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chapter.6
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宿に泊まった翌朝。
『雨が降りそう』
帝都で買い揃えてもらった新品の訓練着に着替えたブランシュは、天虎に髪を梳かしてもらいながら部屋の窓から見えている生憎の曇り空を見る。
【毎年この時期は雨天になることが多い】
『そうなんだ』
去年の今頃はまだ蔓の卵の中に居て家からも出たことがなかったから、雨季を経験するのは初めて。
『お洗濯しても乾かないと困るなぁ』
【その時は私が魔法で乾かしてやるから心配するな】
『ありがとう。私が自分で出来れば良かったけど』
風魔法は使えているけれど、まだ温風は使えない。
だから髪を乾かす時には天虎が温風を使って乾かしている。
【まだ練習中なのだから仕方がない。一年に満たない月日で風魔法を使えているのだから充分頑張っている】
しょぼんとしているブランシュの頭に口づける天虎。
親バカの天虎としてはむしろ、愛娘の長い髪を魔法で乾かしてあげたり、こうして櫛で梳かしてあげている時間に幸せを感じているから、まだ暫くは温風を使えないままでいてほしいとすら思っている。
そんな話をしているとコンコンと木製の扉を叩く音が聞こえてくる。
『ライノお兄さんかな?』
【支度が済んだようだな】
『ちょっと待ってね。扉を開けてくる』
梳かし途中だった手を止めてもらって椅子から立ち上がったブランシュは、出入口まで走って行くと扉を開けた。
「おはよう、ブランシュ」
『おはよう、ライノお兄さん』
ブランシュと同じく、新品の衣装と装備品を身につけた冒険者スタイルで部屋に来たライノと朝の挨拶を交わす。
「おはようございます、ブランさま」
「おはよう。昨晩はよく眠れたか?」
「ええ、まあ」
少し歯切れの悪い返事を聞いて天虎は首を傾げる。
ライノが宿泊する部屋のベッドにも綿花を敷き詰めたから、硬くて眠れないということはなかったはずだけれど。
「今日の依頼のことを考えて眠れなかったのか?」
「いえ。今日の依頼はC級ですから特に」
ではなぜ?
じっと見ることで問う天虎。
「昨晩宿泊客が来たことはお気づきになりましたか?」
「ああ。深夜だろう?人の気配に気づいて目覚めた」
深夜に階段を上がってくる人の気配に気づいて念のため動向を伺っていたけれど、空いている部屋に入って行ったことで宿泊客だと分かって再び眠った。
「その宿泊客の声が筒抜けで寝付けなくて」
『全然気づかなかった。そんなに騒いでたの?』
「騒いで……まあ、うん。私が宿泊した部屋とは一つ空室を挟んでいたけど、この宿は壁が薄いからね」
深夜だから物音で目覚めないよう宿の主人が気遣ってくれたのか、後から来た客が泊まったのはライノが泊まった部屋とは空室を挟んでいたけれど、それでも声や物音が聞こえていたのだから相当だ。
「寝不足ならもう一泊するか?」
「いえ。向こうが静かになってから寝たので大丈夫です。それより朝食を済ませたら宿を出ましょう」
急いで片付けなくてはならない依頼ではないから、寝不足ならもう一泊と思った天虎に首を振るライノ。
むしろ早く宿を出たそうなその言い草に天虎はまた少し首を傾げる。
「分かった。まだブランシュの髪を梳かしているから少し待て。梳かし終えたら朝食を済ませて狩場に向かう」
「はい」
理由は分からないものの、本人が大丈夫と言うなら。
ライノがベッドに座ったことを確認して、再び椅子に座ったブランシュの髪に櫛を通す。
「……美しいな」
ベッドに座って仲睦まじい親子の時間を眺めていたライノはぽつりと呟く。
『なにが?』
「ブランシュの髪。元々綺麗だと思っていたけど、改めてこう見ると白銀の長い髪が美しいと思って」
太腿に届くほどの長さがある白銀の髪。
艶やかでサラサラのその髪は、曇り空の室内でも光を纏っているかのように輝いて見える。
珍しい色をしたその髪の美しさもブランシュが精霊のように見える理由の一つだろう。
『私も自分の髪が好き。天虎さんと同じ色だから』
「そっか」
天虎神と同じ色だから。
その分かりやすい理由にライノはふっと笑う。
自分の容姿がどれほど愛らしいかの自覚もなく、天虎神と同じ色ということに喜ぶブランシュには困ったものだ。
「よし。これでいい」
『ありがとう、天虎さん』
丁寧に髪を梳かしてもらったブランシュは振り返り嬉しそうにお礼を言って、天虎も愛らしい笑顔のブランシュに微笑んで頭に口づける。
『すぐに結ぶから、もう少し待ってね』
「今日は私が結んであげるよ」
『え?結べるの?』
