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二章
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しおりを挟む「順調なようね」
「ああ」
路地からこっそりと一軒の店を覗き見るロラ。
その後ろには当主の姿も。
「お姉しゃまはなにを見てるの?」
「あのお店になにか?」
「知り合いのお店だよ。心配で見に来たんだ」
覗き見る二人の後ろにはクリスとクリスに抱っこされたレアとカイの姿も。
「ふう。第三夫人には商才もあったのね。お料理もできて商才もあるなんて素晴らしい女性ですわ」
安心したロラは大きく息をつく。
クリスとカイとレアが本家の屋敷に引越しして来て、午後から第三夫人が挨拶に来たあの日から二ヶ月。
ずっと気になっていた店の様子を実際に見に来て漸く安心することができた。
「どこか小さな街の小さな店だけでいいと言った時には謙虚すぎるだろうと思ったが、元は平民だっただけに普段から料理をしていて腕前には自信があったのだろうな」
婚姻期間が僅か二年ほどで子供も居ない自分にこの遺留分は過分すぎると辞退されて、変わりに何か欲しいものはないかとロラが聞くと、それなら子供の頃の夢だった料理店をやってみたいとのことだったから、ドラゴニュート公爵家の領地にある街の店を一軒と僅かばかりの開業資金を渡した。
「得意なことがあってそれを生業として生きることが出来ているのですから、逞しいですわ。あの日は姿を見て驚きましたけれど、清らかな彼女には幸せになってほしいですもの」
挨拶に来た時の第三夫人は目の下のクマも酷く一目見て憔悴した様子で、一度だけ会ったことのあったクリスが大丈夫なのかと心配して声をかけたくらいに痩せてしまっていた。
婚姻関係終了の手続きも済んで平民に戻った今の第三夫人は溌剌としていて、お客さまと笑顔で会話をしている。
夢だった料理店を始めたことで新たな生き甲斐ができて、最愛の人との死別という悲しみを乗り越えられたのだろう。
「お店に行ってご挨拶はしないのですか?」
「ええ。彼女はもうドラゴニュート一族とは無関係の人になったの。何かと怖がられてしまう守護者の私たちとは違って、多くの人々に囲まれた幸せな人生を送ってほしいわ」
心配で見に来たのならば挨拶に行けばいいのにと思って聞いたカイにロラは優しく微笑み頭を撫でながら話す。
第三夫人の中で前公爵は美しい思い出のまま。
前を向いて歩き出した彼女が真実を知る必要はない。
「さあ。私たちも貴族の役割を果たさなくてわ。たくさんお買い物をしてお金を使うことも貴族の大切な役目よ」
「分かりました!」
「ましゅた!」
元気に返事をしたカイとレアに笑いながら、五人は新たな道を歩き始めた第三夫人の店に背を向けて路地を後にした。
・
・
・
「はあぁぁぁぁ……うちの天使たちが最強」
街最大のブティック。
本格的な冬が来る前に新しい衣装を買いに来たけれど、どれを試着させてもカイとレアが可愛すぎてロラは悶える。
あれもこれもとロラが指示をして試着させるものだからすっかりファッションショーになっていて、ソファに座って待っている当主とクリスは苦笑した。
「公爵閣下。こちらのご衣装はいかがですか?妹さまや弟さまのお美しい黒髪にも映える色味の生地を使った最新のデザインでして、女児と男児の衣装が揃ってございます」
「まあ素敵。どちらも可愛らしいわ。これもいただける?」
「ありがとうございます」
ブティックの店員もやり手。
最初は当主とロラの漆黒の髪と真紅の瞳を見てドラゴニュートだと気付いて怯えたものの、ロラの人あたりのよさに恐怖心はすっかりなりを潜めて衣装をおすすめしていた。
「じゃあ出来たら本家の御屋敷までお願いね」
「承知いたしました。ありがとうございました」
最後は笑顔で見送られる。
試着したのは見本で、二人に合わせた実物は後日届く。
貴族家の衣装は既製品ではなくオーダーメイドが基本。
「たくさん試着して疲れたでしょう?休憩しましょう」
「たくさん試着させたのは自分だがな」
「だって二人の天使が可愛すぎるのですもの」
カイとレアにめろめろのロラ。
