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chapter.2
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しおりを挟むいつもと違う香りの中で目覚めたブランシュ。
『どこ?ここ』
見知らぬ場所に居ることに気付き身体を起こしてキョロキョロと辺りを見渡す。
『お家の中……かな?』
壁に囲まれていて窓もある室内。
自分が寝ていたのは広いベッド。
ブランシュの目が見えるようになったのは蔦のタマゴから出てからで天虎の湖の樹洞しか見たことがないけれど、転生前の記憶かここが誰かの家の中だということはすぐに分かった。
『天虎さん?』
室内に天虎の姿が見えず不安になるブランシュ。
森に居る時は天虎が狩りに出ているあいだ妖精や精霊と何かをして待っているのも平気だけれど、見知らぬ場所で独りぼっちなことに気付いて怖くなった。
『天虎さん、どこ?』
遂に天虎に捨てられたんじゃないかと青ざめる。
探しに行こうとベッドから脚を下ろして立ち上がろうとすると力が入らず、そのまま床に倒れた。
『……天虎さんっっ!!』
ぶわっと涙が溢れてきて咄嗟に開いた口からは声は出ず、心の中で必死に天虎の名前を呼ぶ。
「ブランシュ!?」
念話が届いて目の前に姿を現した天虎はブランシュが床に倒れていることに驚いて急いで抱き上げる。
「怪我はないか?痛いところはないか?」
慌てた様子で身体を確認しながら聞いた天虎にブランシュはぎゅうっと抱き着く。
『要らなくなって捨てられたのかと思った』
それを聞いて天虎はブランシュを抱き締め返す。
見知らぬ場所で目が覚めて自分が傍に居なかったから不安にさせてしまったのだと気付いて。
「ブランシュは私が拾ったのだから私のものだ。誰よりも大切な私の娘だ。捨てるなど有り得ない」
天虎はブランシュをヒトの子として育てているけれど、捨てるどころかヒトの子に返すつもりもない。
長い時間を一人で生きていた天虎の孤独を埋めたブランシュに対する執着心は天虎自身が思うよりも強い。
ベッドに座りブランシュの背中を撫でる天虎。
それはもう誰が見ても娘を慰める父親の姿に他ならない。
ブランシュが落ち着くまで天虎はただただ優しく背中を撫で続けた。
「落ち着いたか?」
『ごめんなさい。泣いて』
「いや、私が悪い。一人にしてすまなかった」
抱きついていた腕を離して顔をあげたブランシュの涙を拭って回復をかけながら謝る天虎。
『ここはどこ?』
「訓練の時に来ている光の一族の屋敷だ。ブランシュが魔力切れで倒れたと知ってみんな心配していてな。目覚めるまでは屋敷に泊まっていけと言うからそうさせて貰った」
ヒトの子のブランシュは暖かいヒトの子の屋敷の中で寝かせた方がゆっくり休めるだろうと思ってのこと。
『心配かけてごめんね』
「そこはしっかり反省しろ。既に大量の塩を使っているから駄目だと止めたのに、言うことを聞かず倒れたのだから」
『うん。ごめんなさい』
しょぼんとするブランシュの頭を撫で天虎は苦笑する。
「確かにお前は救済の祝い子だが、ヒトの子を救わなければ生まれた意味がないなど思うな。私はブランシュが生きているだけで嬉しい。ブランシュが幸せなら嬉しい。ブランシュは私を喜ばせているのだから、生まれた意味などそれで充分だ」
義務のように祝い子の役目を果たそうとする必要はない。
ブランシュが存在することこそが救済なのだから。
「自分を大切にしろ。私の大切な娘」
『うん』
額に口付けた天虎にまたぎゅうっと抱き着くブランシュ。
両親から捨てられた自分を拾ってくれた天虎は、ブランシュにとってもかけがえのない大切な存在。
「良かった!目が覚めなくて心配しましたわ!」
『ごめんね。心配かけて』
「もう無理はしないでくださいね!」
『うん。気を付ける』
ベッドに身体を起こしているブランシュを見て心から安心した少女はポロポロと涙を零す。
