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第十六話「テロリストについて」
作戦会議
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「作戦会議を始めるぞ!」
部隊長が会議室を借りて用意された即席のブリーフィングルームに入ってきて、そう宣言した。雑談をしていた自衛官総勢二名は、立ち上がって敬礼した。
この部屋にいたのは、安久 剛と宇佐美 優の二人だけで、他には誰もいない。これだけで、今回の救出作戦が少人数で秘密裏に行われる物だということが、遅れて入った志度と心視にもわかった。しかし、何故隠密に行わなくてはならないのか、それがわからない。
二人が安久たちへの挨拶もそこそこにして、席に着くのを待ってから、部隊長は「では、状況説明を開始する」と、手元の資料に目を落として切り出した。
「すでに知っての通り、比乃がテロリストに拉致された。今のところ、相手からの身代金やら人質交換やらの連絡は来ていない。このことから、奴らの目的は比乃の身柄その物にあると考えられる」
上司の口から淡々とした口調で告げられる情報に、四人は口を一文字に結んで耳を傾ける。
「その居場所についてだが、奴らは比乃を拉致後に大型フェリーで移動し、途中で潜水艦らしき物に乗り移ったという情報が海上保安庁並びに海自から知らされている……その行き先だが」
部隊長が取り出した大きめの航空写真をホワイトボードに貼り出した。写真に写っていたのは、周りを環礁に囲まれた二つの島と青い海。そして島の上にある人工物と、特徴的な三角形の滑走路には、大量の航空機。そして港らしい場所には船舶も見える。そこはどう見ても、日本国内ではなかった。
四人がまさかと固まる中、部隊長だけはまた淡々と話を続ける。
「そう、ミッドウェー諸島だ」
ミッドウェー諸島。北西ハワイ諸島に属する火山島であり、アメリカの領土“だった”土地である。だった、という言い方は少し間違っていて、実際にアメリカ合衆国領土ではある。だが、今そこを実効支配しているのはアメリカではなかった。さらに言えば、属しているハワイ諸島すらも、現在はアメリカの手から離れてしまっている。
ならばどこか別の国がとなるが、支配しているのはどこの国でもない。その島々を武力によって支配しているのは、テロリスト――それも件のオーケアノスが率いる大隊が所属している組織なのだ。
奴らは無人であったミッドウェー諸島を足掛かりに、どこから調達したのか、大量の航空機とAMWによってハワイのアメリカ太平洋軍の司令部を奇襲、陥落させた。そのまま基地を乗っ取って居座り、そこからアメリカ本土への攻撃を繰り返し仕掛けているのだ。
ハワイにおいては、一般市民の無事は確認されているが、テロ組織が所持する膨大な戦力を前に、米軍による三度の奪還作戦は全て失敗で終わっている。
閑話休題。比乃が太平洋のど真ん中に連れ去られたことが、この作戦を行う上での最大のネックだった。
「この島に残っていた軍事施設のいずれかに、比乃が捕まっていると当たりをつけた。この施設はテロリストが再利用しており、これらの敵部隊との衝突は避けられないと思われる」
写真の左側の島、その上にある人工物らを、部隊長が指でぐるりと指す。室内にいた四人の顔が曇る。そんな敵の本拠地に、これだけの人数で殴り込みをかけねばならないとは、かなり無理がある作戦だ。
部隊長は彼らの顔を見て「安心しろ。流石に敵の大群相手にこの人数で挑ませるほど、俺も無鉄砲じゃない」と言って、また別の写真を出した。
数日前に撮られた衛星写真には、先程貼られた写真とは違い、ほとんど船舶や戦闘機などの影は写っていなかった。
「これまでの米軍の監視によると、ミッドウェーに戦力は残されておらず、大半がハワイに移動済みらしい。残っているのは、駐留部隊程度の規模だと予想される。具体的にはAMWが数機と、恐らくは潜水艦が一隻……一般の部隊ならともかく、お前たちならなんとかなるだろう」
お前たち、と言った所に絶対の自信を感じられた。宇佐美はやれやれと、安久は無言まっすぐ前を見据えて、その態度で言葉への返事とした。志度と心視もこくりと頷いてみせる。
それに部隊長はにぃっと笑みを浮かべて、楽しくなってきたような口調で「しかしだ、問題がいくつかある」と言った。
「それは作戦の問題上、施設内を占拠する部隊を堂々と乗り上げさせることができんということだ。他国の領土でそんな大規模部隊を展開するわけにはいかんからな、なので、この内で白兵戦が得意な者に、施設内の比乃捜索を頼みたいのだが……」
部隊長が部屋の中をぐるりと見渡す。全員が自信満々と言った表情を浮かべている。師団最強のレンジャーに現代の侍、人造人間一号と二号。そこら辺の特殊部隊の何倍も強力な面子であった。