呆れる当主と苦笑するクリスを尻目に二人に頬ずりする。
最初は負い目があって戸惑っていたカイとレアも、この二ヶ月でロラの溺愛ぶりに慣れて擽ったいと笑う。
シャルロットの姿の時もロラの姿の時も溺愛は変わらない。
「クリスお兄さま、おすすめの飲食店はございます?」
「うーん、当主の座れる椅子がある店ってことか」
3メートルほどある当主は下手な椅子には座れない。
公爵家では全て当主でも座れる椅子になっているけれど、屋敷の外ではそんな配慮などされていないのだから限られる。
「あ。一軒思い当たるカフェテリアがある」
「ではそこにいたしましょう」
「そうだね。案内しよう」
ドラゴニュート公爵領にある街オペラ。
王国内で最も魔獣の氾濫が多い危険地帯に位置する本家屋敷や第二・第三夫人邸から最も近い街がここで、買い物が必要な時にはこの街に来ていたクリスが一番詳しい。
一番後ろを歩いている当主は街の様子を伺う。
公爵屋敷のある危険地帯から多少の距離はあるとはいえ最も近い街とあって、他の街とは違い一つ一つの建物が頑丈に作られていて、周囲も頑丈な砦に囲まれている要塞都市。
下手な街よりもよほど安全とあって人気が高く、店の数や種類も多いため、貴賎問わず多くの人々が足を運び賑わっている。
ドラゴニュートはその強さから人々に恐れられる一族ではあるけれど、同時に最も頼りになる一族でもある。
そんなドラゴニュート一族が管理する領地はどこも人気で、経済が回る領地として王国にとってもなくてはならない場所。
「ふふ。建物が気になりますの?」
案内してくれるクリスと歩いていたロラは当主の隣に来て愛らしい笑みで話しかける。
「随分と建物が増えたと思ってな」
「暫く来ていなかったのですか?」
「領地のことは前公爵に任せていた。買い物も使用人の仕事なのだから私が足を運ぶのは魔獣の氾濫があった時くらいだ」
当主の役目は防衛。
それ以外のことは前公爵に一任していた。
だから人々が当主の姿を見る機会は滅多にない。
一族の者ですらも。
「今は魔獣の氾濫も起きておりませんし、可愛い孫たちとショッピングに来たのですから、お役目は忘れてくださいませ」
魔獣の氾濫はいつどこでどの規模で起きるか分からない。
頻繁に氾濫する土地にはドラゴニュート一族が暮らして防衛しているけれど、規模が大きい時には徴集がかかる。
それ以外の場所で起きた時も国から討伐依頼が出れば駆けつけ、最前線で戦うのがドラゴニュート一族。
「守護者の役割を当たり前のものとして数百年と生きてきた当主は今、多くの人が集まるこの街が魔獣に襲われても人命を守れるだけの建物か気になったのでしょうけれど、賑やかな街に来て気になるものがそれなんて立派すぎませんこと?」
足を止めて待っているクリスやカイやレアも頷く。
戦うこと以外は何の興味も持たず、冷酷で厳しく、人嫌いで一族とすらも関わりを持つことを嫌がる破壊竜。
そう前公爵や母親から聞かされていた兄妹。
でも、こうして会ってみれば分かる。
当主は守護者として誇り高いだけに、強い力を持つ一族が力の使い方を誤らないよう厳しく秩序を守らせているだけ。
関わりを避けるのは決して人嫌いだからではなく、人々を怖がらせないよう距離を置いているだけの、むしろ優しさ。
ドラゴニュート一族の一人として強さだけでも尊敬する人ではあったけれど、今は以前よりもその感情が強くなった。
今はまだ身近なクリスやカイやレアだけ。
ロラがシャルロットの肉体に宿り二人が出会ったことで、当主の世界はこれから少しづつ変わっていく。
神龍が望んだ方に。
『ありがとう、ロラ。私の子を頼んだよ』
様子を見ていた神龍はそう呟いた。
クリスが案内してくれたのは立派なカフェテリア。
店前はオープンカフェになっていて、ショッピングの途中で休憩していた人々は黒髪赤目の一族を見て目をまん丸にする。
「ごきげんよう。私たちの座れる席はありまして?」
「は、はいっ!失礼いたしました!」
ぽかんと口を開けて見上げていたカフェ店員たちにロラが声をかけるとハッと我に返って返事をする。
「申し訳ございません!すぐにお支度いたします!」
「ありがとう。急いでいないから慌てなくていいわ」
直角以上に頭を下げて謝った店員も、慌ててテーブルの上を片付け始めた店員も、にっこりと笑ったロラにまた唖然。