「魔力が尽きるまで祝い子の能力を使い病に苦しむ領民を救ってくださったと聞きました。領主として心より感触申しあげます。祝い子さまのお蔭で多くの者に笑顔が戻りました。この御恩は私の生涯をかけてお返ししていく所存です」
その場に跪き深く頭を下げてお礼を言った初老の男性に続いて家族も跪き、同じく深く頭を下げる。
『わ、私が勝手にしたことだから。それより心配かけてごめんなさい。お部屋やベッドを借してくれてありがとう』
慌てて止めるブランシュに天虎はくすりと笑う。
治療薬もない、医師も足りない、聖者や聖女の手も借りられない、という八方塞がりな状況でブランシュが領民を救ったのだから、一族が大きな恩を感じるのは当然のこと。
それを自分が勝手にしたことだからと本気で思っているのがなんともブランシュらしい。
「こんなにも深く頭を下げて感謝を伝えているのだから、落ち着いた後に美味い食事でもご馳走になったらいい」
『食事を?』
「座っているだけで食事が出てくるなど湖では有り得ない。その貴重な体験が恩返しということで良いのではないか?」
そう提案した天虎にブランシュは満面の笑みになる。
『うん!その恩返しなら嬉しい!』
言葉通り嬉しそうに言ったブランシュに一族はキュン。
心優しく謙虚な愛らしい祝い子に胸を撃ち抜かれた。
「さあもう立て。充分に感謝は伝わった」
「はい。お言葉に甘えて」
腰の低い一族だなと思う天虎。
神の私の前でも平然と地面に寝転がりベラベラ喋っていた肝の据わった(図々しい)彼奴の子孫とは思えない腰の低さ。
「ああ、そうだ。ブランシュが回復して自分の足で歩けるようになるまではこの屋敷で世話になることが決まった」
『そうなんだ?よろしくお願いします』
倒れるまで魔力を使ったから、立つのはまだしも一人で歩けるようになるには二・三日ほどかかる。
その間は安全な屋敷の中で療養させて貰う予定。
「横になっていても暇をしないよう本をお持ちしますわ」
『ありがとう。嬉しい』
少女が本を貸してくれると聞いて喜ぶブランシュ。
訓練のために屋敷へ来る度に少女から本を一冊借りて帰っているけれど、知らない物語を読めて楽しい。
「読むのはいいがしっかり身体を休めるようにな」
『うん!』
借りて帰ったあと夢中で読むのを見ていた天虎は、よほど本が好きなのだろうと思いつつブランシュの頭を撫でる。
恐らく転生前から好きなのだろう。
「それと、世話になる間、私は一族の手伝いをする」
『お手伝い?』
「ブランシュのお蔭で熱病の流行は止まっても、街の者たちが落ち着くにはまだやらなければならないことがある」
『そうなんだ?治れば終わりじゃないんだね』
「一族は領主だからな。後始末も大変だ」
一宿一飯の恩義。
天虎神の私がヒトの子に借りを作る訳にはいかない。
だから世話になる間だけ力を貸すことにした。
「私が屋敷に居ない時も少年や幼子が居る。デスティネやボヌールも。万が一何かあれば念話で私を呼べ。すぐ戻る」
『……分かった。大丈夫』
天虎さんが居ないのは寂しいけど大丈夫。
私は大切な娘で捨てるなど有り得ないと言ってくれたから。
「ヒトの子の遊びや生活を知るいい機会にもなるだろう」
『うん。お兄さんや妹さんに教えて貰う』
「それがいい」
ブランシュの頭に口付ける天虎。
ここで世話になる数日がブランシュや一族にとっていい思い出になるよう願って。
・
・
・
ブランシュが目覚めた翌日。
朝から青年の妻以外の大人は天虎のワープで街へ向かい、ブランシュは一人部屋で少女から借りた本を読み耽っていた。
「ブランシュさま、起きてますか?」
こんこんとノックの音がして顔を覗かせたのは少女。
『本を読んでた』
「読書の邪魔をして申し訳ありません。ずっと読んでいると目が疲れますから飲み物とお菓子で休憩しませんか?」
『あ、つい夢中に。天虎さんに怒られちゃう』
「ええ。天虎さまもそう予想していたようで、数時間に一度は休憩させるよう頼まれましたの」
