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chapter.2
25
しおりを挟むあの日からふた月が過ぎて。
そのあいだ光の一族から報せが届くことはなかった。
「ブランシュ!来たか!」
「おい。やれ」
「白鷹を仕向けるな!」
人の姿の天虎と天虎の腕に抱かれたブランシュが訪れたのは帝国最大のギルド本部、リバース。
『こんにちは、ピムおじさん』
「こんにちは。お父さんと違って挨拶が出来て偉いな」
パクパクと口を動かして挨拶をしたブランシュの頭をこねくり回すのはギルドマスターのピム。
天虎が仕向けた白鷹の精霊から頭を啄かれている。
「よし、ブランシュ。帰ろう」
「待て!来たってことは狩ってきてくれたんだろ?」
「狩れなかった」
「嘘をつくな!」
カウンター越しに天虎の腕を掴み引き留めるピム。
ブランシュがあまりにも愛らしかったから少しこねくり回しただけなのに。
「ここで出していいのか?」
「いやいや無理だろ。今日も別室で頼む」
それだけ会話を交わしたピムは二人を執務室へ案内した。
「頼まれたベックの巣とインディゴ草だ」
「また立派な。念のため鑑定をかけさせて貰うぞ?」
「好きにしろ」
「ミカ頼む」
「はい」
天虎がインベントリから出したのはベック(鳥類の魔物)の巣が二つと十本ずつ束ねたインディゴ草が百本。
「やはり君に頼んで良かった」
「まだ流行っているのか」
「困ったことに。毎年この季節は増えると分かっているから事前に蓄えておくが、去年の冷害の影響で今年はどちらもなかなか手に入らなくてな。人の手で荒らされていない自然豊かな天虎の森なら或いはと一縷の望みに賭けて君に頼んだ」
まだ鑑定の途中ではあるもののアベイユの巣やグリーンドラゴンを狩る天虎には信頼感があるピムは、クロスの上に並ぶベックの巣やインディゴ草を見て安堵の息をつく。
「森の奥には群生していたが。ベックも例年通り居た」
「サラリと言われてもそこまで行ける冒険者が居ない」
「ああ、そうか」
天虎にとって森は自分の庭でもヒトの子は別。
森の奥などむしろヒトの子にとっては未踏の地レベル。
「君は単独で天虎の森に入り魔物を狩る猛者だが、森を荒らさないようにな。天虎神の恵みを頂戴しているのだから」
「天虎神か」
「なんだ。君も天虎は魔物だと言うタイプか?建国から変わらずあの一帯だけが強い魔物の集まる自然豊かな森のままだというのに、そこを守護する主がただの魔物のはずがないだろう。最強の魔物はドラゴンという一般常識が一瞬で覆るぞ」
ジト目で言うピムに天虎はくすりと笑う。
「いや。天虎は神だ。私もそう思っている」
「それなら良いが。この国はあの森のお蔭で他国よりも豊富な自然の恵みを頂戴することが出来ているのだから、その恵みを授けてくれている天虎神には感謝しなければならない」
ピムおじさんの目の前に居るのがその天虎さんだけど。
真剣な表情で天虎神本人に話しているピムを見てブランシュもくすりと笑った。
「鑑定が終わりました」
「どうだった?」
「全て本物です」
「そうか。信用していたが、改めて安心した」
全ての鑑定が終わり結果を聞いたピムはソファに背を預けて深呼吸のような長い息をつく。
「本当に助かった。これで熱病の薬が作れる」
天虎に依頼した二つは熱病に効く薬になる素材。
熱病は特に子供が罹患しやすい病気で早目に薬を飲めば後遺症が残ることもなく治るけれど、今年は子供だけでなく大人でも罹患する者が多い上に最初から薬の数が不足していて、医療施設も処方することが出来ず困り果てていた。
「お前もかかっているのではないか?声が枯れているが」
「いや。幸いにも私のコレは通常の風邪だった。熱病の素材依頼や対応に追われてしっかり休めなかったからな。もう治りかけで他に症状は出ていないが、まだ喉に痛みがある」
聞いていれば少し声が枯れていると気付く程度だけれど、喉の痛みは根強く残っている。
『ピムおじさん』
「ん?」
『これあげる』
二人の会話を聞いてブランシュはポシェットの中から小瓶を出すと、パクパクと口を動かしてピムにそれを渡す。
「これは?」
「アベイユの蜜で作った水飴だ」
「「アベイユの蜜!?」」
