竜の女王

REON

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二章

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静かなダンスホール。
血や黒炎の焦げ跡は疎か人々の姿まで跡形もなく消滅した。

「これで仕上げよ」

光り輝いていた魔法陣の色が黒に変わって、その上にたった今消滅したはずの使用人たちの姿が現れる。
それを見てロラが長杖を床から引き抜くと魔法陣も消えた。

「ドラゴニュート公爵家の令嬢を虐待していた貴方たちを解雇しますわ。今すぐ部屋に戻り荷物を纏めて出て行きなさい」

言われるがままにダンスホールを出て行く使用人たち。
扉から出て行く使用人たちとは逆に壇上を登るロラ。

「あれは?」
屍人しびとですわ」
「屍人?」

当主に手招かれたロラは膝に座りふぅと息をついて説明する。 

「容姿と記憶を持たせた魂のない幻影体を作りましたの」
「なんのためにそんなものを?」
「多くの使用人が制裁を受けて命を失った公爵家で働きたいと思う者など居ないでしょう?長い者でも一年足らずで消えますけれど、公爵家の令嬢を虐待していたことで解雇されて出て行ったという事実を残すために役立って貰いますわ」

そのためだけに死んだ記憶を消した屍人を作った。
あくまで幻影体だから長い者でも一年以内には消える。

「疲れたのか」
「屍人創造は古代の禁咒魔法ですの。あの数の屍人を作るとなるとさすがに魔力をごっそり持って行かれますわ」

ただ見えるだけの幻影を作るだけなら簡単。
でも本人の記憶を持ち生きているかのように触れることも会話をすることも出来る幻影体を数十体も作るとなるとさすがに、ヴァンピールいちの魔法使いであるロラでも疲れて当然。
むしろロラにしか出来ないというのが正しい。

「そうか。それならもう一度私の血を飲め」

そう言って当主は自分の首筋を指さす。
不老長寿と言うだけあって先ほどロラが噛みついた牙の跡は既に消えていた。

「よろしいのかしら。貴重な血を大盤振る舞いして」

再生力を持つ当主の血は貴重なもの。
それこそ老いたくない者や長生きしたい者は何としてでも手に入れたいと思うだろう。

「妻となる者に惜しむはずもない」

他人には貴重でも本人からすれば体内で作られているもの。
不死ではないために致死量を吸われれば死ぬけれど、ロラに殺されるのであればそれでも構わないとさえ思う。
当主が孫以外の存在にしたかったのは肉体の方のシャルロットではなく、その中に居たロラの方だから。

「ふふ。では少しだけ」

肉体を元の姿に変えることを目的にガブリと噛みついた先ほどとは違って首筋に幾度か口付けてから噛みつくロラ。
自分を回復させるために与えてくれた食事に感謝して。

「不思議なものだ。噛まれていても痛みがないのだから」

噛みつかれた瞬間だけは針を刺されたようにチクリと痛みを感じるものの、そのあとは麻酔がかかったように一切痛みを感じず徐々に身体が熱くなってむしろ気持ちよくなっていく。
ヴァンピールから血を吸われた人はみなそれを体感する。

少し吸ったかと思えば口を離したロラを当主が見ると何故かぷくりとしている。

「吸えなかったのか?」
「当主もワタクシから血を吸われても平気ですのね」
「ん?」
ワタクシの兄さまもそうですの。他の人は気持ちよくなってくださるのに。これでは血を分けてくれるお礼になりませんわ」

それを聞いて察した当主は苦笑する。

「何ともない訳ではない。ただ顔には出ないだけで」

ロラの手を掴み反応している部分に運び確認させる。
ヴァンピール同士は血を吸われても反応しないという訳でないなら、その兄とやらも妹には見せないよう何ともないフリをしていたんだろうと、会ったことのないジルに少し同情した。

