復讐するならストーカーの彼とともにやり遂げましょう。憎しみの連鎖にはお気をつけて

園田美栞

文字の大きさ
10 / 42

佳代子

しおりを挟む
それから数日後、「別れてほしい」と板倉から聞かされて佳代子は驚いた。楽しくデートした夜、佳代子の家の前まで送ってもらったとき、板倉はそう佳代子に言った。

「急にどうしたの?」

急に何があったのか疑問に思った佳代子は冗談でしょ?って顔をしながら言ったが、板倉の顔は真剣だった。

「お前の同僚から聞いたよ。お前は俺に相当な不満があったようだな」

呆れた顔をしていった板倉に佳代子はぽかんとした表情で答えた。

「不満?それはいつも言ってるままよ」

「それはどうかな。普段見下してるそうじゃないか」

板倉はフッと鼻で笑って言った。それに、佳代子は苛立ちを見せ、ずっと心の中に抑えていたものが込み上げてきた。心当たりのある人物がいる。

「は?なら私からも言わせて貰うわ」

売り言葉に買い言葉はこのことだと思った。散々の口論の後、佳代子は口を閉じた。

「それにお前より、好きなやついるし。もう話は進んでんだ。そいつから聞いたよ。お前の素行を」

改めて言われるとかなりショックを感じる。身に覚えのある人の名前を出して、相手がどう出てくるのかを探ってみることにした。

「もしかして、結衣のこと?あの子がどんな子だって知っていてそれを言っているの?」

「女の悪口まで言うんだな。あの子はそんなことをいう子じゃないよ。いろいろと相談に乗ってもらったし、話していてそっちのほうが楽しいて思った。お前はキレてばかりじゃないか」

だが、答えは佳代子が想像していたものとは違く、逆に自分が悪いといったような口ぶりにさらに彼女を苛立たせた。もう話し合うこともないのかなと感じた佳代子は「ほんと最低。急に何を言い出すのかと思ったら」と言い、涙を流してマンションへと入っていった。

(ほんとに許せない。あいつも結衣の策略に引っかかるなんて。それに、結衣がしていた指輪も前の彼氏とじゃなくて亮介とのモノだったの?)佳代子は唇を噛んだ。何を言っても自分を正当化させて、佳代子のことは悪く言い続けるこの男が憎い。私が何かしたのだろうか?もう何もかもやる気が起きない。脱ぎっぱなしにした洋服が乱れたまま放置されたのをお風呂から上がった佳代子は眺めため息をついた。ちっとも泣けなかった。お風呂でぼんやりと亮介のことを考えたけれど裏切られて、結衣に邪魔された。亮介となら小学校から一緒だったし、長い付き合いだからそんなことないって思っていた。あの頃は仲良くて楽しくて、どんな時でも一緒に笑えていたけど今となってはそんな感情が全くない。いつ頃からか、亮介は誰か別の女の子に目移りしていることを知った。はじめは知らないふりでいた。ずっと一緒に居たからたまには遊びたくなっただけだろうって、嫌な女には成りたくなかったから黙って見て見ぬふりをしていた。出きれば何も邪魔することの無いあの頃に戻りたい。それだけが最後の望みだった。自然と戻るだろうとも思っていた。こっちに来てくれるって思っていた。それなのに…。あんな後から来たやつに邪魔されるなんて。長い付き合いを、信頼していたこの関係を邪魔されるなんて思ってもみなかった。結衣がいるだけで私の幸せはどこか消えてしまう。あの女がすべて消していく。全てかき乱して、穏やかだった日常が壊されていく。

「あー、もう!」ほんとにイライラする。人の周りをウロウロしているのはあの女か?他人の恋愛事情、生活を盗み見しては楽しんでいたに違いない。証拠なんてつかめないけどきっとそうに決まってる。絶対恋人ができたらあの女にだけは伝えない。今あいつはどう思っているのだろうか、勝ったとでも思っているんだろうか。復讐してやりたい。いつか必ず。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...