部隊長は髭を撫でて、ご満悦と言った顔をする。今日も、自慢の部下と息子に娘は、やる気に満ち溢れている。
「ぶっちゃけ、誰が行っても問題ないと思うが……今回は志度と心視に頼もうと思う。理由は二つ。一つ、AMWでの時間稼ぎは安久と宇佐美の方が向いてること、もう一つは、奴らとの戦闘経験が二回もあることだ」
そこまで話してから「続いて移動手段だが、その前にちょっと失礼」と部隊長は大型の衛星電話を取り出して、どこかへと連絡を取り始めた。コール音が長めに鳴って、目的の相手が出た。
「もしもしラムス? おお、元気してたか……ああ、いや頼みがあってな……そんな無茶なことじゃないさ……ミッドウェーあったろ、あそこでうちの部隊が作戦行動取るの見逃してくれないか? ……うん、安心しろ少数精鋭だ……援軍? いらんいらん、そもそも来れないだろお前ら……ああ、ひと暴れしてやるから期待してろ……また今度ベガスでもいこう、じゃあな」
と英語で通話を終えると「よし」と言って通信機を懐にしまった。嫌な予感がした安久が「あの、部隊長、よろしいですか」と挙手。部隊長に「どうした」と促されて発言する。
「日米両政府に許可などは……」
「ああ、大丈夫だ。非公式だが、やって良しとは言わせた」
「言わせた……?」
「あまり細かいことは気にするな、お前らはとにかく比乃を救出して無事に帰って来ればそれでいい」
流石に怪訝そうな顔を見せる部下達を無視して、部隊長は「移動手段だが」と話を続けようとする。四人はもう何も言わないことにした。総理大臣とか大統領とコネを持っていてもおかしくは無いのだから、今更そのことについて言及してもしかたがないだろう。
「移動には海自の護衛鑑に乗せて貰う。表向きは練習航海、裏向きはテロリスト勢力への威力偵察、真の目的は比乃の救出というわけだな。すでに機体は横須賀に輸送されている。今回、敵基地で取れる作戦時間は二時間だ。それまでに全作戦工程を完了させろ。あとの詳しい説明は向こうで改めて聞いてくれ……陣頭指揮を執りたかったが、流石にダメだと言われてしまってな……」
心底悔しそうに言う部隊長に、部下四人は内心「それでもやりかねない」と思ったが、口には出さなかった。
「それでは全員、移動開始! 無事と成功を祈る」
部隊長の言葉と同時に、全員が席を立ち、小走りで移動を始めた。比乃救出作戦、開始である。
部隊長が会議室を借りて用意された即席のブリーフィングルームに入ってきて、そう宣言した。雑談をしていた自衛官総勢二名は、立ち上がって敬礼した。
この部屋にいたのは、安久 剛と宇佐美 優の二人だけで、他には誰もいない。これだけで、今回の救出作戦が少人数で秘密裏に行われる物だということが、遅れて入った志度と心視にもわかった。しかし、何故隠密に行わなくてはならないのか、それがわからない。
二人が安久たちへの挨拶もそこそこにして、席に着くのを待ってから、部隊長は「では、状況説明を開始する」と、手元の資料に目を落として切り出した。
「すでに知っての通り、比乃がテロリストに拉致された。今のところ、相手からの身代金やら人質交換やらの連絡は来ていない。このことから、奴らの目的は比乃の身柄その物にあると考えられる」
上司の口から淡々とした口調で告げられる情報に、四人は口を一文字に結んで耳を傾ける。
「その居場所についてだが、奴らは比乃を拉致後に大型フェリーで移動し、途中で潜水艦らしき物に乗り移ったという情報が海上保安庁並びに海自から知らされている……その行き先だが」
部隊長が取り出した大きめの航空写真をホワイトボードに貼り出した。写真に写っていたのは、周りを環礁に囲まれた二つの島と青い海。そして島の上にある人工物と、特徴的な三角形の滑走路には、大量の航空機。そして港らしい場所には船舶も見える。そこはどう見ても、日本国内ではなかった。
四人がまさかと固まる中、部隊長だけはまた淡々と話を続ける。
「そう、ミッドウェー諸島だ」
ミッドウェー諸島。北西ハワイ諸島に属する火山島であり、アメリカの領土“だった”土地である。だった、という言い方は少し間違っていて、実際にアメリカ合衆国領土ではある。だが、今そこを実効支配しているのはアメリカではなかった。さらに言えば、属しているハワイ諸島すらも、現在はアメリカの手から離れてしまっている。
ならばどこか別の国がとなるが、支配しているのはどこの国でもない。その島々を武力によって支配しているのは、テロリスト――それも件のオーケアノスが率いる大隊が所属している組織なのだ。
奴らは無人であったミッドウェー諸島を足掛かりに、どこから調達したのか、大量の航空機とAMWによってハワイのアメリカ太平洋軍の司令部を奇襲、陥落させた。そのまま基地を乗っ取って居座り、そこからアメリカ本土への攻撃を繰り返し仕掛けているのだ。