「礼なら貰っている。気にせずに飲め」

快楽が礼というのが実に色欲のヴァンピールらしいけれど。
確認して納得したのか再び吸い始めたロラの頭を苦笑しながら撫でた。

それから数分。
口を離したロラがふぅと長い呼吸をはく。

「少しは回復したか?」
「ええ。ありがとう」

お礼を言うロラの顔はとろんとしていて、そう言えば指先から血を飲ませた時にもこうなっていたなと思い出す。

「吸われている相手だけではなくて自分もそうなのか」
「強い魔法使いの血を飲んだ時は」

飲んだ血が極上であるほど快楽も大きい。
当主やジルのように始祖の力を持つ者の血は特に少量でも大きな反動がある。

「これは人前では飲ませられないな」
「気をつけます」

ロラ本人も正直ここまでとは思っていなかった。
魔力に関してはジルの方が上だろうと思っていたのに、まさか当主もこれほどだとは予想外だった。
魔力の消費を抑えるためアイテムボックスを使っていたからそう判断したけれど、ロラが思っていたよりも当主は強い。

「どうして貴方が竜の王じゃないのか分かりませんわ」
「仮に私が竜の王だったら自分以上の強い者とは戦えなかったのだから、私にとって継承者ではなかったことは幸いだ」

そのために竜の王の力を与えられなかったかのよう。
そう疑ってしまうくらい竜の王の継承者に選ばれていてもおかしくない才能の持ち主。

「もう元の姿には戻らないのか?」
「いえ。この肉体に宿ってから一度だけ従者から血を貰ったのですけれど、その時は目覚めたら元に戻っておりました。当主の魔力の方が強いと考えると数日かかるかもしれませんが」

ロラも何日かかるかは分からない。
ヴァンピールだった時は誰の血を飲もうと姿が変わるなどということはなかったから。

「ドラゴニュート一族もヴァンピール一族と同じく黒髪と黒目が通常。数日戻らなかったとしてもワタクシの場合は特定の竜の力を使うと容姿が変化するということにしておきますわ」

ドラゴニュート一族だけが持つ竜の力はそれぞれ。
当主が黒竜に変身できるのだから容姿が変わる者がいてもおかしくはない。

「従者……私が血をやったあの者か」
「従者とだけでよく分かりましたわね」
「私に血を分けろと言ったお前に慌てたのはあの男だけだ」
「ああ、それで」

たしかにあの時に慌てて止めたのはサシャだけ。
他の人からすれば『何のために血を?』と疑問でしかなかっただろう。

「つまりあの男はロラになった今の姿を見たことがあると」
「姿だけでなくワタクシがヴァンピールだとも知ってますわ」
「話したのか?」
「いいえ。ワタクシの兄さまの置き土産ですの」
「兄?」

以前サシャの肉体にジルが宿ったことでジルの記憶や魔力の一部を持っていることを説明する。

「元々ヴァンピール一族は血を飲む種族ですけれど、特に始祖の力を持つ兄さまとワタクシは魔力を含んだ血を飲まなければ肉体も精神も弱ってしまいますの。テネブルと違ってルミエールには魔法を使える者が少ないと聞いてどうしたものかと思っておりましたが、兄さまが自分の魔力の一部と記憶をサシャに残してくれたお蔭でその問題も解決できました」

サシャは元から貴重な魔法使いの一人ではあったけど、ジルの魔力の一部を与えられたことでより強い魔法使いになった。
ドラゴニュート公爵の攻撃から甲斐性なしを守れるだけの魔法の盾を作れたのもそれが理由。

「……妹のためにと言うことか」

口を割るかも知れないのに何故わざわざ正体を明かすような真似をと思ったが、そういう理由ならば責められない。

「どのような手段でサシャの肉体に宿ったのか、すぐに消えてしまったので詳しく聞く暇もありませんでしたけれど、自分の記憶の一部を残したのもわざとだと思いますわ。シャルロット嬢の肉体でシャルロット嬢に見合うよう振る舞うことで自分の存在は消えたも同然でしたけれど、本当のワタクシの姿を知ってくれている人が居ることも、シャルロット嬢ではなくワタクシとして話が出来る相手が出来たことも嬉しかった」