「何度かリーサの髪を結んであげたことがある」
『そうなんだ?じゃあお願いします』
普段は自分で結んでいるけれど今日はライノに任せて、ポシェットから出した数本の髪紐や主神の贈り物の組紐やクラウディアの贈り物の髪飾りをテーブルに置く。
「どんな髪型がいい?」
『三つ編みできる?邪魔にならないように結びたいの』
「じゃあ編み込みにしよう」
『編み込みも出来るの?大変じゃない?』
「大丈夫」
器用なものだ。
椅子に座っているブランシュの背後に立って長い髪を器用に編み込んでいくライノに感心する天虎。
「妹の髪を結ぶ時には手袋をしているのか?」
「はい。父や弟妹に対して負の感情はないですし、ブランシュや天虎神には触れられるのになぜとは思いますが、こればかりは自分でもどうにもなりません」
嫌いだから触れたくないとか、嫌いだから触れられたくないという理由ならその人を避ければ済む話だけれど、嫌っているわけではない人でも嫌悪感を抱いてしまう。
それが父や弟妹であっても。
『私もまだ知らない人がたくさん居ると怖いと思うから、自分でもどうにもならないっていうのは分かる。初めて会う人が私を知ってるわけもないし、見ただけで呪い子と分かるわけでもないのに、たくさんの人を見るとまず怖いと思っちゃう』
この中に自分を捨てた家族が居たら。
呪い子だと知られて嫌がられたら。
自分を知るはずもない人たちだと分かっていても、呪い子の話は迷信だと分かっていても、まず恐怖心を抱く。
『いつか大丈夫になるように、一緒に頑張ろうね』
「ああ。一緒に頑張ろう」
笑みを交わす二人を見て微笑する天虎。
嫌悪感と恐怖心という違いはあれど、自分と同じ種族のヒトの子に負の感情を抱いてしまう二人。
同じ境遇だからこそ、互いに理解できることや寄り添えることもあるだろう。
まだ若い二人が切磋琢磨して成長することを願う。
髪を結び始めて十分ほど。
「お待たせ。出来たよ」
『わあ!凄い!ありがとう!』
鏡で確認して嬉しそうにお礼を言ったブランシュに、ライノも『喜んでくれて良かった』と笑顔になる。
「可愛らしいな」
『うん!とっても可愛い!』
頭が痛くならないよう気遣ってゆるふわに編み込まれた三つ編みのポニーテールには、主神の贈り物の組紐とクラウディアの贈り物の髪飾りが使われている。
「女児が好みそうな結び方などよく知っていたな」
「学園で女子生徒の髪型を見たことがあるので」
「ああ、それで知っているのか」
「実際に結んだことがあるのは妹だけですが」
貴族令嬢は基本的に髪を長く伸ばしているから学園生活では結んでいることが多く、夜会の時の髪型とはまた違った様々な髪型をしている人を見かけた。
だから知識だけはある。
『学園ってお勉強する学校だよね?』
「そう。ただ、大抵の貴族は幼少期に家庭教師を雇って事前に学んでるから、学園に行く理由は人脈を作るためだったり、対人関係や集団行動を学ぶ意味合いが大きい」
王族や上流階級の貴族は幼い頃からレベルの高い家庭教師を雇って既に基礎知識を学んでいるから、学園に行く理由は家庭教師の教えだけでは学べない部分を補うため。
「特に平民とは学園に通うでもしないとなかなか交流する機会がないからね。交流を深めて普段の生活を聞いたり不足していることを知ることで領地の改善に役立てる」
平民のことを知って領地の経営や改善に役立てる。
そのために入学するのであって、教科書で学べるような学問はオマケでしかない。
「お前は途中で辞めたのだろう?」
「目的だった平民の生活は学ばせてもらいましたし、これ以上は通っても学べることはないと判断しました」
体質が体質だからいつも顔を隠して気をつけなければならなかったけれど、二年間の学園生活で自分の体質が効かない平民とは交流を深め話を聞くことで、領民のためになりそうなことは学ばせてもらった。
「私の場合は体質の問題があって下手な家庭教師は雇えずベランジェ公にお願いしたので、学園で教わるようなレベルの学問や魔学ではもう学べることがなくて」
「あの騒がしい男から学んだのか」
「未知の塊とも言える天虎神の前では我を忘れることも多く賑やかですが、普段は物静かな方ですよ?一人で研究室にこもりきりだから静かという理由もありますが」
興味を擽られる存在の天虎やブランシュには我を忘れて詰め寄るベランジェ公の印象が強いのだろうし、昔から親交のあるユハナやソレイユはそういう人だと知っているけれど、それ以外は無口で物静かな印象を持つ人が殆ど。
「あの男が物静かとは」
『私たちには想像できないね』
真顔で話す天虎とブランシュに笑うライノ。
相手が誰であろうと知識欲には勝てず詰め寄る人というのは否定できない事実。
「……学園か」
