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佳代子
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夜を歩くのが怖い。そう思ったのはつい最近のことだった。鈍臭い佳代子でもわかる。誰かが彼女の後を付けているのが。夜も昼間も、ふと後ろを振り返っても誰もいないはずなのに、何かを感じる。一人暮らしのマンションからそっと覗くと人影が見えた。だが、誰にも相談できない恐怖が佳代子を襲った。
佳代子は自宅から電車で少し行ったところの駅近くの澤須クリニックの事務として仕事をしている。内装が白メインのここは内科や小児科が主で、この小さなクリニックには意外にも多くの患者がやってきた。診察室からは小さい子は両親や祖父母に連れられ泣く泣く予防注射を受けたり、小さい子には怖く見える医者から逃げようと暴れたりと毎日大きな声は絶えない。今日はどんな子供たちが来るのかな、どんな人が来るんだろうと佳代子の秘かな楽しみになっている。受付で予防注射の飴玉をあげると多くの子供たちが喜んでお母さんに自慢する。
「お姉ちゃんから貰ったよ。頑張ったねって言ってもらえたよ」
嬉しそうに「ありがとう」と言われたり、半べそ掻きながらコクンと頷いてもらう子供たちがいて楽しい。佳代子自身も嬉しくなって、仕事のやりがいを感じる。
「ねぇ、彼氏とはうまくいってるの?」
お昼時の休憩時間、そう話しかけてきたのは同じ職場の結衣だった。佳代子と違って、大人びている雰囲気の結衣は色気がかなりある。こんな職場にいるのだろうかというほどの雰囲気を漂わせている。頬杖をついて顔を覗き込みながら言う結衣に
「どうって…。別れたわ」と佳代子は怒った口調で言った。その言葉に可哀そうという風な顔つきで結衣は彼女を見ていた。だが、佳代子はそんな同僚を睨みつけた。
「そんなに睨んでいたら嫌われるわよ」
「そうね」
笑いながら言う結衣に佳代子はため息をつきながら仕事にとりかかろうと眼鏡をかけた。この人と話している暇なんてない。プイと渡された書類に目を通し、会計を済ませる。
ふと前を見ると若い男の人が自動ドアから入ってくるところだった。顔は世間体ではイケメンの部類に入るのだろう。隣に座る結衣はその患者を見てはうっとりしていた。それに眉間を寄せながら事務仕事を進める。その患者は佳代子をじっと見ていた。
「こんにちは」
いつもの笑顔で佳代子はその男の人に声をかけた。さわやかな笑顔に佳代子の心が何かに反応したのを感じた。
佳代子は自宅から電車で少し行ったところの駅近くの澤須クリニックの事務として仕事をしている。内装が白メインのここは内科や小児科が主で、この小さなクリニックには意外にも多くの患者がやってきた。診察室からは小さい子は両親や祖父母に連れられ泣く泣く予防注射を受けたり、小さい子には怖く見える医者から逃げようと暴れたりと毎日大きな声は絶えない。今日はどんな子供たちが来るのかな、どんな人が来るんだろうと佳代子の秘かな楽しみになっている。受付で予防注射の飴玉をあげると多くの子供たちが喜んでお母さんに自慢する。
「お姉ちゃんから貰ったよ。頑張ったねって言ってもらえたよ」
嬉しそうに「ありがとう」と言われたり、半べそ掻きながらコクンと頷いてもらう子供たちがいて楽しい。佳代子自身も嬉しくなって、仕事のやりがいを感じる。
「ねぇ、彼氏とはうまくいってるの?」
お昼時の休憩時間、そう話しかけてきたのは同じ職場の結衣だった。佳代子と違って、大人びている雰囲気の結衣は色気がかなりある。こんな職場にいるのだろうかというほどの雰囲気を漂わせている。頬杖をついて顔を覗き込みながら言う結衣に
「どうって…。別れたわ」と佳代子は怒った口調で言った。その言葉に可哀そうという風な顔つきで結衣は彼女を見ていた。だが、佳代子はそんな同僚を睨みつけた。
「そんなに睨んでいたら嫌われるわよ」
「そうね」
笑いながら言う結衣に佳代子はため息をつきながら仕事にとりかかろうと眼鏡をかけた。この人と話している暇なんてない。プイと渡された書類に目を通し、会計を済ませる。
ふと前を見ると若い男の人が自動ドアから入ってくるところだった。顔は世間体ではイケメンの部類に入るのだろう。隣に座る結衣はその患者を見てはうっとりしていた。それに眉間を寄せながら事務仕事を進める。その患者は佳代子をじっと見ていた。
「こんにちは」
いつもの笑顔で佳代子はその男の人に声をかけた。さわやかな笑顔に佳代子の心が何かに反応したのを感じた。
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