『予想通りで恥ずかしい』
ふふっと笑った少女は飲み物やお菓子を載せたカートを押す使用人と部屋に入ってくる。
「用意をお願い」
「承知いたしました」
本調子ではないブランシュはベッドに座ったまま、少女はベッドの隣に座り、一緒にお茶が出来るよう使用人たちはテキパキと準備をして年配の女性一人を残し数分で部屋を出た。
「紹介しておきますね。私の乳母のコニーですわ」
「ご紹介にあずかりましたコニーと申します」
『ブ、ブランシュです。よろしくお願いします』
優しそうな乳母のコニーに深々と頭を下げたブランシュ。
「ご丁寧なご挨拶をありがとうございます。ですが、この御屋敷に仕える使用人にまでそのようなお気遣いは不要にございます。お言葉もどうぞ崩してくださいませ」
『あ、ありがとう』
あらあら可愛らしい。
恥ずかしそうにほんのり赤い顔を布団で少し隠しながらもしっかりお礼を言うブランシュの姿にコニーは微笑む。
「コニーはずっとこの屋敷で仕えてくれている信頼できる乳母ですの。天虎さまとブランシュさまのことも話してありますから安心してくださいませ」
長く仕えている乳母は一族の歴史にも詳しい。
天虎神を崇める一人で裏切る事はないと信用できる人物の一人だから、ブランシュが祝い子だということも話してある。
屋敷で暮らす間は使用人の手も必要だから。
『うん。優しそうな人だから大丈夫』
「怒った時は怖いのですけどね」
『え?』
「お兄さまと私もよく怒られましたわ」
『え?お兄さんと妹さんが?』
少女とコニーの顔をキョロキョロと交互に見るブランシュに二人は笑った。
『美味しい。蜜が入ってる』
「さすがです。いただいた蜜を入れておりますの」
魔力が尽きて倒れたブランシュが回復できるよう、紅茶にたっぷりのミルクと蜂蜜レモンの蜜だけを入れてある。
『あ、マカロン』
「マカロン?」
『あれ?ここではマカロンって名前じゃないの?』
「クッキーサンドですわ」
『そうなんだ』
銀のトレイに載せられているお菓子を見て言ったブランシュに少女は首を傾げる。
「前世の記憶ではマカロンという名前なのですか?」
『多分。見てすぐそう思ったから』
「では私もこれからはマカロンと呼びますわ。クッキーサンドより可愛らしい名前ですもの」
転生者のブランシュには今時代にはない知識がある。
言葉の響きが気に入って呼び方を変えた少女にブランシュは笑みを浮かべた。
「あ。名前で思い出しました」
『?』
「厚かましいと承知でお願いがございます」
『お願い?』
「私のことはディアとお呼びください。本名はクラウディアですが、親しい人からはディアと呼ばれておりますので」
名前の話題でふと思い出した少女。
いつもブランシュは『妹さん』と呼んでいるけれど、この機会に愛称で呼んで欲しくて。
本当はゆっくり時間をかけていつか友達になれたらと思っていたけれど、二年と期限を切られてしまったから。
『い、いいの?呼んで。まだお友達になれてないのに』
「是非。お友達と思って貰えるよう頑張りますわ」
手元をモジモジさせながら聞いたブランシュ。
二人の会話を聞いていたコニーはフフっと笑う。
「友達というのはいつの間にかなっているものですよ?名前を呼び合うことできっとお二人の仲も深まります」
『そうなんだ。じゃあ……ディアさん』
名前を呼ぶだけで真っ赤になるブランシュ。
その可愛らしさに少女はキュンと胸を撃ち抜かれる。
「敬称は必要ありません。ディアと呼んでくださいませ」
『え、でも』
「ではせめてディアちゃんで」
『わ、分かった。ディアちゃん』
押し負けたブランシュにくすくす笑うコニー。
貴族は子供同士でも『~さま』や『~さん』と呼んで『~ちゃん』と呼ぶことは滅多にないけれど、せめてと妥協してお願いをした少女を止めることはしなかった。
二人で会話に花を咲かせているとドアをノックする音。
「私も少しお邪魔してもいいかな」
コニーが開けた扉から顔を覗かせたのは少年。