櫛をインベントリにしまいながら呟く天虎。
「光の一族の幼子も学園に行くのか?」
「行くと思いますよ?元気になりましたから」
以前は少し動くだけでも苦しくなったり熱が出たりで学園に通うのは難しかったけれど、聖印と光の妖精のおかげで溢れる魔力を抑えられるようになった今なら通うことが出来るから、他の貴族令嬢と同じく入学するだろう。
「ブランシュも学園に行きたいか?」
同い年のクラウディアが学園で学ぶならと思って聞くと、ブランシュは大きく首を横に振る。
『勉強はしたいけど、学園に行くのは怖い』
転生前の記憶のおかげで文字を書いたり読んだりすることは出来るけど、記憶にない常識は分からない。
だから勉強はしたいと思うけれど、森を出て天虎が居ない学園に行くのはまだ怖い。
「学園に通うのは怖くても勉強はしたいという話なら、ベランジェ公に家庭教師をお願いしてみては?」
「あの男に?」
「ベランジェ公は天才と謳われる大魔道士ですから。天虎神の頼みなら引き受けてくださるかと」
そう言われて考え込む天虎。
ブランシュが勉強をしたいと望むなら学ばせてあげたいけれど、ベランジェ公に頼むのは気が進まない。
教える変わりに魔法を教えろと詰め寄られることが目に見えているし、ブランシュに『パパ』と呼ばれることを目標にしているような男だから。
『大丈夫。忙しいルイお兄さんのお父さんにお願いしなくても自分で勉強するから。人とあまり会わない私には教わった知識を使う機会もないだろうし』
考え込んでいる天虎に慌てて言ったブランシュ。
捨てられた自分を拾って育ててくれている天虎を困らせたくなくて。
「じゃあ私が教えようか」
『ライノお兄さんが?』
「あらゆる学問の知識があるベランジェ公に教わるのが一番だけど、ブランシュ一人で学ぶには限界がある」
そう話して苦笑するライノ。
ブランシュには幾つもの物語を渡っていた間に得た知識があるけれど、それがこの物語の常識ではないことも多い。
この物語で通用する一般常識や学問を学ぶなら一から始めることになるのだから、一人で学ぶのは難しい。
「いや。学問はあの男に頼むことにする。少年は自分を鍛えることに専念しろ。そのために森へ来たのだから」
今までのように日常生活の中でヒトの子の一般常識を教わるだけならまだしも、本格的に学問を教えるとなるとライノの訓練や鍛錬の時間を削ることになる。
魔眼を使いこなせるよう鍛えてやると約束したのだから、ライノはライノで自分のことを優先させたい。
「簡単には扱えない難しい魔法でも教えてやれば、暫くの間は喧しく詰め寄られることもないだろう」
少なくとも使えるようになるまでは。
喧しくなければそれでいい。
『でもルイお兄さんのお父さんは忙しいよ?』
「たしかに断られるかもしれないが、ブランシュの誕生日を祝いに森へ来た時にでも話してみよう」
もじもじするブランシュの頭をそっと撫でる天虎。
私の使徒でありながら断ろうものなら、神の権限を行使してやろうと、腹黒いことを心の中で思いながら。
身支度を整えベッドに敷き詰めていた綿花を消してから、朝食を摂るために食堂のある一階に降りる。
「おはよう。冒険者さんたち」
「おはよう。ゆっくり休めたかい?」
「ああ。おはよう」
「おはようございます」
二階から降りてきた三人に気づいてカウンターの中から声をかけたのは男性主人と女性主人。
天虎とライノは声で挨拶を返し、天虎に抱っこされているブランシュはペコリと頭を下げて挨拶を交わす。
「朝食を用意するから好きな席に座ってくれ」
「そうさせてもらう」
昨晩と打って変わって今日の食堂は静か。
既に座って食事をしている人は居るものの、朝だけあって人数は少ない。
三人が座ったのは昨晩と同じテーブル席。
朝のゆったりとした空気の中、席について一息ついた。
「このあと狩場に行くが、買い足す物はあるか?」
「私は特に。消費アイテムは多めに買いましたから」
初日と翌日の野営で魔物避けや虫除けを使って、昨日の討伐でも麻痺瓶を二本使ったものの、予備の分も考えて多めに買ったからまだある。
「ブランシュは?」
『私もない。魔物避けしか使ってないから』
帝都で買い物をした時にライノからポーションと魔物避けと薬草のセットを受け取り自分のホルスターに入れてあるけれど、魔物避けしか使っていない。
「そうか。買い足す物がないなら、朝食を済ませて少し休憩をしてから討伐依頼が出ている狩場に向かおう」
「はい」
今日片付けるのは、帝都の食堂の主人が出した依頼と、ギルマスのピムが天虎個人に出した指名依頼の二つ。
食堂の主人が出した依頼はC級の魔物の討伐で、指名依頼の方は採取と調査。
「お待たせ」
「早いな」
