自衛隊のロボット乗りは大変です。~頑張れ若年陸曹~

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第三十七話「策謀と共闘について」

対OFM戦、実践

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 目標地点まで残り数キロの地点。自衛隊とスペツナズの一団がいるであろう場所に対し、川口は半包囲する形で味方を散開させた。指示を受けた玉虫色の西洋鎧が散らばって行き、敵集団を円形に囲う形になっていく。

(ここは孤島、相手に逃げ場なんてないけど)

 念には念を入れて、が彼女の信条である。万が一、市街地への逃走を許したら厄介なことになる。一般市民を戦闘に巻き込まないことは、宝石箱では原則とされているルールだ。

 そうして包囲形態を作った宝石箱の部隊は、じわじわと包囲の輪を狭めて行く。相手にまだ動きはない、攻めるなら相手に体制を整えられる前に、速攻で行く。

「各機、包囲を維持しつつ前進。相手を目視で確認次第、攻撃開始」

 川口の指示で、包囲が更に狭まる。そして川口機にも目標地点の広場が見えた。そこには、

「……何もない?  いや」

 その場所にはプレハブ小屋とコンテナが数個放置されているだけだった。目当ての自衛隊も、スペツナズの姿もない。

「っ、全機、回避運動!」

 相手の意図と狙いを察した川口が言うか言うまいかのタイミングで、包囲に加わっていた玉虫色の機体の内一体が、ほぼ真下からの銃撃――薄緑色の軌跡を残したそれに撃ち抜かれて墜落した。

 その一撃を皮切りに、逆襲をかけられた側がそれに対応するよりも早く、浮遊しているOFMの足元から激しい銃撃が飛んだ。何機かがそれに晒されて高度を落とす。
 足元に生い茂る木々と同じ高度にまで降下した一体が、木々の間から飛び出してきた細身の機体に空中で組み付かれて地に落ちる。

『うわっ、た、助けて隊長――』

 部下の悲鳴が、ずどんと言う重たい打撃音と共に途切れた。川口は狼狽えている部下に「高度を落とさないで、距離を取りなさい!」と指示を出しながら、自機も高度を取って、下からの攻撃に備える。何体かが味方が墜落した地点に射撃を加えるが、手応えはない。

 その間にも、こちらへの攻撃は続けられていた。その上、弾幕は一旦途切れたかと思うと、また違う地点からばら撒かれ、そして次の瞬間にはまた別の地点からと、相手は巧みに己の位置を察知されないよう移動しながら攻撃してきている。

「まさか、待ち伏せを貰うなんて」

 でもどうやって隠れていたのか、レーダーの類がないOFMでも流石に熱探知くらいはできる。しかし、相手はそれにも引っ掛からずに密林の中に身を隠していた。いったいどうやって……考えても答えは出ない。自分はAMWの専門家ではないのだ。

「各機、弾幕を撃って来ている地点を中心に最低三機で包囲しつつ降下、単機行動は厳禁!」

 再三の指示を飛ばしながら、川口は思い知らされたと感じていた。相手は、東南アジアで相手をした軍隊崩れとは違う。本物の軍人、それも精鋭部隊なのだと。



「しかし、主機を切って待機するだなんて、大胆なこと考えますね少佐も」

 森林の中を縫うように移動するTkー7改二の中、比乃は感服したように言った。そう、この待ち伏せ作戦はアバルキンが考案した物で、自衛隊はそれに乗った形なのである。

 主機を切って、待機モード、パソコンで言う所のスタンバイモードにしておけば、余程に高性能な熱探知センサーでもなければ、目視以外でこちらを見つけることは困難になる。
 この作戦を持ちかけられて、比乃たち三人は即座に了承した。自分達も以前、英国での決戦で敵にやられて窮地に立たされたことがある戦法だからだ。その有用性は良く知っていた。

『相手の裏をかくことを考えるのは戦闘の常だ。正面からぶつかり合うだけが戦闘ではない』

 なるほど確かに、と思いながら比乃は次の獲物を探す。自身の前方斜め上方向、ペーチルの放つ弾幕から逃げるように高度を下げた西洋鎧目掛けて、助走を付けて飛びかかる。腕に保持した光分子カッターはすでに起動済みだ。

「せいっ!」

 掛け声と共に、上段に構えたカッターを縦一文字に振るう。縦の斬撃を真後ろから受けた敵機は、背面を大きく斬り裂かれて墜落した。

 その戦果を確認する暇もなく、着地と同時にTkー7改二は再び駆け出す。その後ろを光線が飛び交うが、どれも狙いが甘い。こちらを捉えられている様子はない。

「各機、相手が焦れて降りてきた所が最大の狙い目です。敵戦力を削りつつ、こちらの土俵に引き釣り込むようにしましょう」

『了解了解っと、しかし相手さんら本当に素人だな。射撃での誘導が気持ちよく決まる』

「その内、焦れて降りてきますよ。そのまま接近戦に持ち込んでくるはずです。自分達の優位を捨てて」

 言ってる合間に、一体の玉虫色の機影が地面に降り立ち、こちらを目視で確認すると武器を振り上げて襲いかかってきた。

「ほら来た!」

 しかし、その動きは比乃達からすれば緩慢なものだ。隙だらけである。スラスターを点火、一気に急加速して、腕を振り上げた相手の懐に飛び込み、そのまま横一文字に斬り捨てる。
 胴体を横薙ぎに切り込まれて、操縦者を絶命させられた西洋鎧は、武器を構えた姿勢のまま仰向けに倒れた。

「これで合計四体!」

 センサーを頼るならば、残りは十二体。このまま一体一体を確実に撃破すのが理想であったが、そう上手く事は運ばない。
 待ち伏せを食らって浮き足立っていたOFMが、それまでバラバラだった動きを整え、一斉に地表へと降りてきたのだ。

(森の中での乱戦がお望み?)

 木々が濃く生い茂っている場所に身を隠しながら比乃は思案する。このまま各個撃破されるよりかはマシだと考えたらしい。相手は頭の切り替えが早い指揮官だ。

『相手の指揮官機を叩くのが定石だが、色が違うどれかがそうかね、child1?』

 同様に、敵から身を隠しているアバルキンが通信を入れて来た。

「はい、以前の読んだ報告書の通りなら、灰色の機体が指揮官機だと思われます」

『了解した。それの相手はこちらで請け負おう』

「いえ、それなら自分達が」

 対OFM戦闘では比乃達の方が経験が上だ。そのことを加味して具申しようとした比乃を遮るように、アバルキンは告げる。

『我々とてスペツナズと呼ばれる人種だ。それに、あのシミュレータ程の相手ではないのだろう?  それならば勝算は充分にある』

「……了解しました。他の色付きと雑魚はこちらで引き受けます」

『任せる。来るぞ!』

 少佐の声と同時に、こちらを遂に発見した西洋鎧が、一斉に銃剣を構えて撃って来た。比乃は己の役割をやり遂げるため、弾幕の中、Tkー7改二を前方へ加速させた。
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