かっているからこそ、三人は死の淵から救ってくれた救世主のような存在。
「それよりこういう時はどうするんだ?この場はこのままにして歩いて森を抜けるのか?」
襲撃を受けて辺りはすっかり夜に。
三人なら天虎の神聖魔法で次の街まで一瞬で行けるけれど、見知らぬ者ばかりが集まっている今は神ではなく冒険者として振舞っているから、ヒトの子が使う魔法以外を使いたくない。
「視界のいい日中なら歩いてもらいましたけど、魔物の活動時間になる夜にこの人数で動くのは逆に危険ですから、今夜は魔物避けを使って野営をして早朝に動く方がいいかと」
壊れた馬車を見て答える御者。
二頭の馬は無事で良かったけれど、残念ながら馬車は走行できないくらいに壊されている。
「通信機は?乗合馬車なら付いてるよな?」
「はい。ただ、壊されてます」
質問した乗客に答えた御者が指さしたのは御者台で、そこに備えてあった通信機のクリスタルは割られていた。
「今回の盗賊たちは貴族の馬車を狙っていたようですから、恐らく指名手配をされているような大型の盗賊団でしょう。偽装した通信機もどれか分かっていて組合に救助信号を出されないよう壊したんだと思います」
そう天虎に話すライノ。
貴族の馬車がここを通ることを知っていて襲撃計画を立てていたようだから、本来なら表に出ない内容を知ることができる情報網を持っている大型の盗賊団の可能性が高い。
「残党が居るかもしれないし、早く森を出た方が」
「冒険者たちは野営の準備をしているだろうが、私も含め宿場に泊まる予定だった者は何も持っていない」
「子供たちも居ますし、森で野営するのは怖いですね」
夜は魔物の活動時間で凶暴になる。
それは冒険者じゃなくても知っていることだから、戦えない乗客からすれば野営をするよりこのまま歩いて一番近い街に行きたいと思ってしまうのも当然のこと。
「お気持ちは分かりますが、幼い子も含む非戦闘員の方々を連れて夜の森の魔物と戦いながら歩くのは危険です。その状況では街に到着するのも深夜から早朝になりますし、御者が言うように今夜は野営をして早朝から行動する方が安全かと」
冒険者や大人だけならまだしも子供が居る。
お年寄りも居るから誰かが背負って歩くことになるし、魔物避けを使って危険を回避しつつ野営した方がいい。
それがライノの意見。
「俺も御者や少年の意見に賛成。女性や子供や年配の人を連れて夜の森を抜けるのは自殺行為でしかない」
「うん。私たち冒険者は夜の森の危険性をよく知ってるからこそ野営に賛成。この人数で夜の森を歩いてたら狙ってくださいって言ってるようなものだよ」
野営の経験がある冒険者は野営に賛成。
ヒトがぞろぞろ歩いていたら刺激された魔物に襲われる。
「みなさん、御者さんや冒険者さんを信用して従いましょう。彼らなら私たちを見捨てて逃げることも戦うことも出来たのにそうせず助けてくださったのですから。夜の森に慣れた彼らがその方が安全だと言うならそれが最善なんでしょう」
他の乗客にそう話したのはあの家族の父親。
自分も妻や二人の子供を連れた乗客の一人だから早く街へ行きたい気持ちも理解できるけれど、今判断を間違えれば盗賊の襲撃から生き延びたせっかくの命も魔物の餌食になる。
「生きたい者は残れ。死にたい者は行け。御者や冒険者の私たちはもう忠告した。後は個人の自由だ」
揉める乗客に溜息をついた天虎。
日中でも何の装備もない非戦闘員を連れて森を歩くのは危険だというのに、視界の悪い夜の森などなおさら。
無防備な状況で夜の森を歩く危険性と魔物避けを使って野営をする危険性を天秤にかければ野営一択だというのに。
「近場で野営できそうな場所を探してくる」
「お願いします」
「ブランシュを頼む」
「はい。おいで、ブランシュ」
『うん』
神の私はまだしもかよわいヒトの子はすぐに死ぬから、魔物が活発に行動し始める前に野営場所を探す必要がある。
少年とブランシュの二人だけなら私も力を気にせず使えるから魔物など気にかける必要もなかったが。
「これが最後の忠告です。私たちと残る方は一緒に野営をして早朝に街へ向かいましょう。いま街へ向かう方はどうぞお気をつけて。武器も防具も明かりとなるものも装備していない方が夜の森を生きて抜けられる保証はありません」
天虎が森に入ったあとそれだけ言ったライノ。
天虎神の言う通り行くも残るも自由。
私たちは護衛として雇われた冒険者ではなく同じ馬車に乗っていただけの乗客なのだから、この人たちを生かして街まで送り届けなければならない義務はない。
日の暮れた森ではあちらこちらで夜鳥が鳴き声をあげていた。
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