「朝食は一種類しかメニューがないからね」
会話をしていると男性主人がカートを押して三人分の朝食を運んできて、笑いながらテーブルに置く。
『ベーコンだ。いい香り』
「美味しそうですね」
「ああ」
「ありがとう。パンやスープはお代わりが出来るから、足りない時は声をかけてくれ」
「分かった」
皿には焼いた厚めのベーコンとサラダ。
その他は籠に入った丸いパンとマグカップのスープ。
朝食らしくシンプルなメニューだけれど、いい香りがする料理にブランシュはニコニコ。
「恵みの神に感謝を。糧に感謝を」
両手を組んで祈るライノとブランシュ。
その恵みの神の一柱は二人の隣や対面に座っているけれど。
『うん、美味しい』
祈り終えて早速ナイフで切ったベーコンを口に運んだブランシュは笑顔を浮かべる。
『ん?ベーコン以外の香りがする』
【焼く時に香草でも使ったのか?】
天虎とライノも幸せそうに食べるブランシュを見たあとベーコンを口に運んで念話で会話を交わす。
『燻製ベーコンだと思う』
『【燻製ベーコン?】』
『このほんのり甘い香りは果物のチップを使ってるんじゃないかな。ベーコンの燻製は手間も時間もかかるから作るのが大変なんだけど、これが自家製なら凄い』
天虎とライノの頭の上には『?』が浮かぶ。
モグモグ食べつつも熱弁してくれているけれど、何を言っているのかさっぱり分からなくて。
『ブランシュも作れるの?』
『食材とスモークチップとスモーカーがあれば作れるよ?大きく分けて、塩漬け、塩抜き、乾燥、燻煙の工程が必要だから、食べられるまでに一週間くらいかかるけど』
『このベーコンにそんな時間が?』
一週間と聞いて驚くライノ。
ベーコンは朝食の際に食卓に並ぶ機会が多いけれど、ブランシュに聞かなければそれほど手間暇のかかった料理だとは分からなかった。
【それを聞くと宿の主人の料理への熱意に感謝して食べなければと思わされるな】
『はい。どんな料理にも感謝は必要ですが』
『ご主人が作った自家製なのか、市販品を買って焼いたのかまでは分からないけどね。とっても美味しい』
燻製品は好き嫌いが分かれるものの、果物だろうほんのり甘い香りのチップを使ったこれはクセが少ないから、まだ十歳のブランシュでも食べやすい。
美味しそうに食べているブランシュの愛らしい姿を見て頬を緩ませる天虎とライノ。
燻製のベーコンもご馳走だけれど、ブランシュの愛らしい姿も二人にとってはご馳走。
「眠~い」
「落ちるなよ?」
「うーん」
美味しい朝食に舌鼓を打っていると会話が聞こえてきて、天虎とブランシュとライノは声のした階段の方を見る。
階段を降りて来たのは男性が一人と女性が二人。
部屋がある二階から降りて来たということは、深夜に宿泊客が来たと言っていたのはこの三人のことだろう。
「あー……怠い」
「飲みすぎたね」
「頭が痛い」
階段に近い席に座っていた天虎とライノとブランシュの席に近い席に座った三人は二日酔いらしく、椅子にだらりともたれたり、テーブルに顔を伏せている。
【深夜に来た宿泊客の物音や声が聞こえて眠れなかったと言っていたが、酒を呑んで騒いでいたのか】
『そのようですね』
パンを千切りながらサラリと答えたライノ。
朝方まで騒いでいたから私たちが宿を出るまで起きて来ないのではと思っていたけれど、そうもいかなかったか。
『食べたら荷物を纏めて宿を出ましょう』
【ん?】
『ブランシュの教育によくありません』
【まあ、子供には見せたくない大人の姿ではあるが】
近くの席に居る三人にも届く酒の香りとだらしない姿は子供の教育によろしくないのは確かだけれど、天虎とギルド本部に足を運ぶ機会が多いブランシュは、酔ったり疲れてだらりとしている冒険者たちの姿を見慣れている。
それが証拠に今も朝食に夢中で気にしていない。
『怠そうな姿を見せているだけならいいですが』
ライノも冒険者の三人がただだらしない姿を見せているというだけの話なら言ったりしない。
酔って大声を出したり喧嘩をしたりと周りの人に迷惑をかけるようなことをしなければ、どれだけぐったりしていようと本人たちの自由だ。
ただ、ライノが眠れなかったのは三人が酒を呑んで騒いでいたという単純な理由ではない。
今はぐったりしていて大人しいけれど(声量はさて置き)、無垢な十歳のブランシュの教育によろしくない三人だと分かっているから言っている。
『急いで食べるね』
『食べたら宿を出ようと言っただけで急かすつもりはないから、詰まらせないようしっかり噛んで食べて』
理由は分からないけれど急いで食べようとしたブランシュを止めたライノ。
三人の近くに居させたくないけれど、食事を急かすつもりもない。