小瓶一つで屋敷が建つ代物。
それをブランシュから軽く渡されて受けとったピムも話を聞いていたミカも驚く。
「ブランシュ。高価な物を人に容易く渡してはいけないと言っただろう?それでなくても愛らしいのに、悪いヤツに高価な物を持っていると知られて拐われたらどうする」
ブランシュの手に返してその手を握り言い聞かせるピム。
ただ外を歩いているだけでも拐われないか心配なのに。
「心配せずともブランシュは相手を弁えて渡していると言っただろうに。お前ならそれを悪用しないと信用して渡しているのだから素直に受け取れ。殺菌効果と治癒効果のあるアベイユの蜜を摂取すれば喉の痛みもすぐに引くだろう」
天虎の言葉に追随するようにこくこく頷くブランシュ。
そもそもこれは最初から渡すつもりで用意したもの。
「お前から流行病の話を聞きブランシュにも毎日予防の為に摂取させている。匙一杯を舐めるか飲み物に入れるかパンにでも付けて食え。人と接する事が多いお前たちもかからないか心配して用意してきたブランシュの優しさを蔑ろにするな」
「心配してくれたのか。優しい子だ」
わしゃわしゃとブランシュの頭を撫でるピム。
容姿だけでなく中身までも美しい心優しい子だ。
「ありがとう。大切に食べさせて貰う」
受け取ってくれたことに安心してニコニコ笑ったブランシュはトトトトとミカの所にも行って同じ小瓶を渡す。
「私にもくださるのですか?」
『食べて予防してね』
「ありがとうございます」
こくこく頷いてパクパク口を動かし伝えたブランシュにミカも感動してお礼を伝えながら頭を撫でた。
私の任務も完了。
満足した様子で戻って来て隣に座り直したブランシュを見て天虎はくすりと笑う。
「言っておくがブランシュが渡したことは秘密だぞ」
「もちろんだ」
「口外しないと誓います」
言われずとも。
ブランシュの身を守る為にもここに居る四人だけの秘密。
「しかし、父親の君には熱病の素材を揃えて貰って、娘のブランシュにも治癒効果のある水飴を貰ってと大恩ができてしまったな。報酬は当然払うがどう恩返しをすればいいのか」
どちらも通常の冒険者では手に入らない物。
ギルドからの報酬とは別に、無理を聞いて貰ったことや蜜を用意してくれたことに対しての恩をどう返せばいいのか。
価値に見合うだけのお礼が思いつかない。
「善行も悪行も巡り巡って自分に返ってくるものだ。お前の今までの善行が返ってきたというだけのことなのだから恩返しなど必要ない。それでも気になるというなら、困っている者に出会った時に救ってやれ。それが次の善行に繋がる」
天虎を神と信じて感謝の心を持つ者。
まさしく天虎神の私がその信仰心に応えだけのこと。
それにこの者には個人的な権限を使って本来なら出来ない報酬の先払いをしてくれた恩がある。
それがあったから私も今回の依頼を受けたのであって、この者がした善行が返ってきただけだ。
「……君は常識を知らないが、ヒトとしては立派だな」
いや、ヒトではないのだろうが。
ピムは自分で呟いた言葉に苦笑する。
「ではそうさせて貰おう。君が薬の素材を揃えてくれたお蔭で病に苦しむ者が救われる。依頼を受けてくれてありがとう」
深く頭を下げて感謝を伝えたピムとミカに天虎とブランシュは笑みを浮かべた。
・
・
・
依頼の報酬はギルドカードに入れて貰ってギルド本部を出た天虎とブランシュ。
【せっかく街へ来たのだから食事をして帰るか】
『いいよ』
小麦やタマゴは前回来た時に買ったから、今回は前回来た時にピムから頼まれた依頼の品を届けに街へ来ただけ。
あとは森に帰るだけだからついでに食事をすることにした。
【改めててこう見ると確かに出歩いている者が少ないな】
『うん。前回よりも人が少ない』
念話で会話をする二人。
前回買い物をするために街へ来た時はまだギルド本部付近のこの辺りでも冒険者以外の人の姿が見られたけれど、今回は冒険者がポツポツと歩いているだけ。
【薬が足りていないから外出を控える者も多いのだろう】
『天虎さんが渡した素材が早くお薬になるといいね』
【ああ】
天虎が渡した素材だけでも数百人分の薬になる。
あとは流行が収まるのを待つしかない。
【ここにするか】
『うん』
