異世界で猫に拾われたので

REON

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chapter.4

54

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みんなの心配をよそにパーティは何事もなく過ぎる。
ただ、今日の主役のはずのリーサとセリノは飲食以外にすることがなく、すっかり飽きているけれど。

そんな二人を見て舌打ちしたいのを堪えるライノ。
せっかくの誕生日だというのに夫人のくだらない企みで弟妹がつまらない時間を過ごしているのだから。
去年までと同じ小規模のパーティなら今頃は楽しく過ごせていただろうに。

「お兄さま」
「ん?」
「化粧室へ行きたいのですが」

後ろに立っているライノに声をかけたリーサ。

「マルタ夫人。リーサが化粧室に」
「そう。セリノも今のうちに行きましょうか」
「はい」

リーサの侍女が傍に居ないことを確認して夫人に伝えると、二人を連れて席を離れた。

「夫人と揉めたそうですね。パーティの前に」
「なぜそれを?」
「父上の記憶を読んだブランさまから」
「記憶を?」
「この状況になることを知っていてブランさまや私に伝えなかったのなら、見逃してやる範囲を超えているからと」

夫人とリーサとセリノが居なくなってすぐ声をかけたライノから話を聞いてユハナ公はこめかみを押さえる。
神の天虎には全てお見通しかと。

「マルタの屋敷から運ばれてきた料理の量を見て気付いたジーノが報告をしてきて私も初めて知った」
「夫人の屋敷から?本邸で作ってないのですか?」
「本邸の料理人が作ったのは一部の料理だけだ。あとはマルタの屋敷の料理人が作って運んできた」

ギリギリまで気付かれないようにか。
既に招待客が向かっている時間に気付いても中止に出来ないことを分かっていて。

「ブランさまからお聞きしたことを父上にもお伝えしておきますが、どうやら夫人は私の魅了体質で騒動が起きることを見越して多くの貴族を招待したようです」
「……なに?」

こめかみを押さえていたユハナ公は手を離しライノを見る。

「私の体質で騒動が起きたタイミングで颯爽と自分が問題を片付けることで貴族たちを見返すつもりだったとか。どうやら未だに母上をユハナ公爵夫人と呼び褒め称える者が居ることが気に入らなかったようで。そのために父上も私も慌ただしくしていて夫人に一任した今回のパーティを利用したそうです」

まさかと言いたいところだけれど、天虎神がそう話していたのならそれが事実なのだろう。
私とマルタが揉めたことを知っているのは当事者だけだというのに、天虎神は知っていたのだから。

「それがあってブランさまがテネブルの精霊を呼び出してくださいました。今は姿を隠していますが私の肩に居ます」
「やはりそうか。これだけ人が居るというのに魅了にかかる者が居ないからそうだろうとは思っていた」

過去に夫人から自分の貞操が奪われたことや、もう一度寝たら手に入ると思われていることは言わなかったライノ。
そこは間違っても弟妹の耳には入らないよう、天虎以外に話すつもりはなかった。

「なんというくだらない理由で愚かなことを」
「夫人には重要なのでしょう。ブランさまも亡き夫人の名声に勝てない第二夫人とは哀れだと仰っていました。ただ、子の記念日を利用するのは感心しないとも仰いましたが」

問題はそこだ。
ベランジェの血筋でクアドルプルの加護を持ち、氷華の女王と呼ばれ多くの貴族から敬われていたソフィと比べられることは気の毒に思えても、だからといって大切な子供たちの誕生日を利用していいはずもない。

「成婚前に話したのだがな。私と成婚すれば嫌でも正妻のソフィと比べられることになるだろうと」

成婚する前から分かりきっていたこと。
私は生涯ソフィ以外を第一夫人正妻に迎えるつもりはないことも、第二夫人という立場で嫁入りしても多くの者から慕われていた正妻のソフィと比べられることもあるだろうことも。

「だから私の妻は愛するソフィだけでいいと幾度も断ったというのに」

それでもマルタの両親もマルタ自身も第二夫人で構わないし周りの声など気にしないと意見を変えなかった。
私としても母の温もりを知らないライノに母が居た方がいいと思って第二夫人を迎えることにしたのだが。