念話で会話をしつつも手を止めることなく黙々と食べているライノを見て、天虎とブランシュはちらりと目を合わせて首を傾げた。
『雨が降りそう』
帝都で買い揃えてもらった新品の訓練着に着替えたブランシュは、天虎に髪を梳かしてもらいながら部屋の窓から見えている生憎の曇り空を見る。
【毎年この時期は雨天になることが多い】
『そうなんだ』
去年の今頃はまだ蔓の卵の中に居て家からも出たことがなかったから、雨季を経験するのは初めて。
『お洗濯しても乾かないと困るなぁ』
【その時は私が魔法で乾かしてやるから心配するな】
『ありがとう。私が自分で出来れば良かったけど』
風魔法は使えているけれど、まだ温風は使えない。
だから髪を乾かす時には天虎が温風を使って乾かしている。
【まだ練習中なのだから仕方がない。一年に満たない月日で風魔法を使えているのだから充分頑張っている】
しょぼんとしているブランシュの頭に口づける天虎。
親バカの天虎としてはむしろ、愛娘の長い髪を魔法で乾かしてあげたり、こうして櫛で梳かしてあげている時間に幸せを感じているから、まだ暫くは温風を使えないままでいてほしいとすら思っている。
そんな話をしているとコンコンと木製の扉を叩く音が聞こえてくる。
『ライノお兄さんかな?』
【支度が済んだようだな】
『ちょっと待ってね。扉を開けてくる』
梳かし途中だった手を止めてもらって椅子から立ち上がったブランシュは、出入口まで走って行くと扉を開けた。
「おはよう、ブランシュ」
『おはよう、ライノお兄さん』
ブランシュと同じく、新品の衣装と装備品を身につけた冒険者スタイルで部屋に来たライノと朝の挨拶を交わす。
「おはようございます、ブランさま」
「おはよう。昨晩はよく眠れたか?」
「ええ、まあ」
少し歯切れの悪い返事を聞いて天虎は首を傾げる。
ライノが宿泊する部屋のベッドにも綿花を敷き詰めたから、硬くて眠れないということはなかったはずだけれど。
「今日の依頼のことを考えて眠れなかったのか?」
「いえ。今日の依頼はC級ですから特に」
ではなぜ?
じっと見ることで問う天虎。
「昨晩宿泊客が来たことはお気づきになりましたか?」
「ああ。深夜だろう?人の気配に気づいて目覚めた」
深夜に階段を上がってくる人の気配に気づいて念のため動向を伺っていたけれど、空いている部屋に入って行ったことで宿泊客だと分かって再び眠った。
「その宿泊客の声が筒抜けで寝付けなくて」
『全然気づかなかった。そんなに騒いでたの?』
「騒いで……まあ、うん。私が宿泊した部屋とは一つ空室を挟んでいたけど、この宿は壁が薄いからね」
深夜だから物音で目覚めないよう宿の主人が気遣ってくれたのか、後から来た客が泊まったのはライノが泊まった部屋とは空室を挟んでいたけれど、それでも声や物音が聞こえていたのだから相当だ。
「寝不足ならもう一泊するか?」
「いえ。向こうが静かになってから寝たので大丈夫です。それより朝食を済ませたら宿を出ましょう」
急いで片付けなくてはならない依頼ではないから、寝不足ならもう一泊と思った天虎に首を振るライノ。
むしろ早く宿を出たそうなその言い草に天虎はまた少し首を傾げる。
「分かった。まだブランシュの髪を梳かしているから少し待て。梳かし終えたら朝食を済ませて狩場に向かう」
「はい」
理由は分からないものの、本人が大丈夫と言うなら。
ライノがベッドに座ったことを確認して、再び椅子に座ったブランシュの髪に櫛を通す。
「……美しいな」
ベッドに座って仲睦まじい親子の時間を眺めていたライノはぽつりと呟く。
『なにが?』
「ブランシュの髪。元々綺麗だと思っていたけど、改めてこう見ると白銀の長い髪が美しいと思って」
太腿に届くほどの長さがある白銀の髪。
艶やかでサラサラのその髪は、曇り空の室内でも光を纏っているかのように輝いて見える。
珍しい色をしたその髪の美しさもブランシュが精霊のように見える理由の一つだろう。
『私も自分の髪が好き。天虎さんと同じ色だから』
「そっか」
天虎神と同じ色だから。
その分かりやすい理由にライノはふっと笑う。
自分の容姿がどれほど愛らしいかの自覚もなく、天虎神と同じ色ということに喜ぶブランシュには困ったものだ。
「よし。これでいい」
『ありがとう、天虎さん』
丁寧に髪を梳かしてもらったブランシュは振り返り嬉しそうにお礼を言って、天虎も愛らしい笑顔のブランシュに微笑んで頭に口づける。
『すぐに結ぶから、もう少し待ってね』
「今日は私が結んであげるよ」
『え?結べるの?』
「何度かリーサの髪を結んであげたことがある」
『そうなんだ?じゃあお願いします』
普段は自分で結んでいるけれど今日はライノに任せて、ポシェットから出した数本の髪紐や主神の贈り物の組紐やクラウディアの贈り物の髪飾りをテーブルに置く。