容姿を見るにこの街の領主でもあるドラゴニュート族で間違いないけれど、こんなにも美しく愛想のいいドラゴニュート族も居たのかと。
客たちも静まり返って一族に興味津々。
創造神の寵児と言われるドラゴニュート族は美男美女が多いことは有名な話でも、実際には見たことがない人が殆ど。
本当に五人とも美男美女で眩い存在。
「て、店内の方がよろしいでしょうか」
「どちらでも構いませんけれど、私たちの背の高さでも座れる席をお願いできるかしら。脚がぶつかってしまうの」
「やはりそうですよね。でしたら椅子やテーブルの固定されていないオープンカフェの方よろしいかと」
「ではそちらに。手間をかけさせてごめんなさいね」
「とんでもないことでございます。少々お待ちください」
片付けをしていてフと店内の席で座れるか気になったらしく聞きに来た若い女性店員は、ロラから話を聞いて納得するとすぐにオープンカフェに席を準備するために店を出た。
当主が座れるよう長椅子がある席も含め三席分の四角いテーブルをくっつけて一席にしてくれた店員たち。
長椅子の方には最も背の高い当主とロラが座って、対面の椅子にはクリスとカイ、そして身体の小さなレアのために用意してくれた子供用の椅子にそれぞれ座った。
「建物が立派なだけあって、椅子やテーブルもしっかりした作りのものですわね。アンティーク調で可愛らしいですし」
「うん。店内に入ったのは初めてだけど店の前は何度も通ったことがあったから、ここならと思ったんだ」
「正解ですわ。さすがクリスお兄さま」
ロラ好みのカフェテリア。
テーブルや椅子だけでなく、置物や皿やティーセットに至るまでアンティーク調の物で揃えられている店。
「シャルはこういう物が好きなのか」
「ええ。今は慌ただしくて拘る時間もありませんけれど、落ち着いたら私の部屋はアンティーク調にしたいですわ」
テネブルにあるロラの城の家具は全てアンティーク調。
衣装もゴシック系を好んで着ていた。
「失礼いたします」
店員が運んできたのはメニューとおしぼり。
緊張している様子でそれぞれの前に置く。
「先にお水をくださる?」
「有料の水瓶になりますが、よろしいですか?」
「え?もちろんよろしくてよ?」
「ありがとうございます。すぐにお持ちいたします」
置き終わったことを見計らって水を頼んだロラに、女性店員は有料だということを伝えてすぐに席を離れる。
「どうして聞いたのかしら」
「聞かないと揉め事になり兼ねないからだよ」
「どういうことですの?」
飲み水が有料なことはこの星の常識。
テネブルでもそれが常識だったから不思議に思ったロラにクリスは苦笑する。
「この街の近くには水源がないから水が貴重で高いんだ。街の人が使う生活用水くらいは確保できてるけど、それが飲める綺麗な水となると他所から瓶で仕入れないといけない。平民も多く集まる街だけに高い水瓶を勝手に出せば揉め事になる」
「まあ。そうでしたの」
クリスが苦笑しながら指さしたメニューに書かれているのは水瓶一本の値段と注意書き。
注意書きを要約すると『この値段でもよければお水が必要な人は店員に言ってね』ということ。
「危険地帯と言われるお屋敷の方でも水に困ることはありませんが、少し離れたこの街では貴重な物なのですね」
「昔は水源があったからここに街を作ったみたいだけど、今では環境が変わってしまったんだって」
カイもクリスの話を聞いて納得する。
領地のこともしっかり勉強しているクリスは有能。
「当主はご存知でしたの?」
「ここに街を作らせたのは私なのだから当然知っている。昔は水も豊富で緑豊かな場所だったが、水源で起きた大規模な魔獣の氾濫をきっかけに水も緑も枯れてしまった。今は地下に管を通して距離のある水源から水を引いている」
六百年生きている当主が知らないはずもない。
ここが水と緑豊かだった時にも生きていて街を作らせた。
「水源となる川や湖が枯れてしまったということですわよね?地下の水脈はどうなっておりますの?」
「見つけられなかった。手当り次第穴を空ける訳にもいかないからな。地盤が緩んでしまう」
街の近くにボコボコ深い穴を空ける訳にもいかない。