「その時は三大公爵家の夫人になれるだけで充分だと思っていたのでしょう。夫人は贅沢な暮らしが出来ますし、夫人の父母は父上の援助で商売を拡大することが出来ましたし」

貴族同士の政略結婚などそんなもの。
互いのプラスになるのなら悪いことだとは思わない。
私にとってはマイナスでしかないけれど。

「ベランジェ公も夫人が情報を漏洩したことに珍しくお怒りでしたし、パーティのあとにでも三大公で話し合いの場を設けた方がいいかと。幸いにも宿泊なさる予定ですので」
「そうしよう。信頼を失う訳にはいかない」

ああ、頭が痛い。
次から次へと問題を起こしてくれる。
ユハナ公はまたこめかみを押さえて溜息をつく。

「ブランシュ嬢の様子はどうだった」
「怯えておりました。自分を捨てた両親が居るのではと」
「ああ……そうか。ブランシュ嬢の両親は貴族か」
「見つかった訳ではないので恐らくですが。平民が裏稼業の者を雇うのは金銭的に厳しいですし、我が家から呪い子が出たと知られたらという発言をブランシュが聞いてますので」

ソレイユの影を使ってもまだ情報は入らず、今はユハナとベランジェの影にも捜索をさせているけれど情報はない。
三大公の影が動いているのに全く情報がないということは、ブランシュは異国の貴族令嬢の可能性が高い。

「ブランシュの様子で思い出しましたが、怯えるブランシュを見てブランさまは夫人に随分とお怒りのご様子でした。自分たちのことを知らないのだからわざとではないのだろうが、私たちに心を開き漸くヒトに慣れてきたところだったのにまた振り出しだと。あのベランジェ公やアイナやミレーラが黙るほど、国を滅ぼされてもおかしくないほどの殺気でした」

それでも堪えてくれていたことは分かっているけれど。
そうでなければ今ここに生存者は居ない。

「そうだろうな。溺愛する愛娘が怯える原因を作った者にブランさまがお怒りにならないはずがない。お二人にも私から改めて謝罪する。私たちをお救いくださった恩人のお二人を不快にさせるなどあってはならないことだ」

天虎神の怒りは当然のこと。
大切な娘が怯える姿を見て怒らないはずもない。
私が天虎神の立場でも怒っている。

「帰ろうと仰ったブランさまにブランシュがリーサやセリノと約束したからと話して残ってくださいましたが、その後あのような形でお二人が注目を浴びるような愚行に出るとは。私の体質ではいっこうに騒動にならないから聖者や聖女の名を利用しようとしたとしか思えません」

夫人の企みを聞いた後の今はユハナ公もそう思う。
勝手に正体を話す訳にいかず夫人や子供たちには『私たちや領民を治療してくれた聖者と聖女』と説明したというのに、それを騒動を起こすために利用されるとは思いもしなかった。

「今回ばかりは相応の処分をする。リーサやセリノがまだ幼いからと配慮する身内ごとの不祥事では済まない」

第二夫人でもユハナ公爵の妻には違いない。
ユハナ公爵家の一人でありながらソレイユ公爵家やベランジェ公爵家の内部情報を他者に漏らし、騒動を起こすために大恩のある天虎神やブランシュ嬢を利用したのだから、今までのような甘い処分では済まされない。

「多くの貴族を招待した理由を夫人はなんと?」
「二人を社交界に出す前に貴族たちの為人を知るためだと。後は盛大に祝ってやりたかったとも言っていた」
「公爵夫人の発言とは思えない頭の悪い理由ですね」

上流階級の貴族がデビュー前の子供をパーティに参加させない理由をなんだと思っているのか。
もっともそれはで、目的は騒動を起こすことだったともう分かっているけれど。

「ライノはなぜそれほどマルタを嫌っている?」

何も知らないユハナ公からそう問われて、ライノは一瞬だけ反射的にピクリと眉を動かす。

「さあ。私にも分かりません。理由もなく嫌いということは、生理的に受け付けないということでしょうか」

元から体質が原因でヒトを避けていたとあって友好的とは言えないまでも、顔を合わせれば会話くらいはしていた。
それが会話どころか明らかな嫌悪の目で見るようになったのはいつ頃だったか……。