「どんな髪型がいい?」
『三つ編みできる?邪魔にならないように結びたいの』
「じゃあ編み込みにしよう」
『編み込みも出来るの?大変じゃない?』
「大丈夫」
器用なものだ。
椅子に座っているブランシュの背後に立って長い髪を器用に編み込んでいくライノに感心する天虎。
「妹の髪を結ぶ時には手袋をしているのか?」
「はい。父や弟妹に対して負の感情はないですし、ブランシュや天虎神には触れられるのになぜとは思いますが、こればかりは自分でもどうにもなりません」
嫌いだから触れたくないとか、嫌いだから触れられたくないという理由ならその人を避ければ済む話だけれど、嫌っているわけではない人でも嫌悪感を抱いてしまう。
それが父や弟妹であっても。
『私もまだ知らない人がたくさん居ると怖いと思うから、自分でもどうにもならないっていうのは分かる。初めて会う人が私を知ってるわけもないし、見ただけで呪い子と分かるわけでもないのに、たくさんの人を見るとまず怖いと思っちゃう』
この中に自分を捨てた家族が居たら。
呪い子だと知られて嫌がられたら。
自分を知るはずもない人たちだと分かっていても、呪い子の話は迷信だと分かっていても、まず恐怖心を抱く。
『いつか大丈夫になるように、一緒に頑張ろうね』
「ああ。一緒に頑張ろう」
笑みを交わす二人を見て微笑する天虎。
嫌悪感と恐怖心という違いはあれど、自分と同じ種族のヒトの子に負の感情を抱いてしまう二人。
同じ境遇だからこそ、互いに理解できることや寄り添えることもあるだろう。
まだ若い二人が切磋琢磨して成長することを願う。
髪を結び始めて十分ほど。
「お待たせ。出来たよ」
『わあ!凄い!ありがとう!』
鏡で確認して嬉しそうにお礼を言ったブランシュに、ライノも『喜んでくれて良かった』と笑顔になる。
「可愛らしいな」
『うん!とっても可愛い!』
頭が痛くならないよう気遣ってゆるふわに編み込まれた三つ編みのポニーテールには、主神の贈り物の組紐とクラウディアの贈り物の髪飾りが使われている。
「女児が好みそうな結び方などよく知っていたな」
「学園で女子生徒の髪型を見たことがあるので」
「ああ、それで知っているのか」
「実際に結んだことがあるのは妹だけですが」
貴族令嬢は基本的に髪を長く伸ばしているから学園生活では結んでいることが多く、夜会の時の髪型とはまた違った様々な髪型をしている人を見かけた。
だから知識だけはある。
『学園ってお勉強する学校だよね?』
「そう。ただ、大抵の貴族は幼少期に家庭教師を雇って事前に学んでるから、学園に行く理由は人脈を作るためだったり、対人関係や集団行動を学ぶ意味合いが大きい」
王族や上流階級の貴族は幼い頃からレベルの高い家庭教師を雇って既に基礎知識を学んでいるから、学園に行く理由は家庭教師の教えだけでは学べない部分を補うため。
「特に平民とは学園に通うでもしないとなかなか交流する機会がないからね。交流を深めて普段の生活を聞いたり不足していることを知ることで領地の改善に役立てる」
平民のことを知って領地の経営や改善に役立てる。
そのために入学するのであって、教科書で学べるような学問はオマケでしかない。
「お前は途中で辞めたのだろう?」
「目的だった平民の生活は学ばせてもらいましたし、これ以上は通っても学べることはないと判断しました」
体質が体質だからいつも顔を隠して気をつけなければならなかったけれど、二年間の学園生活で自分の体質が効かない平民とは交流を深め話を聞くことで、領民のためになりそうなことは学ばせてもらった。
「私の場合は体質の問題があって下手な家庭教師は雇えずベランジェ公にお願いしたので、学園で教わるようなレベルの学問や魔学ではもう学べることがなくて」
「あの騒がしい男から学んだのか」
「未知の塊とも言える天虎神の前では我を忘れることも多く賑やかですが、普段は物静かな方ですよ?一人で研究室にこもりきりだから静かという理由もありますが」
興味を擽られる存在の天虎やブランシュには我を忘れて詰め寄るベランジェ公の印象が強いのだろうし、昔から親交のあるユハナやソレイユはそういう人だと知っているけれど、それ以外は無口で物静かな印象を持つ人が殆ど。
「あの男が物静かとは」
『私たちには想像できないね』
真顔で話す天虎とブランシュに笑うライノ。
相手が誰であろうと知識欲には勝てず詰め寄る人というのは否定できない事実。
「……学園か」
櫛をインベントリにしまいながら呟く天虎。
「光の一族の幼子も学園に行くのか?」
「行くと思いますよ?元気になりましたから」