「お兄さま。お戻りになったのですね」
「少し前にね。汗を流してから来た」
領地にある街に行った天虎たちとは別行動で帝都ギルドに報告へ行った少年は少し遠回りしてから帰ってきた。
「祝い子さまにこちらを」
後ろに手をやっていた少年が差し出したのは一本の白百合。
『綺麗。私にくれるの?』
「リリーは空気を綺麗にする効果があることを思い出して。天虎の森に咲く花々のように珍しいものではないですが、大自然に咲く花を見て少しでも祝い子さまの癒しになればと」
ほんのり頬を染めて饒舌に説明する少年。
花など今まで誰にも渡したことがなかったけれど、普段は森に暮らしているブランシュにとって部屋の中は窮屈ではないかと思ってギルドで生息地を聞き摘んできた。
『ありがとう。嬉しい』
満面の笑みでお礼を言うブランシュに少年はますます自分の顔が熱くなるのを感じる。
「ディアにもお土産」
「まあ。ありがとうございます」
少年がポケットから出したのは花飾りが付いたピン。
ブランシュさまだけに渡すのは恥ずかしいからオマケで私へのお土産も買ってきたのね。
少女はそう察しつつお礼を言って髪に付ける。
『わあ。似合う。ディアちゃんの目と同じ色で綺麗』
「似合いますか?嬉しいですわ」
少女の虹彩と同じエメラルドグリーンの石が付いた髪飾り。
まるで虹彩に合わせて作られたかのようなそれを見て褒めたブランシュに少女も喜ぶ。
「……祝い子さまも髪飾りが良かったですか?」
『ううん。私の名前と同じ白のお花がいい。ありがとう』
十歳の子に花は失敗だったかとハッとした少年にブランシュは大きく首を横に振って笑顔で答える。
自分のために摘んできてくれたことが何よりも嬉しい。
「ふふ。枯れてしまわないよう花瓶に飾りましょうね」
『ありがとう。お願いします』
赤くなっている少年には触れずブランシュから白百合を受け取ったコニーは、花瓶に活けるために部屋を出て行った。
「お兄さまも一緒にお茶にしませんか?」
「あ、ああ」
椅子を取りに離れた少年の後ろ姿に少女はくすりと笑う。
お兄さまが異性にお花を渡すなんて、よほどブランシュさまが大好きですのね。
『ディアちゃん。私が淹れるよ』
「ディアちゃん?」
花を活けに行ったコニーに代わってティーカップに紅茶を注ごうとした少女を見てブランシュが言うと、椅子を運んできた少年はふとそれに気付く。
「名前で呼んでほしいとお願いしましたの」
「名前で」
今まで自分たち家族を名前で呼ばなかったブランシュが妹の名前を最初に呼んだことに落ち込む少年。
「お兄さまもお願いすればいいのでは?」
「私も?」
「いつまでもお兄さんのままで良いなら別ですけど」
祝い子さまに名前で呼んで貰うなど恐れ多い。
いやでも妹が羨ましい。
本音を言えば自分も名前で呼んでほしい。
『どうぞ』
「あ、ありがとうございます」
少年の前のテーブルに置かれたティーカップ。
ブランシュが淹れてくれたそれを喉を潤すために飲む。
ただ名前で呼んでほしいと頼むだけなのに、あまりの緊張で喉がカラカラだ。
自分もティーカップを口に運ぶブランシュ。
ディアちゃんのように言わないということは呼ばれたくないのかなと少し寂しさを感じながら。
「い、祝い子さま」
『は、はいっ!』
「恐れ多い願いだと承知しておりますが、な、名前」
あら楽しい。
赤い顔の二人を観客気分で眺める少女。
お兄さまったら、意外と奥手でしたのね。
「な、名前で呼んでくださいませんか!」
『はい!なんて呼べばいいですか!』
「ヴァルで!」
『ヴァルお兄さん!』
「いや、お兄さんは不要です」
『え?』
二人の会話に笑う少女。
異様に力が入っていて面白い。
「お兄さまの緊張がブランシュさまにも伝染してますわ。もっと気を楽に、ヴァルと呼んでほしいとだけでいいかと」
兄の意外な一面を見て少女は笑いながら進言する。
お兄さまが緊張して言葉が強くなっている所為でブランシュさままで緊張して言葉が強くなっているというのに。