「……父上。少し席を外します」
「ん?」
「ブランシュが居ない」
「なに?」

夫人や弟妹が居ない今のうちにと思って報告していたライノはふと光の一族やベランジェ公たちを見て眉をひそめると、言い終わるよりも早く駆け出した。

「ブランさま!」

ミケーレやベランジェ公たちと一緒に居た天虎は、青ざめた表情で走って来たライノにどうしたのかと顔を向ける。

「ブランシュはどちらに?」
「女性だけで化粧室に行っているが、どうした」

珍しいライノの様子を見てミケーレが説明する。
女性は化粧を直したり身なりを整えたりするから、パーティホールには男性陣だけが残っていた。

「ベルタ夫人やアイナやミレーラも一緒ですか?」
「ああ。屋敷の中とは言え二人だけでは危ないからと、クラウディアやブランシュさまに付き添って妻たちも行った」
「そ、そうですか」

グラードも説明しながら少し首を傾げる。
普段は公爵家の嫡男として振る舞うライノが礼儀を無視して走って来たのだから、それを知る者が驚かないはずもない。

「何があった」
「実は夫人も今リーサとセリノを連れて離席していて」

それを聞いて天虎はパッとユハナ公たちが座っていた座席を確認する。

「どこへ行った」
「三人も化粧室へ」

だからブランシュが居ないことに気付いて慌てたのか。

「……たしかに一緒に居るようだ」
「マルタ夫人がブランシュたちとということですか?」
「ああ。五人で行ったはずだが、三人増えているのはユハナの夫人や弟妹だろう」

ブランシュの居場所を確認した天虎は心配して走って来たライノにそのことを伝える。

「念のため確認してきます」
「女性の化粧室にか?さすがにそれは」
「夫人が多くの招待客を呼んだ目的は私の体質を利用して騒動を起こすことだった。その目論みが外れて今度は聖女だと思っているブランシュを利用するつもりかもしれない。自分の欲のためなら手段を選ばないを信用するな」

止めたヴァルフレードに吐き捨てるように言ったライノはまたすぐに駆け出す。

「私も一緒に行って来ます」
「私も行く」

ライノの後を追ったヴァルフレードとルイ。
嵐のように話して走って行った三人の行動にミケーレとベランジェ公とグラードは顔を見合わせたあと天虎を見る。

『ライノの話は事実ですか?』
【ああ。ユハナの記憶を読んだ際に夫人の記憶も読んで少年に話した。精霊を呼んだのもそれを知ったからだ】
『リーサとセリノの誕生日になんという愚かなことを』

夫人の企みを知って深く眉をひそめるミケーレ。
我が子の誕生日に騒ぎを起こそうとする母親など正気の沙汰とは思えない。

【ブランシュには何かあれば呼ぶよう言ってある。呼ばないということは危険な状況ではないだろうが、ユハナの少年には夫人と一緒に居るというだけで余程のことなのだろう】
『理由は分かりませんが、ライノは以前から夫人を毛嫌いしておりますので。うちのアイナとミレーラもですが』

そう話して苦笑するベランジェ公。
そもそもライノはヒトを避けているけれど、夫人のことは年に一度会うかどうかの私たちにも分かるほど嫌っている。

【お前の娘たちも?】
『はい。同じ女性同士感じるものがあるのか、夫人とは最低限の挨拶を交わす程度で近寄りません』
『思えばベルタもあまり。誰とでも上手く付き合う方ですので避けるようなことはしていませんが』

男性陣が聞かされていないだけで何かあったのか、女性同士だけ感じるの第六感なのかは分からないけれど。

【ひとまずブランシュが助けを求めていない今はユハナの少年に任せて様子を見よう。ただ、ブランシュが私を呼ぶような何かがあればもうユハナやお前たちの面目は考えない】
『私どもにもご配慮ありがとうございます。ですが、その際はどうぞ天虎さまの御心のままに行動を。私どもの面目よりも祝い子さまの身の安全が最優先ですので』