以前は少し動くだけでも苦しくなったり熱が出たりで学園に通うのは難しかったけれど、聖印と光の妖精のおかげで溢れる魔力を抑えられるようになった今なら通うことが出来るから、他の貴族令嬢と同じく入学するだろう。
「ブランシュも学園に行きたいか?」
同い年のクラウディアが学園で学ぶならと思って聞くと、ブランシュは大きく首を横に振る。
『勉強はしたいけど、学園に行くのは怖い』
転生前の記憶のおかげで文字を書いたり読んだりすることは出来るけど、記憶にない常識は分からない。
だから勉強はしたいと思うけれど、森を出て天虎が居ない学園に行くのはまだ怖い。
「学園に通うのは怖くても勉強はしたいという話なら、ベランジェ公に家庭教師をお願いしてみては?」
「あの男に?」
「ベランジェ公は天才と謳われる大魔道士ですから。天虎神の頼みなら引き受けてくださるかと」
そう言われて考え込む天虎。
ブランシュが勉強をしたいと望むなら学ばせてあげたいけれど、ベランジェ公に頼むのは気が進まない。
教える変わりに魔法を教えろと詰め寄られることが目に見えているし、ブランシュに『パパ』と呼ばれることを目標にしているような男だから。
『大丈夫。忙しいルイお兄さんのお父さんにお願いしなくても自分で勉強するから。人とあまり会わない私には教わった知識を使う機会もないだろうし』
考え込んでいる天虎に慌てて言ったブランシュ。
捨てられた自分を拾って育ててくれている天虎を困らせたくなくて。
「じゃあ私が教えようか」
『ライノお兄さんが?』
「あらゆる学問の知識があるベランジェ公に教わるのが一番だけど、ブランシュ一人で学ぶには限界がある」
そう話して苦笑するライノ。
ブランシュには幾つもの物語を渡っていた間に得た知識があるけれど、それがこの物語の常識ではないことも多い。
この物語で通用する一般常識や学問を学ぶなら一から始めることになるのだから、一人で学ぶのは難しい。
「いや。学問はあの男に頼むことにする。少年は自分を鍛えることに専念しろ。そのために森へ来たのだから」
今までのように日常生活の中でヒトの子の一般常識を教わるだけならまだしも、本格的に学問を教えるとなるとライノの訓練や鍛錬の時間を削ることになる。
魔眼を使いこなせるよう鍛えてやると約束したのだから、ライノはライノで自分のことを優先させたい。
「簡単には扱えない難しい魔法でも教えてやれば、暫くの間は喧しく詰め寄られることもないだろう」
少なくとも使えるようになるまでは。
喧しくなければそれでいい。
『でもルイお兄さんのお父さんは忙しいよ?』
「たしかに断られるかもしれないが、ブランシュの誕生日を祝いに森へ来た時にでも話してみよう」
もじもじするブランシュの頭をそっと撫でる天虎。
私の使徒でありながら断ろうものなら、神の権限を行使してやろうと、腹黒いことを心の中で思いながら。
身支度を整えベッドに敷き詰めていた綿花を消してから、朝食を摂るために食堂のある一階に降りる。
「おはよう。冒険者さんたち」
「おはよう。ゆっくり休めたかい?」
「ああ。おはよう」
「おはようございます」
二階から降りてきた三人に気づいてカウンターの中から声をかけたのは男性主人と女性主人。
天虎とライノは声で挨拶を返し、天虎に抱っこされているブランシュはペコリと頭を下げて挨拶を交わす。
「朝食を用意するから好きな席に座ってくれ」
「そうさせてもらう」
昨晩と打って変わって今日の食堂は静か。
既に座って食事をしている人は居るものの、朝だけあって人数は少ない。
三人が座ったのは昨晩と同じテーブル席。
朝のゆったりとした空気の中、席について一息ついた。
「このあと狩場に行くが、買い足す物はあるか?」
「私は特に。消費アイテムは多めに買いましたから」
初日と翌日の野営で魔物避けや虫除けを使って、昨日の討伐でも麻痺瓶を二本使ったものの、予備の分も考えて多めに買ったからまだある。
「ブランシュは?」
『私もない。魔物避けしか使ってないから』
帝都で買い物をした時にライノからポーションと魔物避けと薬草のセットを受け取り自分のホルスターに入れてあるけれど、魔物避けしか使っていない。
「そうか。買い足す物がないなら、朝食を済ませて少し休憩をしてから討伐依頼が出ている狩場に向かおう」
「はい」
今日片付けるのは、帝都の食堂の主人が出した依頼と、ギルマスのピムが天虎個人に出した指名依頼の二つ。
食堂の主人が出した依頼はC級の魔物の討伐で、指名依頼の方は採取と調査。
「お待たせ」
「早いな」
「朝食は一種類しかメニューがないからね」
会話をしていると男性主人がカートを押して三人分の朝食を運んできて、笑いながらテーブルに置く。
『ベーコンだ。いい香り』
「美味しそうですね」
「ああ」
