人間不信になったお嬢様

白椿家

　日本有数の家柄、大昔の貴族から引き継がれ華族になった今でも十分大きな財力を持つ家柄は多数存在していた時代。その中でも辻倉、葛城、白椿と聞けばかなり有名で中には取り入ろうとする者も多くいたという。
　その中での白椿と聞けばこの土地では十分大きな家柄だった。だが近年急成長を遂げ政財界でも大きな影響力を持ち始めた家柄のため、古くから伝わる華族たちは面白くなさそうに、だけど嫌われまいと仕来りを意識つつ接していた。そんな白椿家の屋敷は、立派な大きな門からでは車でも長く遠くにある大きな洋館だ。外からでは建物がよく見ることができず謎に包まれていた。その家には一人の息子がいた。名は彰宏あきひろといった。彼は色白で切れ長の目をしどこか違った雰囲気を持つ青年だった。彰宏は外に出ることはせず屋敷の中で暮らしていた。その為か、他の華族たちは彼の存在を一切知らなかった。
　ある日、白椿家でパーティーがあった。招待状を受け取った人々の車が列をなし代わる代わるやってきた。だれもが綺麗な衣装で現れ、仲いい人たちで話し始める。場が明るくなり、楽しいひと時が流れた。
　その中にひときわ目立つ少女がいた。名は辻倉紗紀子という。遅れてきた車から両足を下し、誰もがその姿に息をのむ。赤いヒールだ。すくっと姿を見せた彼女は真っ赤なドレスに身を纏っていた。その様子を彰宏は部屋の窓から見ていた。