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一章
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しおりを挟む「ふふ。そっか。死んだんだ」
誰も居ないバス停に立ったまま呟く。
笑っているのに涙もボロボロ零れて。
「……死んじゃった」
私が死なせた。
昨日私は『404』にアクセスした。
この憎しみを譲ろうと。
午前4時4分に。
本文しか書く場所のない奇妙なメールフォームに4人の名前とありったけの憎しみの内容を書いた。
あの時の私は狂気に溢れていたと思う。
憎しみを譲るって意味は分からなかったけど、ただ書くだけなのに譲れてるのかなって不思議だったけど、それを譲ることで何が変わるのかも分からなかったけど、
「……憎しみを譲るって、こういうことだったんだ」
私が譲った憎しみで七海たちは死んだ。
私が、私が、七海たちを殺した。
4時4分の狂気。
……あれ?
私が憎しみを譲ったのは午前4時4分。
七海たちが通り魔に襲われたのは深夜の繁華街。
あれ?私が憎しみを譲る前?
私が憎しみを譲ったことが理由じゃないの?
でも私が『404』に名前を書いた4人が死んだのに。
どういうこと?
死んだ犯人が『404』の管理人だったんじゃないの?
私のせいじゃないの?
あのトラック危なくない?
何で蛇行してるの?
怖いね。よけとこ?
ああ、違う。
やっぱり七海たちが死んだのは私のせい。
偶然なんかじゃなかった。
人を呪わば穴二つって言うもんね。
良いよ、あげる。
『代価は貴方様が話す〝憎しみの質〟次第』
私の憎しみごと代価を持っていって。
キ────────……ドンッ
・
・
・
「はーい!ざんねーん!頑張ったのにねー?」
「……うるさい」
「あははははは」
陽気な玉乗りピエロ。
笑いながらくるくると周回する。
「ねえねえ。どんな気持ち?今どんな気持ち?」
「……」
「悔しい?悲しい?それとも嬉しいのかなー?」
「うるさいっ!」
一人の男が落ちている水晶を拾い目の前に翳すと、中では黒い炎が揺らめいていた。
「怖いなあ。緋色」
ピタと動きを止めたピエロはそれだけ言うとまた笑いながら周回し始める。
「良いじゃん良いじゃん。また1つ集まったんだから」
「うるせ」
「ちょ、……ネコパンチ最強」
黒猫の爪でパンっと玉が割れて玉乗りピエロは無様な姿で地面に落ちた。
「何すんのさクロ。乱暴だなあ」
「目障り」
「グサー。まあスペアあるんだけどねー?」
玉乗りピエロの手の上にパッと現れたスペア。
フッと一吹きしただけで真ん丸になって再び玉乗りピエロは3人と1匹の周りを周回する。
「ちょっとちょっと。みんなもっと喜ぼうよ。願いにまた1歩近づいたんだからさー。ほらほら萌葱と青藍も笑って笑って」
くるくるくるくる。
ピエロは水晶を見ながら沈黙する3人の周りを笑いながら周り続ける。
「ねえねえクロ。みんなからガン無視されてる。気持ちいい」
「うるせ」
「ネコパンチやだー」
「大体なんでピエロ?ダサい」
「時代のニーズにお応えしてるのさ!」
「うるせ」
「あー」
スペアも黒猫から爪で割られて、またしても玉乗りピエロは無様な姿でベチンと地面に落ちた。
「……今日も来るって約束したのに」
「身体を張って守ったのにねー?自慢の翼がボロボロー」
「違う肉料理を作ってくるって約束したのに」
「……青藍」
「人間なんてそんなものだよ。あははははは」
「「うるさい!」」
「暴力はんたーい」
少女と少年は漆黒の烏に姿を変えてピエロを啄く。
逃げ回るピエロの姿はやはり無様だ。
「緋色」
黒猫は男の名前を呼んで肩に飛び乗る。
「後悔してるの?」
「……」
「やめたい?」
男は無言のまま、擦り寄る黒猫の身体を撫でた。
「君たちは善いことしてるのに何で喜ばないかなあ。人間の憎しみを貰ってあげてるんだよ?ドッロドロでグッチャグチャのドス黒い感情を本人に代わって解消してあげてるんだからさ。解消してあげた分の代価を貰ってるだけじゃん。悪くない悪くない。あははははは」
烏二匹に啄かれている玉乗りピエロは大笑い。
「今の子も言ってたじゃん。人を呪わば穴二つって。何かを代償にして何かを手に入れるってだけ。あの子も君たちもね。何の代償も払わないで願いだけが叶うなんて都合の良い話がある訳ない。神さまに頼む時だってお賽銭を入れるでしょ?地獄の沙汰も金次第、憎しみの代償は〝質〟次第ってね」
玉乗りピエロは三つ目の玉をフッと膨らませる。
「さあさあ、いつまでも引きずってる場合じゃないよ。早速次の迷い子が来た。ようこそ『404』へ。深い深い憎しみを抱えたお客さま。代価は貴方の話す〝憎しみの質〟次第」
貴方の憎しみ譲ってください。
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