肉体はシャルロットで魂はロラ。
でも目に見えない魂のロラの存在は誰も知らない。
最初はそれでもいいと思っていたけれど、シャルロットが愛されることを第一に考えキャラクターを作って演じるほどに自分ロラの存在が消えていく感覚がして少し寂しさはあった。
みんなの記憶に残るのはシャルロット嬢だけだと。

「妹思いの優しい兄だな」
「いえ、襲撃犯ですわ」
「襲撃犯?」

キッパリと否定したロラに当主は疑問符を浮かべる。

「昼夜問わず暇さえあれば楽しそうに襲撃して来て何度ワタクシの城や部屋や家具を壊されたことか。ヴァンピール一族には決闘制度があって欲しい物は奪い合いで手に入れる種族ですから、ワタクシを負かして自分に従わせるつもりだったんだと思いますわ」

そう力説するロラ。

「妹を従わせるためにわざわざ決闘を?」
「兄さまはヴァンピールの始祖の力を買われて本家に来た人ですからワタクシとは血が繋がっておりませんの」
「義兄妹ということか」
「ええ。本家で産まれたワタクシが気に入らないのか、ただからかうのが楽しいだけなのか分かりませんけれど、隙あらば襲撃してくるものだからワタクシもついムキになってしまって犬猿の仲に」

それを聞いて当主は苦笑する。
犬猿の仲と思っているのはロラだけだろうなと。
ヴァンピールは欲しい物を決闘で手に入れる種族というのが事実であれば、義兄が欲しかったのは他でもないロラ自身。
気に入らないとかただ嫌いというようなくだらない理由で襲撃していたのなら、生きる星が変わった義妹を追いかけ他人の肉体に宿ってまで自分の力や記憶を与えるなどしないだろう。

「ロラは義兄と親しくなりたかったのか?」
「どうかしら」

義兄妹として親しくなりたかったかと言えば、それはない。
強いジルを心から尊敬していたし憧れてもいたけれど、義兄としてではなく一人の男性として好意を持っていた。

「犬猿の仲と言っても決して憎しみ合っていた訳ではなくて、仲良くもなければ悪くもないと言ったところかしら。隙あらば楽しそうに襲撃してくるロクデナシな義兄だったことも事実ですけれど、何かと贈り物をくれたりそれとなく気遣ったりもしてくれておりましたから。ただやり方が悪いだけで、義妹としてはそれなりに可愛がってくれていた気がしますわ」

嫌われてはなかったと思う。
ただ、自分の方が義妹として可愛がられるのが嫌だった。
何百年とそんな状況で過ごしてきたけれど遂に当主の口からジルの婚約話が囁かれるようになり、さすがに自分もそろそろ諦めてジルを義兄として見なければと思い始めていたけれど。

ジルを思い出しているロラを見る当主は複雑な心境。
ロラの方もジルに好意があったのだろうと察して。

既に義妹から好意を持たれていることに気付かずヴァンピールの掟に則り決闘に勝利して手に入れようとする義兄と、義兄の好意に気付かず決闘に勝利して自分を従わせるために襲撃してきていると勘違いしている義妹。

なんと不器用で鈍い二人なのか。
所謂だったと言うのに酷いすれ違いだ。

「ロラ」

当主は物思いに耽るロラの名前を呼んで髪に口付ける。

「私の膝に座っていながら他の男のことを考えるな」
「他の男って。義兄ですわよ?」

ただの義兄ならば良かった。
だから何の気なしに当主の方から話を聞いたけれど、ロラが好意を持っていた男の話題とあらば話は変わる。

「私以外の男には違いないだろう?」
「まあ。家族に嫉妬するなんて狭量でしてよ?」

本当にジルをと思っていたら嫉妬などしていない。
ロラ本人は自身の気持ちに気付いていないのか、気付いているけれど家族だと思い込もうとしているのか分からないけれど、どちらにしても当主からすればモヤっとする。