だから距離のある水源から水を通している。
「あら。そういうことでしたら私も協力できますわ」
「ん?」
「休憩したら早速探しますわね」
「ん?」
「水脈。ありますわよ?水の気配を感じますもの」
「「え!?」」
首を傾げる当主に事も無げに言ったロラに驚いた声をあげたのはクリスとカイ。
「お姉さまは水の気配というものが分かるのですか?」
「自然のことであれば感じとれてよ?ここと探し当てるには魔法陣が必須の魔法を使う必要がありますけれど」
「……凄い」
あっさり言ったけれどとんでもないこと。
それは九歳のカイでも分かる。
当主でも見つけられなかったのに、と。
「それが事実ならばこの街も水に困ることはなくなる」
「ええ。人々の生活が今よりも豊かになるのでしたら喜んで協力いたしますわ。領民が居てくれてこその領主ですもの」
「ああ。そうだな」
くすりと笑った当主はロラの頭に軽く口付けた。
「難しいお話は後にしてお茶やお菓子を楽しみましょう」
「わたしはケーキがいいでしゅ!」
「ん"ん"ッッ!お店にある全てのケーキを注文しますわ!」
「お姉さま!レアが肥えてしまいます!」
手を挙げて言ったレアの可愛さに悶えて全てのケーキを注文しようとするロラを慌てて止めるカイ。
そんな三人に当主は苦笑し、クリスは短く吹き出すような笑い声を漏らした。
注文した物も届いてまったりティータイム。
店前を通り過ぎる人々も美しく優雅な一族に注目する。
本人たちは飲んだり食べたりしているだけなのだけれど。
「あら?レア。寒いのではなくて?」
「しゅこし」
ドラゴニュートは暑さにも寒さにも強いけれど、幼いレアはまだ体温調整が上手くいかない。
身体が冷えてきたらしく、頬が赤くなってきたことに気付いたロラが指を鳴らすと寒さが消えた。
「あれ?何か暖かくなったの気の所為?」
「ううん。私もそう思った」
オープンカフェに居た人たちはドラゴニュート族ではないから寒さを感じつつ温かいお茶を飲んだりしていたけれど、突然暖かくなったことに気付いて不思議そうに会話を交わす。
「もう寒くないかしら」
「うん。ありがとうお姉しゃま」
「ふふ。どういたしまして」
貴重な魔法を惜しみなく使うロラにクリスは苦笑。
レアのためにオープンカフェ中を障壁で囲むなんて。
周りの人には見えていないから分からないようだけれど。
ケーキを口に運ぶレアとカイを見るロラはにこにこ。
頭から食べてしまいたいくらい可愛らしいわと、他の人が聞けばゾッとするようなことを心の中で思いながら。
「クリス!カイ!レア!」
当主やロラの背後から聞こえた声。
「……母上!?」
声の主は(元)第二夫人。
初老の男性や女性や護衛と一緒に小走りに向かって来る母の姿を見たクリスはすぐに立ち上がり、椅子からレアを抱き上げ腰にしがみつくカイの背中にも手を添える。
「良かった。無事だったのね」
「無事?何のお話ですか?」
女性が言った言葉の意味が分からずクリスは首を傾げる。
「本家に監禁されているのでしょう?ドラゴニュートは野蛮だと噂には聞いてましたけど、こんなに怯えて可哀想に」
「ほう。私たちが野蛮だと」
「可哀想と言いつつドラゴニュートのクリスお兄さまとカイとレアの目の前で野蛮と罵るなんて、酷い方ですわ」
のんびり紅茶を飲みながら話す当主とロラ。
「クリスお兄さま、こちらの方々はどなた?」
「母上のご両親です」
「あら。でしたら他国の方ですわね」
「はい」
妹ではなく公爵への言葉遣いに変わったクリスからそれを聞いたロラは椅子から立ち上がる。
「ごきげんよう。私はその野蛮な一族の新公爵シャルロットと申します。こちらは当主のファウストですわ」
美しいカーテシーで挨拶をしたロラ。
三人に目が行って手前の存在に気付いていなかったけれど、漆黒の髪と真紅の虹彩を見て両親は一瞬で真っ青になる。
「元第二夫人にはクリスお兄さまとの絶縁令と子供たちとの接近禁止命令が出ているはずですけれど、つい最近のことですのにもう忘れてしまいましたの?」
「そんなの関係ないわ!私の子供と会って何が悪いの!さあ母のところにいらっしゃい!」
顔を赤くして怒りながら近づいて腕を伸ばした第二夫人のその腕をクリスがバシッと払う。