ギルド本部から少し歩いた所にある食堂。
看板を見てそこに決めて中に入る。
「ん?やってないのか?」
「あ!すみません!いらっしゃいませ!」
店内に入ると人が居なくて首を傾げるとカウンターの奥からヒョコっと女性が顔を覗かせる。
「準備中だったか?」
「いえ。熱病が流行ってる所為でお客さまも来ないので今日はもう閉めようかと話してたところで」
急いで中から出てきた若い女性は天虎にそう説明する。
「閉めるところだったなら次回にしよう」
「いえいえ!どうぞ食べて行ってください!」
店側も閉めたくて閉めるのではない。
客が来ないのに店を開けていても仕方がないから閉めるかと話していただけで。
「食べて行ってくれるなら逆に助かる」
カウンターの奥に見える厨房から声をかけたのは中年男性。
「そうか。じゃあそうさせて貰おう」
「ありがとうございます。お席へご案内します」
「ああ」
案内されたのはカウンターに近いテーブル席。
二人では充分過ぎる広さのあるそこに着いて天虎は抱いていたブランシュを下ろす。
「わあ……綺麗」
コートを脱いだ二人を見て思わず声を洩らす女性。
今までコートを着てフードも被っていたからよく顔が見えていなかったけれど、真っ白な髪と金の目の天虎とブランシュがあまりにも美しくて。
「珍しい魔物だな」
「外で待たせないとマズイか?」
「テイムしてるんだろう?」
「ああ」
「それなら問題ない。立派な魔物だと思って見ただけだ」
厨房から覗いていた男性は二人だけでなくコートを脱いだ天虎の肩に乗り直した白い魔物にも目が行って話しかける。
実際には魔物ではなく白鷹の姿の精霊だけれど。
「メニューどうぞ」
『ありがとう』
身を屈めた女性からメニューを渡されたブランシュはパクパクと口を動かしてお礼を伝える。
「娘は喋れない」
「あ、ああ、そうなんですね」
可哀想に。
天虎から聞いた女性はそう思う。
「絵が付いているから分かり易いな」
『うん。美味しそう』
「好きなものを食べるといい」
『ありがとう』
優しく頭を撫でる天虎と笑顔のブランシュの仲睦まじい様子を見て女性は考えを改める。
声で意思疎通が出来ないことは大変ではあるだろうけど、可哀想と思うことの方が失礼なほど幸せそうと。
「とっても綺麗な親子ですけど、お父さんにしては若すぎませんか?多分親子じゃなくて兄妹ですよね?」
注文を聞いて厨房に入った女性は小声で男性にそう話す。
「何か事情があるんだろ。人様の詮索はするな」
「はーい」
ここでも兄妹と誤解される二人。
同じ白髪と金の虹彩で血の繋がりは感じるけれど、ブランシュの歳の子の父親というには人型の天虎の見た目が若過ぎた。
店内をキョロキョロと眺めるブランシュ。
ヒトの子が暮らす街の食堂に入るのは初めてだから何もかもが真新しく見える。
そんなブランシュの様子を眺める天虎。
白鷹の精霊も妖精たちも愛らしいブランシュに和む。
やはり街へ足を運ぶようにして良かった。
光の一族と最後に会ったあの日から元気がなかったけれど、見たことがないものも多い街に居る時は少なくとも気が紛れているようだから。
一族の方も報せを寄越さないということはまだ少年や幼子の気持ちの整理がついていないと言うことなのだろう。
自分が子供たちを関わらせておきながら打ち解けてきたところで期限をつけるなど残酷だとは思うけれど、少年があの姫と成婚するのならこうするしかない。
一族は何一つ悪くない。
彼奴の子孫でブランシュも気にかけている一族との交流を断つつもりはなかったけれど、少年が娶る相手が悪すぎた。
大切なブランシュを殺そうとした者を受け入れられない。
以前の私なら迷わずあの場で消していただろう。
「ごめんください」
「はーい!」
店の扉が開いて聞こえて来た声。
聞き覚えのあるその声で天虎とブランシュは店の出入口に目をやる。
『お兄さん』
厨房から出て来た女性が向かった先に居たのは少年。
荷物を抱えて入って来た少年も人の存在に気付いたのかこちらを見て目が合う。
「天、っ」
「てん?」
驚いた表情に変わった少年はサッとフードを下ろしながら咄嗟に天虎と言おうとしたんだろう言葉を途中で飲み込み、女性から首を傾げられる。
「もしかしてあちらのお客さまと知り合い?」