そうキッパリと答えたミケーレ。
今回のパーティでは天虎があらゆることでに合わせてくれていることには気付いていた。
でも娘が危険な状況になって我慢してくれとは思わない。
今でも私たちの立場を考え配慮してくれているのだから。


男性陣がそう話す中、女性陣は。

「聖女さまは本当にお優しいのですね」
「はい。私たちの命の恩人です」
「お料理もとても上手で素晴らしい方です」

廊下で会話を交わすマルタ夫人とリーサとセリノ。
パウダールームに行ったあと隣室で化粧直しや身支度を整えて部屋を出ると、偶然にも同じタイミングで身支度を整え部屋から出てきたブランシュたちと出会った。

今は親交のある人しか居ないから話していいとマルタ夫人から許可を貰ったリーサとセリノは、改めて来てくれたことやケーキやお菓子が美味しかったことをブランシュに伝え、ブランシュも嫌がる様子もなくニコニコと笑顔で応えていた。

そこまでは良かった。
純粋に感謝を伝えたかったリーサやセリノと、喜んでくれたことを喜ぶブランシュと、ブランシュの作る料理は何でも美味しいことを熱弁するクラウディアの姿は愛らしかったし、ベルタやアイナやミレーラも微笑ましく見ていられたから。

でも今は違う。
先ほどの愚行を詫びたマルタ夫人をブランシュが許すと、今度は分かり易く褒め称えブランシュに媚びるような言動をし始めたことに三人は不信感を抱いている。

「リーサやセリノとも親しくしてくださいね」
『うん』

ブランシュにそう話すマルタ夫人。
それも自分の子供に親しい友人が出来たらという親心からの発言ではなく、子供同士を親しくならせてそのおこぼれでブランシュに近付こうとしているとしか思えない。

公爵夫人として数々のパーティに参加して来たベルタや、人前でショーを行いあらゆる為人の人と出会ってきたアイナやミレーラの目には、マルタ夫人が典型的なの人間に見えている。

自分が身分に相応しい女性になろうと努力をするのではなく、権力がある者にだけ媚を売って取り入り、他人のその権力で自分が立派な人物になったかのように振る舞う女性。
今のこれも、扱い易いのブランシュへ先に取り入り、最終的にはの天虎と繋がりを作ることが目的だろう。

祝い子さま、なりませんよ。
自分を利用しようとしている相手を信用しては。

そう声を大にして言いたいベルタ。
本当はクラウディアとブランシュを連れて去りたいと思っていながらまだ堪えているのは、リーサとセリノが居るから。
それに、夫人と親しくもない自分が注意をするよりも、夫のユハナ公から直接注意して貰った方がいいと考えてのこと。

「ああ、そうですわ。パーティホールに戻ればまたリーサやセリノがお話し出来なくなりますから、別のお部屋でゆっくりお話ししませんこと?お菓子や飲みものも用意させますわ」
「マルタ夫人。それはお祝いに来た方々に失礼では」

