人間不信になったお嬢様

園田美栞

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良からぬ噂

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 紗紀子にとってみればそのパーティは退屈だった。彼女にはこのパーティーでは目的があったのだった。だが、その対象となるものは一切この場にはなく、彼女の眼の光は暗くなっていった。だからと言ってすぐに帰ろうという風には思わなかった。
(人間観察)
そう思いながら会場の端っこの方で招待客を眺めていた。そんな彼女を見ては幾人かの男が話しかけようと狙っていた。紗紀子は辻倉家のお嬢様だった。辻倉家といえば古くから伝わる伝統的な家柄であった。だが、辻倉の最近の噂はよくないものが流れ、そのためかほかの女3人組が紗紀子から男を退けようとやってきた。
「ごきげんよう、私聞きましたの」
不敵な笑みを見せた女性は紗紀子の表情が変わったことをお構いなしに
「貴女、婚約者の方はどうしたの?」
「まぁ朋子、そんなこと聞いちゃだめよ」
「そうよ、ほかに女性ができて破談になったなんて」
「あら、私まだ言ってないわ。それに知ってるかしら?腹いせなんでしょうけど、ほかの男性と庭で逢引きしてたらしいじゃない」
「何人もの異性とって聞いたわ」
ありもしない噂をでっちあげる。前半はあっているのだが後半はめちゃくちゃだ。
「そんな…」
反論しようとするけど彼女たちの話は止まらない。近くにいた人たちはサッと離れていった。
(来るんじゃなかった)
元婚約者がこのパーティーに来ると聞いて私たちを破談にさせた女の顔を見てやりたかったのだった。未だに引きずってる自分が惨めには思えてくるけど少しは見てやりたい。いや、本当は知っている。あの女は友達だった人だ。私も目の前にいる三人組のように仲良かった頃があった。
 目の前の三人組は紗紀子のことなどお構いなしに言いたいことを言いまくり近くにいる男性に振り向いてもらおうと話しかけたりしていた。紗紀子はいくら美貌でも誰も踊りの申し込みはせず独りぼっちになってしまった。
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