「あ。う、うん」
少年を見ている天虎やブランシュと天虎やブランシュを見ている少年を交互に見て察した女性。
「これ。依頼の品」
「ありがとう。厨房まで運んでくれる?」
「分かった」
布袋を両腕で抱え女性の後に着いて厨房に向かう少年は天虎とブランシュに小さく頭を下げた。
『依頼ってことは冒険者のお仕事中かな?』
【服装を見るにそうなのだろう。従者も連れていない】
そう念話で話す天虎とブランシュ。
二人が一族に会う時と違って冒険者らしい服装をしているということは、ギルドで受けた依頼の最中なんだろう。
少年も女性も敬語を使っていなかった。
「お待たせしました」
「ありがとう」
『ありがとうございます』
少年と厨房に入って行った女性がすぐに一人で出て来て、注文した料理を天虎とブランシュの前に置く。
「ごゆっくり」
それだけ言うとまた厨房に入って行った。
『美味しそうだね』
【ああ。火傷しないようにな】
『うん』
少年を見た時は戸惑う様子を見せたものの今は普通。
いや、普通を装っているのか。
まだ複雑な心境ではあるんだろう。
「お食事中に失礼します。ご挨拶申し上げます」
数分で厨房から出て来た少年は食事中の二人のところに来ると声を抑えて挨拶をする。
「ああ。久しいな」
答えながらも厨房から出て来た女性をチラと見る天虎。
【店の者は貴族だと知らないのか】
『はい。ギルド職員は知っていますが、依頼者の前では身分を明かしておりません』
だから小声なのかと納得する。
女給が貴族相手に敬語を使っていなかったからそうだろうとは予想していたけれど。
「時間があるなら座っていけ。少し話そう」
「はい」
『祝い子さま、お隣に失礼します』
『うん』
天虎とは口頭で話してブランシュには念話で話した少年は軽く会釈する。
「私はコーヒーとトーストで」
「あれ?お腹空いてないの?」
「朝食が遅かったから」
「そうなんだ。すぐに用意するね」
「ありがとう」
ローブを脱ぎながら注文した少年は女性が厨房に向かうのを見届けホッと息をついてブランシュの隣に座る。
『お二人のお名前は何とお呼びすれば』
『そっか。いつものように天虎さまとは呼べないよね』
『はい。天虎といえば天虎神のことですので』
念話で名前を聞いてきた少年に納得するブランシュ。
ピムおじさんやミカさんは『青年』とか『お父さん』と呼んでるから天虎さんが名前を聞かれることはなかった。
少しよそよそしさはありながらも少年と会話をしたブランシュに天虎は少しホッとする。
ふた月空いても無理そうならもう一族と会わせるのはやめようと思って少年を引き止めたのだけれど。
『ブランは?ブランとブランシュ』
【それでいい。私の髪もブランシュと同じ白だからな】
『では人前ではブランさまとお呼びします』
【ああ】
ブランシュと同じ真っ白の髪だからブラン。
安直だけれど偽名などそんなものだ。
「ふた月ほど会っていなかったが訓練はしているか?」
「それが、あの後すぐ領地で熱病が流行り始めまして」
「ん?報せを寄越さなかったのはそれが理由か?」
「はい。幸いにも私を含め家族は罹らず済んでおりますが、屋敷の使用人は何名か罹って休暇を取らせております。領地でも屋敷でも感染者が居るその状況でお呼びしてブランシュさまに移っては困りますので」
気持ちの整理がつくのに時間がかかっているのかと思えば、訓練に時間をとれる状況になかったのか。
領地でも流行病が蔓延すれば領主の一族が対応に追われるのも当然のこと。
『領地ではお薬足りてるの?』
『いえ。事前に確保はしていたのですが、例年と違い大人も多く罹っているため不足しております。追加で手に入れようにも素材自体が昨年の冷害の影響で不足しているらしくて』
【どこも同じ状況か】
『そうみたいだね』
ギルド本部があるこの帝都と一族の屋敷がある領地は馬車で移動する距離にあるけれど、薬が不足しているという状況は同じなようだ。
【ブランシュが渡したアベイユの蜜は食べているか?】
『はい。毎日朝食の際にいただいてます』
【追加で持って行ってやるから流行病が治まるまで毎日摂取しろ。お前たち家族が罹らないのはそれのお蔭だ】
『え?』
【言っただろう?あれを口にするのは一族だけにしておけと。あれ以上に予防効果の高いものはない】