ハワイにおいては、一般市民の無事は確認されているが、テロ組織が所持する膨大な戦力を前に、米軍による三度の奪還作戦は全て失敗で終わっている。
閑話休題。比乃が太平洋のど真ん中に連れ去られたことが、この作戦を行う上での最大のネックだった。
「この島に残っていた軍事施設のいずれかに、比乃が捕まっていると当たりをつけた。この施設はテロリストが再利用しており、これらの敵部隊との衝突は避けられないと思われる」
写真の左側の島、その上にある人工物らを、部隊長が指でぐるりと指す。室内にいた四人の顔が曇る。そんな敵の本拠地に、これだけの人数で殴り込みをかけねばならないとは、かなり無理がある作戦だ。
部隊長は彼らの顔を見て「安心しろ。流石に敵の大群相手にこの人数で挑ませるほど、俺も無鉄砲じゃない」と言って、また別の写真を出した。
数日前に撮られた衛星写真には、先程貼られた写真とは違い、ほとんど船舶や戦闘機などの影は写っていなかった。
「これまでの米軍の監視によると、ミッドウェーに戦力は残されておらず、大半がハワイに移動済みらしい。残っているのは、駐留部隊程度の規模だと予想される。具体的にはAMWが数機と、恐らくは潜水艦が一隻……一般の部隊ならともかく、お前たちならなんとかなるだろう」
お前たち、と言った所に絶対の自信を感じられた。宇佐美はやれやれと、安久は無言まっすぐ前を見据えて、その態度で言葉への返事とした。志度と心視もこくりと頷いてみせる。
それに部隊長はにぃっと笑みを浮かべて、楽しくなってきたような口調で「しかしだ、問題がいくつかある」と言った。
「それは作戦の問題上、施設内を占拠する部隊を堂々と乗り上げさせることができんということだ。他国の領土でそんな大規模部隊を展開するわけにはいかんからな、なので、この内で白兵戦が得意な者に、施設内の比乃捜索を頼みたいのだが……」
部隊長が部屋の中をぐるりと見渡す。全員が自信満々と言った表情を浮かべている。師団最強のレンジャーに現代の侍、人造人間一号と二号。そこら辺の特殊部隊の何倍も強力な面子であった。
部隊長は髭を撫でて、ご満悦と言った顔をする。今日も、自慢の部下と息子に娘は、やる気に満ち溢れている。
「ぶっちゃけ、誰が行っても問題ないと思うが……今回は志度と心視に頼もうと思う。理由は二つ。一つ、AMWでの時間稼ぎは安久と宇佐美の方が向いてること、もう一つは、奴らとの戦闘経験が二回もあることだ」
そこまで話してから「続いて移動手段だが、その前にちょっと失礼」と部隊長は大型の衛星電話を取り出して、どこかへと連絡を取り始めた。コール音が長めに鳴って、目的の相手が出た。
「もしもしラムス? おお、元気してたか……ああ、いや頼みがあってな……そんな無茶なことじゃないさ……ミッドウェーあったろ、あそこでうちの部隊が作戦行動取るの見逃してくれないか? ……うん、安心しろ少数精鋭だ……援軍? いらんいらん、そもそも来れないだろお前ら……ああ、ひと暴れしてやるから期待してろ……また今度ベガスでもいこう、じゃあな」
と英語で通話を終えると「よし」と言って通信機を懐にしまった。嫌な予感がした安久が「あの、部隊長、よろしいですか」と挙手。部隊長に「どうした」と促されて発言する。
「日米両政府に許可などは……」
「ああ、大丈夫だ。非公式だが、やって良しとは言わせた」
「言わせた……?」
「あまり細かいことは気にするな、お前らはとにかく比乃を救出して無事に帰って来ればそれでいい」
流石に怪訝そうな顔を見せる部下達を無視して、部隊長は「移動手段だが」と話を続けようとする。四人はもう何も言わないことにした。総理大臣とか大統領とコネを持っていてもおかしくは無いのだから、今更そのことについて言及してもしかたがないだろう。
「移動には海自の護衛鑑に乗せて貰う。表向きは練習航海、裏向きはテロリスト勢力への威力偵察、真の目的は比乃の救出というわけだな。すでに機体は横須賀に輸送されている。今回、敵基地で取れる作戦時間は二時間だ。それまでに全作戦工程を完了させろ。あとの詳しい説明は向こうで改めて聞いてくれ……陣頭指揮を執りたかったが、流石にダメだと言われてしまってな……」
心底悔しそうに言う部隊長に、部下四人は内心「それでもやりかねない」と思ったが、口には出さなかった。
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しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。
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