さすがにそれはと止めるベルタ。
招待しておいて別室でのんびり茶会をするなど失礼な話。

「あら、疲れている子供たちを休憩させるだけですわ。ベルタ夫人はまだ幼い子供たちに会話も出来ない退屈な場所にずっと座っていろと可哀想なことを仰いますの?」

誰がその退に二人を座らせたのか。
社交デビュー前の子供の誕生日に多くの貴族を招待したのは自分だというのに。

「その状況を作ったのは」
「ブランシュ!」

半笑いで言ったマルタ夫人に一言返そうとしたベルタの声を遮るように重なった声。

「大丈夫か!?」
『ライノお兄さん?』

走って来て自分を抱き上げたライノに驚くブランシュ。

「怪我は?痛いところは?何かされてないか?」
『怪我?痛いところ?誰から?』

どうして心配されているのか理解できないブランシュは、険しい顔で片手の手袋を噛んで外し自分の腕や脚や顔を触って確認するライノにきょとんとする。

「ヴァル?」
「ルイ」

一足遅れて追いついたヴァルフレードとルイも息を切らせていて、ベルタとアイナとミレーラも同じくきょとん。

「どこも痛いところはないか?」
『うん。大丈夫』
「そうか……良かった」

確認した上で返事を聞いて漸く安心したライノはブランシュの額に額を重ねて大きな安堵の息をつく。

リーサとセリノは初めて見る兄の姿に唖然。
その隣ではマルタ夫人が眉を顰める。

「ライノ。なぜ手袋がなくとも触れているの?」
「ここに引き留めて何をしていたのですか?」

マルタ夫人の問いには答えず睨んだライノ。
その目は今まで見た中で一番冷たい。

「話をしていただけ」
「なんのために?」
「世間話を」
「いつ世間話をする仲に?」

マルタ夫人が口を開く度に言葉を重ねる。
嘘の返事など聞く価値もないとでも言うように。

「母上。ディアとリーサとセリノを」
「ええ」

耳打ちしたヴァルフレードに頷くベルタ。
クアドルプルのライノが怒りを露わにしている今は魔法が得意なアイナとミレーラが残った方がいいと判断して、リーサとセリノを手招きで呼ぶ。

「リーサ。セリノ。ベルタ夫人と行くんだ」
「「お兄さま」」
「行きなさい。私は夫人と大切な話があるから」

ひんやりとした冷気が漂う廊下。
ライノが居て冷気を感じた時にはすぐ離れるようライノ本人から言われていた二人はベルタに駆け寄り、優しい兄を怒らせた母は何をしたのかと気にしながらもその場を離れた。

『本当にお話ししてただけだよ?』
「ブランシュ。夫人は君が聖女だから近付いたんだ」
『え?』
「聖者のブランさまと聖女のブランシュを利用するために」

それを聞いて驚くブランシュ。
悪いことをしたと謝ってくれて、リーサやセリノとも親しくしてほしいと言われて嬉しかったから、自分を利用するために近づいたなどとは疑いもしていなかった。

『……そうなの?』
『分かりません。ただ、夫人が招待客を多く呼んだ理由はライノの体質を利用して騒動を起こすためだったそうです』
『ライノお兄さんを?どうしてそんな』
『そこまでは聞いておりませんが、他人の私たちよりライノの方が夫人の為人を知っていることは確かです』

ライノの肩越しに自分たちを見て聞いたブランシュにヴァルフレードはそう答える。

『ブランシュが利用されれば天虎神は夫人を許さない。だから家族のライノが夫人と話す方がいいと思う』
『そうね。ライノが暴走したらワタクシたちが止めますわ』
『ガツンとやりますからご安心を』
『うん。お願いします』

ルイとアイナとミレーラにも言われて頷くブランシュ。
これが誤解なら話をすれば分かることだから、夫人と話そうとしているライノを止めないことにした。

「聖女さまを利用しようとしているなんて酷いわ。ワタクシはリーサとセリノが聖女さまとお話しをしたそうにしていたから、ここなら話して構わないと許可をしただけよ?」

目元をサッと隠して説明するマルタ夫人。

「それは事実でしょうね。二人は純粋に命の恩人のブランシュたちに御礼をしたくて招待したいと言ったのですから。まさか母親に自分たちの誕生日を利用された所為で近寄ることも出来なくなるとは思いもしていなかったでしょう」

泣き真似かと鼻で笑うライノ。
それを聞いてマルタ夫人はパッとライノを見る。

「誕生日を利用されて?なんの話かしら」
「残念でしたね。招待した貴族たちに私の体質が効かず騒動にならなくて。だから恩人のお二人を利用しようと思いついてあの場でわざと話題にしたのですよね?聖者や聖女は数少ない貴重な存在ですから騒動のいい火種になるだろうと」

なぜそれを。
自分しか知らないはずのことを言い当てられたマルタ夫人は顔色を変える。

「誤解よ。ワタクシはそのようなこと」
「誤解?なにが誤解なのですか?」
「騒動を起こすなんてそんな」

図星か。
取り繕い言葉を並べ立てているものの引き攣っている夫人の表情を見てヴァルフレードは察し、義理の息子や実の子を利用するとはろくでもない母親だとこめかみを押さえた。
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