『い、いきなり名前だけで呼ぶのは恥ずかしい』
「確かにお兄さまにちゃんは使えませんからね」
『うん。だから慣れるまでヴァルお兄さんじゃ駄目?』
男性の呼び方は『~さま』か『~さん』か『~君』。
年上に『~君』を使うのは失礼にあたるから除外すると、残るは『~さま』か『~さん』の二つ。
そう考えるとまだ『ヴァルお兄さん』の方が親しみがある。
「お兄さまはお兄さんのままで良かったかも」
名前を付けたことで長くなっただけ。
妹からキッパリとそう言われた少年はまた落ち込む。
「でも私も名前を呼んでほしい」
妹は名前で呼ばれているのに私はお兄さんのままなのは。
勝ち負けではないけれど、いつの間にか自分よりも妹の方が祝い子さまと親しくなったようで寂しい。
「今はヴァルお兄さんで構いません。いつか名前のヴァルフレードや愛称のヴァルで呼んで貰えるよう努力します」
誰かに名前を呼んでほしいと思ったのは初めて。
他の誰でもない祝い子さまに呼んでほしい。
好きになった人だから。
『私も呼べるように頑張る』
そう言って顔を隠したブランシュの耳が赤い。
名前を呼ぶというだけでここまで恥ずかしがるブランシュを見る二人はキュンと胸を撃ち抜かれた。
一方、街へ行った天虎たちは。
「忘れていたが、あの姫はどうなった」
掃除が滞っていた街を朝から片付け一旦休憩していた天虎はふと思い出して初老の男性と青年に聞く。
「あのあとすぐに国へ帰りました」
「帰った?」
「はい。体調を崩したとのことで。軍が護衛をして隣国の国境まで送り届けましたので間違いありません」
三大公爵家の光の一族には軍の情報も耳に入る。
屋敷に来た二日後に急遽決まって隣国の軍に引き渡したことは聞いた。
「熱病か?」
「あの時はまだ流行する前ですので可能性は低いかと。これは私どもの予想でしかありませんが、逃げ帰るように予定を強行したということは妖精の件が関係しているのではと」
初老の男性の話を聞いて天虎は鼻で笑う。
「妖精を失ったことを隠すためか」
「恐らく。姫自身が祝福の子の能力を使って成し遂げた功績はありませんが、三匹の妖精から気に入られているということが人々の信仰を深めた理由でもありますので」
つまり今の姫に残されたのは祝福の子ということだけ。
それでも信仰の能力で支配されている人々は変わらず神の子と称えるのだろうけれど、自分が他人を支配していると知らない姫は人々から称えられなくなると不安だろう。
「自業自得だな。祝い子が妖精を連れているとだけで人々が神の子と崇めてくれるのだから、自分が何かを成し遂げることは考えなかったのだろう。妖精は消滅することも知らず」
愚かな祝い子。
何もせずとも人々は自分を崇めると信じている。
神の子の自分がただそこに居るだけで人々は幸せになり感謝をしてくれると。
「帰ったということは成婚の話もなくなったのか?」
「いえ。仮に姫自身がなかったことにしても皇帝がそうはさせないかと。祝福の子という存在の利用価値はありますので」
妖精姫ではなくなっても人々はなお崇める。
神に愛された祝福の子と。
一族にとっては災厄を持ち込む存在でしかないけれど。
「彼奴と戦い敗れた祝い子の血を継ぐ皇帝か」
あらゆる生命を虐殺して快感を覚える異常な祝い子。
その祝い子の血を継いだ皇帝など嫌な予感しかしない。
唯一闇の祝い子に抗えた彼奴はもう居ないのだから。
「やはりお前たちは力を取り戻さなければならない。神の権限を持つ私はヒトの子の戦いに手は貸さないが、失われた力を教えることは出来る。大切なものは自分たちの手で守れ」
「「はい」」
神の天虎が戦いに加われば一瞬で終わる。
それはヒトの子が滅びるという結末に他ならないけれど。
全てを滅ぼしてまた新たな生命の誕生を待つだけ。
あと二年でどこまで教えられるだろうか。
天虎は溜息をついて空を仰いだ。
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