「ありがとう。パンやスープはお代わりが出来るから、足りない時は声をかけてくれ」
「分かった」
皿には焼いた厚めのベーコンとサラダ。
その他は籠に入った丸いパンとマグカップのスープ。
朝食らしくシンプルなメニューだけれど、いい香りがする料理にブランシュはニコニコ。
「恵みの神に感謝を。糧に感謝を」
両手を組んで祈るライノとブランシュ。
その恵みの神の一柱は二人の隣や対面に座っているけれど。
『うん、美味しい』
祈り終えて早速ナイフで切ったベーコンを口に運んだブランシュは笑顔を浮かべる。
『ん?ベーコン以外の香りがする』
【焼く時に香草でも使ったのか?】
天虎とライノも幸せそうに食べるブランシュを見たあとベーコンを口に運んで念話で会話を交わす。
『燻製ベーコンだと思う』
『【燻製ベーコン?】』
『このほんのり甘い香りは果物のチップを使ってるんじゃないかな。ベーコンの燻製は手間も時間もかかるから作るのが大変なんだけど、これが自家製なら凄い』
天虎とライノの頭の上には『?』が浮かぶ。
モグモグ食べつつも熱弁してくれているけれど、何を言っているのかさっぱり分からなくて。
『ブランシュも作れるの?』
『食材とスモークチップとスモーカーがあれば作れるよ?大きく分けて、塩漬け、塩抜き、乾燥、燻煙の工程が必要だから、食べられるまでに一週間くらいかかるけど』
『このベーコンにそんな時間が?』
一週間と聞いて驚くライノ。
ベーコンは朝食の際に食卓に並ぶ機会が多いけれど、ブランシュに聞かなければそれほど手間暇のかかった料理だとは分からなかった。
【それを聞くと宿の主人の料理への熱意に感謝して食べなければと思わされるな】
『はい。どんな料理にも感謝は必要ですが』
『ご主人が作った自家製なのか、市販品を買って焼いたのかまでは分からないけどね。とっても美味しい』
燻製品は好き嫌いが分かれるものの、果物だろうほんのり甘い香りのチップを使ったこれはクセが少ないから、まだ十歳のブランシュでも食べやすい。
美味しそうに食べているブランシュの愛らしい姿を見て頬を緩ませる天虎とライノ。
燻製のベーコンもご馳走だけれど、ブランシュの愛らしい姿も二人にとってはご馳走。
「眠~い」
「落ちるなよ?」
「うーん」
美味しい朝食に舌鼓を打っていると会話が聞こえてきて、天虎とブランシュとライノは声のした階段の方を見る。
階段を降りて来たのは男性が一人と女性が二人。
部屋がある二階から降りて来たということは、深夜に宿泊客が来たと言っていたのはこの三人のことだろう。
「あー……怠い」
「飲みすぎたね」
「頭が痛い」
階段に近い席に座っていた天虎とライノとブランシュの席に近い席に座った三人は二日酔いらしく、椅子にだらりともたれたり、テーブルに顔を伏せている。
【深夜に来た宿泊客の物音や声が聞こえて眠れなかったと言っていたが、酒を呑んで騒いでいたのか】
『そのようですね』
パンを千切りながらサラリと答えたライノ。
朝方まで騒いでいたから私たちが宿を出るまで起きて来ないのではと思っていたけれど、そうもいかなかったか。
『食べたら荷物を纏めて宿を出ましょう』
【ん?】
『ブランシュの教育によくありません』
【まあ、子供には見せたくない大人の姿ではあるが】
近くの席に居る三人にも届く酒の香りとだらしない姿は子供の教育によろしくないのは確かだけれど、天虎とギルド本部に足を運ぶ機会が多いブランシュは、酔ったり疲れてだらりとしている冒険者たちの姿を見慣れている。
それが証拠に今も朝食に夢中で気にしていない。
『怠そうな姿を見せているだけならいいですが』
ライノも冒険者の三人がただだらしない姿を見せているというだけの話なら言ったりしない。
酔って大声を出したり喧嘩をしたりと周りの人に迷惑をかけるようなことをしなければ、どれだけぐったりしていようと本人たちの自由だ。
ただ、ライノが眠れなかったのは三人が酒を呑んで騒いでいたという単純な理由ではない。
今はぐったりしていて大人しいけれど(声量はさて置き)、無垢な十歳のブランシュの教育によろしくない三人だと分かっているから言っている。
『急いで食べるね』
『食べたら宿を出ようと言っただけで急かすつもりはないから、詰まらせないようしっかり噛んで食べて』
理由は分からないけれど急いで食べようとしたブランシュを止めたライノ。
三人の近くに居させたくないけれど、食事を急かすつもりもない。
念話で会話をしつつも手を止めることなく黙々と食べているライノを見て、天虎とブランシュはちらりと目を合わせて首を傾げた。
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