「聞いて欲しいと言うなら聞くが」

いまいち納得していない表情と言葉にロラはくすりとする。

「当主にも可愛らしいところがありますのね」

姿を見ただけで竦むほどに怖がられている存在なのに、聞いて欲しいのならば聞いてやらないとという優しさと拭えない嫉妬の狭間で揺れる当主のギャップにキュンとしてしまう。

「私をそのように言うのはロラだけだ」
「あら。見る目が無い。こんなに可愛らしいのに」

見る目が無いのではない。
当主が素を見せるのはロラにだけなのだから、他の人は当主にも人並みの感情があることを知らないだけ。

姿が変わらず何百年と存在する不滅のドラゴニュート当主。
人々の命を容易く奪える強い力を持つ破壊の竜は、一族にすら笑み一つ見せず何を考えているのかも悟らせることがない。
それが人々の知る当主の姿。

本当は不老長寿なだけで不滅(死)では無い。
怖がらせてしまうから人目を避けて城で暮らしているだけ。
何百年とそうして来たから感情を表に出さない事が当たり前になってしまっただけで、本当は人並みの感情を持っている。

自分の血と魔力で誕生した子供もその子孫も見送って来た。
それは想像を絶するほどの孤独。
たった一人で時代の移り変わりを見てきたけれど、同じ守護者の宿命を持ち継承者を産むまで不死のロラと出会えた。

始祖の力を持つ強者だから自分を見ても怯えない。
親や子や子孫のように自分を置いて先に逝ってしまわない。
継承者さえ作らなければ自分と同じ時を刻むことのできる唯一の存在のロラに当主が執着してしまうのも仕方がないこと。

強く美しいロラ。
くすくすと愛らしく笑うロラに安らぎを覚える当主。
それは当主にとって初めて味わう感情だった。

「当主」
「ファウストだ」

何度も髪に口付ける当主の名前を呼ぶとそう一言。

「名前で呼べということですの?」
「ああ。ロラが困らないよう状況によって使い分けるのは構わないが普段は名前で呼べ。私の名前は当主ではない」

まあまた可愛らしいことを。
当主を名前で呼ぶなど一族の者でも有り得ないことだけれど、だからこそ許可してくれたであることは理解できる。

「ではそうしますわね。ファウスト」

ロラから名前を呼ばれて当主は胸が痛む。
公爵の座から退いたあと国王からは新ドラゴニュート公爵と差別化を図るため『ファウスト当主』と呼ばれるようになったけれど、敬称もなく名前を呼んだ人物はロラが初めて。
当主の両親ですら名前で呼んだことはなかった。

誕生した時から既に始祖の力を持っていた当主は両親からも破壊の竜の生まれ変わりとして『竜の御子』と呼ばれた。
まるで神のように崇めながらも厳しい試練を次々と与え、出来て当たり前、乗り越えられて当たり前と褒めたこともない。
破壊の竜の生まれ変わりなのだから出来ないはずもないと。

だから当主は両親の温もりも知らない。
二十歳で不老長寿の能力が発現してその姿のまま歳を重ねたけれど、先立った両親は最期まで名前を呼ぶことはなかった。
一族の者とすら距離を置いて強さだけを追い求めるようになったのも、そんな子供の頃の経験が大きく関係している。

自分の名前を呼んで欲しい。
いつかそう思える人と出会うことが出来たら。
密かにそう願い続けて数百年。
遂にその願いが叶った。

「もう一度」
「え?」
「もう一度私の名前を」
「ファウスト」

何も知らないロラはきょとんとしつつも名前を呼ぶ。
ただ名前を呼ばれただけで今までにないほど当主が満たされていることも知らず、美しくも愛らしい顔で不思議そうに。

「ロラ」

愛おしいロラ。
例え離縁しないままシャルロットの伴侶の生涯ぶんの時間を待つことになろうと、義兄に好意を持っていようと構わない。
もう自分がロラ以外の者など考えられないのだから。