アベイユの蜜と精霊の実を使った蜂蜜レモン。
素材だけでも殺菌効果と魔力や体力を回復する効果があるそれにブランシュの祝い子の能力で治癒効果までプラスされているのだから、どんな予防薬よりも効果がある。
『そうだったのですか』
だから自分たちは平気だったのかと納得した少年。
普段から身近に居る執事や侍従まで罹ったのに家族は誰一人移らないから不思議に思っていれば。
『祝い子さまのお蔭です。ありがとうございます』
『風邪をひかないようにと思って渡したんだけどね。お兄さんたちの役に立ってるなら良かった』
少年に少し笑ったブランシュはすぐに前を向き直してシチューを口に運ぶ。
「お待たせ」
「あ、ありがとう」
コーヒーとトーストという簡単なメニューだけにもう出来たらしく女性が運んで来て少年の前に置く。
「ごゆっくり」
「ありがとう」
軽く会釈した少年に女性はニコッと笑うと席を離れた。
【あの女給とは親しいのか?】
『いえ。依頼品を運んで来た時に話すくらいです』
【そうか】
『?』
なぜそんなことを聞いたのかと首を傾げた少年には答えず天虎も食事を再開する。
【薬はじきに出回るだろう】
『え?』
【ギルドに熱病の治療薬となる素材を納品してきた】
『天虎さまが?冒険者をなさっているのですか?』
【ヒトの子の貨幣を得るために時々な。食材やブランシュの日用品など森で手に入らない物は街で買わねばならない】
食べながも念話で話す天虎から聞いて驚く少年。
なぜ街に居るのかと不思議に思っていたけれど、まさかギルドの依頼を受けたからだったとは。
数百年と森に居てヒトと関わりを持たなかった天虎が。
それほど祝い子さまを大切にしているということか。
大切な祝い子さまのためなら森も出るし、ヒトとも関わりを持つということだろう。
早々に食事を済ませた三人。
「ブランさま、ご馳走になります」
「お前は大して食べていないがな」
会計は天虎。
魔道具にギルドカードを翳して会計をする。
「ありがとうございました」
「食べて行ってくれて助かった。ありがとう」
「美味かった。また寄らせて貰う」
「嬉しいことを言ってくれる。いつでも歓迎だ」
天虎は厨房の中から声をかける男性と会話しながらブランシュを抱き上げる。
「お嬢ちゃん、またお父さんとおいで」
『ありがとう。美味しかった』
お父さん?
その見た目で親子は無理があるんじゃ……と思ったものの、店主も事情があるんだろうと察して詮索してないのだろうと少年も察して余計なことは言わなかった。
「ヴァルもまたな。いつもありがとう」
「礼はいいよ、仕事だから。私もまた食べに来る」
「ああ。気をつけて帰るんだぞ」
「ありがとう」
少年も男性と話して女性に会釈をすると天虎たちと一緒に店を出た。
【お前はこの後どうするんだ?】
『ギルドに報告してから薬を買って屋敷に帰ります。今日の目的は使用人に飲ませる水薬を手に入れるためだったので』
【使用人の薬を令息のお前が?】
『大変な時ですから助け合って乗り越えないと』
【……そうか】
位の高い公爵家の令息が屋敷の使用人のために護衛も付けず薬を買いに行くなど聞いたこともない。
彼奴の子孫だけあって、やはり一族も変わっている。
使用人のことも同じヒトとして大切にしているということなのだろうが。
【それなら早く報告を済ませて来い。一度森にアベイユの蜜を取りに行ってから屋敷まで送ってやる】
『い、いえ!天虎さまに送っていただくなど!』
【追加で持って行ってやると言っただろう?分からないよう飲み物に入れて使用人にも飲ませてやれ。水薬より効く】
水薬は喉の痛みを抑える薬。
それよりブランシュが作った蜂蜜レモンの方が早く効く。
『よろしいのですか?使用人にも飲ませて』
【お前たち一族にとっては大切な者たちなのだろう?ブランシュの祝い子の能力のことを話されるのは困るが、よく効く薬を貰ったとでも言っておけ】
聞いた少年に無愛想に答えた天虎。
素っ気ない様子ながらも天虎の優しさを感じた少年は感動してブランシュはくすりと笑った。
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