「母上が私たちが監禁されているなどと大嘘をついて祖父母を巻き込んだのですよね?はっきりさせておきますが、絶縁したのは私の遺産を浪費家の母上から食い潰されないよう私自身が望んでしたことですし、カイやレアが怯えているのは母上に連れて行かれると思っているからです」
声は冷静ながらも怒りを滲ませるクリス。
払われた手を押さえる娘の背中に手を添えている祖父母は真実を聞いて驚いた表情に変わる。
「私からすれば祖父母の貴方がたも母上と変わりません。母上を甘やかして贅沢な浪費家に育てたことも、前公爵から多額の援助を受けていながら礼の一つにも来ないことも。父上が亡くなったら今度は私やカイやレアの遺産にたかるんですか?」
「そんなこと!」
カッとするご夫人をクリスは鼻で笑う。
「私たちは本家で幸せに暮らしておりますのでご安心を。母上は自分の贅沢品を買うため家庭教師は高いなどと言ってカイやレアにはつけませんでしたが、今は公爵閣下と当主が評判のいい家庭教師を雇ってくださって楽しそうに学んでいます」
泣きながらもカイとレアはこくこく頷く。
公爵も当主も自分たちを大切にしてくれているし、家庭教師から勉強やマナーも教わることができて毎日が楽しい。
「分かりますか?貴方がたの娘はドラゴニュート一族に嫁ぎ前公爵から多額のお金を受け取っておきながら、子供に使うお金は言い訳をして出し渋るような意地汚い人間なんです。漸く縁が切れて晴れやかな気分で祖父や兄妹と楽しいティータイムを過ごしていたのに、貴方がたが現れたせいで台無しです」
何事かと驚いていた人々もクリスの話でヒソヒソ。
自分は贅沢をして子供のものは出し渋るなど虐待だろうと。
しかもドラゴニュート公爵家はどの貴族家よりも裕福なはずなのに、家庭教師を高いと思うことがそもそもおかしい。
恥ずかしい真実を人前で暴露されて三人は真っ赤。
「分かったら国にお帰りください。接近禁止命令を破って私たちに接触したことを王国に報告すれば母上は捕まりますよ」
ここまで恥をかいたんだからさすがにもう諦めるだろうとクリスが気を抜くと腕からレアを奪われる。
「いやぁぁぁああ!」
「レア!」
叫んだ妹を助けるため手を伸ばしたカイまでも祖父母に捕まえられ、護衛がクリスと第二夫人たちとの間に入って止める。
「一応クリスお兄さまの母と祖父母ですから成り行きを見守っておりましたけれど、家族揃ってろくでなしでしたのね」
当主から顔面を捕まれ地面に叩きつけられた護衛の二人。
この家族から雇われている護衛だから主人を守るのは当然。
だから当主も斬り殺さず地面に倒して気絶させた。
「このようなことをして許されると思うのか!」
「ふふ。誘拐犯がどの口で言っているのかしら」
ロラの方は魔法で第二夫人と祖父母を拘束すると、レアとカイをふわふわと空中に浮かばせてくすくす笑う。
「お二人とも受け止めてくださいませ」
魔法でふわふわ運ばれたカイは当主の腕で。
レアはクリスの腕で無事に受け止められた。
「私から孫を奪おうとするとは愚かな」
王国に暮らす人々なら有り得ないこと。
居るとすれば命知らずの馬鹿な犯罪者だけ。
殺されると分かっているから身代金目的でもやらない。
「クリス。この者たちの国はどこだ」
「スフェール国にございます」
「あの小国か」
船で渡った場所にある小さな国。
それでドラゴニュート一族のことをよく知らないのかと納得した当主はカイを地面におろす。
「貴様らの宣戦布告は受け取った。我らドラゴニュートは未来永劫スフェール国からの救助要請を破棄する」
ザワザワする人々。
第二夫人や祖父母は人々の様子をキョロキョロ見渡す。
なぜこんなに驚いているのかと。
「ブルイヤールの同盟国のスフェールも、私たち一族が幾度も魔獣の氾濫から防衛してきました。ですがそれも今日で終わりだと当主は申しているのです。命をかけて最前線で戦う私たち一族を野蛮と罵る恩知らずが居る国を守る必要などありませんからね。今後スフェールは魔獣に襲われることになりますので、墓標を準備しておくようおすすめします」
クリスは自分たちの状況を理解していない母や祖父母に説明して苦笑した。
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