「今回は人妻だと言って止めないのか?」
「あら。そこを気にしてらしたの?」
「つい先ほど温室で止められた記憶があるが気の所為か?」

今にも唇が触れそうなほど間近まで顔を寄せたもののピタリと止まって聞いた当主にロラはくすりと笑う。

「温室に居た時の肉体はシャルロット嬢でしたもの。人妻のアレニエ公爵夫人の肉体で旦那さまへの不義理を働くことはいたしませんけれど、今は魂も肉体もロラでしてよ」

離縁をするかもしれなくともシャルロットはまだ人妻。
だからシャルロットの肉体だったあの時は止めたけれど、魂も肉体もロラになっている今はシャルロットとは全くの別人。

ワタクシはロラ・カタストロフ・ヴァンピールですわ。ワタクシワタクシの肉体でファウストと口付けることに何か問題があって?」

そう話しながら妖艶に微笑むロラ。
当主もふっと口許を笑みで歪ませると残りの距離を重ねた。

色欲のヴァンピールと強欲のドラゴニュート。
ただ口付けているだけのそれも艶めかしく荒々しい。

「……少し加減してくださる?」
「先に私へ色欲を与えたのは自分だと言うのにどの口が言っている。ドラゴニュートは強欲だと知っているだろう」
「色欲はヴァンピールの特性であってわざとでは」
「それは私も同じ」

呼吸も奪われるような口付けで息があがるロラに答えた当主はニヤリと笑う。

「ヴァンピールは食事となる血を得るための手段として相手の性欲を擽る色欲の特性があるのだろうが、ドラゴニュートは全てにおいて強欲だ。性欲の強さはヴァンピールほどではなくとも一度欲すれば早々には満足しない。三日三晩でも続ける」

ヴァンピールの色欲=食欲。
今時代のヴァンピールは他の種族と同じく肉や魚や野菜も食べるけれど、古代のヴァンピールの食事は血だけ。
だから空腹になれば餌となる相手を捜して色欲を擽り虜にして血を飲んで生きていた。

ヴァンピール一族の色欲の強さはその頃の名残り。
始祖の力を持つ者は特にその腹を満たすために血を求めていた頃の名残りが強く引き継がれていて、ロラも例外ではない。
ただ、そのは『性欲が増して満たされてから再び性欲が増すまでの期間』の話であって、行為自体は普通の人のように一度や二度もすれば満足する。

ドラゴニュートの性欲はヴァンピールに比べれば普通。
けれど一度欲すれば一度や二度の行為では満足しない。
相手が与える以上を欲しがるのがドラゴニュートの特性。
ヴァンピールの始祖の力を持つロラが種族の特性を強く引き継いでいるように、ドラゴニュートの始祖の力を持つ当主も種族の特性を強く引き継いでいる。

「…………」

他人の色欲を擽る特性を持つロラ。
一度欲すれば強欲に求める特性を持つ当主。
お互いが持つ特性がどういう状況を齎すか、それに気付いたロラは当主を見てつい無言になる。

「この小さく細い身体でどこまで耐えられるだろうな」

ドラゴニュートはヴァンピール以上に身体が大きい。
その中でも当主は特に3メートルはあるだろう高い背にガッシリした肉体をしていて、ヴァンピールの中では決して小さい方ではなかった今のロラの姿でも小さく見えるほど。

その体格の差で三日三晩。
想像しただけで背筋が寒くなるロラに当主はニヤリと笑う。

「私の色欲を擽ったことは事実だが、新ドラゴニュート公爵としてやることが山積みの今はこれだけで許してやろう」

笑みで歪む当主の口が重なり瞼を閉じると深く重なる。
色欲のヴァンピールらしく疾うに慣れているはずのそれで自分の胸が騒いでいることにロラは気付きながらも、借りてきた猫のように大人しく当主がするがままを受け入れていた。

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